グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
学園
校門前
「・・・ふぅ、魔物に襲われるかも
しれねーってのに・・・。」
「何ボヤいてんだ? フクロウ。」
「いや、兎ノ助だよ! てか、いつまで
やんだよこのパターン!」
「お前が死ぬまで・・・・な。」
にやりと笑う。
「ちくしょう・・・・・。」
「で、何の話なんだ?」
「ああ、実は」
「あー、クソ、クソ!」
2人が話しているところに
龍季がやってくる。
「むっ、おい、龍季。」
「なんだよ。」
「前から言おうと思っていたが
女の子がクソとか言っちゃダメだぞ。」
「保護者か。」
「進路指導官だ! ・・・あ、そうだ。
聞いたぞ。クエストに出る許可が出た
みたいじゃねーか。」
肩をポンポンとたたく。
「知らねーよ。んなこと・・・・
全然うまくいかねーしよ。」
「ま、何事もうまくいか」
ピピピ! ピピピ!
「ん、俺のデバイスだ。
・・・ああ、会長か?」
「? 虎千代?」
「で、どうした? ・・・・・
・・・・なに?」
「兎ノ助さん! ここでしたか!」
校舎から沙紀が走ってくる。
すでに戦闘服になっていた。
「沙紀!? もしかして、まさか・・・・!」
「はい・・・。それで、急いで
ほかの人を・・・・。」
沙紀はロウと龍季を見る。
「お二人とも、一緒に汐浜まで
来ていただけませんか?」
「・・・何の話だ? 全然、
わかんねーぞ。」
「汐浜ファンタジーランドが
襲われてるんだよ。会長から
連絡を受けた。」
「シャルロットたちが対応に当たってるが
規模が大きくて足りねーんだ!」
「・・・いいのかよ。ちょっと前まで
クエストを制限させられてた生徒だぞ?」
「今、そうでないならなにも
問題はありません! よろしくお願いします!
ファンタジーランドを救いましょう!」
「・・・・・ちっ、わぁったよ。」
渋々了承する。
「よし・・・じゃあ、行くか。」
<ロウ、龍季、沙紀、移動中>
汐浜ファンタジーランド
「・・・な、なんという・・・・
あんなに賑やかだったのに・・・・・。」
アトラクションなどが
魔物の攻撃によってボロボロと
なっていた。
「なあ、氷川。」
「はい。」
「俺は今月末にここが襲われるって
確かに生徒会に報告したはずだ。なんで
こんなことになってる。」
「・・・詳しくは、聞いてませんが
どうも、確証がなかったからでしょうね。」
「ああ? こいつが嘘つきだってことか?」
「そうではなく、こちらと裏世界では
歴史が異なるから、ということでした。」
申し訳なさそうに、目を伏せる。
「裏世界の出来事がこちらで起きるとも
限らない。もし、魔物が現れなかった場合、
クエストを発令するのは無駄遣い・・・・
という判断です。」
「まったく・・・・それで結果
見事に襲われた・・・。無駄遣いだの
言ってる場合じゃねえだろ。」
「悩ましい事ですね。ですが・・・・・
ここに来たら、することは1つです。
みなさんを、助けましょう!」
「・・・そうだな。それに、向こうも
待ちかねてるみたいだしな。」
ロウが指さした方向には
帽子をかぶった兎がうろうろしていた。
「なんだあれ・・・。」
「あれはたしか・・・ファンタジーランドの
キャラクターのはず・・・・・。」
「普通に着ぐるみ・・・・ってわけでもねえな。
すでに人は避難を開始してるはずだしな。」
鞘から刀を抜く。
さぁて・・・・。
「『ROOM』! 『
着ぐるみの体を突きで
穴をあける。
「おらぁ!!」
龍季、沙紀も魔法で迎撃する。
「くそ、着ぐるみに寄生かよ・・・
ふざけたヤツらだな、おい。」
「発見が早かったため、魔物強さ自体は
そうでもありません。そのため、着ぐるみに
逃げ込んで成長の時間を稼いでいるのでしょう。」
「まあ、だからって手加減する気も
ねえけどな。弁償とかもないんだろ?」
「ええ、それは問題ありません。」
少し笑う。
「ま、いいだろ。俺が魔法使うときは
離れてろよ。」
「・・・何急にかっこつけてんだ?」
「そうゆう意味じゃねえよ! まだ制御が
できてねーんだ! どこに雷が飛ぶか
わかんねーしな!」
「ええ、そのようにあなたのことは聞きました。
ですが」
「ん?」
「あなたは街でケンカを繰り返しているはず。
制御できないのにどうしていたんですか?」
「・・・んなことどーでもいいだろうが
今はよ。」
てか、急にどうした?
