グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
洞窟
「・・・~!」
子供の律は洞窟を見て、体をぶるりと震わせる。
「どしたの? おトイレ?」
「ち、ちげーよ・・・。」
子供の律は少しおびえるように洞窟を見る。
「こわいの?」
「ちげーって! その、あたしはロックなんだからな!」
「・・・・?」
ロックがよくわからず子供の龍季は首を傾げる。
「お、お前もこわかったら、あたしにつかまってろよ! ほら!」
子供の龍季は子供の律の手をぎゅっとつかむ。
「よ、よーし・・・じゃあ、たんけんたい、しゅっぱつな!」
「さっきもいったよ?」
「なんかい言ってもいいんだ! げんきでるんだから! たつきちゃんも言ってみろって。せーの・・・」
「「たんけんたい、しゅっぱつ!」」
「ったく・・・あいつら・・・!」
(とりあえず、つかずはなれずの距離で見とくか・・・。)
数分後
「・・・あれ? 出ちゃった・・・。」
進んだ先は海が広がっていた。
「このどうくつ・・・いろんなとこにつながってるんだね。」
「なあんだ、それならこわくないや。きのう、たんけんしとけばよかった。たつきちゃん、お兄ちゃん! もっかいいくぞ!」
「・・・うーん・・・。」
ロウたちを追い、洞窟に入った律はうんうん唸っていた。
「忘れてるだけかと思ったけど、やっぱ記憶にねーなぁ・・・。」
「なんかここ、碧万千洞みてーだな。壁の色やらよ。」
龍季の言う通り、洞窟の壁が様々な色を発していた。
「あーそっか、碧万千洞に似てんのか。あそこは海の近くじゃねーし、じゃあやっぱ来たことねーな、あたし。」
「十川海岸には来たことあんのか?」
「あるよ。だからすっげー変な気分・・・。」
「俺もだ。・・・ってか、あの時テメーみたいなガキとは会ってねえよな。」
「ぜんっぜん覚えてねえ。」
お互い揃って、ここでの出会いの記憶は一切なかった。
「これが裏世界かよ・・・ホラーだぞ・・・。」
「うおー、すっげー! 中こんなになってたんだ!」
その頃、子供の律は洞窟の中を改めて見て、大はしゃぎしていた。
「え? 入ったことなかったの?」
「だってこえーじゃん! いりぐちまでだよ! それに見つけたの、きのうだしな。一回すいぶんほきゅうしてきたら消えてた。 ・・・あ! なんか光った!」
子供の律は光った場所を見ようと駆け寄った。
「! 待て!」
ロウは子供の律の腕をつかんで止めた。
「わわ! な、なんだよお兄ちゃん!」
「そこよく見るんだな。」
「・・・あ。」
ロウが指さした場所には瓦礫やとがった石が散乱していた。
「かべがこわれてんだ・・・ボロだな!」
「ボロだよ!」
「あーそうだな。ボロだな、ボロ。・・・ん。」
子供二人がはしゃぐところに律と龍季が同じ場所に出てくる。
「おせぇぞ。」
「悪かったな・・・! ふー・・・さっさと出るにこしたこたねえな。」
「なあ、なんでここ、こんなに明るいんだ?」
「知らねーよ。天井崩れてんじゃねーの?」
「その割には壊れすぎてんだよな・・・。」
律は崩れた瓦礫をじっと見る。
「あたし、海のことはわかんねーけど・・・水で削られた石って丸くなるだろ? もし満潮で沈む洞窟なら、もっと壁とかなめらかなんじゃね?」
「・・・ああ、そうだな。こりゃ壊れてんじゃねえ・・・壊されてんだ。」
「もしかして不良とか入り込んでんのか?」
「こんなとこに出入りする不良がいるなら見てみたいもんだ。」
「・・・やっぱ、早く出た方がいいぜ。イヤな予感がする。」
龍季は子供たちに駆け寄ろうとする。
「おい、おめーらわぁ!?」
「おいおい、なにやってんだわぁ!?」
二人は子供の自分たちの前で思い切りすっころんでしまった。
「お前らなにはしゃいでんだ。」
「ちげーよ! つか、テメーこそ何やってんだ!」
「バッカ、ちょっとしたお茶目じゃねーかよ!」
「うるせえ! バカヤロ、妙なとこ触んじゃねえ! 殴るぞ!」
「滑るんだよ、暴れんな! 立てねえじゃんかよ!」
転んだ二人がわちゃわちゃとする。
