グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
学園
校門前
「ダーリーン!」
「ん?」
校舎の方から香ノ葉が
ロウを呼びながら走ってくる。
「どうした?」
「ついに! やっと! ようやくやよ!」
「な、なにがだ?」
「やっとウチに順番が回ってきたんよ!」
「・・・・・。」
話が見えないな・・・・。
「最近な、ダーリンにアプローチする子が
増えてきてるやん?」
「? そうなのか?」
軽く首をかしげる。
「そうなんよ。ウチかてダーリンへの思いは
負けてないんよ。でもな・・・・・・。」
「?」
「ダーリン、優しいから。ふらふら~って、
女の子を寄せ付けてしまうんよ! 誰とは言わん
けどな。・・・って、何の話やったっけ?」
「もしかして、今日クエストなのか?」
「あ、ああ! そ、そうやよ! クエスト!」
「聞こうと思ったがずっとしゃべってるからな。」
「か、堪忍やよ・・・?
けど今日は、ダーリンとウチの共同作業なんよ。
2人の!!!! 共同作業なんよ!!!!!
やから、邪魔が入らんうちに出発やよ!」
「あ、ああ・・・わかったから、とりあえず、
落ち着け。」
「・・・・・・。」
クエストに向かおうとした香ノ葉が
ロウをじーっと見ている。
「手、繋がへん?」
「早く行くぞ。」
<ロウ、香ノ葉、移動中>
地下鉄工事現場
「ダーリンダーリンダーリ~ン!
置いてったらいややわぁ!」
「早く行くって言ったろ。」
軽く頭を掻く。
「せっかくな、せっかくダーリンとの
クエストが設けられたんよ。そんなに急がんでも
ゆっくり愛を深め・・・・違った。ゆっくり魔物を
倒すんよ。」
「思い切り言ってるからな。」
「ほら、ウチが守ってあげるからもっと
近づいてえな。」
「それはわかるが・・・。」
「?」
「近くないか?」
香ノ葉はロウと腕を組んでいた。
ロウはゆっくりと解く。
「あぁん、腕くらい組んだってバチ
当たらんのに・・・。」
「刀振れねえだろ。」
「ええやんええやん。一緒にお泊りで
温泉に行った仲やんか~。」
「・・・・・・ああ、だが
他の奴らもいただろ。」
「み、みんなで行ったのは確かにそうなんやけど・・・
大事なのはそこやないんよ。」
自分の頬を押さえる。
「ウチと、ダーリンが、お泊りで、温泉!
もう既成事実ができてるんよ!
・・・・あれ?」
近くにいたはずのロウの姿が見えない・・・が
数メートル先にすぐに見つけた。
「あ~ん、冗談やって! 待ってぇな~!」
駆け足で追いかけた。
10分後
「はあ・・・ダーリン・・・・や、
やっと追いついた!」
「にしても、魔物あまり出てこねえな。」
きょろきょろと周りを見る。
「ダーリン! クエストは共同作業なんよ!
単独行動はあかん思うえ!」
「・・・まあ、一理あるな。」
「そうやろそうやろ? もうだいぶ歩いたし・・・
少し休憩せえへん?」
「ん、そうだな。」
2人は近くの段差に腰掛ける。
「さぁ、はい。どうぞ。」
熱いお茶の入ったコップを差し出す。
「ああ、悪いな。」
ゆっくりと飲む。
「はぁ・・・うまいな。」
「ほんまぁ? ダーリンのために持ってきて
よかったわぁ。」
そう言いながら、カバンを探る。
「他にも何かあるのか?」
「うん。これぜ~んぶ茶道の道具やえ。
どうや? 置くだけで雰囲気が出るやろ?」
「ああ、いいもんだな。」
「そやろ? あ、でもまだまだあるんよ?
おすすめの、めっちゃおいしい和菓子持ってきてん。
うちの好きな羊羹やえ。」
「へぇ・・・。」
「ふんふふふ~ん♪ ふん・・ふ・・ふ・・・。」
鼻歌が途中で止まる。
「? どうした、白藤。」
「あれ・・・? あれ・・・!?
