グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
風飛市内
廃ビル
「おぅ、来たか。ロウ。」
「久しぶりだな、おっさん。」
「そうでもねえだろ。」
タバコをくわえ、火をつける。
「それで? わざわざ呼び出したんだから
相当重要な用なんだろうな?」
「ったりまえだろ。・・・天羽についてだ。」
「! 何か分かったか?」
「正確には天羽自身のことじゃねえけどな。」
「どういうことだ?」
「奴の側近のことだ。やつにとって
邪魔な奴を殺してきたっていう・・・。」
「聞いたことはあるが・・・見たのか?」
「調べたからな。だが、女だってことぐらいで
名前も分からん。」
「いっちゃあ殺し屋だしな。
・・・まさか、それだけか?」
「もう一つある。そいつが、佐藤一を殺した
張本人だ。おそらく、俺たちのことも狙っているはずだ。」
タバコを携帯灰皿に入れ
新しいタバコを取り出す。
「・・・わかった。警戒しておく・・つっても、
学園の警備態勢じゃあ、入るのも一苦労だがな。」
「くく・・・そうだな。」
腕時計を確認する。
「おっと、もう時間だ。俺は戻る。」
「ああ、じゃあな。おっさん。」
2人はビルから出るとそれぞれ
別の方向に進んだ。
翌日
学園 放課後
「あっ! ロウさん! 探しましたよ!」
「ん?」
呼ばれたため、振り返ると
葵がこちらに向かって走ってきていた。
「さあさあ、こちらへ! さあさあ!」
ぐいぐい引っ張る。
「お、おい、待て! 何の話だ!」
「はっ・・・わ、わたくしとしたことが、
申し訳ありません。」
「で、何かあるのか?」
「はい! 実は今日、実家から
ロウさんを呼んでくるように言われてまして・・・。」
「俺を? なんでだ?」
「家族にロウさんのお話をしたら、ぜひ
お会いしたいと。」
「そうか・・・。」
待てよ・・・確か冷泉っていえば・・・。
・・・ちょうどいいかもな。
「別に問題ない。暇だしな。」
「それはよかったです! では、早速
行きましょう。車を用意しておりますので!」
「車ねぇ・・・。」
<ロウ、葵、車の中へ>
車中
「え? ロウさんのお家には
運転手さんはいらっしゃらないのですか?」
「どこも大概そうだろ。」
「では、どうやって車に乗るのですか?」
分からないという感じで
首をかしげる。
「免許取って、自分で乗るんだよ。」
「そうなのですか!?」
知らなすぎだろ・・・。
「しかし、ずいぶん走ってんな。」
「そうですか? あ、それであの・・・
わたくしの実家なのですが・・・その・・・。」
「ん?」
「びっくりなさらないでくださいね!
怖くありませんので!」
「そうか・・・。」
<ロウ、葵、移動中>
冷泉家
「ったく、人の顔じろじろ
見やがって・・・。」
「きっと、わたくしが家にお友達を
呼んだから、珍しかったのです。でも
ご安心ください! わたくしがついておりますから!」
「それが一番不安だって・・・。」
小さい声で言う。
「何かおっしゃいましたか?」
「いいや、何も。」
「そうですか・・・。ということですので
わたくしから離れないようにお願いしますね。」
「ああ、わかった。」
「・・・ふふふ。」
葵がかすかに笑う。
「? なにかおかしかったか?」
「いえ、ロウさんにはいつもお世話になって
いるので、わたくしがこうしてお世話を焼かせて
いただけるのが嬉しいんです。」
「・・・そうか。」
「あ、ふすまの開け方と座り方だけ
お教えしますね。」
「頼む。」
「まず、ふすまは・・・」
十数分後
「背筋を伸ばして、足は」
その時、ふすまがゆっくりと開く。
「? どうかされたのですか?」
入ってきた男が葵に
耳打ちする。
「・・・・えぇ!?」
「?」
要件を伝えた男はすぐに
出て行った。
「どうした。」
「あ、あの、お父様がお呼びなのですが・・・。
その、ロウさんお一人で来るようにと・・・。」
「俺一人で?」
「いったい何を考えているのか・・・。」
「まあ俺はそれでも問題ない。」
立ち上がり、向かおうとする。
「あの・・・。」
「ん?」
「お父様は政治家なので、事務所や後援会に
勧誘されると思いますが、いやだったら
断ってくださいね。他にも失礼なことを
言うかもしれませんけど・・・。」
「そうか・・・・んじゃあ、
ちょっと行ってくる。」
そう言って、ロウは部屋を出た。
<ロウ、移動中>
「ここか・・・・・。
・・・失礼します。」
ふすまをゆっくりと開ける。
「・・・・・。」
1人の男が黙って座っていた。
「・・・・・。」
「・・・・座りなさい。」
「失礼します。」
ゆっくりと正座する。
「・・・君が相田ロウ君か・・・。」
「名前をお覚えいただき、光栄です。
冷泉幸四郎さん。」
「!?」
驚いた様子でロウを見る。
「政治家の名前くらい、知っていて
当然です。」
「・・・そうか。今日は君に尋ねたい
ことがあってね。」
「なんでしょうか。」
「君の、経歴についてだ。」
「経歴?」
「こちらで調べようとしたが、
ある方に止められてね。」
「・・・わざわざここに来たら言うとでも?」
「・・・なに?」
「それに止められるのは当然。
俺の経歴を調べるのであれば・・・・
天羽鉄舟に聞けばいい。」
「!? ま、まさか・・・・・。」
驚きの声を上げる。
「話は終わりですか?」
「あ、ああ・・・・・。」
「では、失礼しました。」
立ち上がり、部屋を後にした。
「まさか・・・・そんな・・・。」
「! ロウさん!」
葵が駆け寄る。
「何か言われませんでしたか?
『身辺調査をする』とか・・・。」
「いいや、別に何も。」
「そうですか・・・。」
ほっとする。
「じゃあ、俺はもう帰る。」
「え、もう少しゆっくりしては・・・。」
「いや、そろそろ帰る。」
「そうですか・・・・では、
帰りの車を用意します!」
そう言って、葵は部屋を出た。
「・・・あの様子ならしばらく俺のことは
調べねえだろ。」
他にいない部屋で小さな声でつぶやいた。