グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
宇宙ステーション アポロン
「・・・・・天。やっぱり私が・・・。」
「もしアンタの魔法が効いてなかったら、
宇宙服を脱ぐことはできない。でも効いてるか
確かめるには、誰かが脱ぐしかない。」
天は宇宙服のヘルメットを手に取る。
「なら、一番体が弱い私がやんないと意味
ないでしょう。・・・脱ぐわよ。」
宇宙服を取り、確かめるように深く息を吸う。
「・・・ふー・・・魔法、効いてるみたい。
生命維持機能が停止してるのに、私の体
なんともないわ。」
「・・・現在の酸素濃度はほぼ0%。これで
呼吸ができるなら、問題ないわね。」
「え? この宇宙ステーション、酸素無いの!?
うわわわ! 体が浮かぶ!」
望の体がゆっくりと宙に浮かび上がる。
「霧の魔物がいる間、職員は居住区から
出られない。人間が入れない場所なら、
酸素はなくていいでしょう?」
「しかしこの魔法・・・どういう仕組みなんだ?」
「あえて言うなら・・・『私たちの周囲数センチだけ
地球上と同じ環境』にしてあるわ。」
「・・・んな無茶な。」
「宇宙に行く方法を一年以上・・・いえ、
裏世界の私は10年以上考え続けてきた・・・。
その結果生まれた魔法よ。むしろ順当でしょう?」
「そう言われるとそうだが・・・。」
ロウは結希の言葉に思わず納得する。
「とはいえ、魔法だから制限時間があるわ。効果が
切れたらかけなおせばいいけれど、本来の目的に
集中したいから・・・まずは生命維持機能を
復活させに行きましょう。」
「立てこもっている人たちが機能を停止させたなら、
連絡すればいいのでは?」
「昨日から、地上とは連絡が取れていないの。」
「アンテナが壊れてるから、その修理も役目ね。
ま、余裕があったらだけどね。」
「生命維持機能復活まではできるだけ戦闘は
しないようにして。それと派手な魔法は使わないように。
壁に穴が開いたら、生命維持機能を復活させても
意味がなくなる。」
「・・・話を聞けば聞くほど、ボクが来た意味が
わかんなくなってきたぞ・・・っていうか
魔物がいるなら霧もあるじゃん! だましたな!」
望はバタバタしながら抗議する。
「地球上より遥かに薄いわ。ここで生まれた魔物は
宇宙船の隔壁や強化ガラスも壊せないくらい非力。
それは魔物が現れる最低限の霧しかない。でも
これからはわからない。だからのんびりもして
いられない。作戦を始めましょう。」
「おえっぷ・・・・気持ち悪い・・・。」
宇宙船の中を進んでいた望の顔色が悪くなる。
「おい、大丈夫か?」
「ロウ~・・・霧過敏症じゃないけど死ぬ~・・・。」
「大げさな・・・・。」
「ロウさん。どうしました?」
「心か・・・望がちょっとな・・・。」
ぐったりした望を指さした。
「うえぇ・・・なんでこんな気持ち悪いの・・・。
ロウ・・・ボクが死んだら信頼できるコレクターが
いるからボクのゲームを・・・」
「これは酔ってますね。」
「酔ってる? どういうことだ?」
「宇宙酔いと呼ばれるものです。ロウさん。
しばらく楯野さんを引っ張ってあげてください。」
「横になりたい・・・。」
「重力が回復したら、宇宙酔いの治りが早くなるはずです。」
「じゃあはやく~・・・。」
「ったく・・・。」
望の服をつかみ、引っ張って連れていく。
「・・・・・。」
ロウは地球の方を見た。
<ロウたち、移動中>
ロウたちは部屋の入口にたどり着いた。
「・・・ロックがかかってるわね。こっちから
操作できる?」
「隔離になっているから、内部からの操作でなければ
開かないわ。・・・普通ならね。」
「すぐにロックを解除します。」
