グリモアーたとえ面倒でも世界は動く-   作:FAMZ

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第316話 閉戦

「!? な・・・!?」

 

「装備と足を失礼。」

 

ましろが氷の魔法でジャベリンの兵士を拘束する。

 

「ま、魔法使いか!?」

 

「少々、お眠りください。」

 

今度は沙那によって眠らされた。

 

「はあ、はあ・・・け、結構走ったぞ・・・むっちゃ疲れる・・・。」

 

「ロウさんが思いついた背中の星図に乗り、浮かせてみるというアイディアは快適でした。」

 

「だろ?」

 

ゆえ子が嬉しそうにし、ロウはそれを見てにやりと笑う。

 

「常時魔力をいただくことになってしまいましたが・・・。」

 

「私も、地面を凍らせてすべるという移動方法を会得できましたよ。私もロウさんに魔力をいただく頻度が増えてしまいましたが・・・。」

 

「気にするな。まだまだ余裕だ。」

 

「・・・相変わらず、すげー魔力。」

 

「! 初音様。ご覧ください。」

 

「ん・・・? ・・・あ、あそこって・・・!」

 

「ジャベリンの本隊です。やっと、たどり着きました。」

 

ついに目指していたジャベリン本隊を視界にとらえた。初音は周囲を確認する。

 

「まだどっちの障壁も破られてない・・・歩兵部隊も接触してない・・・! やったぞ沙那! 間に合った!」

 

しかし、その直後、砲撃音が鳴り響いた。

 

「市内中央から・・・ですね・・・。おそらく、歩兵部隊が戦闘を始めたかと。」

 

「くそ・・・急ぐぞ、沙那! 連中が騒ぐ前に、おっさんを捕まえちまえばいい!」

 

「かしこまりました。では、ここからは強行突破といきましょう。」

 

「『今日、こう取っ払う』・・・なるほど。」

 

ましろのダジャレで一瞬、静まったような感覚がする。

 

「余裕あるなお前・・・。」

 

「西原さん、現時点での鏑木様の居場所を確認できますか?」

 

「試してみましょう。こんな時に失敗しなければよいのですが・・・。むにゃむにゃ・・・・・・・。」

 

閉じられた目がゆっくりと開かれる。

 

「視えました。白髪がかなり増えていますが、同じ人なのです。ゆえ達に気づいて逃げようとしていたところです。」

 

「このまま進めば鏑木に会えるわけか?」

 

「今視た未来がゆえ達と相対しているところかはわかりませんが・・・周りの兵士も慌てていましたから、おそらくそうだと思うのです。」

 

「それがわかりゃ十分だ。アタシもショックガン使うぜ。」

 

初音はこの時のために持ってきていた武器を構える。

 

「よぉし、突撃だ。目指すは・・・鏑木! もう障壁ももたねーはずだ! 死人が出る前に、何としても捕まえるぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんだ!」

「魔法使いが来たぞ!」

「ま、待て・・・あの方は・・・!」

 

向かってくる初音たちを見て、ジャベリンの兵士たちが狼狽する。

 

「アタシに気づくヤツが何人かいるな!」

 

「鏑木様がいらっしゃるのであれば、他にもいるでしょう。まだ10年。神宮寺のご兄弟が忘れられるには早いです。」

 

「兄妹でも二人くらい生き残ってるって話だったしな。ヒヒヒ、10年前から成長してねーアタシ、幽霊みたいじゃね?」

 

「言ってる場合かよ・・・。・・・! 初音、伏せろ!」

 

「!」

 

初音が急いで伏せると、足元に攻撃が撃ち込まれた。

 

「・・・な、なぜ・・・初音、様が・・・。いや・・・あちら側から来た初音様と月宮か!」

 

今回の目的の人物、鏑木が震えながら、銃を構えていた。

 

「よぉ、鏑木のおっさん。久しぶりだな。間ヶ岾の下で随分好き勝手やってるみてーだな。けどもう間ヶ岾は死んだ。アンタもケジメをつけるときだ。」

 

「・・・・間ヶ岾が、死んだ・・・? それは、嘘でしょうな・・・。あの間ヶ岾が死ぬなど考えられない。」

 

初音の告げた事実に鏑木が受け入れられず、頭を横に振る。

 

