グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
「いいか、さっきまでのことは
見なかったことにしてやるから、俺の言うことを聞け。」
「「「は、はい。」」」
背筋を伸ばし、返事をする。
「わかればいい。行くぞ。」
ロウは1人、先に進む。
「・・・あいつ怒るとああいう
感じになるのね・・・。」
「正直、本家の人たちより怖かったっす・・・。」
「うぅ・・・。」
望の足はがくがくと震えていた。
しばらく時間が経ち
「おし、救助完了ー。あとは
先輩に魔力もらってください。」
「魔物に襲われてる子供がいると思ったら・・・。」
「まったくだ。」
「あははー・・・。」
ロウ、自由、純の前には盗賊の恰好をした
初音が頭を掻いていた。
「いやあ、ちょうどいいとこに来てくれて
助かったぜ。」
「神宮寺のお嬢さん放置したらうちの
主人がうるせーっすからね・・・。」
自由はぼそっとつぶやく。
「ん? なんか言った?」
「なーんにも。初音氏、盗賊のカッコ
似合ってますよ。」
「普段似たようなことやってからな。」
「してねーよ、んなこと!」
「てか、いつ忍び込んだんです? クエストの許可
取ったんですか?」
「せっかくだし、いつもできないことしたいじゃん。
人んち勝手に入ったり、タンスの中漁ったりさ!」
「それでポリゴンの隙間に足取られて、じたばた
してりゃ世話ないじゃん。」
「ああもう、許せない! テクスチャ抜けとか
許せない~!!」
後方で望が1人で叫び、合流する。
「あの砦も! あそこの崖も欠けてる!
デバッグしてないのか!」
「おかえり。向こうの様子はどうだった?」
「城とか武器屋みたいなのが見えた・・・・・けど、
全部ハリボテみたいだった。これ製品版だったら
大炎上だぞ! 今年のクソゲー大賞間違いなしだ!」
「まあ、確かに敵の方もカクカクしてたしな。
どうにも雑だ。」
「・・・い、一応JGJの名誉のために
言っとくけどさ。もとのゲームはこんなにひどくない
からな。魔物に浸食されたからだぞ。」
「知ってる。宍戸が言ってた。霧の魔物の外見は
全て『できそこない』だって。霧と人工物にも、
前例がないわけじゃなくて・・・。」
「汐浜の人形館か。」
「知ってんの? けど、ロウ。
お前、最後に少し合流しただけじゃあ・・・。」
「音無がうるさいんだよ。」
「自分もいまだに武勇伝聞かされますしね。」
若干あきれた顔を浮かべる。
「確か、建物自体に霧の魔物が
憑りついていて・・・」
「律氏お得意の歌で? 霧を吹き飛ばした・・・
んだったかな? あんまり真面目に聞いてなかったんで
ウロ覚えなんすけど・・・。」
「歌ぁ? ふーん・・・うるさかったのかな。」
「ですねえ、よっぽど歌詞がダメだったんすね。」
「声だったりしてな。」
「アンタたち・・・ひどい言いようね・・・。」
純は目を細める。
「・・・歌で霧を払う・・・? 宍戸め・・・
ボクにしかできないってどういうことだよ。」
ぶつぶつとしゃべる。
「おい、楯野。」
肩をポンと叩く。
「ひゃあ!?」
「なに素っ頓狂な声出してんだよ。」
「・・・・な、なあロウ。」
「ん?」
「人形館のクエスト、お前いたんだよな?」
「ああ、最後の方だけだったけどな。」
「その・・・歌で追い払ったんだよな? 魔物。」
「・・・ん?」
首をかしげる。
「だから、それを今回ボクがやらなきゃいけないって
ことはさ・・・ぼ、ボク、頑張ってう、歌・・・。」
「ああ、あれか違う違う。」
「え?」
「宍戸から聞いた話だが、大規模範囲の魔法だ。」
「大規模な範囲魔法・・・?
・・・あ、ああぁ!そうか、そういうことか!
もう、なんで早く言わないんだよ!」
肩を思い切りたたく。
「聞かれなかったからな。」
「けど、これで理解したぞ。宍戸の
『あなたしかできない』って言ったの!
・・・ん?」
「どうした。」
「てことは、攻略もクソもあく、ただ大規模魔法で
吹き飛ばせってこと?」
「そうなるな。」
「・・・や、やだやだ! 絶対やだぁ!
そんなの完全にチートじゃないか! ズルだ!
インチキだ!」
駄々をこねだす。
「ボクはこのクエストをまともに攻略
しようと思ったのに!」
「知るか。」
「おーい、あっちに人いるっぽいから
救出行くってー・・・って、どしたの?」
「いや、実はな」
「ひゃっは~! 爽快すぎるぅ~!」
遠くから自由の叫び声が聞こえる。
「鳴海先輩! コンボ途切れちゃったっす!