ぷいっとそっぽを向く。
「魔法使いたるもの、みなの規範にならねば
なりません。この戦いを通して成長されることを
期待してますよ。」
「・・・ちっ、めんどくせえな・・・。
魔物をやっちまえばいいだろ。」
「いけません! 私たちが何のために
魔物を倒すのか、よく確認」
「!! 下がってろ!!」
龍季は沙紀を突き飛ばす。
沙紀の背後から魔物が
近づいていた。
「きゃ!」
「また出やがったか・・・ぶっ飛ばしてやる!」
巨大な雷で
魔物を消し飛ばす。
「あ、ありがとうございます・・・。
! 朝比奈さん! 頬にケガが!」
龍季の頬から少し
血が流れていた。
「こんなのツバつけときゃ治る。」
「い、いけません! 傷が残っては・・・。」
「んなヒマはねーよ・・・くそ。
まだ全然だめだ・・・。」
そう言って、龍季は移動する。
「あ、ろ、ロウさん! 朝比奈さんに
魔力をお願いします! 魔力が充実していれば
傷の治りも早いですから・・・。」
「ああ、わかった。」
「しかし・・・・・何がまだ
なのでしょうか・・・?」
「お前の戦闘服の袖見て見ろ。」
「・・・! これは・・・。」
沙紀の戦闘服の袖が
少し焦げていた。
「指向性の制御ができていない・・・
それが『まだ』ということなのでしょうか・・・。」
「そういうことだろうな。てか、
早く追いかけた方がいいんじゃないか?」
「え、ええ・・・! 1人では
危険です!」
<ロウ、龍季、沙紀、移動中>
「『ラジオナイフ』!!」
着ぐるみをバラバラに
切り刻む。
「ふぅ・・・朝比奈さん。だんだん
制御できてきているのではないですか?」
「・・・・・おだててもなんも出ねーぞ。」
「そ、そういうことは好きではありません!
あいた・・・。」
指を押さえる。
「おい、その指どうした。」
「な、なんでもありません! 魔物の攻撃で
少しけがをしただけです。」
「今回の魔物でやけどはしないぞ。」
2人の後ろからロウは話しかける。
「ろ、ロウさん!」
「俺の電気がてめーに飛んでるじゃねーか・・・
くそ!」
「まあ、実際俺も少し当たってるけどな。」
地面を蹴る龍季にロウが
追い打ちをかける。
「ちっ・・・!」
「か、隠したことは謝ります。ですが、
最初に比べれば魔法が飛んでくる頻度が
減っています。ここに来た時と比べても
驚くほど制御できているんです!」
「・・・・・。」
「ですから、自分を卑下しないでください。」
「・・・別に気を使ってもらうような人間
じゃねーよ、俺は。」
「確かにな。」
うんうんと頷く。
「ロウさん! あなたはなぜ余計なことを・・・!」
「褒めるだけで急成長するんだったら
楽なことはないだろ。」
「で、ですが・・・。」
「それにあいつなら、これぐらい言っとけば
いいんだよ。」
ふぅっとため息をつく。
「てめえ・・・。」
「ああ、聞こえてたか。」
「・・・もう行くぞ! とっとと
終わらせてやる!!」
「お、お待ちなさい! あなたがいまだに
自分を卑下しているのが問題なのは
変わりません!もっと自信を持ってください!」
「ふん、勝手に言ってろ・・・。」
「まだ話は終わって・・・ !?」
魔物の気配に気づく。
「なんだ・・・1匹、2匹・・・7匹!?」
「くそ、囲まれたか・・・!」
「すみません・・・頭に血が上った
ばかりに・・・。」
「いや、ちょうどいい。ちまちました
戦い方でイラついてたところだ。全開で
雷を落としてやる。」
手にバチバチと雷を走らせる。
「い、いけません! あなた1人では・・・・
