グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
廊下
「あっ! いましたいました~。
ロウさ~ん!」
「? 海老名か。どうした?」
帰ろうとしていたロウは
あやせに呼び止められた。
「こんにちは~。」
「はい、こんにちは。」
「実はですねぇ、少しだけお時間を
いただけないかと思いまして・・・。」
「なんかあるのか?」
「えと・・・実は、恋愛相談にのって
いただきたくて・・・・・。」
「・・・恋愛相談? お前のか?」
「あ、いえ、私ではなくて別の方の
恋愛相談なんですけど・・・。」
「お前がすればいいだろ。俺は
そういうことに関しては専門外だ。」
できないという感じで手を仰ぐ。
「その、私では的確なアドバイスが
できそうにないので、男性の方の意見が
聞きたいなぁ・・・と思いまして。」
「それにしたって、なんで俺なんだよ。」
「だって歓談部の部活中、エミリアちゃんや
アイラちゃん、ずぅっと話してますよ?」
「・・・俺をか?」
「そうですよ~、それも、とびっきりの
笑顔で~。」
「あいつらがねぇ・・・。」
「あの2人に認められるんですもの、
絶対に的確なアドバイスができます。」
「・・・・・はあ、わかったよ。
話聞くくらいはしてやる。」
「! ありがとうございます~。」
数分後
「だめだ、手に負えねえ。」
「いえ、あなたのせいではないです!」
「だろうな。二股してるかも・・・って
俺、一切経験ねえんだよ。」
何も言うことねえっての・・・。
「うぅ・・・私も、恋愛経験は
ないものですから・・・。」
「お前もかよ。」
「はい、恋愛のこと、わからないんです・・・
はあ・・・どうしましょう・・・。」
「・・・って、言われたところでなぁ。」
「・・・・あっ!!」
何かを思いつき、手をポンとたたく。
「私、いいことを思いつきました~!」
「なんだ?」
「恋愛の経験がないのなら、恋愛の
経験を積めばいいんです!」
「・・・なるほど。」
何回かうなずく。
「しかし、ずいぶん簡単に言うな。
いるのか? そういうやつが。」
「あ、いえいえ! 実際に彼氏なんて
作りませんし、作れませんよ~!」
首を横に振って否定する。
「んじゃあ、どうするんだ?」
「・・・なんと、いいますか・・・
あなたにお願いできないかなー・・・と、
思ってるんです。」
「・・・・・はぁ?」
素っ頓狂な声を上げる。
「私の、彼氏になってくださいませんか?
その・・・少しの間だけで、かまわないので・・・・。」
「わざわざ俺を選ぶとはな・・・・
だが、さっきも言ったが、俺も
そういう経験はねえぞ?」
「え? それは私も一緒ですよ~?
なら、一緒に経験してみるというのも・・・。」
「・・・一理あるな。」
あっという間に納得した。
街
ロウはあやせとの待ち合わせの場所に
向かっていた。
「・・・ああ、いたいた。
待たせたか?」
「いえ、私も今来たところですよ♪」
2人は私服に着替えており、
ロウはワイシャツ、黒のベストとズボンと
なっていた。
「こう言うと男性は嬉しいらしいんですよ~?
私、きちんと勉強してきましたから!」
「そういうもんか。」
「それに・・・ふふ、ロウさん。
私服姿も似合ってますよ。」
「そうか・・・・。・・・・ああっと、
そっちも似合ってる。」
「私も、ですか? そう言っていただけると
嬉しいですね。」
そう言うと、あやせは
ロウの手を握る。
「?」
「それでは、行きましょうか~。
私たちの、初デートに♪」
<ロウ、あやせ、移動中>
「にしても、こういう時は
どこ行けばいいんだ?」
「そうですねぇ~・・・・あっ!
あそこなんてどうでしょう~?」
「ん?」
あやせが指さしたのは
ゲームセンターだった。
「・・・まあ、そこにするか。」
ゲームセンター
「へ~、結構広いんですねぇ~。」
「俺は何度か来てる。
・・・あれはどうだ?」
クレーンゲームを指さす。
「いいですねぇ。あっ、私、あの
ぬいぐるみがほしいです!」
中に入っていた
猫のぬいぐるみだ。
「よし、やってみるか。」
財布から100円玉を
投入し、クレーンを操作する。
「・・・あ、もう少し
右なのでは・・・。」
「いや、これでいい。」
そう言って、ボタンを押す。
アームが人形のタグをひっかけ、
見事にとる。
「ほれ、とれたぞ。」
人形を投げ渡す。
「うふふ、ありがとうございます♪」
「・・・さて、次はどうする?」
「そうですねぇ・・・。」
その後も2人はゲームや
食事などを楽しんだ。
夕方
校門前
「ふぅ、今日は楽しかったです~。
これもロウさんのおかげですね♪」
「別に大したことはしてないだろ。」
「いえ、おかげでいろいろと恋愛に
ついてわかってきた気がします。」
「・・・俺はそうでもないが。」
「好きな人と一緒にいれば、いろいろなことが
楽しいと思える・・・・これが・・・・
デート・・・。」
あやせは少し顔を赤くする。
「? どうした?」
「いえいえ、デートとは楽しいものだなぁと
改めて実感していただけですよ。今日は
ありがとうございました~、とても
楽しかったです~。」
ぺこりと頭を下げる。
「でもこれで私たちの恋人関係も終わりですね。
少しだけという約束でしたし・・・。」
すこし残念そうな顔をする。
「まあ、役に立ったならそれでいい。」
「・・・ふふふ。」
「・・・なに急に笑ってんだよ。」
「ロウさん、私たちが最初にあったとき
私が言ったこと、覚えてますか?」
「最初に会ったとき・・・?」
「『みんな、あなたを頼りにしている』という
話です。」
「・・・ああ、そういやそんな話したな。」
「今日、やっぱりあれは間違いでは
なかったな~と思いました。・・・私は
あなたのことをとても頼りにしていますから。」
にっこりと笑う。
「だから、あなたも私のことを
頼りにしていいんですよ? ・・・ですから」
「ん?」
「絶対に、この学園からいなくなっては
いけませんよ?」
「・・・なんで急にそんな話したんだ?」
「・・・いえ、なんでかわかりませんけど
ロウさんが急にいなくなってしまいそうな・・・
そんな・・・予感が・・・。」
「西原みたいなこと言うな・・・・。
まあ、そうそう消えることはねえよ。」
「はぁ・・・よかったです~。」
「もう行っていいか?」
「はい♪ では、また明日~。」
「ああ。」
ロウは寮に戻る。
・・・俺が消える・・・か。