グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
遅くなりました。
新年最初の投稿です。
1月某日
JGJグランドホテル
この日、JGJによって
大規模な新年会が開かれていた。
「おっと、失礼。」
そんな中、白いスーツの男神宮寺樹と
赤い振袖の女性が軽くぶつかった。
「おや・・・君はグリモアの生徒かい?」
「え、ええ・・・あ、あの・・・・
それが・・・。」
「いや失礼。何度かグリモアには行ったんだが・・・
どうやら、運が悪かったみたいだ。」
「へ?」
樹は手を握る。
「早く君に会えなかったのが残念だよ。だけどここで出会ったのは
幸運でもある。」
「そ、そんな・・・・。」
頬を押さえて照れる。
「さあ、警備に取り掛かる前に僕が
会場を案内しよう。こちらへどうぞ。」
「・・・・・・くく。」
「ん?」
近くで笑いを押さえた声が聞こえ、
きょろきょろと声の主を探す。
「あははははは! なーにあれ!
ホントに言い寄ってるし!」
「『どうやら、運が悪かったみたいだ』じゃねーよ!
腹いてー!!」
樹の兄妹である茉理、初音が
大声で笑う。
「? なんなんだあの2人?」
「ふふ・・・ここまで気づかないんだから・・・
燃えるわね!」
「こりゃ大丈夫だな! ヒヒヒ。」
「何を言ってるんだ2人とも。」
樹には2人が笑う理由がわからない。
「実はな・・・こいつ、ロウなんだよ! ロウ!」
「・・・・。」
女性が下を向く。
「やーだ、もー可愛く仕上がっちゃったわねぇ。
さすが魔法はちがうわぁ。」
「・・・・・・・・・・・・・ろ、ロウ君・・・?」
「はい。」
「・・・・えええええええ!!!?」
驚きのあまり、腰を抜かす。
「お、俺としたことが、魔法とはいえ完全に
だまされるなんて・・・・。」
「しかし、まっさかここまでわかんねえとはな・・・。」
先ほどの女性らしい声が一気に
男の声に変わる。
「だまされなかったら失敗だすけ。
喜ぶとこだべ。」
花梨と風子が合流する。
「・・・そもそも一部生徒しか知らないはずですが・・・
里中、アンタさんどうしてこの女子がロウさんだと
知ってるんですか?」
「いやー、どうしてって言われてもよ、わかるっきゃ?
身内だすけ。」
「・・・ちゃんと魔法かかってますよね?
神宮寺さんは騙されてるし・・・。」
「もはや超能力だな。」
「ていうか、ロウさん。よくそこまで
女性に近づけられましたね。」
「その辺はぬかってない。我妻と冷泉を
参考にしたからな。」
「しかし君ら、ロウと呼んでたらダメだろう。
呼び名はないのか、呼び名は。」
「呼び名・・・そういや考えてなかったな。」
すっかり忘れてた・・・。
「なんでもいいすけ決めるべ。
花子でいいっきゃ?」
「それ学園で飼ってるウサギじゃねーか。」
「それにうっかり変な名前だとリスクがありますからね。」
3人はしばらく黙り込んで考える。
「・・・・・・・神宮寺さん、考えてもらっていーですか。」
「え? お、俺? 君、今めんどくさく
ならなかったか?」
「この顔に似合う、とってもかわいい名前を
おねげーします。」
「あ、ん~・・・・・ごほん、よし
マキで行こうか。」
「・・・・・・・。」
「・・・・伊達巻き見ただろ。」
「ぎくぅ。」
「まあ、悪くないでしょ。では、しばらく
おねげーしますよ。」
まじか・・・・。
「しっかし、朱鷺坂チトセはベテランなだけありますね。
まさか身長まで低く見せてしまうとは・・・。」
「朱鷺坂本人はどこ行ったんだよ。」
「えーまー調べることがあるみてーですよ。
熱心ですねぇ。まあ、彼女の正体もわかってるんで
最小限に警戒で構わないと判断しましたし。」
「最小限・・・かぁ・・・警戒自体は
してるんだべか。」
「さーて、それじゃあ、適当に歩きますか。
あっ、声と口調、変えてくだせー。マキさん。」
「・・・はーい。」
低い声が高い声になった。
「ああ・・・秋穂・・・秋穂可愛いよ・・・
お人形さんみたい・・・。」
こいつも相変わらずだな・・・。
警備中のロウ、もといマキは
春乃の姿を見つけていた。
「部屋に飾っておきたいわ・・・。
・・・・・!」
何かに気づいた春乃は
ロウの方向を見ようとした。
「! まずい!」
ほぼ同時に後ろを向く。
「・・・・・ロウの気配がしたけど・・・
いないな。もしかして離れて秋穂に・・・?」
「危ない危ない・・・・てか、バレてないのか・・・?
・・・・・・よし。」
見えないようにニヤリと笑う。
笑うとロウは少しずつ春乃に近づく。
「あの・・・。」
女性の声になり、話しかける。
「ん? あんた、誰?」
「あ、私、少し前に来た、マキっていいます・・・。」
「ふぅん・・・で、何か用?」
「用というか・・・。」
「・・・・・ねえ、アンタ、マキだっけ?」
「は、はい。」
「・・・・うーん・・・・。」
腕を組んでうなり始める。
まさか、バレたか・・・?
