グリモアーたとえ面倒でも世界は動く-   作:FAMZ

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第70話 温泉街の事件 前編

『・・・大人しくしろ、くくっ、

 俺の顔を覚ええているか・・・?』

 

『ひぃ・・・いや、た、助けて・・・。』

 

『これはな・・・・復讐なんだ・・・。』

 

『いやああぁぁー!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

温泉宿

 

「あらあら・・・気になるところで

 終わっちゃったわぁ・・・。」

 

浴衣を着たあやせは

食い気味にテレビを見ていた。

 

「ていうか、あやせはん。せっかくの

 温泉やのにドラマの再放送見てる場合やないで。」

 

「うふふ、香ノ葉ちゃんだって最後まで

 見てたじゃない~。」

 

「き、気になって見ちゃうんやもん・・・。」

 

コンコン

 

ドアがノックされる。

 

「は~い。」

 

香ノ葉がドアを開ける。

 

「よっ。」

 

入ってきたのはロウだった。

ロウも浴衣を着ていた。

 

「だ、ダーリン!」

 

「? あら~ ロウさん。遊びに来て

 くれたんですか~?」

 

「まあ、似たようなもんだ。上がっていいか?」

 

「どうぞどうぞ~。」

 

靴を脱ぎ、部屋に入る。

 

「よいしょっと。ん、なんだ

 テレビ見てたのか。」

 

「ええ。ちょうどドラマの再放送を

 やっていたので~。」

 

「ここまで来てみるかよ・・・・あっ、

 ニュースか・・・。」

 

「うわっ、今来たとこ映っとるやん。」

 

ロウたちがいる場所で

失踪事件が起きていた。

 

「まあ、だからこうやって地元警察から

 依頼が来たわけなんだがな・・・。」

 

「確か、警察のおエライさんの奥さんの・・・・・

 お姉さんの友達? が魔法使いらしいわ。」

 

「赤の他人じゃねえか。」

 

「でも、頼りにしてくれるのは嬉しいわねぇ。

 それに犯人が魔物かどうかもわからないから・・・。」

 

「どっちも対応できる魔法使いが

 適任ってわけか・・・・おっと、

 白藤、そろそろ時間か。」

 

腕時計を確認する。

 

「え!? あ、そ、そうやね~

 ほな行こか~。」

 

「? ・・・・あ、そっか巡回!

 巡回しなきゃよねぇ! そうだそうだ~。」

 

「う、ウチらで行ってくるし、あやせはんは

 ゆっくりしとってくれても・・・。」

 

「仕事で来てるんだ。そうはいかん。」

 

「それに任せて。わたし、噂話とか聞きだすの

 得意なの~。」

 

さすがは歓談部だ・・・。

 

「もしかして、失踪事件の裏にすっごい

 スキャンダルとかあったりして。」

 

「ん?」

 

「うう、気になってきた・・・本当は

 どうなのかしら。魔物? 痴情のもつれ?」

 

「あ、あやせはん?」

 

「いてもたってもいられないわ~。ロウさん、

 行きましょ!」

 

「やけにテンション高、うおっ!?」

 

ロウはあやせに一気に

引っ張られていった。

 

「あああ、ちょっと、あやせはん!

 ずるい! ウチが最初に・・・って、

 待ってぇ!」

 

香ノ葉は慌てて2人を追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

温泉街

 

3人は温泉街で聞きこみをしていた。

 

「そうなんですねぇ~、どうもありがとう

 ございました。」

 

「どぉ? 結構会話はずんどった

 みたいやけど。」

 

「郵便局の隣の温泉卵がおいしいって~。」

 

「ほう、そうかそうかそれは・・・じゃなくて、

 事件こと聞いたんだろうな?」

 

まったく・・・。

 

「そうねえ、失踪事件に関してはあの

 おばあさんが『湯けむり妖怪にやられたんじゃ~』

 って言ってたわねぇ。」

 

「その辺で転がってるような話みたいだが・・・

 まあ、民話ってところか。」

 

「ええ、人を憎んでばかりいると妖怪の湯気に

 巻かれて消える、みたいな話でしたねぇ。」

 

「ふーん、神隠しみたいなモンかいな?」

 

「でも妖怪伝説って、なんだかロマンが

 あるわよねぇ♪ 『温泉街の悲劇! 不倫妻と

 裏切りの湯けむり妖怪伝説』・・・みたいな!」

 

「・・・おい、白藤。海老名のやつどうした?」

 

「さっきのサスペンスドラマの

 影響やね・・・・。」

 

若干あきれ気味だ。

 

「『愛欲のもつれ! 街ごと巻き込んだ

 権力者の後継争い!』 ああ、怖いわねぇ、

 手に汗握っちゃうわねぇ・・・。」

 

「とりあえず、ドラマの話忘れろ。

 岸田みてぇになってるぞ。」

 

 

 

<ロウ、あやせ、香ノ葉、移動中>

 

 

 

「それで、その女性を好きな元夫が

 襲い掛かるわけなんですけど、監禁したんですよ。

 さらに彼女の爪を1本ずつ・・・。」

 

「やーん、こわーい。ダーリン、

 あやせはんが怖い話するぅ。」

 

ロウに抱き着く。

 

「それでそれでここから面白くて~。」

 

「やだやだぁ、ダーリン助けて!