「そーかよ。そこまで共生派に染まりきっちゃったか。」

 

「あなたはわかっていない・・・。神宮寺の下で働くことがどういうことかを。神宮寺は・・・強くあらねばならなかった! それなのにあなた方は負けた!」

 

鏑木はこれまでの怒りや苦悩をぶちまける。

 

「間ヶ岾に乗っ取られた時点で、もう神宮寺はその役目を失っていたのです。私は部下たちの命を預かっている。間ヶ岾が勝ったのなら・・・強者の間ヶ岾につくのが最大限の『利』を得られる。私の判断基準は、ご兄弟が経営していた時と同じなのです。」

 

「・・・かもな。少なくとも、間ヶ岾に従ったおかげで・・・。」

 

初音は辺りの荒れ果てた景色を見る。

 

「こんなんになった裏世界でも、10年存続できてるわけだしな。」

 

「・・・その通り、こちらの世界であなたは行方不明になった。ご兄弟と月宮を失ったのです。子供だったあなたを責めはしない。しかし・・・私には、あなたのような選択をする予知はなかった。全ては、社員と家族を守るためです。」

 

「別にそのことを責めてるわけじゃねーよ。だけど、こっちの世界のアンタが、もう死んでるってこと、知ってるか?」

 

鏑木の目が大きく開かれる。

 

「・・・なんですって・・・!・ まさか・・・!!」

 

「ちげーよ。アンタが裏切っても、こっちのアンタに罪はない。粛清なんてするもんか。おっさんを殺したのは・・・アンタたちのテロさ。霧の護り手がJGJフューチャーを襲った時、鏑木のおっさんは死んだ。」

 

鏑木の手が震えだす。

 

「・・・わかってるよな。アタシは苛ついてんだよ。さっき、神宮寺は強くあらねばならないって言ったよな! じゃあここで宣言してやる! この戦いでアンタらは終わりだ! アタシの方がアンタらよりも強いんだからな!」

 

初音は持っていた銃を鏑木に向ける。

 

「裏のJGJ・・・テロリスト、ジャベリンはアタシがぶっ潰してやる!」

 

「! 初音様、いけません!! ・・・! ぐ・・・!」

 

初音を止めようとした沙那が崩れ落ちる。鏑木が弾を打ち込んでいたのだ。

 

「沙那!? てめえ・・・!!」

 

「!! 初音、よせ!!」

 

攻撃しようとした初音をロウは羽交い締めにする。

 

「ろ、ロウ! 放せ!」

 

「!!」

 

ロウは心の中で驚いた。一瞬、初音を放してしまいそうになっていた。

 

(・・・俺も、こうなっていたのか? 俺は・・・)

 

「・・・初音様。始末はこちらで。」

 

どこからか葉黒の声が聞こえる。

 

「魔法使いは、一般人を傷つけてはいけません。」

 

「・・・鏑木ぃ!」

 

「悪いが・・・私もここで諦めるわけにはいかないんです。あなた方がそうであるように!」

 

「かっこつけてんじゃねぇ! 樹兄さまの腕見たのかよ! ・・・沙那撃ったのも、ぜってー許さねえからな・・・!」

 

「・・・お待ち、ください・・・。」

 

沙那が起き上がり、初音の腕をつかむ。

 

「ここで手を出しては、すべてが無駄になります。・・・お分かり、ですね?」

 

「・・・・・。」

 

初音が落ち着くのを見て、ロウは初音を放す。

 

「・・・ロウ、西原。沙那のこと頼む・・・。」

 

「ああ。」

 

「・・・鏑木。これで終わりだ。諦めろ。」

 

「くそ・・・! かかれ!」

 

鏑木が命令を出したその直後だった。

 

「いました! 鏑木です!」

 

「・・・!」

 

「な!? ぐっ!!」

 

JGJの兵士が鏑木を確保した。

 

「鏑木は捕らえた! 総員、即武装解除すべし!」

 

「・・・はは・・・持ってかれちゃったよ・・・。ま、アタシにしちゃ常識じゃね、これ。」

 

鏑木が確保されたのを見届けると、力が抜けたように初音は地面に座り込んだ。こうして、表世界と裏世界のJGJ同士の戦争は幕を閉じた。

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