グリモアーたとえ面倒でも世界は動く-   作:FAMZ

327 / 337
第15章
第317話 今度は海へ


「沙那ちゃん、大丈夫!?」

 

心配した茉理が沙那のもとに駆け寄る。

 

「ええ・・・東雲さんの魔法で、もう大丈夫です・・・。」

 

「嘘こけ。妾は回復魔法、あまり得意でない。完全には治っておらん。帰ったらすぐ保健室に行くことじゃな。」

 

「しかし、初音様のお世話がありますから・・・。」

 

「沙那。お前、今回の目的を忘れたのか?」

 

ロウは沙那の肩に手を置く。

 

「あいつは・・・両方の軍に死人を出さないことが目的だった。仕えるお前がそれをさせないつもりか?」

 

「・・・・・・。・・・失礼、しました・・・。私はどうやら、思いあがっていたようです・・・。」

 

「初音ちゃんだって、少しの間くらい一人で大丈夫よ。」

 

「・・・初音様から直接、暇の許可をいただき・・・ま・・・」

 

「! おい・・・!」

 

初音のところに行こうとした沙那は突如、倒れてしまう。

 

「沙那ちゃん!?」

 

「沙那!?」

 

初音が来たのを見て、沙那はなんとか起き上がる。

 

「初音様・・・失礼しました。」

 

「バカ、寝てろって! 撃たれたんだぞ!?」

 

「急所は外れておりましたので・・・問題ありません。」

 

「早く保健室行けって! 西原! アンタも来てくれ! まだちゃんとお礼言ってないんだ! ロカもじーさんも東雲も・・・ロウも!」

 

 

 

 

 

 

 

「・・・そうか。」

 

樹は葉黒の報告を受け、険しい顔をしていた。

 

「始末はつけました。死体は闇から闇へ。初音様の邪魔はいたしません。」

 

「・・・悪い。まさかこういう結末になるなんてな。」

 

「月宮様を傷つけたことは、私にとっても到底許容できることではありません。神宮寺を傷つけたものに、相応の報いを受けさせただけのこと。ですが重ねて申し上げます。このことは、闇から闇へ。両軍に・・・死者はいません。」

 

「ああ、わかった。・・・しばらく休め。ありがとう。お前のおかげで沙那ちゃんも初音も、無事で帰ってこれた。」

 

「身に余るお言葉です。」

 

 

 

 

 

 

保健室

 

「・・・・う・・・。」

 

眠っていた沙那はゆっくりと目を開ける。

 

「ずず・・・むにゃむにゃ・・・・。」

 

すぐそばでは寝落ちしている初音の姿があった。

 

「目ぇ覚めたか。」

 

「ロウさん・・・申し訳ありません。付き添ってくれたのですね。」

 

「まあな。」

 

「・・・・・。」

 

沙那はゆっくりと頭を下げた。

 

「・・・私が撃たれたとき、初音様を止めてくれたと聞きました。ありがとうございます。」

 

「・・・・・。」

 

「貴方がいなければ、初音様は殺人を犯すところでした。そうなればきっと・・・いつまでも消えぬ、心の傷が残ったと思います。」

 

「気にするな。それに・・・俺の方が気づかされた。」

 

「え?」

 

「前の時の俺に重なったんだよ。・・・あいつには、ああなってほしくなかった。それだけだ。」

 

寝ている初音を見て、ロウは心情を吐露する。

 

「・・・実は出発前、ウィリアムズ様に助言をいただいたのです。」

 

「メアリーに?」

 

「貴方を連れて行くように、と・・・。ですがそれで、貴方には一生かかっても返せぬほどの借りができてしまいました。」

 

「・・・ふっ、そうか。まあ少しずつでも返してくれればいい。」

 

「ふふ・・・では一生かかって、できるだけお返しするしかありませんね。・・・何度言っても言い足りませんが・・・ロウさん、ありがとうございます。本当に、ありがとうございます。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後

 

魔法使いの村

 

「・・・うん、いねぇな・・・。」

 

「で、ですね・・・。」

 

ロウはチトセに用があるという智花を手伝い、学園の地下であるここまで来ていた。

 

