グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
学園
「では、私は報告してきます。
あなたはご自由にどうぞ。」
そう言い、スタスタと歩いていく。
なんとなく棘があるな・・・。
「さて、じゃあ遠慮なく・・・」
「あっ、こんにちわぁ。」
「ん?」
どこか間の抜けた声が聞こえる。
「えーっとぉ、相田ロウさん、ですよねぇ?」
帽子をかぶったうさぎの
人形を持った少女が近づいてくる。
「ああ、そうだが。」
「わたし、七喜ちひろっていいます。
さっき、転校してきましたぁ。
よろしくお願いします~。」
ゆっくりと頭を下げる。
「あ、ああ、よろしく。」
なんか・・・やりづらいな・・・。
「それで、何か用か?」
「あ、そうそう、そうなんですよぉ。
相田ロウさんのこと、聞いててですね・・・。」
なぜフルネームで呼ぶんだ・・・。
「ありがとうございましたぁ。」
「・・・・ん?」
「ほぇ?」
ロウが首をかしげると
ちひろも首をかしげる。
「何の話だ?」
「はぇ? この前助けてもらったお礼を
言おうと思って・・・。」
「この前?」
「はい。ええとですねぇ・・・・
汐ファンが襲われたときです。」
「汐ファン・・・? ・・・・・
・・・・・ああ! あの時のか!」
「入院してたんですけど、なんだか
魔法使いに覚醒しちゃったみたいで・・・・・。」
「そうだったか・・・。」
「そうなんですよぉ、ごはん食べてたら
急にポワワーンって・・・。だからごはんが
こげちゃってですね、お腹すいちゃったんですぅ・・・。」
「・・・・・ん? 今の話か?」
「ふぇ? 違いますよぉ。覚醒したときの
ことです。」
「あ、そうだったか・・・。」
ゆっくりしすぎてるんだよな・・・。
「今はお腹すいてませんよぉ。ちゃんと朝ごはん、
食べてきましたから。・・・・あれ?
何のお話でしたっけ・・・?」
自分ですらわからなくなり、
再び首をかしげる。
「・・・ああ、礼だ。汐浜の時の
礼を言いたいとか・・・。」
「そうそう! わたしを助けてくれた
お礼ですよぉ!」
「いや、てか、あれは違う。
お前を助けたのは朝比奈ってやつだ。」
「え? あさひなさん、ですかぁ?」
「ん?」
わけがわからないという様子だ。
「あれぇ? わたしも朝比奈先輩だと
思ったんですけどぉ・・・。」
「本人に聞いたのか?」
「はい。」
数時間前
『礼・・・? なんのことだよ。』
『汐ファンの時に助けてくれた魔法使いさんの
こと探してたんですよぉ!そしたらシスターさんに
ここにいるって教えてもらって・・・。』
『ちげーよ、俺じゃねえ。』
『ふぇ? ・・・違うってどういうことでしょう?』
『シスターってシャルロットだろ? あいつは違う場所に
いたからな。テメーを助けたのは相田ロウってやつだ。』
『? 相田?』
『そう、そいつがテメーを助けた。俺は見てただけだ。
だから礼ならそいつに言え。』
「・・・って、言ってましたよぉ?」
あの野郎・・・・・照れて
逃げやがったな・・・?
「あいつはあまり自分から
誇らしげにするタイプじゃなくてな。
あいつの話とは逆だ。俺が見てて、あいつが
助けたんだ。」
「・・・う~ん・・・・。
朝比奈先輩も、相田ロウさんも・・・・。
わたし、誰にお礼言えばいいんでしょう?」
「いやだから、朝比奈に・・・・」
「・・・・そうだぁ!」
何かを思いつく。
「なんだ?」
「こういうときはですねぇ・・・
ありがとうございましたぁ!」
ぺこりと頭を下げる。
「?」
「まずは、相田ロウさんに・・・・・そして、
朝比奈先輩にもお礼を言えばいいんですよぉ!」
・・・なるほど。
ロウは軽くうなずく。
「ふふふ~、グリモアのみんなに
お礼を言えばいいんです!みなさんが
汐ファンのために戦ってくれたんですから!
ではではさっそく学園をまわってきますねぇ!」
「あ、ああ・・・・・。」
「では、またあとで、
相田ロウせんぱ・・・・・」
途中で言葉を止める。
「・・・? どうした?」
「・・・なんで私、フルネームで呼んでたんでしょう?」
「今言うか、それ。」
「ん~・・・? 相田ロウ先輩って
変な感じもしますし・・・そうだぁ。」
「ん?」
「ロウ先輩、でいいですかぁ?」
「ああ、名前のほうが助かる。」
「はい、決まりですぅ! これから
よろしくお願いしますねぇ。せ~んぱい♪」
そう言って、学園の中に
走っていた。
「・・・ふぅ。」
ロウはその場でゆっくりと
息を吐いた。