グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
6月某日
「あれぇ?道、こっちじゃなくないですか?
駅の工事現場を曲がったところだったような・・・。」
青い髪の生徒が首をかしげる。
「いやだから我妻、工事現場とかを目印にするなって
言ってんだろ。」
ロウは呆れながら言う。
「でも、駅っていつも工事してますよね?」
「なるほど・・・これは予想以上ですね・・・。」
「だろ? 副会長。」
よかった、副会長いて・・・。
「我妻さん、今日はロウさんも副会長さんも
一緒ですから大丈夫ですよ?」
「? 何が大丈夫なんですか?」
「よく、迷子になってらっしゃってるので!」
冷泉・・・よく言った・・・!
「つーか、今回のクエストってたしか・・・。」
「ええ、我妻さんを指名したクエストです。
そのため、遅れることがあっては・・・。」
「なるほど、学園の評判に響いて
いろいろ面倒なことになると・・・。」
「す、すみません!」
ペコリと謝る。
「私がとろいのかなぁ・・・
2日くらいあればばっちり間に合うんですけど・・・・。」
「・・・一緒に来てよかったですわ。」
「まったくだ。」
うんうんと首を縦に振る。
「おっ、着いたか。」
ロウ、薫子、葵、浅梨は今回のクエストが行われる
結婚式会場に到着した。
会場内
「・・・そういえば」
「? どうしました? 先輩?」
「なんでこの時期にみんな結婚したがるんだ?
何か意味があるのか?」
「え、先輩知らないんですか?」
「・・・ああ。」
バツが悪そうに言う。
「ジューンブライドっていって、
6月に結婚した花嫁は幸せになるんですよ!」
「ジューン・・・ブライド・・・。」
まあ、あまり縁のない
言葉だな。
「・・・ん?」
見覚えのある顔があった。
・・・まさか・・。
「? 先輩?」
ロウは恐る恐るその男に近づく。
「・・・おっさん?」
「ん? おお、ロウ!」
入り口前できっちりと立っていたのは
義人だった。
「なにやってんだよ、こんなとこで。」
「いやこっちのセリフだっての・・・。」
「あれ、先輩、知り合いですか?」
いつの間にか浅梨がロウの
後ろから話しかける。
「あ、ああ・・・まあな・・・。」
ちらっと義人を見る。
「おっと、まだ名前も言ったことなかったな。
及川義人だ。」
懐から警察手帳を見せる。
「警察の人なんですか?」
「・・・あまり慌てないんだな・・・。」
「んまあ、こいつはこういうやつだ。」
「そうか・・・。んじゃ、俺は仕事に戻る。」
ジャケットを整え、
元の場所に戻る。
「さて、じゃあ俺も・・・。」
ロウは奥に進んだ。
「副会長さ~ん! このドレスはいかかでしょうか!
お持ちしますか!?」
「れ、冷泉さん! それは展示物です!」
「・・・ったく、なにやってんだか・・・。」
ため息をつく。
「冷泉、何やってんだよ。」
「あ。ロウさん! 今、副会長さんに
似合うドレスを持ってきたんです!」
「いやお前、それ思い切り展示物って
書いてあるじゃねえか。」
「あ・・・つ、ついはしゃいでしまって・・・。」
「んま、壊してないだけ幸いだ。
さっさと戻して来い。」
「はい!」
たたたと走っていく。
「・・・ふぅ。」
「すみませんね、ロウさん。」
「気にするな。・・・さて、ちょっと
喉乾いた。飲み物買ってくる。」
頭を掻きながら飲み物を買いに行く。
そして、ロウが立ち去って
すぐのことだった。
「はい・・・はい・・・わかりました。
あ、社長は見学されていかれます?」
「?」
薫子は聞き覚えのある声が
したため様子を見に行く。
「・・・うぇ!?」
存在に気づいたのは
皇絢香だった。
「あら、皇さん。」
「あ! 本当ですね!」
浅梨、葵も集まってくる。
「わわ、ちょ・・! す、すみません!
