グリモアーたとえ面倒でも世界は動く-   作:FAMZ

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第315話 目的のために

「・・・オッケー! インティ、戻ってきてー!」

 

ロウたちに合流したヤヨイは空に放った鳥のインティを呼び戻した。

 

「どうだ、ヤヨイ。」

 

「えっと、地図だと・・・ここと、ここに歩兵の部隊が向かってるね。うまーくごまかしてるけど、アタシの目・・・じゃなくて、インティの目はごまかせないもんね。」

 

「インティさんの視界を同期させるなんて、とても便利ですね。」

 

「むにゃむにゃ・・・・・このままでは戦闘になるでしょう。」

 

「だったら、そこに繋がる・・・・・」

 

ロウは地図の一地点を指さす。

 

「ここ。遭遇地点の東の道を封鎖するぞ。ジャベリンはともかく、JGJなら気づいてもおかしくない。」

 

「対策をとってくるのは間違いありません。動きに注意してください。」

 

 

 

 

 

 

「よーし、あそこをぶっ壊しちゃいいんだな。」

 

初音はボロボロの建物に向け、魔法を放とうとする。

 

「瓦礫を集めて山にするのではないのか?」

 

「アレやったのは沙那だろ? アタシそーゆー魔法苦手だもん。ぶっ飛ばした方が早いだろ。」

 

「待て。」

 

壊そうとする初音をアイザックは止める。

 

「破壊はその後を予想しにくい。破壊の結果、建物が低くなって逆に通りやすくなっては本末転倒だ。」

 

「本末転倒・・・アンタ、日本語うまいな・・・。」

 

「仕方ない。私がやろう。要するに、互いが出会わないようにすればいいのだろう。」

 

「できるだけ遠回りもさせたいんだ。そこんとこヨロシク。」

 

「承知だ。」

 

頷き、辺りに何かの魔法をかける。

 

「・・・お? おぉ?」

 

向かってきていた兵士たちが方向を変え、戻っていった。

 

「幻覚だ。あのまま本陣に帰っていくだろう。その頃に効果が切れる。」

 

「いい時間稼ぎじゃん。でもバレないか?」

 

「案ずるな。少し道に迷ったと思うだけだ。魔法によるものだとは気づかれん。」

 

「うし。ならオッケー。サンキュ。でもこれ、思ったより大変だな・・・。いつまでもこんなことしてらんないぞ。」

 

「・・・・ふぅ・・・。お前たちは行け。ここは私が引き受けた。」

 

アイザックのまさかの提案に初音は慌て驚いた。

 

「いやいや、じーさん一人じゃ無理だろ! 置いてけるわけねーじゃん!」

 

「私の方で援軍を呼ぶ。あの千里眼の娘だけ貸せ。鳥の方だ。」

 

「・・・アタシの目的には興味なかったんじゃなかったのか?」

 

「・・・・・・。興味はない。ここは両陣営の中間地点だ。互いの戦略や武装を観察するにはうってつけだからな。」

 

「ならまかせた!」

 

初音の返事にアイザックは頷いた。

 

「そうだ。戦いのとき、使えるものを使わぬのはただの無能だ。」

 

「ちょっと待ってろ。みんなに話してくる。」

 

初音はロウたちのもとに走っていく。それを見てアイザックは小さくため息をついた。

 

「・・・ふん。もとより、こんな少人数で達せられる目的ではない。まだ青いな。だが、無謀に挑むのも青さの特権よ。」

 

そう言うと、アイザックはデバイスを取り出した。

 

「・・・アイラか。お前の力を貸してほしい。」

 

連絡したのは、アイラだった。

 

「ん? 今はお前たちの言う裏世界にいる。・・・そうだ。戦争の見物をしている。ちょうど両軍の間にいてな。このままだと死んでしまうかもしれん。・・・うむ、正確な位置を伝える。すぐに来てくれ。」

 

 

 

 

 

 

「・・・ってことで、じーさんが引き受けてくれることになった。」

 

「・・・・。」

 

話を聞いたロウは奥にいるアイザックを見る。

 

(ま、死にはしないだろう。おそらくアイラを呼んだだろうし。)

 

「少し時間かかったからな。それも手だ。」

 

「ぶっちゃけ、ここで時間取られたのはアタシの判断ミスだ。ごめん。ロウ、みんなの魔力を回復してくれないか。その間、アタシが見張っとく。全然魔力使ってないからな。」

 

 

 

 

 

 

「まもなく接敵です! 白兵戦開始までわずか!」

 

樹は腕時計で時間を確認する。

 

「・・・戦闘開始から2時間か・・・。まさか本当にここまで進軍できないとは思わなかったな。」

 

「初音ちゃんたち、やるわねー。」

 

茉理が感心するなか、樹の顔が険しくなる。

 

「・・・実は司令官が、初音たちの排除を進言してきている。」

 

「え!?」

 

