グリモアーたとえ面倒でも世界は動く-   作:FAMZ

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第83話 ピアス

翌日

 

学園 廊下

 

「ふわぁ・・・あ・・・。」

 

大きく欠伸をする。

 

「あ~ちくしょう、寝たりねえ・・・。」

 

頭をポリポリと掻く。

 

「た、た、助けてぇ!」

 

「うん?」

 

大声が聞こえ、周りを

2,3回確認する。

 

「あっ! ろ、ろろロウ!」

 

「なんだ、音無か。」

 

ロウの方に勢いよく

律が駆け寄ってくる。

 

「そんなこと言わないで助けてくれよ!

 ち、千佳、千佳に殺される~!」

 

「はぁ?」

 

「はぁ・・・はぁ・・・。」

 

大きく肩で息をする。

 

「うぅ・・・あ、アイツがあんな

 野蛮なヤツだと思わなかった!」

 

「何があったんだよ。」

 

「だって、あたしの耳に安全ピン刺そうと

 すんだよ!?」

 

若干涙目になる。

 

「恐ろしいだろ!? 残酷だろ!? そんなこと

 されたら耳から血ぃドバドバ出て絶対痛いだろ!?」

 

「バイオレンスな喧嘩だな。」

 

「・・・・あ。」

 

「ん?」

 

「ああ、その、えーと、違うんだよ。

 喧嘩じゃないんだけど・・・。」

 

「なんだ違うのか。」

 

律は周りをきょろきょろと確認する。

 

「と、とりあえずここから離れよう。

 千佳に見つかりたくない・・・。」

 

「結局何やろうとしてたんだ?」

 

「その、ピアスを開けようと思って・・・。」

 

「ピアス?」

 

「ほら、ロックな奴はみんなやってるだろ?」

 

「まあ、イメージはあるが・・・・・

 今してるのは違うのか?」

 

律の耳を指さす。

 

「今してるのは、イヤークリップっていうんだ。

 はめるだけのヤツ。」

 

「へぇ・・・。」

 

「でさ、あたし千佳に聞いたんだよ。

 ピアスってどうやってあけんのって。

 ・・・そしたら、あいつ安全ピン出してきて

 『おし、やるぞー』って!」

 

「安全ピン?」

 

あんなんでいいのか・・・?

 

「すっげえぇ~怖えぇよ! あたし、千佳が

 怖いと思ったの初めてだよ! ・・・・・ねえ、

 ほんとにみんな針でやってんの? 信じらんねーんだけど・・・。」

 

「大体そうなんじゃないのか?

 針ぐらいしか方法ないだろ。」

 

「うそだろ!? 痛くねーの!? だって耳

 ぶっ刺して穴開けるってことだろ!?」

 

「そりゃそうだろ。」

 

「マジか・・・ピアスしてるやつら、

 なんであんなに平気な顔してるんだよ・・・・

 ・・・・げっ!?」

 

何かを見つけ、物陰に隠れる。

 

「どうした?」

 

「ち、千佳がいたんだよ・・・・。

 もう少しで目が合うところだった・・・。」

 

「もはやロックってなんなんだろうな。」

 

「こ、こうなったら・・・。」

 

デバイスを取り出し、

連絡を取り始める。

 

「えっと・・・・『ピアスの穴は

 ロウがやることに』」

 

「はぁ!?」

 

「『したから。もう大丈夫』・・・っと。」

 

もあっとに送信する。

 

「くそ、なんだって俺が・・・。」

 

「頼むって! だって、ロウってさ

 医者の息子なんだろ!?」

 

「確かにそうだが・・・って、なんで知ってる?」

 

「え? 確か・・・氷川がそんな話してるのを

 聞いたぜ?」

 

「・・・・・そうか。」

 

くそ、まだ調べてやがったか・・・・・。

 

「どうかしたか?」

 

「・・・いや、なんでもねえ。

 とりあえず、移動するか?」

 

「おう!」

 

 

 

 

<ロウ、律、移動中>

 

 

 

 

10分後

 

教室

 

「さっき聞いてきたんだけど、

 これなら痛くないって。ピアッサーってヤツ。」

 

ピアッサーと呼ばれる道具を

机の上に置く。

 

「パチンと挟むだけって言われたんだけどさ・・・

 ・・・でもこれさ・・・、どう見ても痛いよな!?

 見ろよ、この先端! 凶悪だろ!?」

 

針の先をロウに見せる。

 

「開ける分にはこれくらいがちょうど

 いいんだろ。てか、いい加減覚悟決めろ。」

 

「うぅ・・・・わ、わかったよ。あたしは

 耐えるぞ。最初の一歩が肝心なんだ。」

 

「そういうこった。」

 

ロウはピアッサーを手に取り、

律に渡す。

 

「すー・・・はー・・・すー・・・はー・・・

 落ち着け、落ち着け、律・・・・。」

 

何度も深呼吸をする。

 

「どってことない・・・一瞬だこんなの・・・

 あたしはロックミュージシャンに・・・・。」

 

「もういいか?」

 

「あ、ああ・・・。も、もし失敗したら

 すぐ救急車呼んでくれよ。すぐだぞ。」

 

「わぁったよ。」

 

「デバイス持ってて。救急車呼べるように

 画面出しといてくれ。」

 

デバイスを操作し、119を打ち込む。

 

「うん・・・そう。じゃ、じゃじゃじゃぁ、

 いい、いくぞ。」

 

「ああ。」

 

「せーの・・・あ、ちょい待ち・・・。

 ご、ごめんちょっとタンマ。」

 

「どうした?」

 

「・・・なあ、ロウがやってくれない?

 穴開けるの。」

 

「はあ? 俺やったことねえんだよ。」

 

「だってさぁ・・・自分でやるのはどうも

 なんていうか・・・その・・・。」

 

「・・・はあ、わかったよ。

 適当にやるが文句言うなよ?」

 

「いいよいいよ! 文句言わないから!」

 

ピアッサーをロウに渡す。

 

「ここ! ここグッと押し込めばいいから!

 簡単だろ!?」

 

押し込む部分を指さす。

 

「ああ。」

 

「よ、よし。じゃあこれ持って・・・いいな?

 デバイスはあしたが持ってるから。」

 

デバイスを手に抱える。

 

「で、どうやるんだ?」

 

「あたしが合図するから、そしたら一気に

 やってくれ。手加減すんなよ。」

 

変なとこロックにするな・・・。

 

「じゃ、じゃあカウントダウンだ。

 3・・・2・・・」

 

ゆっくりとピアッサーを近づける。

 

「あ、あの、1じゃなくて

 0でやるんだぞ・・・。」

 

「おい。」

 

「ご、ごめんごめん! マジごめん!

 もっかい! 今度はほんとに!」

 

「次は止めんなよ?」

 

「ああ・・・・いくぞ・・・・・

 3・・・2・・・・い、ち・・・・」

 

徐々に声が細くなる。

 

「?」

 

「・・・・・うぅ・・・。」

 

涙目になる。

 

「・・・・・やっぱ、怖い・・・・・。

 また、今度にする・・・・。」

 

「てめえ・・・。」

 

律はロウにデバイスを返すと

ゆっくりと教室を出て行った。

 

あいつロックのかけらもねえな。

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