グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
裏世界
ロウたちは鳴子の協力者に会うため、
再び裏世界を訪れていた。
「・・・・出ないな。」
鳴子はデバイスの通話を切る。
「だ、大丈夫なんですか?」
夏海が心配する。
「大丈夫だよ。場所と時間は
あらかじめ共有しているから。僕たちが
そこに行けば、絶対に会える。」
自信満々に言う。
「・・・準備はいいかしら。」
「はい、ドクター。魔力は100%の
状態です。」
結希が卯衣に問いかける。
「今回はロウくんが同行するから
こまめに補給を受けてちょうだい。」
「了解しました。・・・ロウ君、お願いね。」
「はいわかった。」
ロウは頷いた。
<ロウたち、移動中>
風飛 廃ビル
「・・・要するに、裏世界って
なんなのだ? 説明がよくわからないアル。」
中国からの留学生、
雀明鈴は裏世界について説明されたが
いまいち理解できなかったようだ。
「そりゃあれだよ、あれ、もう一つの
風飛市だよ。」
ざっくりと初音が説明する。
「風飛市? 街はこんなに壊れてないアルよ。」
「はあ・・・大ざっぱに言えば
街が壊れてるのが裏、壊れてないのが表だ。」
「本当に大ざっぱですね・・・。」
隣にいたゆえ子が呆れる。
「? じゃあ表に帰れば中華丼
食えるアルか?」
「ああ、たらふく食える。」
「てか、なんでそれがわからなくて
ここにいるんだよ!」
初音は明鈴を指さしながら
鳴子に聞く。
「僕がお願いしてきてもらったんだよ。
今にも崩壊しそうなビルの近くでドカドカ
魔法を使うのもなんだからね。」
「たしかに。生天目とかじゃあ、すぐに
ぶっ壊れそうだ。」
ぼろぼろの壁や床を見る。
「・・・よし、そろそろ進もう。すでに
原種が何体か確認できているから、気を
抜かないでくれよ。」
「出発前にお腹いっぱい食べたから、1時間は
持つのだ。任せて!」
「ランデブーは明日の午後5時。早すぎても
遅すぎても失敗だ。」
「? どういうことだ?」
「いろいろ事情があってね。それに
何が潜んでいるかわからないしね。」
<ロウたち、移動中>
「・・・そろそろこのオフィス街を
抜けるここを抜ければ風飛駅だ。
そしてその駅前には」
「JGJのグランドホテルか。」
「そう。そこまで行ったらいったん休憩しよう。
頼んだよ。」
「ふぅ・・・・ふぅ・・・・。」
ゆえ子の足取りが重くなっている。
「・・・大丈夫ですか?」
沙那が声をかける。
「ええ、大丈夫です。散歩部に
仮入部してますから。戦闘に参加しない分、
予知の魔法でお役に立たなければ・・・・。」
額の汗を拭う。
「ロウさんに魔力をいただいているので、
あとは気持ちの問題です。」
「ならいいが、無理そうなら言えよ。」
「ありがとうございます・・・・おや。」
目を閉じる。
「むにゃむにゃ・・・いけませんね。」
「?」
「なにか?」
「いえ、これは間に合いません。・・・
月宮さん。」
「なんでしょうか?」
「しばらく離れてしまいますが、
お気になさらず、と遊佐さんにお伝えください。」
「? 何言ってる。」
「ロウさん、霧に覆われても
慌てずに。ご一緒しますから。」
「だから何を・・・・・ !?」
その瞬間、ロウとゆえ子は
霧に飲み込まれる。
「!? 西原さん、ロウさん!!」
地下
「うう・・・・ !
どこだここ?」
デバイスで確認しようとすると
着信が入る。
『おい! 2人とも無事か?
デバイスつながるな!?』
「楯野か。ああ、つながってる。」
『いや、ヤバ、どんどん感度が
悪くなってる。手短に伝えるぞ!そこは
地下だ!』
「見ればわかる。」
『うるさいぞ、本隊とは離れたけどそんなに
深くない! 東に行け! ちくしょう、
洞窟のマップなんて想定してな』
通話はそこで途切れた。
「ちっ、切れたか。」
「そのようですね。」
「くそ、どうなってやがる・・・・。」
「魔物の攻撃ですよ。攻撃・・・
というより、分断ですね。」
「・・・分断にしろなんにしろ、
とりあえずここか出ねえとな・・・。」
「入口まではかなり遠いようですが
ゆえの魔法で探しましょう。」
ゆっくりと目を閉じる。
「あてになんのか?」
「大丈夫。細かいところはともかく、みなさんと
再会できるところまで見えたのです。」
「んじゃあ、任せるとするか。」
とっとと出ないとな・・・・・。
<ロウ、ゆえ子、移動中>
「・・・ずいぶん深いな。出口
あるんだろうな・・・・。」
「予知ははっきりしてます。ですが・・・
もしかしたら魔法で穴をあけるのかもしれません。」
「それに関しちゃ向こう次第ってわけか。」
ロウはそう言いながら右へ
進もうとする。
「あっ、次は左です。」
「早く言えよ。」
ロウは早足で
左に進む。
「・・・西原。」
「はい?」
「さっきお前はこれを分断って言ったな?
どういうことだ?」
「私もロウさんもろくに魔法を使うことは
できません。つまり、戦力の低い2人、
ということになります。」
「・・・・なるほど。随分と
見くびられたもんだ。」
「そう・・・ですか・・・・。ふぅ・・・。」
ゆえ子がフラフラし始める。
「! 大丈夫か?」
「・・・すみません、どうやらここまでの
ようです。ここからは、おぶって
もらえませんか。」
「ああ、わかった。」
ロウはすぐにゆえ子を背負う。
「ゆえの魔法はロウさんよりは
威力があります。なにかあったら・・・・
ゆえをおとりにして・・・・。」
その時、巨大な音が鳴る。
「ふぇ!?」
「あっ! おい沙那! いたぞ!
