グリモアーたとえ面倒でも世界は動く-   作:FAMZ

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第91話 人造生命体

休憩を終えたロウたちは

タワーの地下通路の奥を進んでいた。

 

「・・・また分かれ道。もしかして、

 風飛一帯に広がっているの?」

 

「そんなバカな・・・。歴史の異なる表と裏

 なので正確にはわかりませんが・・・朱鷺坂さんの

 言葉によれば、表の方が技術は発達しているはず。

 なら、表の地下にもこういった施設がなければ・・・。」

 

「・・・・・。」

 

ロウは通路の壁を何度かなでる。

 

「ロウさん?」

 

「ん、どうした?」

 

「どうかなさいましたか? 何度も壁を・・・。」

 

「・・・いや、なんでか来たことが

 あるような、ないような・・・・・・

 そんな気がしてな。・・・・・地下・・・・。」

 

ぼそっとつぶやく。

 

「・・・・・!? まさか・・・。」

 

「ロウ君、あなたの考えたことはわかったわ。

 卯衣、この前白藤さんがクエストに行った、

 地下鉄の延長工事。あれの深さのデータはある?」

 

「多少誤差はありますが、現在の深度とは

 ほぼ一致しています。」

 

「やっぱりそうか・・・。」

 

通路の床や壁を見る。

 

「まさか・・・。本当なら、もう第8次侵攻が

 起きているんですよ?」

 

「地下鉄の全部が全部、そうだというわけではないわ。

 あの工事もこちらでは行われていないでしょう。

 けれど、風飛には元々軍事貨物を運ぶための

 大深度地下ステーションがある。」

 

「なるほど、それを再利用すればこの

 バカでかい地下通路を造ることはできるな。」

 

「・・・すると・・・・・。」

 

「ええ。表の風飛の地下通路。その地図を

 手に入れればこの迷宮の全貌がある程度、

 判明するかもしれない。」

 

「その程度、生徒会から国軍に働きかければ

 手に入ります!」

 

珍しく、薫子が声を荒げる。

 

「落ち着け、副会長。地下がここまで広いことが

 わからなかったんだ。仕方ない。」

 

「卯衣、あなたにそのデータはないわね?」

 

「はい。地下では通信も行えないので、

 現在、入手方法はありません。」

 

「・・・戻る暇はないな。」

 

「今は進みましょう。ここまで来たら、この先だけは

 確認しなければ。」

 

「みんな、ペースを上げたほうがいいかも。」

 

「? ロカ。どういうことだ?」

 

「・・・・。」

 

卯衣が目を閉じる。

 

「後方から魔物の接近を確認。POTIでは

 ありません。未確認です。」

 

「あの犬じゃない・・・?」

 

「すごい不気味な気配だ。相手にしないほうがいいよ。

 絶対。」

 

「賛成します。推定全長、およそ250メートル。」

 

「に、にひゃく・・・。」

 

ゆかりは言葉が詰まる。

 

「250メートル!? そんな魔物・・・・

 ムサシ級ではないですか!」

 

「静かに。まだ距離はあるのね?」

 

「はい。足跡のついていた分かれ道。

 そちらから来たようです。」

 

「この通路を250メートル・・・。

 巨大なムカデ・・・ってところか?

 だがこれで、本当に戻れなくなったな。」

 

「・・・そうね。ここは進みましょう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ・・・はっ・・・どうですか?

 まだついてきますか?」

 

「気配は消えていない。でも代わりに・・・

 ポチだっけ? あれの気配も消えた。

 とにかく、分かれ道には気を付けて。アタシが注意

 してるけど陰からとびかかられたら危険だから。」

 

「ったく、面倒なムカデだ・・・。」

 

少し垂れた汗を拭う。

 

「ロウ君、平気? 暗所恐怖症や閉所恐怖症は・・・」

 

「椎名、あるように見えるか?」

 

「・・・ないわね。虫も平気?

 苦手なものってある?」

 

「・・・・あれじゃなきゃいい。」

 

「え?」

 

「いや、なんでもない。てか、結構

 話してくるな。」

 

「ごめんね・・・話してないとちょっと怖くて・・・。」

 

「待った! ストップストップ!」

 

大声をあげて止める。

 

「お、大声を出さないでください!」

 

「・・・・・ここだ! この近くにだれか

 人がいる!」

 

「! 本当か!」

 

「ね、ねえ! なにがあるの!?」

 

「・・・ある。ものすごく薄く積もった

 塵の上に・・・通路を車輪が横切ってる・・・。」

 

床をじっくりと見る。

 

「・・・・・卯衣。スキャンして。」

 

「はい。・・・・・・・隠し扉です。」

 

「開けられる?」

 

「はい。指紋認証センサーが隠されています。」

 

「指紋認証センサーで開くとは・・・・・

 ま、まさかここに・・・?」

 

「・・・・。」

 

