グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
「しっかし、多いな。」
刀を構えたロウの視線の先には
何十体もの巨大なものがこちらに
接近してきていた。
「ロウ、あれの大きさを見る限り
タイゴンデロガ級。アタシがお前の
護衛につく。全員にありったけの
魔力を供給してくれ。」
「ああ、わかった。あと・・・・
『ROOM』!」
大きめに青いサークルを張る。
その間にチトセが魔物に
攻撃を仕掛ける。
「・・・! なに、あの体。」
魔物はダメージを受けたが、
傷を負った部分がすぐに再生する。
「困ったわ、倒すのに通常の
タイコンデロガの何倍もかかる・・・!」
数十分後
「『
魔物を次々と斬っていくが
魔物はどんどん再生していく。
「くそ、しかも1体倒れれば
別の1体が出てくる・・・これだと
まずいぞ・・・。」
額から汗が流れる。
「ふぅ・・・・・・下がれ!
10メートル後退! 魔物を前方に集めろ!」
虎千代が支持する。
「アホか! 南じゃ! 南に集めろ!
そっからホワイトプラズマなんぞ使えば
タワーが吹き飛ぶぞ!」
「・・・む・・・そうか。」
「確かにお主の奥儀なら一網打尽に
できるが、代償が大きい。」
「それは構わん。ホワイトプラズマで
全滅するならよし。増援が現れたなら」
「退却するってことか。」
「そうだ。」
「そうなれば・・・少年、来い!
虎千代がホワイトプラズマを使う間、
妾が障壁で守るぞ!」
そう言って、ロウの周りに
障壁を張る。
「・・・・・・よし、行くぞ!
タイコンデロガが何百体いようと
蒸発させてやる! 消え去れ!!」
虎千代の手から
白く巨大な雷が放たれる。
轟音が鳴り響く。
「はあ・・・はあ・・・・。」
かなりの疲労から息切れしている。
「ハハハハハ! 虎千代! 貴様、
また威力を上げたな!」
つかさが虎千代をポンポンと
叩く。
「ば、バカ、触るな・・・いっ・・・。」
体に痛みが走るようだ。
「・・・てか、こりゃ結構
やばいぞ。会長。」
ロウはホワイトプラズマが
直撃した場所を指さす。
「さっきまでいたのは消えたが、
また新手だ。ここは退却するしかない。」
「く・・・そうだな。それにそろそろ
エレンたちが到着するはずだ。
ロウ、悪いが、手を・・・。・・・!
ロウ!! 伏せろ!!」
「な・・・ ! しま・・・」
ロウが後ろを向いた瞬間、
魔物がロウに攻撃を仕掛けようとしていた。
「く・・・。」
だめだ、間に合わねえ・・・!
思わず、ロウは目をつぶった。
「ぐっ・・・・・!?」
うめき声をあげたのは
ロウではなかった。
「!! 朱鷺坂!」
チトセがロウをかばった。
「朱鷺坂! なぜ魔法を使わなかった!
魔法使いが肉体的に強いとはいえ・・・
タイコンデロガの攻撃をくらうバカがおるか!」
アイラはチトセに回復魔法をかける。
「い、いいえ・・・・魔法は、いらない。
放っておいて。その方が・・・・よくわかるから。」
「愚か者が! お主には聞かなければならんことが
ある! 死なせてたまるものか!」
「・・・・・やっぱり、気づいてなかったのね。
なぜ? まさか・・・・・・うすうす気づいてて、
目をそらし続けた?」
「ああ!? なにをぶつくさ言っとるんじゃ!」
「その言い方・・・・お前、やっぱり・・・!」
「・・・ふふ、彼でも気づくのに・・・。
大丈夫よ、私は死なない。ロウ君、
わかるでしょう?」
「・・・・・言ってもいいんだな?」
「ええ・・・。」
「・・・そうだ東雲。朱鷺坂は死なない。」
「どういうことじゃ!」
「・・・こいつには、
『時間停止の魔法』がかかっているからな。」
「・・・・・・・・・い、今、
何と言った?」
アイラの声が震える。
「・・・つまり、朱鷺坂チトセの正体は
・・・・・『東雲アイラ』だ。それで
今までのつじつまが合う。」
「・・・・・・・。」
「朱鷺坂、体は治ったな。あれを
見せてやれ。アタシに見せたあれだ。」
『あれ』・・・・・?