もっかい!もっかい!」
「あ! 1発目から大振りな攻撃は
ダメだかんね~!」
純は自由のところに戻る。
「・・・・・。」
「? 楯野?」
「うぐぐ・・・お前らだけで楽しそうにして・・・。
ずるいぞ! ボクもやる! ボクもやるから
そこをどけぇ!」
望も2人のところに行く。
「・・・・・。」
拳を固くし、ぎりぎりと握りしめる。
「・・・お前ら、ちょっと来い。」
「「「! ・・・・・・。」」」
あたりにロウの怒声が響いた。
数分後
「で、救助しないとならないのって、
あと何人だっけ?」
「リストリスト・・・お、もう
こんだけじゃん。余裕だな。」
ロウの怒りのあと、
それぞれテキパキと働き始めた。
「はあ、はあ・・・死ぬかと思った・・・。
なんでアタシが・・・。」
初音が息を切らせながら戻ってくる。
「そりゃシーフみたいな避けキャラは
偵察要員ですからね。」
「で、どうだったんだ? 城の中は。」
「もう敵がウジャウジャ! イモ洗いみたいに!」
「そうか・・・。」
「城の中に絶対なんかありますって。
みんなで突撃しましょうよ。」
「あんなに敵がいて勝てるわけねーだろ!」
「いやいや、やってみないとわかんないじゃないっすか。
ゲームならリスクに見合う収穫があるのが
当たり前です。」
「そのゲームならって、信用できないでしょ・・・。
魔物が作ってるんだし、クソゲーなんだし・・・。」
「だが、あの『サイゼンセンの城』は一番
大きい建物だ。見ないことには何も言えないな。」
「きっとあの大量の数どうにかする方法が
あるはずなんですが・・・。」
「デバッグ済みのゲームなら、な。」
「・・・・・。」
「無理ゲーの場合は?」
自由は大きく息を吸う。
「ひっじょおぉぉぉに、不本意ですが、
その場合は相応の手段でいかせてもらうしか
ないっすねぇ。」
「・・・そうなるな。・・・よし、
お前ら、耳貸せ。」
「はい?」
「1個作戦がある。」
<ロウ、作戦を話す。>
「『ROOM』! 『
魔物を5体ほど切り裂く。
「おい、ロウ! 魔力!」
「ああ!」
望に魔力を渡す。
「へーき? バフ切れてない? ヒーラーは
ないからね!」
純は話しながら魔物を殴り飛ばす。
「わかってるよ! そっちこそ囲まれないよう・・・
ああ、くそ! あっちいけー!」
雷によって霧散させる。
デバイスに自由から連絡が入る。
『うーす、そっちどうです?
そろそろいきますよー』
「ああ、ケーだ!」
ロウが発したその瞬間、
爆発音が鳴り響く。
よし・・・今のところは予定通りだが・・・。
『ぎゃっ!! どこに隠れてたんだよこんなに!』
初音の驚きの声が聞こえる。
『ちょちょ、そっちちゃんと
敵ひきつけてるんすか!』
「ああ、これ以上ないくらいにな。」
「これ以上どーしろってんだ!」
『やばいっすね・・・。・・・先輩、
聞こえます?』
「ん、ああ。」
『自分お伝えしたいことが・・・・・
この戦いが終わったら・・・・・
・・・結婚、しましょう。』
「小鳥遊、切るぞ。」
通信を切ろうとする。
『ちょ・・・!? な、なんで全然ウケないんすか!?』
「とっととやれ。」
『はい。』
1時間後
「はあ・・・はあ・・・。」
望が肩で息をし始める。
「あちゃー、話には聞いてたけど、こんなに
悪化するものなのか・・・。」
「わ、悪い・・・。」
「おい、まだ城内で見つからないのか?」
『まだっす!』
「早く見つけてよ! しんどいんだからさ!」
『うわあ、階段が年末の国際展示場みたいに・・・
も、もうちょっとお待ちを・・・・。』
いや、どんなんだよ、それ。
「ん・・・? あれは・・・?」
後ろから何かが迫っていた。
『ありゃあ・・・デクだ・・・。
JGJの私兵部隊だな、援軍だぞ援軍!』
『・・・なんかチートコード使ってるみたいで
釈然としませんが・・・。こうなったら、
さっさと助けますかね。』
「そういうことだ。行くぞ。」
学園
無事に救助を終えたロウたちは
学園に報告していた。
「お疲れ。」
「ああ、かなりな。神宮寺は?」
「茉理ちゃんとこ行きましたよ。
みっしょんこんぷりっすね。」
にかっと笑う。
「はぁ~報告終わったし、とりあえず
おなかすいたな。」
「食堂行きます? 今日の定食は
コロッケでしたよ。」
「ボクはそれよりクソゲーの口直しに
面白いゲームやりたい。」
「わかる! 自分もです!」
「あたしも格ゲーやりたくなってきちゃった。
でも今からゲーセン行くのもなぁ・・・。」
軽く息を吐く。
「なにやるの? だいたいのヤツなら
ボクの部屋にあるよ。」
「マジ? 『ブレイブトーナメント』とか・・・。」
「あるよ。」
「あるの!? てか好きだったんだ!
早く言ってよ!」
「もしや、あの専用コントローラーがでっかい
太鼓のやつとか・・・。」
「ああ、『激闘太鼓ファイターズ』? あるよ。」
「マジっすか!? いいなあぁぁ!」
「・・・く、来る?」
小さい声で聞く。
「行く行く! 行きます!」
「あたしも行きたい! みんなで対戦しようよ!」
「・・・ぁ・・・。」
反応に困る。
「ええっと、しょ・・・しょうがないなぁ~・・・。
じゃ、じゃあ・・・ろ、ロウ!」
「ん?」
「お前も来るだろ? 来るよな?」
「・・・はあ、わかったわかった。
行くのはいいが、俺はコーヒー買ってから行く。」
「よ、よし! お、お前たちにもこないだ
買った良ゲー見せてやるから!」
純、自由、望は望の部屋に向かいだした。
「ところで、先輩。」
「なんだ、小鳥遊。」
「もしかして、今日イライラ
してたのって・・・・。」
「ああ、今日はコーヒーを飲む
タイミングを逃してな。」
「や、やっぱりそうだったんすか・・・。」
「まあ、あれだ。悪かったな。」
にっと笑う。
「///!」
「んじゃあな。」
「///は、はい・・・。」