グリモアのクラスメイトで・・・。」
近くにいたスタッフに
軽く謝罪をする。
「こんにちは! 奇遇ですね、皇さん!」
「しー! 今仕事の打ち合わせの途中で・・・。」
「? ここで仕事というと、やっぱり?」
浅梨が尋ねる。
「そう、ウェディングドレス着て
撮影するんだ。・・・あ、そろそろ時間だから・・・
また、学園でね?」
そう言うと絢香は奥に戻っていく。
「お仕事、大変そうですねぇ・・。」
「でもでも、皇さんのドレス姿
すっごくかわいいんだろうなぁ!」
そんな会話の中、
奥から絢香の驚く声が聞こえる。
「ええ!? で、でも学園側から
許可が出るかどうか・・・。」
「? どうかしたんですかね?」
奥に戻ったはずの絢香が
こちらに戻ってくる。
「? 皇さん?」
「あ・・・じつは、うちの社長がね?
・・・みんなの写真も撮りたいっていってるんだけど・・・
花嫁衣裳の。」
「「「・・・え?」」」
薫子、葵、浅利の声は
完璧に重なった。
そんな出来事のほんの数分前
「・・・はぁ。」
ロウは近くのいすに腰掛け
飲み物を飲んでいた。
「やっぱ、ペ○シはうまいな・・・。」
そう言い、一気に飲み干す。
「さて、じゃあ仕事に戻るか。」
ゆっくりと立ち上がる。
その時だった。
「!! おお君!!」
ロウのもとに小太りの
スーツを着た男が近づいてくる。
「はい?」
間の抜けた返事をする。
「ほぅ・・・。」
男はロウの周りを何周かする。
・・・なんだこのおっさん。
「・・・いいねぇ・・・彼なら
やってくれるかも・・・・。」
「? さっきから何してんすか?」
「おっと、これは失礼。・・こういう者だ。」
懐から名刺を取り出し、ロウに渡す。
芸能事務所の社長か・・・
しかしこの事務所の名前聞いたことあるような・・・。
「んで、社長のような人が
俺になんか用で?」
「そうなんだよ! 実はこれから
撮影をする予定だったんだが男のモデルが
ドタキャンしちゃってさぁ・・・。」
「はあ・・・。」
「そこで、君にその穴を埋めてもらいたいんだ!
君にはとてつもないポテンシャルを秘めている!
私の直感がそう言っている!」
ようするにただの勘かよ・・・。
「ん~、協力はしたいとは思うんすけど、
今俺クエスト中なんすよねぇ・・・。」
「学園の許可取りなら、なんとかするから!
頼む!」
頭を下げる。
「・・・・はあ、わかりましたよ。
やりますよ。」
「! 本当か!?」
「その代わり、報酬は高いっすよ?」
ニヤリと笑う。
「ふ、その点は任せたまえ・・・。
では、さっそくこれを着て、
奥の会場に向かってくれ。」
そう言うと白のタキシードを手渡す。
・・・黒の方がよかったが・・・。
「まあ、すぐに終わらせるか。」
ロウは着替えに向かった。
撮影会場
「副会長さん! お似合いですよ!
