グリモアーたとえ面倒でも世界は動く-   作:FAMZ

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第71話 温泉街の事件 後編

温泉街

 

ロウたちはいなくなってしまった

さらを探すため、集まっていた。

 

「まずは聞き込みやね。さっきぐるっと

 回ったけど、もっかい行こか。」

 

「うん、何かわかったら教えてね。

 ・・・はあ・・・私がちゃんと

 ついてれば・・・。」

 

責任を感じるゆかり。

 

「まあ、妖怪だのはねえだろうが・・・。」

 

「妖怪じゃなくても、ストーカー監禁とかの

 可能性も・・・。」

 

「もう、海老名さん。縁起でもない

 こと言わないでよ。ああぁ、不安に

 なってきた・・・もし本当だったら・・・。」

 

おろおろし始める。

 

「こういう時一番頼れそうやのになぁ。」

 

「意外な一面ね・・・こういうの、なんて

 言うんだったかしら~。」

 

「はあ、こんな時に朝比奈さんがいたら

 心強いんだけど、きっと一喝してバーッと

 探してくれるんだろうな・・・・。」

 

「まあ、確かにそうかもな。」

 

「ダメだね、私。どんどん悪いほうに

 考えちゃって・・・・。」

 

「あぁ~! そうだわ。『ギャップ萌え』

 というものよ~。」

 

「「?」」

 

「普段はしっかりしているのにこういう時は

 急にかわいい一面が垣間見えて思わずときめいて

 しまう・・・・ね? ロウさん?」

 

「ん? なんで俺に聞いたんだよ。」

 

「・・・かわいい・・・?

 ギャップ!? あかん! あかんでそれは!」

 

慌て始める。

 

「ダーリンの前で意外とかわいいとこ

 なんて、みせんといてー!」

 

香ノ葉の叫びがこだました。

 

 

 

 

 

 

「って、んなこと言ってないで

 早く探すぞ。」

 

「そ、そうやね・・・。」

 

「あらあらなるほど~。それは

 怖いですね~。はい、ありがとうございました。

 ではでは~。」

 

海老名は話を聞きに行ったしな・・・。

 

「どうだった? 海老名さん。」

 

「それがね・・・ここ数日、変な人影を

 目撃したって人が多いらしくて・・・・

 ストーカーじゃないかって。」

 

「本格的に怪しくなってきたな。」

 

「そのストーカーがさらちゃんを・・・

 可能性はありますよね。」

 

「うぅ・・・さらちゃん・・・。」

 

秋穂は泣きそうな声を出す。

 

「けれど、きっと犯人もこの温泉街に

 まだいるはずです!」

 

「犯人は現場に戻る・・・捜査の基本ね!」

 

「でも、警察に・・・・・。」

 

「いいや、俺たちで捕まえるぞ。

 警察じゃあ時間がかかる可能性がある。」

 

「ダーリンの言う通りや! それにかわいいだけで

 襲うやなんて・・・」

 

「香ノ葉ちゃん・・・。」

 

「ウチだって、さらちゃんに対しては

 我慢しとるのに!」

 

「・・・んん?」

 

何の話してんだ?

 

「許さへん、絶対! しばき倒すで!

 さらちゃんはみんなのアイドルなんや!

 不可侵なんやで!? 聖域に手ぇ出した罪、

 後悔させたる・・・!!」

 

こぶしを握り締める。

 

「あ、あの~・・・香ノ葉ちゃん?」

 

「あいつが危ないんじゃないのか?」

 

 

 

 

 

数十分後

 

「そろそろ人も少なくなってきましたね・・・。」

 

「わくわく、何か起こりそうよね~。」

 

「わくわくするなよ・・・。」

 

「そろそろ次の犯行が・・・・・

 気を付けてね、秋穂ちゃん。」

 

あやせが秋穂の手を握る。

 

「えぇ・・・私なんですか?

 うぅ・・・。」

 

「でもホンマに不気味やなぁ。」

 

「・・・? あれはなんでしょう?」

 

エミリアが立て札を指さす。

 

「結構古いな。」

 

「読んでみるわね。えーっと、湯けむり

 妖怪とは・・・『清らかなる心の者に害を

 なさず、悪しき者の心を食らう妖怪』」

 

「つまり・・・どういう意味なん?」

 

「まあようするによくありがちな

 子供にいうことを聞かせるための話ってとこだな。」

 

「こういうのって大切な教訓が

 含まれてたりするのよね。」

 

「よくある地元の伝説やないん?

