グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
第317話 今度は海へ
「沙那ちゃん、大丈夫!?」
心配した茉理が沙那のもとに駆け寄る。
「ええ・・・東雲さんの魔法で、もう大丈夫です・・・。」
「嘘こけ。妾は回復魔法、あまり得意でない。完全には治っておらん。帰ったらすぐ保健室に行くことじゃな。」
「しかし、初音様のお世話がありますから・・・。」
「沙那。お前、今回の目的を忘れたのか?」
ロウは沙那の肩に手を置く。
「あいつは・・・両方の軍に死人を出さないことが目的だった。仕えるお前がそれをさせないつもりか?」
「・・・・・・。・・・失礼、しました・・・。私はどうやら、思いあがっていたようです・・・。」
「初音ちゃんだって、少しの間くらい一人で大丈夫よ。」
「・・・初音様から直接、暇の許可をいただき・・・ま・・・」
「! おい・・・!」
初音のところに行こうとした沙那は突如、倒れてしまう。
「沙那ちゃん!?」
「沙那!?」
初音が来たのを見て、沙那はなんとか起き上がる。
「初音様・・・失礼しました。」
「バカ、寝てろって! 撃たれたんだぞ!?」
「急所は外れておりましたので・・・問題ありません。」
「早く保健室行けって! 西原! アンタも来てくれ! まだちゃんとお礼言ってないんだ! ロカもじーさんも東雲も・・・ロウも!」
「・・・そうか。」
樹は葉黒の報告を受け、険しい顔をしていた。
「始末はつけました。死体は闇から闇へ。初音様の邪魔はいたしません。」
「・・・悪い。まさかこういう結末になるなんてな。」
「月宮様を傷つけたことは、私にとっても到底許容できることではありません。神宮寺を傷つけたものに、相応の報いを受けさせただけのこと。ですが重ねて申し上げます。このことは、闇から闇へ。両軍に・・・死者はいません。」
「ああ、わかった。・・・しばらく休め。ありがとう。お前のおかげで沙那ちゃんも初音も、無事で帰ってこれた。」
「身に余るお言葉です。」
保健室
「・・・・う・・・。」
眠っていた沙那はゆっくりと目を開ける。
「ずず・・・むにゃむにゃ・・・・。」
すぐそばでは寝落ちしている初音の姿があった。
「目ぇ覚めたか。」
「ロウさん・・・申し訳ありません。付き添ってくれたのですね。」
「まあな。」
「・・・・・。」
沙那はゆっくりと頭を下げた。
「・・・私が撃たれたとき、初音様を止めてくれたと聞きました。ありがとうございます。」
「・・・・・。」
「貴方がいなければ、初音様は殺人を犯すところでした。そうなればきっと・・・いつまでも消えぬ、心の傷が残ったと思います。」
「気にするな。それに・・・俺の方が気づかされた。」
「え?」
「前の時の俺に重なったんだよ。・・・あいつには、ああなってほしくなかった。それだけだ。」
寝ている初音を見て、ロウは心情を吐露する。
「・・・実は出発前、ウィリアムズ様に助言をいただいたのです。」
「メアリーに?」
「貴方を連れて行くように、と・・・。ですがそれで、貴方には一生かかっても返せぬほどの借りができてしまいました。」
「・・・ふっ、そうか。まあ少しずつでも返してくれればいい。」
「ふふ・・・では一生かかって、できるだけお返しするしかありませんね。・・・何度言っても言い足りませんが・・・ロウさん、ありがとうございます。本当に、ありがとうございます。」
数日後
魔法使いの村
「・・・うん、いねぇな・・・。」
「で、ですね・・・。」
ロウはチトセに用があるという智花を手伝い、学園の地下であるここまで来ていた。
「探すには広すぎますね。大声で呼んだら、気づいてくれるでしょうか。」
その時だった。一瞬、地面が震えた。
「わあああたぁしいいのぉ~!!」
「!?」
「きゃあ!?」
「かいばわぁ~! なぁみだぁのあぁじ~!」
誰かが大声で歌っている(?)ようだった。
「どういう歌なんだ?」
「あれ、きっと律ちゃんですよね! ここで歌ってたなら、朱鷺坂さんのこと、知ってるかもしれません!」
智花は声のした方に走り出す。
「・・・なんだ、今のでっけぇ声・・・ビックリして目が覚めちまったぞ。」
眠たそうな目をして龍季がやってくる。
「龍季いたのか。よくこんなとこで寝られるな。」
「うっせえよ。ったく、せっかくの昼寝を邪魔しやがって。どこのどいつだ。」
「んっん~♪ 今日も喉の調子は絶好調だな!」
歌っていたのは、やはり律だった。
「律ちゃん律ちゃん!」
「ん? 智花とロウじゃねーか。どうしたんだこんなとこに2人で・・・」
律はロウと智花を交互に見る。
「2人で・・・人気のないところで・・・ん?」
「あ、あのね! 朱鷺坂さん、いるかな!? ここにいるかもって聞いたんだけど・・・見てない? ・・・っていうか、歌ってたの?」
「ああ、たまにな。よく響いて気持ちいいんだよ、ホント!」
「一応言っとくが、これからは裏世界の奴らが来るからな。」
「そうなんだよなぁ。これからはあんまり使えなくなるなー。」
「そうなんだ・・・。」
「で、結局見たのか?」
それた話をロウが戻す。
「あ、朱鷺坂だっけ? いや、見てねーよ。今日は裏世界のヤツがいないみたいだからさ、ついさっき始めたけど・・・その前に辺りを見て回った時も、いなかったなぁ・・・。」
「そっか・・・じゃあもあっとで連絡取って、また今度・・・」
「やっぱおめーかよ・・・。]
「すみません。地下から異様な声が聞こえると報告があったのですが・・・あなたでしたか。」
昼寝を妨害された龍季、生徒の報告から来たらしいイヴがやってくる。その時、一瞬地面が揺れる。
「お? お? なんかあたし、有名人?」
「ある意味だろうけどな。」
その時、一瞬地面が揺れる。
「・・・ん?」
「・・・・。」
(ここには・・・俺除いて4人・・・。まさか・・・。)
「人の昼寝の邪魔になってんだよ。違うところでやれ。」
「・・・昼寝?」
「え、えっと・・・それじゃあ私・・・」
「なあ、さっき・・・・・」
地面が大きく揺れ始める。
「きゃあああ!」
「な、なんだ!? 地震か!?」
「こ、これは・・・!」
「やっぱりか。」
???
「・・・・んん・・・・?」
目の前に広がるのは一面の空。地面に倒れているようだった。辺りを見るため、ゆっくりと体を起こす。
「! ここは・・・海か・・・。」
「ああぁ~・・・・・。」
「わぁ~! なにやってんだ!」
「は?」
子供の悲しそうな声と怒ったような声が聞こえる。声のしたほうを向くと・・・。
「お城・・・壊れちゃった・・・。」
「あたしたち、いっしょうけんめい作ったんだぞ!」
子供の姿の龍季と律がそこにいた。
「・・・城? ・・・・あ。」
ロウの体の下に砂の城だったものがあった。どうやら位置が悪く、ちょうど城の上にやってきてしまったようだ。
「きゅうに出てきて壊すなんて、兄ちゃんひどいぞ!」
「・・・もっかい作る・・・・。」
「もっかい作る! お兄ちゃんもな!」
「・・・はい。」
(なんだってこんなこと・・・。)
ロウは子供の龍季と律と一緒にいそいそと城を作り始めた。