グリモアーたとえ面倒でも世界は動く-   作:FAMZ

332 / 337
半年ぶりの特別編です。


忌まわしきクリスマス

学園 廊下

 

外では雪が降っている。

 

「あっ、ロウさん!」

 

「ん? ああ、南か。どうした?」

 

「あの、実はこれを・・・。」

 

かばんから1枚の紙を取り出す。

 

「・・・『クリスマスパーティの招待状』?」

 

「はい! 学園の体育館でやるんです!

 ロウさんもぜひ・・・」

 

「・・・・・・・。」

 

「・・・ロウさん? どうかしたんですか?」

 

ロウがどこか遠い目をしていたので

智花は尋ねた。

 

「・・・いや、なんでもねえ。あと、

 パーティのことだが・・・・・俺は、行けない。」

 

「へ?」

 

「悪いな。生憎、用があってな。」

 

「そ、そうなんですか・・・・・。」

 

「・・・なんか落ち込んでるな? どうした?」

 

「い、いいえ! なんでもないです!」

 

「そうか、じゃあな。」

 

ロウは寮に戻っていった。

 

「・・・・・はあ・・・。

 ・・・けど、一体用事ってなんだろう・・・?

 ・・・まさか、誰かとデート!?」

 

気になった智花はロウに

ついていくことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ! ダーリーン!」

 

「白藤か。何かあったか?」

 

智花と別れたロウは今度は

香ノ葉に話しかけられていた。

 

「今度、みんなでクリスマスパーティするんよ。

 ダーリンも一緒に・・・」

 

「・・・・・ああ、悪いな。その日は

 用事がある。俺は行けない。」

 

「そ、そうなん・・・? でも、

 顔出すくらいなら・・・。」

 

「それも無理だ。悪いな。」

 

スタスタと歩いて行った。

 

「ああ、だ、ダーリン・・・。」

 

そんな様子を近くで智花は見ていた。

 

「やっぱり、何かあるのかな・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

教室

 

その後のロウはノエル、秋穂、

あやせなどにクリスマスパーティについて声をかけられたが、

それをすべて断っていた。

 

「う~ん・・・・・これ、どうしよう・・・。」

 

智花はラッピングされた箱を

見てつぶやいていた。

 

「お~い、まだだれかいるのか~?」

 

「!? あっ・・・・あなたは。」

 

入ってきたのは義人だった。

 

「確か・・・・。」

 

「み、南智花です!」

 

「ああ、そうだった。悪いな、あまり

 人の名前が覚えられなくて・・・。」

 

「お気になさらないでください!」

 

「こりゃどうも。・・・・・ん?

 その箱は?」

 

机の上の箱を指さす。

 

「あ、これは・・・その・・・。」

 

「・・・! もしかして、ロウに

 クリスマスプレゼントか?」

 

「/////は、はい・・・。」

 

顔を赤くし、下を向く。

 

「くくく・・・・・そうかそうか。あいつもこんなかわいい子に

 好かれるとは・・・変わったもんだなぁ・・・。」

 

「/////い、いえ・・・・。」

 

「しかし、あいつにクリスマスか・・・・。」

 

「? どうかしたんですか?」

 

「ん? ああ・・・・う~ん・・・・。」

 

腕を組み、悩み始める。

 

「う~ん・・・・。」

 

「あ、あの・・・・。」

 

「・・・・よし、話してみるか。」

 

何かを決心する。

 

「ちょっと座っていいか?」

 

「は、はい。どうぞ!」

 

椅子を引く。

 

「・・・んまあ、一つはっきり言わせてもらうが、

 ロウをクリスマスに誘うのはやめた方がいい。」

 

「え・・・ど、どういうことですか!?」

 

「・・・・・クリスマスはな、ロウに

 とっちゃあ、忌まわしい日ってやつだ。」

 

「忌ま・・・わしい・・・・・?」

 

「・・・ああ。」

 

「い、一体、何があったんですか?」

 

智花が義人に迫る。

 

「・・・・・あれは、あいつが5歳の時だ。

 1歳年下の妹と一緒に両親の帰りを待っていたんだ。」

 

「両親・・・?」

 

「ああ、ロウの両親は医者でな。結構裕福だった。

 あいつの両親はロウたちと一緒にクリスマスを過ごすため、

 プレゼントを買って帰り道についていた。だが、

 そこであいつにとって、不幸が起こった。」

 

「不幸・・・・・ !!