・・・しもたー!!」
「!?」
突然大声が出たため、思わず驚く。
「よ、よよ羊羹わすれてしもうたわー!」
「なんだ、そうか。んじゃあ、休憩は終わりだ。」
「う、うぅ・・・そ、相談なんやけど、
今から羊羹を」
「だめだ。」
「そ、そんなかぶり気味にダメ出しせんでも・・・
いけずぅ・・・。」
「そうは言っても大分時間経っちまったしな。」
「あかん・・・うち、戦えへん・・・。羊羹がないと
力が出えへん・・・。」
「・・・・・。」
放っておいて立ち去ろうとする。
「ちょ、ダーリン! ほんの冗談やん!」
「どうせ、精霊あたりに持ってこさせてると
思ったしな。」
「う・・・じ、実際そうやけど・・・。」
香ノ葉の精霊が羊羹と手渡す。
「もうちょい休憩したらまた、
頑張ろうな。」
にこりと笑った。
数分後
「え~い!」
香ノ葉が炎を出し、
ハートの形をした魔物を攻撃する。
うめき声をあげ、霧散する。
「ふふふ・・・ダーリンとウチがコンビを
組んだら無敵なんよ! 愛の力に勝てる相手なんて
いないんやえ!」
「だが、魔物の方はあまり強くはなさそうだな。」
「・・・ダーリン。」
「ん?」
「ダーリンな、今日はウチに任せといてほしいんよ。」
「どういうことだ?」
「ダーリン、転校してきてからずぅっと
忙しそうなんよ。それに裏世界やら科研やら、
いろんな問題に関係してるやろ?」
「ああ、まあな。」
「魔力がいっぱいあっても、疲れちゃうんやえ。
心配してるんよ。やから、今日はぜえんぶウチが
やったるからね!」
「・・・白藤、お前・・・・。」
「ダーリンはちょこっとだけ魔力くれれば
あとは何もしなくてええんやえ。」
そう言ったところに
先ほどと同じ魔物が2体出てくる。
「よーし、いっくでぇ!!」
炎を出し、魔物を迎撃する。
しかし、1体はそれをかわし
香ノ葉に接近する。
「ひゃあ!?」
香ノ葉もそれをぎりぎりでかわす。
「はあ・・・はあ・・・。」
魔力が少なくなってきたのか
息切れし始める。
「白藤、手伝うぞ。」
「だ、大丈夫・・・やよ。
ちょっと、魔力使いすぎちゃっただけやから・・・。」
「・・・! 『ROOM』!」
何かに気づいたロウは
青いサークルを出現させる。
「だ、ダーリン?」
「伏せろ!」
「う、うん!」
刀を振る。
香ノ葉の後ろから攻撃しようとした
魔物を切り裂いた。
「よし・・・。今ので一通りは倒したな。」
「はあ・・・・はあ・・・そ、そうやね・・・。」
「とりあえず、魔力補給するぞ。」
「・・・ごめんな・・・ダーリンのためって
張り切りすぎちゃったんよ・・・。」
「まったく・・・。」
目をつぶり、魔力を補給させる。
「・・・今度こそ、ちゃんとせんとね!
見といて! ウチ、やったるんよ!」
「そうか・・・・ん?」
「どうしたん?」
「・・・何か来てるな。」
その瞬間、2人の後ろに
さっきの魔物の数倍大きい魔物が現れる。
「ボスか・・・。」
刀を構える。
「2人でやるぞ、白藤。」
「! ダーリ~ン!!」
ロウに強く抱き着く。
「・・・んなことしてねえで、
まずはあれ倒すぞ。」
「うん! いっくでぇ~!!」
今までの炎より、一回り巨大な
炎が魔物に浴びせる。
「『
魔物が炎に気を取られている間に
ロウが魔物を真っ二つに切り裂いた。
「もう1発や!」
とどめに再び炎を魔物にあて、
見事に霧散させる。
「よし・・・Mission Complete・・・か。」
「ふんふん♪ これでクエスト終わり・・・
終わ・・・・あああ~!!!」
「!? どうした?」
「倒してしもうたやんかぁ!」
「はあ?」
「まだ時間あるやんか・・・もっとダーリンと
2人がいい~!」
「馬鹿言ってねえでとっとと帰るぞ。」
「・・・うん、帰らんとあかんね。そやかて
ダーリン、ウチの気持ちもわかってえな・・・。
・・・・そーや!」
「?」
「後でお疲れさま会やるえ! 2人でな、
茶道部の部室でな!」
「はあ・・・ああ、わかったわかった。」
少し面倒そうに返事する。
「そうと決まったら、ほら帰るえ!」
「さっきと真逆だな。」
「早く早く! 急いで準備せんと!」
ロウはゆっくり、香ノ葉は駆け足で
学園へと戻っていった。