グリモアーたとえ面倒でも世界は動く-   作:FAMZ

329 / 337
第319話 響く歌

洞窟

 

「・・・~!」

 

子供の律は洞窟を見て、体をぶるりと震わせる。

 

「どしたの? おトイレ?」

 

「ち、ちげーよ・・・。」

 

子供の律は少しおびえるように洞窟を見る。

 

「こわいの?」

 

「ちげーって! その、あたしはロックなんだからな!」

 

「・・・・?」

 

ロックがよくわからず子供の龍季は首を傾げる。

 

「お、お前もこわかったら、あたしにつかまってろよ! ほら!」

 

子供の龍季は子供の律の手をぎゅっとつかむ。

 

「よ、よーし・・・じゃあ、たんけんたい、しゅっぱつな!」

 

「さっきもいったよ?」

 

「なんかい言ってもいいんだ! げんきでるんだから! たつきちゃんも言ってみろって。せーの・・・」

 

「「たんけんたい、しゅっぱつ!」」

 

「ったく・・・あいつら・・・!」

 

(とりあえず、つかずはなれずの距離で見とくか・・・。)

 

 

 

 

 

 

数分後

 

「・・・あれ? 出ちゃった・・・。」

 

進んだ先は海が広がっていた。

 

「このどうくつ・・・いろんなとこにつながってるんだね。」

 

「なあんだ、それならこわくないや。きのう、たんけんしとけばよかった。たつきちゃん、お兄ちゃん! もっかいいくぞ!」

 

 

 

 

 

「・・・うーん・・・。」

 

ロウたちを追い、洞窟に入った律はうんうん唸っていた。

 

「忘れてるだけかと思ったけど、やっぱ記憶にねーなぁ・・・。」

 

「なんかここ、碧万千洞みてーだな。壁の色やらよ。」

 

龍季の言う通り、洞窟の壁が様々な色を発していた。

 

「あーそっか、碧万千洞に似てんのか。あそこは海の近くじゃねーし、じゃあやっぱ来たことねーな、あたし。」

 

「十川海岸には来たことあんのか?」

 

「あるよ。だからすっげー変な気分・・・。」

 

「俺もだ。・・・ってか、あの時テメーみたいなガキとは会ってねえよな。」

 

「ぜんっぜん覚えてねえ。」

 

お互い揃って、ここでの出会いの記憶は一切なかった。

 

「これが裏世界かよ・・・ホラーだぞ・・・。」

 

 

 

 

 

「うおー、すっげー! 中こんなになってたんだ!」

 

その頃、子供の律は洞窟の中を改めて見て、大はしゃぎしていた。

 

「え? 入ったことなかったの?」

 

「だってこえーじゃん! いりぐちまでだよ! それに見つけたの、きのうだしな。一回すいぶんほきゅうしてきたら消えてた。 ・・・あ! なんか光った!」

 

子供の律は光った場所を見ようと駆け寄った。

 

「! 待て!」

 

ロウは子供の律の腕をつかんで止めた。

 

「わわ! な、なんだよお兄ちゃん!」

 

「そこよく見るんだな。」

 

「・・・あ。」

 

ロウが指さした場所には瓦礫やとがった石が散乱していた。

 

「かべがこわれてんだ・・・ボロだな!」

 

「ボロだよ!」

 

「あーそうだな。ボロだな、ボロ。・・・ん。」

 

子供二人がはしゃぐところに律と龍季が同じ場所に出てくる。

 

「おせぇぞ。」

 

「悪かったな・・・! ふー・・・さっさと出るにこしたこたねえな。」

 

「なあ、なんでここ、こんなに明るいんだ?」

 

「知らねーよ。天井崩れてんじゃねーの?」

 

「その割には壊れすぎてんだよな・・・。」

 

律は崩れた瓦礫をじっと見る。

 

「あたし、海のことはわかんねーけど・・・水で削られた石って丸くなるだろ? もし満潮で沈む洞窟なら、もっと壁とかなめらかなんじゃね?」

 

「・・・ああ、そうだな。こりゃ壊れてんじゃねえ・・・壊されてんだ。」

 

「もしかして不良とか入り込んでんのか?」

 

「こんなとこに出入りする不良がいるなら見てみたいもんだ。」

 

「・・・やっぱ、早く出た方がいいぜ。イヤな予感がする。」

 

龍季は子供たちに駆け寄ろうとする。

 

「おい、おめーらわぁ!?」

 

「おいおい、なにやってんだわぁ!?」

 

二人は子供の自分たちの前で思い切りすっころんでしまった。

 

「お前らなにはしゃいでんだ。」

 

「ちげーよ! つか、テメーこそ何やってんだ!」

 

「バッカ、ちょっとしたお茶目じゃねーかよ!」

 

「うるせえ! バカヤロ、妙なとこ触んじゃねえ! 殴るぞ!」

 

「滑るんだよ、暴れんな! 立てねえじゃんかよ!」

 

転んだ二人がわちゃわちゃとする。

 

「プロレスだ! あたしもやりたい!」

 