心はパソコンを操作し、ロック解除に取り掛かる。
「な、なあ・・・開けた瞬間、銃で撃たれるみたいな
こと、ないよな?」
「アポロンに銃器はないわ。」
「銃じゃなくたって、急に襲われるとか・・・。」
「アポロンには生命センサーが設置されているわ。
ロケットがドッキングしたし、助けが来たことは
認識しているはず。」
「まあ、魔法使いだとは思ってないだろうがな。」
「その場合の問題点は!?」
「宇宙服を着ていない私達を見て、魔物と
思われることかしら。」
結希は自らの格好を見て答える。
「っていうか、むこうは一般人だから襲われても
平気でしょ。」
「博士、ロック解除終わりました。すぐに開けますか?」
「そうね。居住区との間にはエアロックがある。
酸素が満たされるまで時間がかかるわ。すぐに
入りましょう。」
「わかりました。では、開きます。」
中に入ると、結希、ロウは英語で部屋の中の船員たちに
声をかける。
「私たちは救助隊。私立グリモワール魔法学園の
魔法使いよ! NASAに繋がる通信機器を
持っているわ!」
「隔壁を閉めろ。そっちの安全を確認したい。」
安全の確認後、重力は戻り、次の行動が示された。
「ここからはチームを分けるわ。私と双美さん、
ロウ君はゲートを確認しにデータルームへ。
天と楯野さんはアンテナ修理のため、
アポロンの外に。」
「外!?」
「安全帯を忘れないでね。あるのと無いのとでは
命に関わるから。」
「言われなくとも。こんなとこで死ぬ気はないわよ。」
「私達はゲートを確認するためのカメラを設置したら
あなたたちに合流するわ。計画通りに進めば、
何も心配しなくていい。」
「何も問題がない計画なんて、聞いたことないけどね。」
結希の言葉に天は呆れる。
「・・・データルームにゲートがあるのですね。
ちょうどよかった。ゲートとアポロンの
データの確認が同時にできます。」
「あなたの魔法のこと、NASAには伝えていないわ。
確認できるのは、マッタにもらった第一深度
パスワード分だけ・・・と、NASAは思っている。」
「俺が言えたことじゃないが、犯罪だぞ。」
「わかっているわ。」
静かに笑みを浮かべ、移動を開始した。
「・・・・・。」
ロウは地球の方を見た。
<ロウたち、移動中>
データルーム前
「・・・準備はいい? 最期に確認するわよ。
中に入ったら、魔物がいないかを確認。
いたら対処。」
「その後、俺と結希でカメラを設置する間に、心が
データを抜き取る・・・だろ?」
「アポロンのデータ量を確認して、所要時間を
割り出します。30分以上はかからないと思いますが。」
「ただし、魔物がどんどん現れるようだったら、
途中でも切り上げるわ。いつでも退避できる
ようにしておいて。」
結希はドアのスイッチに手をかける。
「開けるわよ。」
「ああ。」
「ええ。」
二人の返事を聞き、結希はドアを開ける。
中には2体ほどの魔物がいた。
「魔物確認。私がやるわ。」
結希の攻撃で魔物は霧散した。
「・・・これだけ? 元々霧の絶対量が少ないとは
いえ、ゲートの近くでこの程度の魔物・・・。」
「部屋、確認しますね。」
データルームに入ると、小さい紫色の穴があった。
「霧を吐き出している・・・間違いなくゲートね。」
「運が悪かったですね・・・。サーバーがかなり
壊れています。どの程度サルベージできるか・・・。」
「ロウ君。カメラを設置しましょう。」
「・・・・・。」
ロウは地球の方を見た。
「・・・ロウ君? どうしたの?」
「・・・・・ああ、いや・・・なんでもない。」
「コピーに必要な時間、出ました。すぐです。
思った以上に、データの破損が大規模ですね。」
「かまわないわ。どうせこちらの・・・・・え?」
二人の会話中、突如、ゲートが消えた。