「ええ・・・ロウ君、東雲さん。
今から・・・魔法を解くわ。」
そう言うと、チトセの体が
光に包まれる。やがて、光が
消えていく。
「・・・これで、どうじゃ? わかるか?」
チトセはアイラの姿になっていた。
「朱鷺坂チトセは『魔法で姿をごまかして
おった、東雲アイラ』。裏世界の、
50年後よりゲートを通ってきた、東雲アイラじゃ。」
「あ・・・・あ・・・な・・・。」
あまりの出来事に言葉が出なかった。
「・・・・・なぜじゃ、なぜ・・・・
早う言わんかった。言えば、協力できた・・・・・。」
「言うわけには、いかなかった。本当は今でも
言わないほうがいいと思っている。あなたが
絶望にたどり着いてしまうから。」
「・・・・なん・・・・じゃと・・・?」
「絶望だと? どういうことだ。」
「そ・・・そうじゃ、やはりお主は
嘘をついておる。」
「嘘?」
「裏世界に妾がいて表世界に来れるはずが
ないではないか!」
「ゲートを通ってきたんだ。お前の力と不死身という
特性を考えれば、不可能じゃないだろう。」
「黙れ、虎千代!」
徐々に目に涙が浮かぶ。
「朱鷺坂チトセ! 貴様が妾などとは
信じんぞ!! 妾が『希望を諦めた』などと
言うものか!!」
「約束が、あるからな。」
「!! そうじゃ・・・アイザックと交わした
約束がある・・・・。」
「『魔物を全て討ち滅ぼし、自らの力で
時間停止の魔法を解いた暁には・・・あの世で
相まみえん。その時は世界を作った妾を褒めるがよい
妾の命を救った、お主への礼じゃ。』
「あ・・・・・あ・・・・・・・
ああああああ!!!」
大粒の涙を流し、膝から
崩れ落ちる。
「・・・・・朱鷺坂、お前は・・・・・
絶望したのか?」
「・・・・ええ。」
目を閉じ、肯定する。
「お前は、おそらく魔物をすべて消すまで
アイザックニュートンとの約束を守るため、
戦い続けた。だが・・・・」
「・・・360年。妾が戦い続けた時間じゃ。」
「・・・・・・。」
「これだけの時間を費やしても、無理じゃった・・・。
妾1人では・・・世界は変わらんかったよ、
東雲アイラ。」
「やかましい!! 聞く耳持たんわ!!
妾の命はアイザックに救われた! アイザックと
約束をした!!自暴自棄になって、ゲートに
飛び込むなど・・・・許されることでは、ない・・・。」
少しずつ声が小さくなる。
「・・・・・。」
「裏世界は救えなんだか・・・・・
妾の力では・・・・・。・・・人類が
絶滅寸前であったとしても、妾が戦っておるという
希望だけがあった・・・。」
「東雲・・・。」
「魔物おらん世界が、いずれ訪れると
信じておったんじゃ。お主が裏世界に、
来てしもうたら・・・妾が信じた理想郷は・・・
ただの幻想じゃないか・・・・。」
「そう、幻想。けれど、私はゲートを通った。
そこには表世界があって、私は再び希望を
手に入れた。過去の風飛を訪れたことで
同一人物が会っても問題ない・・・。」
「・・・・確かに、何も起こっていない。」
ロウはなんとか言葉を
絞り出す。
「だから私は決断した。あなたと手を組み、
今度こそ世界を救う。東雲アイラが1人で無理でも
2人ならできる。表と裏が力を合わせればやれる!!」
「・・・・な・・・・なにを・・・・。」
「・・・・・『2人ずつ』だ。東雲。
死ぬはずだった裏世界の人間を全員こちらに集める。
それが朱鷺坂の目的だ。」
「じゃが・・・・ゲートは、この時代しか・・・。
それに、遊佐は死んでしまったではないか。」
「ゲートは8か所存在する。グリモアにある
1つは13年後。南極のゲートは私の時代。
残り6か所をつかって、その時代の戦力になる
人間がいるなら・・・・連れてくる。」
強い決意で、目が鋭くなる。
「・・・・・・いやじゃ・・・・妾は、
もういい・・・・。」
「! 東雲・・・・!」
「帰る・・・・帰って・・・・寝るわ。」
フラフラとした足取りで
戻ろうとする。
「センパイ! 皆さん! 脱出地点を
確保・・・あれ、東雲センパイ・・・。」
アイラが戻ろうとしたところに
真理佳がこちらに戻ってくる。
「支えてやれ、円野。戦闘の疲れが
出ている。」
「あ、はい・・・東雲センパイ。大丈夫ですか?」
アイラの肩を支える。
「しかし、やっかいなことになった。まさか、
あれほどショックを受けるとは・・・。」
「約束を守れなかったことがか・・・?」
「いえ、まだ原因はある・・・表と裏が
繋がっていて霧が通り抜ける。霧は払うと
移動するつまり・・・・・」
「・・・!! まさか・・・。」
「お、おい! それは・・・本当なら・・・!」
「ええ、東雲アイラが一番心をえぐられたこと、
それは・・・・」
「自分で霧を払ったことで、裏に魔物を
送り込んでいた言う事実・・・・。」
「そして、裏世界がほろんだのは、表世界が
強くなったから。表世界が多くの魔物を倒すことで
霧が裏世界に多く移動したから。表世界を救うために
私が裏世界を犠牲にしようとしているから。」
「・・・・・まさか、お前は・・・・。
裏世界に全ての霧を送り込むつもりか?」
そして、ロウたちは
裏世界から帰還した。
その日からアイラは
部屋に閉じこもった。