結希がセンサーに触れる。

すると、センサーは認証され

扉が開いた。

 

「・・・開いた・・・。こっちは!?」

 

ヤヨイは気配を確認する。

 

「やば! 迫ってるよ! 近いほうの

 部屋に入って!」

 

全員、急いで部屋の中に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

研究室

 

「・・・・ふぅ、過ぎたみたいね。」

 

「・・・ここは、研究室?」

 

「どうやら、そうらしいな・・・・・。

 ・・・・・ん?」

 

部屋の中を歩いたロウは

床にあった何かを蹴飛ばした。

 

「これは・・・・・ゲーム機?」

 

小型のゲーム機を持ち上げる。

 

「なんで崩壊後の施設にそんなものを・・・。」

 

「ゲーム・・・・まさか。」

 

ロウはゲーム機を床に置き、

部屋の奥に進む。

 

奥には扉があった。

 

「・・・・・。」

 

「ロウ君?」

 

ロウは扉を開けた。

 

そこには、ベッドに横になった

結希に似た女性がいた。

 

「わ! あ、あれって大人の宍戸さん?」

 

「ということは・・・・あいつが

 いてもおかしくないな。」

 

「どしたの? 誰の事?」

 

「楯野だよ。ゲームといえば、あいつだ。」

 

「隣の部屋、ゲーム機がたくさんあったの。

 でも、楯野さんはいなかった。もしかして

 こっちに」

 

「いないわ。」

 

「・・・え?」

 

「楯野さんは随分前に死んだ。もともと

 長く生きられない体だった。」

 

「・・・それって、霧過敏症のこと?」

 

恐る恐る聞いた。

 

「ええ。科研は彼女を実験台に『霧を正確に

 感知する人間』を作ろうとした。けれど、彼女は

 元々体が強いほうではない。実験には

 耐えられなかった。」

 

「・・・それで、どうなった。」

 

「科研崩壊のとき、ここまで博士に頼んで

 連れてきてもらった。けれど、施設内の霧が

 濃くなるにしたがって、私よりもひどくなった。

 彼女の望みは、苦しみを取り去ること。だから・・・・

 安楽死させたわ。この体でも右腕はまだ動く。」

 

「・・・・・そんな・・・・。」

 

「あなたたちが知っているということは

 そちらでは学園に入学しているのね。」

 

「ええ。クエストにでることで体力が

 ついてきてる。以前に比べたら改善している。」

 

すでにいた結希が答える。

 

「ふふふ・・・・不治の病とはいえ、改善するのなら

 そうしたほうが良かった・・・・。」

 

軽くほほ笑む。

 

「けれど、今は話題を移したい。この子のことを。」

 

「・・・ドクター・・・。」

 

「この子は立花卯衣。あなたが今、作っている

 『人造生命体』。」

 

「・・・ええ。なんとなくわかったわ。

 でも、カプセルを見ればわかるでしょう?

 まだ完成には程遠い。あなたに会うのはまだ先ね。」

 

「・・・マスター・・・。あなたは、

 私が生まれてすぐに死んでしまう。いくつかの

 事柄と命令を下しただけで、いなくなってしまう。

 ・・・わたしは、その命令を忘れてしまったのです。

 生きろという命令以外を・・・。」

 

「・・・・うっかりさんね。じゃあ・・・まだあなたの

 生みの親ではないけれど答えるわ。あなたを作ったのは

 1つは政府の要請。魔物に対抗する生物兵器として。」

 

「・・・・・。」

 

卯衣は黙って答えを聞く。

 

「そしてもう1つは、私の長年の目標・・・・魔物の

 脅威にさらされない、人間。見たところいくつか

 人間として不自然な点がある・・・。詰めが

 甘かったわね。」

 

少し、ため息をつく。

 

「でも、考えていたことはただ1つよ。あなたは

 人造生命体。だけど、人間として誕生したの。

 だからあなたは・・・・・人間として生きるのよ。」

 

「・・・・・・!! マスター!!」

 

「・・・。」

 

立華がここまで大声出すとはな・・・。

 

「・・・宍戸博士! あなたに要請します!」

 

「いえ、断るわ。」

 

見透かしたかのように、結希の

要請を断る。

 

「ごめんなさい。けれどこのゲネシスタワーには

 私が必要。JGJが共生派に乗っ取られ、科研がない今、

 ここには・・・その残党がいる。彼らのために

 私は兵器を開発しなければならない。」

 

「・・・・。」

 

「それに私は、卯衣を作らなければならないでしょう?

 私が『そちら側』に行って、卯衣が消えてしまったら

 ・・・・取り返しがつかないわ。そして、裏切り者に

 ・・・必ず報復しなければならないから。」

 

裏切り者という言葉に

ロウの眉が一瞬ピクッと反応する。

 

「・・・裏切り者? 誰だ、それは。」

 

「・・・・双美、心。」

 

「!?」

 

双美・・・?

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