グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
ロウたちはこの日、
職業体験施設、ふうびきっずに
警備のクエストに来ていた。
「これ、ミナ! 先に行くでない!
迷子になるぞ! ・・・しかし、
思った以上に子供がたくさんおるのぅ・・・。」
恋は思わず、ため息を吐く。
「本当に天使のような子たちばかり
ですね。なんてかわいらしいのでしょう。」
「天使・・・・。」
やだぁあああ! あれやりだぃぃいい!!
つぎ、しょーぼーしさんやるー!
づがれだぁぁぁだっこしてぇだっこー!!!
「・・・・ほんとに天使か?
ディオール。」
「天使ですわ。」
「・・・・・。」
「? 氷川?」
呆気にとられてんな・・・。
「・・・はっ!? す、すみません!」
咳払いする。
「今回のクエストはふうびきっずの
警備です。迷子等のトラブルが多発するため
クエストが発令されました。」
「と、いうのは建前だろ?」
「遊佐・・・。建前ってどういうことだ?」
「第8次侵攻が近いかもしれないのは
知ってるだろ?」
「ああ。」
「もし来たとしたら、このふうびきっずは
位置的に最も被害が少ない。つまり、
避難所になるわけだ。」
「私たちは避難してきた方を守らなければ
なりません。ですから」
「スムーズに対処するために構造を
理解する必要がある・・・ってとこか?」
鳴子が指をパチンと鳴らす。
「さすがロウ君。察しがいいね。
しかし、これで問題なのが僕ら学園生が
怖い顔で警備するわけにはいかないしね。
だから今日は優しいお姉さんお兄さんとして頑張ろうか。」
「ぎゃあ! な、なんじゃお主ら!
ええい、引っ張るな! 縮むであろう!」
恋が子供たちに服を引っ張られていた。
「あらあら、もう仲良しさんなのですね。
うらやましいですわ。」
「仲良いのか? あれ・・・。」
「あのやんちゃぶりを見ていると昔の
自分を思い出すね。」
「・・・・・・はっ! そ、それでは
早速警備に移りましょう!」
またもやあっけにとられていた紗妃だったが
何とか戻る。
「まずは、子供たちに集中したほうが
よさそうだ。ここまで大勢を相手にすることは
あまり慣れていないだろう?」
「確かにそうだな。」
「・・・皆さん、お話し中申し訳ありませんが
このくじを引いてください。」
くじを取り出す。
「くじ?」
「どういうことだ?」
「アトラクションの担当を決めます。
希望制ですと一部に人気が偏ってしまいそう
ですので・・・。」
「では、僕から引かせてもらおうか。」
<ロウたち、くじ引き中>
「・・・警官?」
「看護師・・・。」
「ほ、保育士・・・まさか私が引くなんて・・・。」
「僕は医者だ。」
恋、シャルロット、紗妃は
驚きを隠せない。
「け、警官とは何をすればいいんじゃ・・・?」
「・・・補導? 子供たちを・・・?」
「いや、補導してどうすんだよ。」
「事前に係員がちゃんと説明してくれるさ。
心配することはないよ。」
「・・・そういえば、ロウ。お主は
どこの担当になったのじゃ?」
「ん、施設案内だ。」
「な、ぐぬぬ・・・そんなのがあったのか。
運がいいのう・・・。」
悔しそうな顔になる。
「まあとにかく、担当のところに行こう。
何かあったら連絡してくれ。」
そういって、それぞれ散った。
1時間後
「しっかし暇だな・・・。」
施設案内つっても、
仕事なさすぎだな・・・・。
「・・・他の奴らも少し見てみるか。」
<ロウ、移動中>
「・・・あら、ロウ様。あなた様も
こちらのアトラクション体験されていきますか?」
「なわけねえだろ。」
「ふふふ、冗談ですわ。今はちょうど
休憩時間中です。」
「遊佐はどうした?」
きょろきょろし鳴子を探す。
「あちらにいらっしゃいますよ。もうすぐ
終わると思いますが・・・。」
ひょいとロウは奥をのぞく。
「駆血帯は巻けたかい? ・・・・いいね。
つぎにこれで患者さんの腕をふいてみようか。
・・・よし、これで準備は整った。打つときに血管が
逃げてしまうから指で押さえて・・・そう。」
「遊佐さん、子供たちにああやって教えて
いらっしゃるんです。」
「やけにうまいな・・・。」
「ん、やぁロウ君。」
鳴子もロウのもとに来る。
「あの子の回は終わったのですか?」
「ああ。目をキラキラさせていたよ。
本当に純粋な子ばかりでかわいいね。」
「しかし、説明がうまいな。」
「好奇心でかじった知識があっただけさ。
大したことじゃない。保健委員なら簡単な
切開くらいはできるよ。あ、そうだ。」
指をパチンと鳴らす。
「シャルロット君。君も注射くらいなら
できるんじゃないかな? そこの人形で
試してみたらどうだい?」
近くの人形を指さす。
「わ、わたくしがですか!? も、もし
失敗したら・・・。」
「どうせ人形だろ? 心配することもねえよ。」
「・・・・わ、わかりました。説明は何度も
聞きましたし・・・きっとできます。
やってみますわ!」
数分後
「あ、あああ! お二人とも!