「正確には、進軍を邪魔する何者かの排除だ。正体が初音だとは知らないからな。作戦行動の邪魔になってるんだ。止めるわけにもいかない。」

 

「まさか、初音ちゃんたちを狙って?」

 

「・・・・・・・。」

 

樹はさらに顔を険しくする。

 

「神宮寺の末子が戦いの邪魔をしているなんて、俺たちからは言えない。かと言って、初音を狙われるのも困るな・・・・。・・・・よし。葉黒! 初音と接触してくれ!」

 

「かしこまりました。」

 

葉黒が姿を見せず、返事をした。

 

「・・・今どこから声が聞こえた?」

 

「このあたり隠れるところないのに・・・葉黒ちゃん、すごいわね・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

「・・・無力化を完了しました。」

 

その頃、ジャベリンの兵士を沙那が拘束していた。

 

「やっぱ、陣地に近づくにつれて相手と遭遇することが多くなったな・・・。どうにか大騒ぎにならねーようにしないと・・・。」

 

「魔法使いが参戦していると喧伝されただけで、JGJは痛手を負います。私達は、絶対に気づかれてはいけません。」

 

「ふぅ・・・す、少し、休ませてください・・・。」

 

「ん・・・ああ、オッケー。」

 

ゆえ子はゆっくりと座り込んだ。

 

「す、すみません・・・一分でも早く、鏑木さんのところに行かなければならないのに・・・。」

 

「無理するな。そのためには、ゆえ子。お前の予知は必要になるからな。」

 

ロウはゆえ子の肩をポンと叩き、魔力を回復させる。

 

「ありがとうございます・・・。」

 

「・・・そろそろ危ないな・・・。」

 

ゆえ子に聞こえないように話し、初音と沙那は周囲を警戒する。

 

「左様でございますね。砲撃戦も大詰め。遠からず、どちらかの障壁が破壊されるはずです。」

 

「どっちも軍隊だ。それで簡単に壊滅するわけないけど・・・どうしたって死人は出るな。」

 

「あと1時間ほどかと。」

 

「1時間か・・・ジャベリンの陣地はどれくらいある?」

 

「途中で兵士に時間を取られましたからね。想定よりも遅れています。速度を上げなければ、間に合わないかもしれません。」

 

「・・・そっか。」

 

「みなさん、お待たせしました。ゆえは大丈夫です。先を急ぎましょう。」

 

ゆえ子が少しふらつきながらも立ち上がった。

 

「何言ってんだ。まだ10分も経ってないぞ。」

 

「魔力を回復してもらったので大丈夫です。それに、この程度で長々と休んでしまっては、ゆえの沽券に関わるので。」

 

「沽券など問題ではありません。あなたに無理をさせるわけにはまいりません。どうか、もうしばらくお休みを。」

 

「お話、聞こえていましたよ。ゆえの力を信じて、連れてきてくれました。ならばそれにお応えするのがゆえの仕事です。どうかゆえに、仕事をさせてください。」

 

「ったく・・・。」

 

初音は呆れながらも、嬉しそうに頷いた。

 

「ショージキ、助かる。すぐに出発するぞ。でも倒れられたらマジで困るかんな。ホントにダメなときは言ってくれよ。」

 

「ええ、それはもう。」

 

「・・・・・初音様。」

 

どこからか、初音を呼ぶ声が聞こえる。

 

「うぉ!? は、葉黒か!?」

 

「JGJ軍がローニンの部隊を派遣しました。」

 

「ローニンジグシーか!?」

 

「そうです。進軍を妨害しているものを排除するつもりです。」

 

「いよいよ来たな・・・じーさんたちに連絡しとくか。沙那。ロカに、ローニンは最新鋭で索敵能力が高くなってこと、伝えてくれ。カムロジクシーと同じだって考えてると、痛い目見るってな。」

 

「かしこまりました。」

 

沙那はすぐにデバイスを取り出し、連絡を入れる。

 

「葉黒。アタシたちよりじーさんたちが危ない。陣地にいたとき、顔は見てるだろ? 手伝ってやってくれ。」

 

「かしこまりました。・・・念のため、お伝えしますが・・・」

 

「葉黒はJGJの一員だから、ローニンに手が出せない、だろ? わかってるよ。じーさんとロカを誘導してやってくれ。」

 

「御随意に。では、失礼します。」

 

葉黒の気配が消えると、初音は焦る様子でロウや沙那を見る。

 

「ロウ、沙那。追いつかれたらマジでヤバい。やっぱスピード上げるぞ。西原の力も、最後の詰めのために少し温存する。こっからは・・・強行突破だ。」

 

「了解。」

 

「かしこまりました。・・・では、戦闘の頻度が上がることを覚悟しておきましょう。」

 

その言葉を聞き、ましろは笑みを見せる。

 

「わたくしの出番ですね。今か今か・・・と待っていましたよ。」

 

「初音様の行く先は私が露払いいたします。」

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