 そ、それって、まさか・・・・・。」

 

「・・・・・ロウの両親が乗った車は

 真正面から突っ込んできたトラックに轢かれた。

 そのトラックの運転手は、居眠り運転をしていたんだ。」

 

「そ、そんな・・・・・・・じゃあ、ロウさんの

 ご両親は・・・・・。」

 

「即死したよ。」

 

「・・・・・。」

 

あまりの出来事に絶句する。

 

「・・・・・けど、なんでそこまで

 知ってるんですか?」

 

「俺はその時、交通課の応援に行っててな。

 たまたま担当したんだ。」

 

「そうだったんですか・・・。」

 

「・・・・・それで、どうする?」

 

「え?」

 

「ロウのことだよ。俺ははっきり言って、

 あいつには、そろそろクリスマスを楽しんでほしいって

 思ってんだ。」

 

「及川さん・・・。」

 

「だから、頼む。」

 

義人は深く頭を下げる。

 

「!」

 

「あいつを、パーティに連れ出してやってくれ。」

 

「あ、頭をあげてください!」

 

「本気で言ってるからこうしてんだよ。頼む。」

 

「・・・・・はい。」

 

返事した智花の目には

涙が浮かんでいた。

 

「そうか、それじゃあ、頼んだぜ。」

 

グッと親指を立てる。

 

「はい、お任せください!」

 

「おっと、その前に・・・・・。」

 

義人は出ようとする前に

手帳を取り出す。

 

「? どうしました?」

 

「あいつの親の墓がある場所だよ。

 一応教えとくぞ。」

 

「あ、はい!」

 

住所を言おうとしたため、

デバイスのメモ機能に記録する。

 

「まあ、ここから電車で20分ぐらいのとこだ。

 じゃあ、改めて。ロウのこと、頼む。」

 

そう言って、義人は教室から出た。

 

「・・・・・よし!」

 

そのすぐ後に、智花も

箱を抱え、教室を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

12月25日

 

智花は何度かロウのデバイスに連絡を

入れているのだが、今だに返信がない。

 

「やっぱり・・・もう行ったのかな・・・?」

 

義人から聞いた住所を見る。

 

「・・・・・智花、ファイト!」

 

自分の頬を叩くと

勢いよく駆け出し、外に出た。

 

 

 

 

<智花、移動中>

 

 

 

 

その頃、ロウは・・・。

 

「さて・・・今年も行くか。」

 

すでに駅に着いていた。

 

ロウの恰好は制服ではなく、

黒のスーツとコートに身を包んでいた。

 

『ロウさんもぜひ・・・』

 

『みんなでクリスマスパーティするんよ。

 ダーリンも一緒に・・・』

 

・・・何を思い出してるんだか・・・。

 

自分に対し、クスッと笑う。

 

ロウは歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ・・・はあ・・・!」

 

走ってきた智花は

息を切らしながら、なんとかたどり着いた。

 

「ロウさん・・・!」

 

ロウを探し回る。

 

「はあ・・・・あっ!!」

 

とっさに物陰に隠れる。

墓の前で膝をつくロウを見つけたからだ。

 

「・・・久しぶり。父さん、母さん。」

 

今までに見たことのないような

笑顔を浮かべる。

 

「あいつは、今も見つかってないよ。

 一度もあいつの顔を見せられなくてごめん。」

 

線香に火をつけ、

ゆっくりと、手を合わせ、目を瞑る。

 