「は、はしっちゃだめだよ!」

 

子供の律が二人に混ざろうとしたのを子供の龍季が止める。

 

「お姉ちゃんたち大きいから、混ざったらケガしちゃうよ!」

 

「うー・・・・・。龍季ちゃん、プロレスやろうぜ!」

 

「やだ!」

 

子供の律の提案に全力で首を横に振る。

 

「お、おい、ロウ! 早くコイツどかせろ!」

 

「頼み方ってもんがあるんじゃねえのか?」

 

「うぐ・・・! は、はやく、どかして・・・くだ、さい・・・!」

 

「よし、よく言えたな。」

 

 

 

 

 

 

「む、むっちゃ疲れた・・・。でもやっぱ、天井に穴開いてたな。」

 

律が指さした洞窟の天井は確かに穴が開いていた。

 

「そうだな・・・多分あれも、自然な崩落じゃねーな。」

 

「ああ。おそらく、魔物だろうな。」

 

「魔物?」

 

「魔物が壊したから、光が入り、鉱石に光が反射したためにこの光景ってわけだ。」

 

「ったく、皮肉なもんだぜ。」

 

「ひとまず小さいお前ら連れてここ出るぞ。幸い、出口は近い。」

 

ロウが案内し、出口に出る。

 

「・・・ホントだ。浜辺に出るじゃねえか。」

 

「じゃあ、たんけんしていい!?」

 

子供の律は目をキラキラさせる。

 

「転ばないように気を付けるんだぞ。じゃなきゃ、さっきみたくすっころぶからな。あと、奥には行くなよ。」

 

「おー。」

 

軽く返事をして、子供の律は洞窟へ走っていった。

 

「・・・ロウ・・・その、帰れるのははっきりしてるんだよな。」

 

「ああ、それは間違いない・・・んだが・・・」

 

「? なんだよ?」

 

「あの時、もう二人いたはずなんだよな。智花とイヴが。」

 

ロウは周囲を見るが、二人の姿はない。

 

「あいつらもこっちに来てるってことか? ・・・じゃあ、さっさと帰るわけにゃいかねーなあ・・・。ガキの頃の自分にも会うし、なんでこんなことに・・・。」

 

 

 

 

 

洞窟

 

律は子供たち二人に付き添って洞窟に入っていた。

 

「ねえねえ、おうた歌えるってほんと?」

 

「ん? おおよ。なんたって、未来のスーパースターだぜ。」

 

「ミクニちゃんのおうた、歌える?」

 

「ミクニちゃん・・・? なんか聞いたことあるな。・・・あー! あの番組か! 懐かしいなー!」

 

律は昔観ていた子供番組を思い出した。

 

「間宮のお姉ちゃんが子供のときもやってたの?」

 

「・・・あ。」

 

過去の自分がいたことを忘れていた。

 

「うーん・・・まあまあ、いいじゃねえか。それより歌も知ってるぞ。綺麗なお空のー、ミクニちゃーん。だろ?」

 

「それ! さいしょから歌って歌って!」

 

「おーし、お前らも歌えよ。」

 

「おー!」

 

「「「ふーしぎタウンのはーつめいかー! あーさからばんまでおひるねちゅー!」」」

 

3人が歌っているところにロウと龍季が洞窟に入る。

 

「あいつらなに歌ってんだ?」

 

「くそ・・・ロウ、行くぞ!」

 

「歌いにか?」

 

「んなわけねーだろ!」

 

「「「どかーん! ずばーん! めたんとへりうむの、てんしー! きれいなおそらーの、ミクニちゃーん!」」」

 

ロウと龍季は3人に合流する。

 

「だー! うるせーんだよ! 音無、自分の立場わかってんのか!?」

 

「あたしの・・・たちば?」

 

律はわからないという感じで首を傾げる。

 

「こいつらの親や警官が探しに来たら、誘拐犯だって思われても仕方ねーんだぞ!」

 

「え、誘拐犯なのか!?」

 

「ちがうよー! いいひとだもん!」

 

「おめーらがそう言ったってカンケーねーんだよ。」

 

「・・・・しくしく・・・・」

 

「「ん?」」

 

「へ?」

 

ロウ、律二人は周りをきょろきょろと見る。

 

「おい、聞いてんのか!」

 

「しっ。」

 

「しー!」

 

律二人は口元に人差し指を立てる。

 

「・・・お、おう・・・わかりゃいいんだよ。」

 

「いやそっちじゃねえよ。こいつらは気づいたみたいだけどな。」

 

「は?」

 

「・・・うえぇん・・・」

 

誰かの泣き声が洞窟に響く。

 

「わー! お化けだー!」

 

「ば、ばっか! んなワケねーだろ!」

 

「何怖がってんだ・・・俺が見てきてやるよ。」

 

「俺も行くぜ。ありゃ・・・子供の泣き声だ。」

 

「律ちゃん! 朝比奈さん! ロウさん!」

 

3人を呼ぶのはよく知った声だった。

 

「今の・・・あ!」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。