 ぎゅ~!」

 

「その元夫が相手の職場にメールを

 1000通送って・・・。」

 

「・・・え、1000通って多いん?」

 

「ん?」

 

「本人は大変なことをしているって

 わかってないんでしょうね。」

 

「・・・そんな大変かなぁ?」

 

「・・・・・。」

 

ごくりと唾をのむ。

 

「ともかく、ストーカーは私たちの

 日常に潜んでるんですよ。」

 

「・・・ああ、多分な。」

 

ロウは香ノ葉をちらっと見る。

 

「? どうしたん? ダーリン。」

 

「いや、なんでもねえ。」

 

「けど、魔物が1里だけ選んで食べちゃった、

 とかもなさそうや。精霊さんも特に

 見つけとらんかったんやけど・・・。」

 

「精霊さん?」

 

「ん? ・・・あっ、えーと、

 ふふふ~。」

 

言葉を濁し、鼻歌でごまかそうとする。

 

「香ノ葉ちゃんったら。今、笑って

 ごまかそうと」

 

「な、なにす・・・きゃああー!!」

 

突如、叫び声が聞こえる。

 

「!? おい、なんだ今の!」

 

「あっちからや! 行くで!」

 

3人が叫び声のした方向に走る。

そこには、エミリアが倒れていた。

 

「え、エミリアちゃん!?」

 

「・・・・・・。」

 

反応がない。

 

「しっかりして! エミリアちゃん・・・

 エミリアちゃーん!」

 

「・・・・う・・・。」

 

「いや、生きてんじゃねえか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・なるほど、ようするに

 すすき野原ですっころんだだけか。」

 

「うぅ・・・・。」

 

顔を少し赤くし、下を向く。

 

「すすきがあまりに見事で、少し

 はしゃぎすぎました・・・。汚れてしまった

 ので、近くの温泉で洗おうとしたら・・・。」

 

「そしたら、何者かにエミリアちゃんが

 襲われた・・・ってこと!?」

 

「あ、ええと・・・・何者か、

 というか・・・。」

 

「大事件やん!」

 

「え?」

 

「そうね、これは大事件よ!」

 

「え、あ、あの・・・。」

 

どこか反応に戸惑っている。

 

「怖かったわねぇ、でも、私たちに任せて!

 犯人を突き止めてみせるわ!」

 

「あ、ろ、ロウ君これって・・・。」

 

「はぁ、面倒なことになってきたな・・・。」

 

「あの、話を・・・・。」

 

「あれ? 先輩、みなさんも。」

 

ロウたちが話していたところに

秋穂が通りかかる。

 

「あらあら秋穂ちゃん。お風呂に入ってきたの?」

 

「はい! これからさらちゃんと

 待ち合わせです。私たちも聞き込み

 がんばりますね!」

 

「ヘンな人がウロついてるみたいだから

 気を付けてね。」

 

「ああ、さっきもブルームフィールドが

 襲われたしな。」

 

「そうなんですか? あっちのすすき野原のほうへ

 行こうと思ったんですが・・・。」

 

「ああ、すっころんだところか。」

 

「ふぁあ、あまり広めないで!」

 

「あはは、そうなんですか? 気を付けますね。

 さっき通ったら賑やかみたいだったので

 大丈夫だと思います!」

 

「・・・え?」

 

エミリアが顔をしかめる。

 

「では、行ってきます!」

 

秋穂は元気に駆け出した。

 

「うふふ、散歩部の子はみんな

 あいらしいなぁ。」

 

「・・・あの・・・。」

 

「どうした。」

 

「すすき野原、さっき行ってきたんですけど・・・

 あそこ、賑やかどころか誰も、

 いなかったですよ・・・?」

 

「・・・ん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1時間後

 

ロウたちは聞き込みを終え、

宿に戻った。

 

「しかし結局、妖怪の話しか

 わからなかったな。」

 

「・・・あら?」

 

部屋にゆかりと秋穂が

入ってくる。

 

「椎名さん・・・あれ? 秋穂ちゃんも。

 さらちゃんはどうしたの?」

 

「・・・・・。」

 

下にうつむき、答えない。

 

「海老名さん、白藤さん、ロウ君!

 どうしよう、さらちゃんが・・・。」

 

「どないしたん、取り乱して。」

 

「・・・約束した時間に帰ってこないの。

 秋穂ちゃんと待ち合わせしてたみたいなんだけど・・・。」

 

「・・・さらちゃん・・・・・

 会えなかった・・・・。」

 

「うーん・・・まずいな。外はもうじき

 暗くなる。1人でいたらかなりまずい。

 まあ、シローがいるが・・・。」

 

「やっぱり、心配だわ。万が一って

 こともあるかもしれないし・・・。」

 

「だな・・・・・ん?」

 

ロウが外の気配に気づく。

 

「? ロウさん、どうかしましたか?」

 

「・・・今誰かが見てたような・・・。」

 

「ええ!?」

 

「・・・いや、気のせいか。」

 

「・・そうでもないで。信長が反応しとる。

 それにウチ、気配には敏感やから。」

 

「や、やめてよぅ怖いこと言うの・・・。」

 

「じ、事件よ~! 事件の香りがするわ~!

 椎名さん、香ノ葉ちゃん、ロウ君!

 さらちゃんを探しに行くわよ~!」

 

あやせは急いで部屋を出る。

 

「あ、海老名さん! 上着上着!

 そろそろ冷えてくるから!」

 

「・・・まさか、ウチ以外にダーリンの

 ことをつけてる女とか、おらんよな?

 いるなら・・・徹底的に妨害してやるんよ!」

 

香ノ葉も急いで飛び出す。

 

「まったく、あいつら・・・・ん。」

 

「・・・・・。」

 

秋穂1人、動かないでいた。

 

「・・・さらちゃん・・・・。」

 

「・・・瑠璃川。」

 

「先輩・・・。」

 

「探しに行くぞ。今はそれしかできない。」

 

「・・・そうですね。行きましょう!」

 

「ああ。」

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