「・・・・・。」

 

「ロウさん・・・・。」

 

数分の間、ロウは

目を開けることなく、手を離さなかった。

 

 

 

 

 

 

 

数分後

 

「・・・・・・・。」

 

ゆっくりと目を開け、

手を離す。

 

「さて・・・。」

 

ロウは智花のいる方向を向く。

 

「そこにいるんだろ? 南。」

 

「!?」

 

智花は恐る恐る出てくる。

 

「ど、どうして・・・?」

 

「まあ、半分勘だ。」

 

「そうなんですか・・・。」

 

「ここのことは誰から聞いた。」

 

「え・・・。」

 

ロウが険しい顔になる。

 

「答えろ。誰から聞いた。」

 

「えっと・・・及川、さんから・・・・。」

 

言葉に詰まりながら答える。

 

「はぁ・・・おっさんの奴・・・。」

 

大きくため息をつく。

 

「おや、ロウ君。」

 

寺から1人の住職が出てくる。

 

「! ・・・純雄さん。」

 

(ロウさんが敬語!?)

 

「ふふふ・・・君が誰かを連れてここに

 来る日が来るなんてねぇ。」

 

穏やかな笑みを浮かべる。

 

「いや、違う。これには・・・」

 

「まあ、そう照れずに。せっかくだ。

 あがってもらいなさい。」

 

手招きする。

 

「あ、お、お邪魔します・・・。」

 

恐る恐る寺の中に入る。

 

「・・・・・。」

 

渋々、ロウも中に入った。

 

 

 

 

 

 

「あっと、挨拶が遅れたね。

 私は純雄。よろしくね。」

 

「南智花です。」

 

ぺこりと頭を下げる。

 

「いやぁ、しかしそうか。彼も

 大人になったもんだなぁ・・・。

 もしかして、ロウ君の両親のことは知ってるのかな?」

 

「あ、は、はい・・・。」

 

「そう緊張しないで。座って座って。」

 

座布団を持ってきて

座るように促す。

 

「失礼します。」

 

「ああ、お茶を出さないと・・・。

 ちょっと、待っててください。」

 

お茶の準備をするため、少し離れる。

 

「・・・・・んで? 何しに来たんだ?」

 

疑いの目で智花を見る。

 

「そ、それは・・・。」

 

「まあ、どうせおっさんが『俺にクリスマスを

 楽しんでほしい』みたいなことを言ったんだろ?」

 

「う・・・。」

 

図星だった。

 

「・・・んなことは、俺が一番分かってるよ。」

 

「え?」

 

「いつまでも引きずるなって・・・。だが、

 どうしてもこの時期になると、親の顔が浮かぶ。

 どうやっても、気にしないってことができない。」

 

「ロウさん・・・・・。」

 

「とにかく、今はここからかえ」

 

「だったら今からやってみればいいじゃないか。」

 

純雄がひょいと出てくる。

 

「・・・聞いてたんですか。」

 

「途中からだよ? でも、そろそろ君にも

 純粋にこういうイベントを楽しんでほしいんだよ。」

 

「住職がよく言えたことですね。」

 

「今、大事なのは君自身だよ。住職の立場からしてもね。

 それに、ロウ君。君のご両親だって。心から

 楽しんでほしいと思っていると思うよ?」

 

「・・・・・本当に、そうですかね?」

 

「そ、そうですよ! 私だって・・・そう思います!」

 

「・・・・・・。」

 

「ロウ君?」

 

純雄は目が笑っていない笑顔で

ロウに詰め寄る。

 

「ぐ・・・・・わ、わかった。

 わかりましたよ。」

 

頭をポリポリと掻く。

 

「! ロウさん!」

 

「よく言った! さあ、そうと決まったら

 南ちゃん。いそいで、ロウ君を連れて行ってくれ。

 気が変わらないうちにね。」

 

にこっと笑う。

 

いや、あんたに言わされたんだよ・・・・・。

 

「はい! さあ、ロウさん!