なんか2人いた!」
「神宮寺の声・・・・助かったな。」
「ええ・・・・あとは・・・・
よろしく・・・・。」
「な、おい! 西原!」
ロウの背中でゆえ子は
眠りについた。
<ロウ、ゆえ子、洞窟より脱出>
脱出したロウたちは
鳴子たちとなんとか合流を果たし、
目的地に順調に向かっていた。
「・・・今日はもうすぐ日が暮れる。
ここで夜を明かした方がいいな。
ロウ君も西原君も霧の濃い中を歩き通し
だったんだ。」
「・・・ああ、そうだな。」
ロウは少し横になる。
「彼女の予知、だんだんと精度が
増してるわね。」
「ん、宍戸か。」
「お疲れさま。、ロウ君。」
「大分お疲れだ。・・・・・そうだ、
宍戸1つ言っておきたいことがある。」
「なに?」
ロウは洞窟で起きたことを話した。
「・・・魔物があなたと西原さんを
狙って?」
「ああ、可能性の話だがな。」
「戦力が低いとしてあなたたち2人を
分断したのだとしたら・・・・・・・
あなたたちだから合流できたのも確かなはずよ。」
「・・・・確かにな。」
にやりと笑う。
「あまり気にしないように・・・・
さ、卯衣。雀さんと警戒にあたってちょうだい。」
「わかりました。」
翌日
「なあ、遊佐。」
「ん? 神宮寺君、何か質問かな?」
「出発前の話じゃ、まだ霧の護り手や
テロリストがいるんだろ?」
「霧の護り手・・・そうだね、
いるよ、今も。」
含みのある言い方をする。
「そうなったら、お前の言う協力者の
顔や特徴を教えろ。でなきゃ来る奴全員を
疑わなきゃならねえ。」
ロウも鳴子に尋ねる。
「私も賛成です。」
「ふふふ・・・いいよ、教えよう。
みんなも集まってくれ。」
鳴子の周りに集まる。
「特徴だが・・・・君たちは
見ればわかる。僕の連絡を取っている相手
それは・・・『僕』だよ。この時代・・・
12年後のね。」
「!?」
「しかし、まさかお前の協力者が
未来のお前とはな。」
「驚いたかい?」
「驚きはしたがな。だが、ここが
未来の風飛と考えれば、不思議じゃないしな。」
「・・・1つ心配事があるんだ。」
鳴子は険しい顔になる。
「なんだ?」
「ゲートはここだけじゃない。ゲートごとに
それぞれの時代がある。僕はそれを使って
5人の僕と連絡を取っていた。」
「5人・・・・。それがどうかしたのか?」
「その中には30以上の『僕』はいなくてね。」
「・・・たしか、ここの遊佐も・・・・。」
「そう、30だ。」
「・・・・。」
何があったんだ・・・・・?
「それで、連絡はとれたのか?」
「・・・・・連絡は途絶えたままだ。
余計なことに巻き込まれてなけりゃいいけど。」
「急ぐか?」
「いや、このままでいい。向こうが指定した
時間に着けば問題ない。」
目的地周辺にたどり着くと
大量の何かを着た人が現れる。
「・・・敵か? なんだ、あれ
霧の魔物、じゃないな。」
初音は目を細める。
「・・・! いけません、初音様!
私の後ろに!」
「彼らは人間、そして『僕』を狙っていた
連中だ。盗聴で情報受け渡しを知り、接触しようと
した間抜けな僕らを一網打尽にしようとしている。」
「どど、どうなってんだよ! 沙那!
あれ、ウチの社員じゃねーか!」
「JGJだと・・・・?
くそ、面倒なことになってきやがったな。」
鞘から刀を抜く。
向こうは攻撃を仕掛けてくる。
「みんな焦るな!」
攻撃から逃れるため、
物陰に身を隠す。
「時間までに5分ある! 僕たちは
『1秒たりとも』ずらしてはならない!!」
「な、なんでそんなに融通が利かない
アルかー!」
「『僕』が指定した時間だからだ!
この世界で頼れるのはルールだけだ!」
「なるほど、要するに時間ぴったりに来た奴に
情報を渡すってことだろ?『ROOM』!」
青いドームを出現させる。
「こっちが信じられないなら、ルールを守る奴を
信用するしかない。違う時間に入ろうものなら
情報は手に入らない。そうだな、遊佐!」
「ああ!」
「で、でもあの校舎、今にも壊れそうだぞ!」
「まったくうざったい奴らだ。僕と僕の感動の
再開を邪魔する無粋な連中め。ロウ君。」
「なんだ!」
周りの岩を浮かべ、迎撃する。
「魔力を貸してくれ。生徒会長のまねごとをしよう。」
「会長の・・・・ !
ホワイトプラズマか!」
「まあ、あれのようにとはいかないけどね。」
そう言って構える。
「魔力を流し込め! あたり一帯に雷を
落としてやる!」
「ああ、わかった!」
ロウは目をつぶり、
鳴子に魔力を受け渡す。
すると、ロウたちの周りに
大量の雷が落ちた。
「はあ・・・・はあ・・・・
! しまった、時計が壊れた。
立華君、余裕はあるね?」
「残り12秒。支障ありません。」
「もうあんまりいないのだ。僕たちが
相手するアル。」
「・・・ああ、任せた。・・・入ろう。」
「だな。」
ロウはドアを蹴破った。
パァン!
その瞬間、銃声が響いた。