「アンタ、どこかであたしと会ったことない?」
「いえ、そんなことは・・・。」
「なんだか初めて会った気がしないのよ。」
どんな勘してやがる・・・・。
「っていうかアンタと似たヤツを知って・・・・・・
・・・・・・・。」
何かに気づき、春乃は黙る。
「・・・・そうか、なるほど。はは・・・・
よく見ると不自然だわ。立ち振る舞いはそれっぽいけど
付け焼刃丸出し。」
マジでバレてんのか・・・。
「あたしの目はごまかせねーぞ。
テメー、ロウだろ。」
「・・・・・・・・。」
目を瞑って黙る。
「・・・・・よく・・・わかったな。」
ロウの声で言葉を絞り出す。
「わざわざマキなんて名乗って
どういうつもりだ。説明しろ。」
胸ぐらをつかむ。
「まあ、落ち着け。いろいろ事情があってな。」
「イタズラ程度の理由だったらただじゃ
おかないからな。」
<ロウ、春乃に説明中>
「カモフラージュ・・・ねえ。要するに
顔がばれたら困るってことでしょ。」
「ああ。これに関しては俺も不本意だ。」
「ならいいわ。『マキちゃん』で通してあげる。」
「・・・・・。」
驚いた顔で春乃の顔を見る。
「・・・なによ、不満なわけ?」
「いや、やけにあっさり聞き入れたなってな。」
「言っとくけど、その格好だからって許されると
思うなよ。」
「ん?」
「秋穂に近づくなら堂々と、いつもの
姿で近づけ。いいな。」
「はいはい。了解しました~。」
軽く返事をする。
「・・・・・あのさ。」
「なんだ?」
「アンタさ、秋穂の体のことを知っても・・・
あの子との距離、変えないでいたでしょう。」
「あの事か。」
「もしその事実を知ったとき、あの子から
逃げ出していたら・・・アンタを立ち上がれないように
してやろうって。」
・・・聞かねえほうがよかったな。
「そして、二度と秋穂に会わせないようにしようって・・・
思ってた。でも、アンタは・・・見事にあたしの
予想を裏切った。」
「・・・瑠璃川?」
「つまり、アンタのことを少しは信用してるし
協力してやるって言ってんの。」
「・・・・。」
随分変わったもんだ・・・。
「ろ・・・マキ! 料理持ってきたすけ。」
「おっと・・・。ありがとうございます。」
再び女性の声に変える。
「あ、では、失礼します。」
春乃にぺこりとお辞儀をする。
「・・・ふん。」
ロウと花梨は春乃の近くから離れる。
「大丈夫か? ばれなかったべか?」
「いや、あっさりばれた。」
「えぇ?」
「だが・・・。」
「どーも、二人とも。」
風子が近づく。
「いやー、しかし変わりましたねぇ。」
「春乃がか?」
「前だったらもっとしつこく確認
してきたものですが。」
「確かにな。」
「いったい誰の影響なんでしょーね。」
風子は横目でロウを見た。
しばらく時間が過ぎ・・・
「ぎくっ。」
樹がロウを見て、少し
体が飛び上がる。
「い、いやーははは、楽しんでるかい。」
「別に口説いたっていーんですよ。ほら、
とってもかわいーでしょ。」
「イジんじゃねぇよ。」
「か、勘弁してくれ・・・。」
「くそ・・・俺は少し休む。
水無月、里中。好きにしてていいぞ。」
「そうですか、では。」
風子と花梨は再び会場に入る。
「・・・ふぅ、そ、そういえば君の話は
よく聞いているが・・・。」
「?」
「初音と沙那ちゃんがいろいろと世話になっている
ようだな。礼を言うよ。」
「別に大したことは・・・。」
「いやいや、初音は兄妹の中じゃあ一番の
悪ガキだし」
「確かにな。」
はっきりと言う。
「うぐ・・・それに沙那ちゃんは沙那ちゃんで
初音の世話をするほかになにも俺たちに望まない。
・・・神宮寺で魔法使いになるってのがそこまでの
こととは思わなかったよ。まぁあいつら本来の性格も
あるかもしれないけどな。」
にやりと笑う。
「そこは否定できないな。」
くくく・・・と笑う。
「ふむ・・・。どうだ、ろ・・・マキちゃん。
ちょっとそっちで話さないか。」
「・・・大した話はできませんけど。」
女性の声になる。
そろそろごまかしとかないとな・・・。
「あっ! いけませんよ、神宮寺さん!」
「ん?」
あれは・・・。
「ん? ああ、智花ちゃんか。」
「学園生をナンパしないように注意してって
言われてるんですから!」
「え・・・? だ、誰に?」
若干、汗が流れる。
「月宮さんです。月宮さん、初音ちゃんのそばに
いなきゃいけないからって。」
「沙那ちゃんも心配性だなぁ。もしかして俺が
女の子と仲良くしてるのに嫉妬?」
「・・・・・。」
智花は少し引く。
「・・・悪い冗談だった、許してくれ。」
「い、いえ・・・。と、とにかく、女の子を
誘っちゃだめなんですよ?」
・・・てか、さっきからずっと見てたが
気づいてねえな?
「うーむ。じゃあ俺の誤解を解くために一つ教えてあげよう。
誰にも言っちゃいけないぞ。実は彼女・・・」
「あ! 今度は肩に手を回して・・・!」
「いや、彼は相田ロウ君なんだ。」
どや顔する。
「そんなことあるわけないじゃないですか、ねえ?」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・そういうことだ。」
ロウは元の声で話す。
「・・・ひょえええええ!?」
とてつもない驚きの声が
会場で響いた。
その後、新年会は盛り上がり
その幕を閉じた。
「・・・・・。」
「あ、あの、ロウさん?」
「南・・・。」
「な、なんですか?」
「・・・せめておまえはすぐにわかると
微塵でも信じてたんだよ・・・。」
「え、///そ、それって・・・・。」
「それなのにそれはねえだろ・・・・。」
「///う・・・す、すみません・・・。」
「ちくしょう・・・・・・。」
ロウの落ち込みは5日ほど続いた。