 行きましょう!」

 

ロウの手を引っ張る。

 

「はいはい・・・。」

 

ロウはおとなしく智花に

引っ張られ、外に出た。

 

「・・・ふぅ。」

 

純雄はゆっくりと座る。

 

「・・・ロウ君を頼んだよ。南ちゃん。」

 

 

 

 

<ロウ、智花、移動中>

 

 

 

 

 

風飛市

 

「とうとう着いたか・・・。」

 

「はい!」

 

「やけにテンション高いな。」

 

「え? こういうイベントの時は

 そういうものですよ!」

 

「そういうもんか。」

 

寒いため、手をこする。

 

「さみぃな、ちくしょう・・・。」

 

「あ、じゃ、じゃあ・・・。」

 

智花はロウに手を出す。

 

「///て、手をつなぎませんか?」

 

「手を? ・・・まあ別にいいが。」

 

特に抵抗なく、智花の手を握る。

 

「/////で、では学園に行きましょう!」

 

「ああ。」

 

2人は手をつなぎ、学園に向かった。

 

 

 

<ロウ、智花、移動中>

 

 

 

 

学園

 

2人はたわいもない話をしながら

学園に着いた。

 

「/////つ、着きましたね・・・。」

 

「そうだな・・・てか、終始顔赤いが

 大丈夫か?」

 

「/////え? そ、そうですかね・・・。」

 

手を頬を押さえる。

 

「?」

 

「/////・・・あ、そうです! 実は、

 ロウさんに渡したいものが・・・・。

 ちょっと待っててください!」

 

そう言って、智花は走り出した。

 

「渡すもの?」

 

 

 

 

 

10分後

 

「お待たせしました!」

 

箱を抱え、戻ってくる。

 

「なんだ? その箱。」

 

「こ、これはですね・・・・その、

 ぷ、プレゼントです!」

 

ロウに箱を差し出す。

 

「プレゼント・・・・・。」

 

箱を受け取ったロウは

言葉を反芻する。

 

「はい!」

 

「・・・・そうか・・・・・。」

 

「ろ、ロウさん?」

 

「・・・南。」

 

「は、はい。」

 

「・・・・・ありがとう。」

 

優しく微笑んだ。

 

「/////!!」

 

「クリスマスにプレゼントなんて、

 小さい時だけだったからな。

 ・・・開けてもいいか?」

 

「///////・・・・・。」

 

「南?」

 

「/////ふぇ!? は、はい! どうぞ!」

 

丁寧に包みを開ける。

 

「これは・・・。」

 

入っていたのは

赤い手袋とマフラーだった。

 

「・・・。」

 

マフラーを巻き、手袋をつける。

 

「・・・うん、いいな。」

 

「/////よ、よく似合ってます!」

 

「しかし、参ったな・・・。」

 

「/////え?」

 

「俺はプレゼント用意してないんだよ。」

 

「/////い、いえいえ! 気にしないでください!」

 

「次は必ず用意する。」

 

真剣な顔で言う。

 

「/////・・・・。」

 

「? どうした?」

 

「/////あ、な、なんでもないです!

 た、楽しみにしていますね! それじゃあ、

 そろそろ行きましょう! ロウさん!」

 

「ああ。」

 

2人はゆっくりと歩き始める。

 

「///あ、そうだ! ロウさん!」

 

「ん?」

 

「///言い忘れたことが・・・。」

 

「なんだ?」

 

「///メリークリスマスです!」

 

「・・・・・ああ、メリークリスマス。」

 

その時、静かに雪が降り始めた。

 

「雪か・・・・・。」

 

「ロウさん! ホワイトクリスマスですよ、

 ホワイトクリスマス!」

 

「2回も言うなよ・・・。」

 

「さぁ、パーティに行きましょう!」

 

「ああ。」

 

そう言ったロウの顔は

どこか嬉しそうだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。