変な音が聞こえます!!」
人形からピー! ピー!と
音が鳴る。
「へえ、この人形って意外と高性能なんだね。
・・・!」
人形をロウが確認する。
「あー・・・こりゃ動脈刺したな。」
「ど、動脈?」
「それに勢いよく押し出したから
空気が入ったんだろ。」
「なんてこと・・・血管に空気が入って
しまったなんて、危険なのでは・・・!?」
おろおろし始める。
「んまあ、人間ならそうなるが・・・。」
「い、いけません! 患者様、すぐに
回復魔法をかけますからね!」
そういって、人形に回復魔法を
かけ始める。
「だからそれは人形だっての・・・。」
「ロウ君、君もやけに詳しいね?」
「ん? 親父が医者やっててな。
少し教えてくれた程度だ。」
「へぇ・・・。」
ピピピ! ピピピ!
「ん? 僕のデバイスだ。・・・
南条君、どうかしたのかい?」
連絡したのは恋だった。
「・・・その子の特徴は? ・・・
わかった、ロウ君もいるから伝えておくよ。」
「? 何かあったのか?」
「子供が迷子になったようだ。」
「迷子? べたな事件だな・・・。
俺は氷川と合流する。」
「ああ、頼んだよ。こっちは探してみる。」
<ロウ、移動中>
「氷川は・・・あっ。」
物陰からそっと見る。
「えぇと・・・赤ちゃんの抱っこの仕方は
腕で頭を支えて・・・・ああ!」
支えていたはずの頭がガクンとなる。
「おねえさん・・・赤ちゃんの首、
ガックンってしたよ・・・かわいそう・・・。」
「・・・な、なのでこうならないように腕で
しっかりと支えてくださいね! では次に
赤ちゃんへミルクをあげてみましょうね。」
「慣れてないの丸出しだな・・・。」
「ミルクはお湯で溶いて・・・はい、
できました。これを赤ちゃんに」
「え! ぼくのおかあさんは冷ましてたよ!」
「ふぇ!? そ、そんなこと書いて・・・。」
急いで確認する。
「『ミルクは作ってから人肌に・・・・・
急ぎの場合は氷水で』・・・み、みなさん!
ミルクは人肌まで冷ましてくださいね!」
「ひとはだってなーにー?」
「私たちの体温くらいです!」
「おねーさぁーん、つぎどうすればいいのー?」
「この赤ちゃんのおむつ替えたーい!」
「え、えぇと・・・・。」
「ねーねー、もう遊ぼうよー。飽きちゃったぁ。」
矢継ぎ早に言葉が飛ぶ。
「だ、だめです! お仕事はちゃんと最後まで
しないと・・・。」
「赤ちゃんすげー泣いてる! なんだこれ
みず!? みずでてきた!」
「うぅ・・・。」
「ったく、なにやってんだか・・・。」
見ていられず、ロウが出てくる。
「み、見ていたんですか?
いつから・・・。」
「お前が赤ちゃんの首をガクンって
させたところだ。」
「最初の最初じゃないですか・・・うう・・・。」
「ちゃちゃっと片すぞ。手伝え。」
「こ、こっちのセリフです!」
数分後
「ふぅ・・・。」
「お、お手伝いいただきありがとうございました。
正直・・・助かりました。」
頭を下げる。
「子供たちをいざ目の前にしたら、頭の中が
真っ白になってしまって・・・。」
「まあ、慣れてねえからな。そこは
しょうがねえ。」
「・・・いずれは私もちゃんと
子供たちと接する方法や赤ちゃんの世話を
覚えなくてはいけない時が来るとは思って
いますが・・・。」
「・・・・。」
「・・・?! ち、違いますよ!?」
「? 何の話だ?」
「あ、だ、だから、その・・・・・
い、言わせないでください!!」
「? 何顔赤くしてるんだ。」
「ぐ・・・風紀委員にそのような態度・・・
学園に戻り次第すぐに・・・」
そのとき、アナウンスが鳴る。
『迷子のお知らせをいたします・・・』
「・・・迷子?」
「・・・ああ、そうだ!」
「ロウさん、なんで言わないんですか!」
「お前が泣きそうになってたからだろ。」
「なってません! とにかく、急ぎ
皆さんと合流しますよ!」
<ロウ、紗妃、移動中>
「遊佐さん! あの、迷子は・・・。」
「ああ、安心したまえ。保護されたよ。」
「そうか、これで一件落着か。」
「・・・と、言いたいんじゃが・・・。」
恋が言いよどむ。
「? どうした。」
「見つかった場所が問題なんじゃ。」
「場所? どこで見つかったんだ?」
「うむ、いたのは『地下の避難区域』じゃ。」
「!? なんだと!?」
おいおい・・・。
「ちょっと待ってください、本来であれば・・・。」
「僕たちが確認するはずだった場所だよ。
普段なら責任者によって施錠されているはずだ。」
「大丈夫なんだろうな、避難区域の
セキュリティは。」
「現状、大丈夫とは言えないね。軍に確認を
急いでもらおう。会長にも報告だ。
そして、君たちも気づいてるかもしれないが」
「ん?」
「この数か月、人の多いところで騒ぎが起きている。
偶然で片づけばいいが・・・その根は事前に
つぶしておいたほうがいいかもしれない。」
『本日はご来園いただきありがとうございます』
終了のアナウンスが響く。
「もう閉園の時間ですのね。
あっという間でしたわ。」
「疲れはしたがやりがいはあったのぅ。
氷川はどうじゃった? 楽しかったか?」
「そうですね・・・今後の機会に活かせる
勉強になりました。もし魔法使いでなければ
どれかの職業になっていたかもしれませんね。」
「・・・そういう世界も見てみたいもんだな。」
「・・・らね。」
鳴子が小さな声で何かを言う。
「遊佐、何か言ったか?」
「いいや? そんな世界を僕たちが作れば
いいんじゃないか。霧の魔物を根絶してね。」
「・・・そう、ですね。そのためにも
急いで、施設内を視察し学園へ帰りましょう。」
・・・そんな世界、ね・・・・。