グリモアーたとえ面倒でも世界は動く-   作:FAMZ

77 / 337
第73話 龍季の苦悩

屋上

 

「おっ。」

 

「げっ!」

 

ロウは授業をサボりに

屋上に来たが、先客として

龍季がいた。

 

「なにが『げっ!』だよ、朝比奈。」

 

「くそ・・・。」

 

悪態をつきながら、

ベンチに寝そべる。

 

「サボりか?」

 

「けっ、まさか俺を連れ戻せとか

 いわれたんじゃねえだろうな?」

 

「んなわけねえだろ。俺だって

 サボりに来たんだ。」

 

「んだよ、てめえもかよ。」

 

「そういうこった。・・・しかしまあ、

 その口ぶりだと結構サボってるな?」

 

持ってきていた缶コーヒーを開ける。

 

「ああ、いろんな奴が来たぜ。更生だの、

 まっとうな道だのよぅ・・・。」

 

「ふーん・・・。」

 

「まあ実際、喧嘩が好きで人間嫌いの

 ろくでなしだ。・・・魔法使いが

 魔力で筋力強化されてんのは知ってるだろ?」

 

「ああ、前にウィリアムズが言ってたな。」

 

「そう、だから街の喧嘩じゃたいてい負けなし。

 気持ちいいぜ? オメーも試してみな。

 病みつきになっからよ。」

 

「誰がやるかっての。負けねえ喧嘩なんて

 つまんねえじゃねえか。」

 

そう言って、コーヒーを一口含む。

 

「・・・くそ、笑えよ。笑うとこだ。」

 

「ああ、そうだったか。

 はは・・・ははは」

 

「逆にバカにしてんだろ! ・・・

 オメーとはよく話してるけどよぉ・・・。」

 

「ん?」

 

「ホントはさっさと追っ払ったほうがいいんだよ。

 俺と一緒にいると、オメーもその、

 仲間に見られちまうしよ・・・。」

 

「ったく、なに変な気つかってんだよ。」

 

「うるせえ、それに人付き合いなんて

 ごめんなんだよ。ロクなことにならねえ。」

 

軽く笑う。

 

「・・・なあ。」

 

「なんだよ。」

 

「オメーが魔法使いに覚醒したとき、

 どうなった?」

 

「どうした急に。」

 

「いいから答えろよ。」

 

「・・・特に何も思わなかったな。

 これが覚醒か・・・・ってくらいのもんだ。」

 

「そうか。・・・数は多くねえが覚醒した瞬間、

 魔法が暴発するやつがいる。そのとき、

 家族やダチがいたらどうなると思う?」

 

「威力がないとしても・・・傷くらいはつくな。」

 

「まあちょっとびびるくらいのもんだ。

 ・・・それでも、わかるんだよ。『違う』生き物に

 なっちまったのが。」

 

「・・・違う生き物ねえ。」

 

コーヒーを飲み干す。

 

「それに俺は魔法の制御が苦手な体質だ。

 珍しいってよ・・・それに短気だからな。」

 

「確かにな。」

 

「ちっ・・・興奮すると、帯電すんだよ。

 バチバチってな。」

 

「静電気みてえだな。」

 

「うるせえよ、さっきから。」

 

「だが、それだと校則違反にならないのか?」

 

「ああ、制御できねえからこれ自体は違反じゃ

 ねえんだよ。笑えるだろ? 魔法使いは

 『歩く凶器』だけどな、それが制御できねえ」

 

「それほど危険なものはねえってことか。

 だから1人でいるのか?」

 

缶を握りつぶす。

 

「・・・そういうこった。さて、

 これで大体話したぜ。もう俺にかかわるんじゃねえ。」

 

「さあ。それはどうなるか・・・。

 まあ、でもお前も似たようなもんだな。」

 

「? どういうことだ?」

 

「・・・お前、人殺したことはあるか?」

 

急に何を話してるんだ、俺は・・・・・。

 

「はあ? ・・・さすがにねえよ。んなことは。」

 

「・・・・・俺は、ある。」

 

「!?」

 

「・・・・・なんて、言ったらどうする?」

 

「・・・なんだ、冗談かよ。

 おどかすんじゃねえよ・・・。」

 

「冗談に決まってんだろ。まさか、

 本気にしてたか?」

 

「なわけねえだろ。」

 

「あとひとつ言っておくが、お前が1人に

 なるのはもう無理だぞ。」

 

「あぁ?」

 

「仲月がほっとかないだろ。」

 

「・・・さら、か。」

 

少し言いよどむ。

 

「ああ、そうだな・・・。俺はあいつの

 前だといつもビクビクしてんだよ。」

 

「んな風には見えねえけど。」

 

「いつ感電させちまうか、わかんねえだろ。

 やけどでもさせちまったらことだ。・・・

 そろそろ潮時だな。」

 

「潮時ねえ・・・まあ、無理だと思うがな。」

 

「へっ、どうだかな。」

 

そう言って、龍季は屋上から出た。

 

 

 

 

 

 

翌日

 

「おい!」

 

「ああ? なんだよ、朝比奈。」

 

ロウが歩いていたところに

龍季が叫んで呼び止める。

 

「てめえ、いい度胸してんじゃねえか。」

 

「・・・何の話だ?」

 

「あ? 昨日、さらが来て言ったんだよ。

 テメーなんつった?」

 

ロウの胸ぐらをつかむ。

 

「だから、知らねえっつってんだろ。」

 

龍季の腕を払う。

 

「・・・くそ。・・・・悪い、

 単なるやつあたりだよ。」

 

「やつあたり? どういうことだ?」

 

「・・・あいつ、ずっと前に俺のこと

 誰かから聞いてて、全部知ってたんだよ。」

 

「!」

 

「知ってて・・・・・ああだった。

 シロー抱いてるときも、心配なんか

 してなかった。」

 

「それ見ろ。結局お前はそうなるんだよ。」

 

「・・・くそ、どうやったら俺の事そんなに

 信じられるんだよ・・・・。自分でも、

 自分を信じられねえのに・・・・。」

 

「・・・信じてくれる奴がいる。

 それだけでいいじゃねえか。

 ・・・・ん?」

 

ピピピ! ピピピ!

 

ロウのデバイスが鳴る。

 

「・・・クエストか。・・・まあ、

 せいぜい悩むんだな。」

 

龍季の肩を軽くたたく。

 

「・・・くそ、なんだってんだよ。」

 

龍季は1人で小さくつぶやいた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。