ひっ!?」
沙紀のもとに着ぐるみが
1体近づく。
「きゃあ!?」
着ぐるみは沙紀を肩に担ぐ。
「な、なんだてめえ!」
「ん・・・・? いや、待て。
朝比奈。」
着ぐるみの頭をロウは
恐る恐る触る。
「これ・・・魔物じゃねーぞ。」
「はぁ?」
「・・・たまにはストレスを発散しておけ。」
「!? てめえ、まさか・・・。」
ロウにはこの声に聞き覚えがあった。
「ロウ、あんたには障壁をかけておく。
あいつに魔力を渡してやれ。」
ロウの体に触れ、障壁を張る。
「氷川はあんたの魔法が届かないところに
避難させる。好きに暴れろ。」
「い、妹のところにいなくていいのかよ。」
「あんたが心配することじゃない。すぐに戻る。」
「お前・・・・。」
「だが勘違いするな。制御できないままなら
仲月さらが妹のそばにいるときは絶対に
近寄らせないからな。」
怒気のこもった声になる。
「・・・わざわざ着ぐるみまで着やがって。
顔見せるのが恥ずかしいのかよ。」
「あいつなりの激励だろう。
だいぶねじ曲がってはいるが・・・。」
「・・・・行くぞ、ロウ!」
「ああ!」
目を閉じ、龍季に魔力を渡す。
「くらい・・・やがれ!!」
巨大な青色の雷が
魔物を飲み込む。
「ふぅ・・・・ !」
魔物は霧散したものの
すぐに新しい魔物が現れる。
「ゴキブリ・・・みてえに湧きやがって・・・。」
「こうなりゃ、まとめてぶっ飛ばしてやる!
ロウ、魔力よこして離れとけ!」
「どうするんだ?」
「俺が魔法で1つ信用してるのが
雷の威力だ。危険すぎるほどにな。
いいか、離れろよ!」
「ああ、わかった! 一応、
念のため・・・『ROOM』!」
青いサークルを張り、
数メートルほど下がる。
「いくぜ・・・・蒸発しちまえ!!」
雷を放とうとしたその時だった。
「い、いや! 離して! やめて!」
魔物の1匹が黄色い髪の
少女を盾にした。
「!! なに!?」
「!? しまっ・・・と、止まら・・・
ねえ・・!!」
「くそ、『シャンブル・・・・」
龍季から雷が放たれた。
あたり一帯に巨大な音が響いた。
「う・・うぇ・・・。ま、魔力が
空になっちまった・・・気持わりい・・・。」
「おい、朝比奈! それより、さっきの子は
どうした!?」
「! やべえ・・・どこだ!?」
周りを見渡す。
「・・・! いたぞ!」
「くそ・・・くそ・・・・止まらなかったんだ!」
地面を殴る。
「う、うう・・・・・。」
「! おい、生きてるぞ!」
「!? なに!?」
「だ、大丈夫ですか!?」
2人の近くに沙紀と着ぐるみが近寄る。
「・・・あたしが障壁を張ったから、
どっちにしろ死ななかった。」
「そ、そうか・・・・そうだよな・・・。」
「だけど、当たってない。障壁に一切損傷がない。
範囲を制御できてた証拠だ。」
「てことは、朝比奈が?」
「奇蹟みたいなものよ。」
「・・・その通りだ。もう1回やれって言われても
できねえよ・・・・。死んでないなら、それでいい。」
か細い声でつぶやいた。
その後、魔物の数を着々と
減らしていき、クエスト完了となった。
「よし、これで終わりだな。
朝比奈、しょぼくれてないで戻るぞ。」
「しょぼくれてねえ!!」
「あ、うぇいとみにっつ!」
帰ろうとした龍季をソフィアが止める。
「さっきの子からめっせーじがあります!」
「はあ? メッセージ?」
「えー・・・さんきゅー! です!」
「ようは、『ありがとうございました』・・・だろ?」
「・・・・・・ふん、なにも出ねえよ。」
そう言った龍季は少し笑っていた。