「プロレスだ! あたしもやりたい!」
「は、はしっちゃだめだよ!」
子供の律が二人に混ざろうとしたのを子供の龍季が止める。
「お姉ちゃんたち大きいから、混ざったらケガしちゃうよ!」
「うー・・・・・。龍季ちゃん、プロレスやろうぜ!」
「やだ!」
子供の律の提案に全力で首を横に振る。
「お、おい、ロウ! 早くコイツどかせろ!」
「頼み方ってもんがあるんじゃねえのか?」
「うぐ・・・! は、はやく、どかして・・・くだ、さい・・・!」
「よし、よく言えたな。」
「む、むっちゃ疲れた・・・。でもやっぱ、天井に穴開いてたな。」
律が指さした洞窟の天井は確かに穴が開いていた。
「そうだな・・・多分あれも、自然な崩落じゃねーな。」
「ああ。おそらく、魔物だろうな。」
「魔物?」
「魔物が壊したから、光が入り、鉱石に光が反射したためにこの光景ってわけだ。」
「ったく、皮肉なもんだぜ。」
「ひとまず小さいお前ら連れてここ出るぞ。幸い、出口は近い。」
ロウが案内し、出口に出る。
「・・・ホントだ。浜辺に出るじゃねえか。」
「じゃあ、たんけんしていい!?」
子供の律は目をキラキラさせる。
「転ばないように気を付けるんだぞ。じゃなきゃ、さっきみたくすっころぶからな。あと、奥には行くなよ。」
「おー。」
軽く返事をして、子供の律は洞窟へ走っていった。
「・・・ロウ・・・その、帰れるのははっきりしてるんだよな。」
「ああ、それは間違いない・・・んだが・・・」
「? なんだよ?」
「あの時、もう二人いたはずなんだよな。智花とイヴが。」
ロウは周囲を見るが、二人の姿はない。
「あいつらもこっちに来てるってことか? ・・・じゃあ、さっさと帰るわけにゃいかねーなあ・・・。ガキの頃の自分にも会うし、なんでこんなことに・・・。」
洞窟
律は子供たち二人に付き添って洞窟に入っていた。
「ねえねえ、おうた歌えるってほんと?」
「ん? おおよ。なんたって、未来のスーパースターだぜ。」
「ミクニちゃんのおうた、歌える?」
「ミクニちゃん・・・? なんか聞いたことあるな。・・・あー! あの番組か! 懐かしいなー!」
律は昔観ていた子供番組を思い出した。
「間宮のお姉ちゃんが子供のときもやってたの?」
「・・・あ。」
過去の自分がいたことを忘れていた。
「うーん・・・まあまあ、いいじゃねえか。それより歌も知ってるぞ。綺麗なお空のー、ミクニちゃーん。だろ?」
「それ! さいしょから歌って歌って!」
「おーし、お前らも歌えよ。」
「おー!」
「「「ふーしぎタウンのはーつめいかー! あーさからばんまでおひるねちゅー!」」」
3人が歌っているところにロウと龍季が洞窟に入る。
「あいつらなに歌ってんだ?」
「くそ・・・ロウ、行くぞ!」
「歌いにか?」
「んなわけねーだろ!」
「「「どかーん! ずばーん! めたんとへりうむの、てんしー! きれいなおそらーの、ミクニちゃーん!」」」
ロウと龍季は3人に合流する。
「だー! うるせーんだよ! 音無、自分の立場わかってんのか!?」
「あたしの・・・たちば?」
律はわからないという感じで首を傾げる。
「こいつらの親や警官が探しに来たら、誘拐犯だって思われても仕方ねーんだぞ!」
「え、誘拐犯なのか!?」
「ちがうよー! いいひとだもん!」
「おめーらがそう言ったってカンケーねーんだよ。」
「・・・・しくしく・・・・」
「「ん?」」
「へ?」
ロウ、律二人は周りをきょろきょろと見る。
「おい、聞いてんのか!」
「しっ。」
「しー!」
律二人は口元に人差し指を立てる。
「・・・お、おう・・・わかりゃいいんだよ。」
「いやそっちじゃねえよ。こいつらは気づいたみたいだけどな。」
「は?」
「・・・うえぇん・・・」
誰かの泣き声が洞窟に響く。
「わー! お化けだー!」
「ば、ばっか! んなワケねーだろ!」
「何怖がってんだ・・・俺が見てきてやるよ。」
「俺も行くぜ。ありゃ・・・子供の泣き声だ。」
「律ちゃん! 朝比奈さん! ロウさん!」
3人を呼ぶのはよく知った声だった。
「今の・・・あ!」