 ちょっと頭のいい子はいうこと聞かなそうやね。」

 

「あらあら~、香ノ葉ちゃんはどうしたら

 いうこと聞くの?」

 

「そら・・・ダーリンの言うことやったら

 なんでも・・・。」

 

顔を赤くし、照れる。

 

「・・・せ、先輩。」

 

「どうした?」

 

「ううん、ダーリンの望むこと全部・・・!」

 

「あの、あれって・・・。」

 

「どうかしたの? 秋穂ちゃん?」

 

「あそこにいる人、さっきからずっと

 こっちを見てるんですが・・・。」

 

秋穂が指さした方向には

人の姿はない。

 

「・・・だれもいねえぞ?」

 

「あそこの影です。ほら、見えますよ。」

 

「ちょっと、やめてえな・・・。

 怖いやん・・・。」

 

「でもほら、向こうの木の下に・・・。」

 

「もう秋穂ちゃんまで変な冗談は・・・」

 

「冗談ではない! いいから話を聞け!」

 

「!!?」

 

どこからかロウたち以外の声が聞こえる。

 

「え、今声聞こえへんかった・・・?」

 

「私、はっきり聞こえました!」

 

「そんな、まさか・・・・・。」

 

「と、とにかく気味悪いわぁ・・・

 ここ離れへん?」

 

「そ、そうね、秋穂ちゃんも行きましょ?」

 

「でも、あそこの人がすすき野原の

 ほうを指さしてて・・・。」

 

しかし、人の姿は見えない。

 

「そんな人影どこにも・・・」

 

「黙って話を聞け! 秋穂がいると言ったら

 いるんだ!」

 

・・・この声、まさか・・・。

 

「いややぁ、また変な声したぁ!

 ダーリン・・・どうないしよう怖い~!」

 

「・・・!」

 

「ロウ君、後ろ!」

 

ロウの後ろに声の主が

立っていた。

 

「おとなしくしろ。」

 

「・・・お前、やっぱり・・・!」

 

そう言って、ロウは

後ろの相手を取り押さえた。

 

 

 

 

 

 

温泉宿

 

「ご、ごめんなさい! おねえちゃんが

 ご迷惑かけて・・・本当にごめんなさい!」

 

「まったくだ・・・。」

 

ロウの視線の先には

春乃が幸せそうな顔で気絶していた。

 

「つまりは、温泉に行こうとしたブルームフィールドを

 放り出したのも、変な声の正体も、街で噂

 されていたストーカーも、全部が全部」

 

「秋穂ちゃん追っかけてきた、お姉ちゃん

 やったんやね。」

 

「あはは・・・ずっと言おうとしてたんですけど

 タイミングが・・・。」

 

「・・・ご、ごめんなさい!」

 

何度も謝る。

 

「でも、本当によかったです。さらちゃんも

 無事旅館に戻ってきたし。」

 

「まさか、すすき野原で寝てたとはな・・・。」

 

「ごめんなさい・・・すすき野原にいったら

 シローが気に入っちゃって、なかなか

 動いてくれなくて、それで私もウトウトしちゃって・・・。」

 

「おねえちゃんがごめんなさい!」

 

2人がそろって謝る。

 

「まあ、2人とも無事だったんだし

 もう大丈夫だから。ね?」

 

「これで一件落着だな。」

 

「・・・あっ。あらあら~、こっちも

 一件落着かしら~。」

 

「? こっち?」

 

ロウはあやせとともにテレビを見る。

画面には失踪事件の解決が

報道されていた。

 

「ああ、これか。」

 

「元夫のストーカーが女性を監禁してた

 みたいね~。」

 

「そっちは推理大当たりかよ・・・。」

 

「やっぱり愛欲のもつれだったのね~。」

 

「なんや、結局ウチらの出番はなかったんやね。

 まあウチはダーリンと温泉にこれただけで

 幸せなんやけど。」

 

「けど、すすき野原を指さしてた人って

 誰だったんでしょう?」

 

「見間違いだろ。あの後、周辺調べたが

 誰もいなかったしな。」

 

結局誰だったんだか・・・。

 

「そうですか・・・。本当に見たんだけどな・・・

 おかしいなあ・・・・。」

 

こうして、温泉街の事件は解決した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ・・・・。」

 

「あっ、先輩!」

 

「ん、ああ瑠璃川か。」

 

秋穂はロウに駆け寄る。

 

「はあ、しかし今日はくたびれたな。」

 

「うぅ・・・ごめんなさい・・・。」

 

「気にするな。原因はあいつだからな。」

 

「・・・私、不安だったんです・・・・。」

 

「ん?」

 

「もし、さらちゃんがいなくなったら

 どうしようって・・・・。」

 

秋穂の目から涙が流れる。

 

「ひっく・・・ご、ごめんなさい・・・

 いやなこと、思い出しちゃって・・・。」

 

「瑠璃川・・・。」

 

「ま、また、いなくなったらどうしようって・・・。

 おかあ、さんみたいに・・・・。」

 

「・・・そうか。」

 

「も、もう、いや、なんです。大切な人が

 ・・・いなくなるの・・・。」

 

「・・・・・大切な人、か・・・。」

 

「・・・・・せ、先輩?」

 

「・・・その思いがあるだけで十分だ。」

 

「・・・・はい。」

 

「・・・・んじゃあ、俺は戻る。」

 

「・・・・。」

 

秋穂はロウが戻る姿を見送った。

 

(先輩、なんであんなに、怖い顔

 したんだろう・・・・・?)

 

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