きっと、いい写真になりますね!」
「あ、ありがとうございます・・・。」
葵は着物。薫子、浅梨、絢香は
ドレスに着替えていた。
「クエスト中なのにごめんなさい・・・。」
「緊急依頼として許可をもらったので
問題ありませんよ。これで、少しは
グリモアの印象も上がるでしょう。」
微笑んでなだめる。
「でも、誰なんでしょうね。相手役の人。」
浅梨が尋ねる。
「うん・・・それにしても遅いなあ・・・。」
絢香がつぶやいたところで
会場の扉がゆっくりと開き、
白いタキシードを着た男が入ってくる。
「「「「え。」」」」
4人は驚いた。
その男はさっきまで一緒にいた
ロウだった。
「・・・ん?」
ロウも4人に気づく。
「え、何やってんだ? お前ら。」
「いえ、聞きたいのはこちらなんですが・・・。」
「頼まれたんだよ、小太りの
スーツ着たおっさんに。」
「・・・うちの社長だ・・・。」
がくりと肩を落とす。
「でも先輩ならなんか安心しますね!」
「はい!」
「・・・腑に落ちねえが・・・
とっととやって終わらせるか。」
1時間後
会場に秋穂、ありすの
2人が入る。
『うひょ~! 広い会場だなぁ!』
ありすの人形、クレイジープリンセスが
はしゃぎまわる。
「ぉ・・っ・いて・・・。」
「元気だね、クレイジープリンセス。
・・・でも、おかしいなぁ。
先輩たちが見当たらない・・・。」
きょろきょろと周りを見るが
姿を確認できない。
「座って待ってよっか?」
「ぅ・・・ん・・・。」
2人とも近くのいすに
腰かける。ありすは
このとき、持参していた水を飲む。
「・・・あれ?」
『ん? どうかしたか? 秋穂っち?』
「向こうから先輩たちの声が聞こえたような・・・。」
廊下の奥をひょこっと
覗き込む。
すると、奥の扉が開く。
「だぁ~! 疲れた~!!」
そう叫びながらロウが出てくる。
「あ、先輩! おはようご・・ざい・・・。」
ロウの格好を見て目を見開く。
「? どうした?」
「え、あ、その・・・。」
下を向き、顔を赤くする。
「///な、なんでもないです!」
『おおっ! 似合ってるさね、少年!
そうだろ? ありす!』
「ぁ・・・う・・・・。」
こちらも下を向いてしまう。
「? まあいいや。
ああ、あとその水少しもらうぞ。」
ありすの近くの水を
少し飲む。
「///ぇ・・・ぁ・・・。」
「ん、楠木のだったか。悪いな。」
軽く謝る。
『無自覚なのか・・・少年・・・。』
「? 何がだ?」
夕方
「こんな時間か・・・急がねば・・・。」
用事によって遅れた
怜が会場に向かっていた。
「ん、このホテルか?JGJのマーク・・・・
よし、間違いない。」
会場に足を入れた。
「あっ、神凪さん! みなさん!
神凪さんが着きました!」
「・・・え?」
怜の前に着物を着た
葵が出てくる。
「ご実家は大丈夫でしたか?」
ドレス姿の薫子も出てくる。
「な、え・・・!?」
「あ、え、えーっと、これは・・・。」
「!! 皇までなぜそんな恰好を!?」
「ええと、話せば長くなるんですが・・・。」
「全員が花嫁衣裳でロウさんと・・・。」
「ぜ、ぜんいん・・・? ロウと・・・?」
動揺を隠しきれない。
「先輩! 神凪さんが来ましたよ!」
「ん、おお神凪か。遅かったな。」
白いタキシードのロウと
ドレス姿の浅梨が出てくる。
「な、ろ、ロウ・・・お前、男とまで・・・?」
「?」
「えへへ、先輩、とっても優しいんです。
つまづきそうになんですけど、支えてくれて。」
「大したことじゃない。」
軽く頭を掻く。
「キュンとしちゃいましたぁ。」
「・・・ロウ。」
怒気のこもった声だ。
「ん?」
「やはり、何股もかけるような不誠実な
男だったのか!」
「? 何の話だ?」
「か、神凪さん、落ち着いて・・・・。」
何とかなだめようとするが・・・・。
「止めてくれるな! 風紀委員として
見過ごすわけにはいかない!!」
「いや、さっきから何の話してんだよ。」
「ええい、そこに直れ!
私がお前の性根を正してやる!!」
本人は全く理解していない
怜の説教は1時間に及んだ。