「探すには広すぎますね。大声で呼んだら、気づいてくれるでしょうか。」

 

その時だった。一瞬、地面が震えた。

 

「わあああたぁしいいのぉ~!!」

 

「!?」

 

「きゃあ!?」

 

「かいばわぁ~! なぁみだぁのあぁじ~!」

 

誰かが大声で歌っている(?)ようだった。

 

「どういう歌なんだ?」

 

「あれ、きっと律ちゃんですよね! ここで歌ってたなら、朱鷺坂さんのこと、知ってるかもしれません!」

 

智花は声のした方に走り出す。

 

「・・・なんだ、今のでっけぇ声・・・ビックリして目が覚めちまったぞ。」

 

眠たそうな目をして龍季がやってくる。

 

「龍季いたのか。よくこんなとこで寝られるな。」

 

「うっせえよ。ったく、せっかくの昼寝を邪魔しやがって。どこのどいつだ。」

 

 

 

 

「んっん~♪ 今日も喉の調子は絶好調だな!」

 

歌っていたのは、やはり律だった。

 

「律ちゃん律ちゃん!」

 

「ん? 智花とロウじゃねーか。どうしたんだこんなとこに2人で・・・」

 

律はロウと智花を交互に見る。

 

「2人で・・・人気のないところで・・・ん?」

 

「あ、あのね! 朱鷺坂さん、いるかな!? ここにいるかもって聞いたんだけど・・・見てない? ・・・っていうか、歌ってたの?」

 

「ああ、たまにな。よく響いて気持ちいいんだよ、ホント!」

 

「一応言っとくが、これからは裏世界の奴らが来るからな。」

 

「そうなんだよなぁ。これからはあんまり使えなくなるなー。」

 

「そうなんだ・・・。」

 

「で、結局見たのか?」

 

それた話をロウが戻す。

 

「あ、朱鷺坂だっけ? いや、見てねーよ。今日は裏世界のヤツがいないみたいだからさ、ついさっき始めたけど・・・その前に辺りを見て回った時も、いなかったなぁ・・・。」

 

「そっか・・・じゃあもあっとで連絡取って、また今度・・・」

 

「やっぱおめーかよ・・・。]

 

「すみません。地下から異様な声が聞こえると報告があったのですが・・・あなたでしたか。」

 

昼寝を妨害された龍季、生徒の報告から来たらしいイヴがやってくる。その時、一瞬地面が揺れる。

 

「お? お? なんかあたし、有名人?」

 

「ある意味だろうけどな。」

 

その時、一瞬地面が揺れる。

 

「・・・ん?」

 

「・・・・。」

 

(ここには・・・俺除いて4人・・・。まさか・・・。)

 

「人の昼寝の邪魔になってんだよ。違うところでやれ。」

 

「・・・昼寝?」

 

「え、えっと・・・それじゃあ私・・・」

 

「なあ、さっき・・・・・」

 

地面が大きく揺れ始める。

 

「きゃあああ!」

 

「な、なんだ!? 地震か!?」

 

「こ、これは・・・!」

 

「やっぱりか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

???

 

「・・・・んん・・・・?」

 

目の前に広がるのは一面の空。地面に倒れているようだった。辺りを見るため、ゆっくりと体を起こす。

 

「! ここは・・・海か・・・。」

 

「ああぁ~・・・・・。」

 

「わぁ~! なにやってんだ!」

 

「は?」

 

子供の悲しそうな声と怒ったような声が聞こえる。声のしたほうを向くと・・・。

 

「お城・・・壊れちゃった・・・。」

 

「あたしたち、いっしょうけんめい作ったんだぞ!」

 

子供の姿の龍季と律がそこにいた。

 

「・・・城? ・・・・あ。」

 

ロウの体の下に砂の城だったものがあった。どうやら位置が悪く、ちょうど城の上にやってきてしまったようだ。

 

「きゅうに出てきて壊すなんて、兄ちゃんひどいぞ!」

 

「・・・もっかい作る・・・・。」

 

「もっかい作る! お兄ちゃんもな!」

 

「・・・はい。」

 

(なんだってこんなこと・・・。)

 

ロウは子供の龍季と律と一緒にいそいそと城を作り始めた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。