グリモアーたとえ面倒でも世界は動く-   作:FAMZ

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第92話 苦悩

「そして、裏切り者に

 ・・・必ず報復しなければならないから。」

 

裏切り者という言葉に

ロウの眉が一瞬ピクッと反応する。

 

「・・・裏切り者? 誰だ、それは。」

 

「・・・・双美、心。」

 

「!?」

 

双美・・・?

 

「・・・どういうことだ。」

 

「彼女は、霧の守り手に送り込まれた、スパイ。」

 

「・・・教えて、詳細を。彼女は

 こちらでは学園に入学している。」

 

「双美心は、第8次侵攻の直後に科研に

 来たわ・・・。私も学園から移送されていた。

 イギリスの研究施設にいて、そこが破壊されて

 転属してきたみたい。」

 

「・・・・・。」

 

「ちゃんと名簿もあった。けれど・・・彼女は

 共生派だった。どうやったかは知らないけれど・・・

 科研のセキュリティを突破して、情報を全て流出させた・・・!」

 

「・・・双美さんの得意魔法で、全ての

 情報セキュリティを痕跡なくスルーできる。」

 

「・・・どうやら、あの時の努力は

 無駄だったみたいね。」

 

少し溜息を吐く。

 

「あの後、双美さんはやはり霧の守り手に・・・

 でも、なぜ? あの時の双美さんは何も特殊性は

 なかった。もう1つの人格も・・・。」

 

「魔法使いでもなかった・・・もしかしたら、ただ

 覚醒しやすいというだけで・・・女児を

 集めていただけかも。」

 

「・・・つまりは、双美が敵になったことで

 人類が敗北を・・・?」

 

少し、ロウの体が震えている。

 

「双美心はまだ生きているはず。私は、彼女を

 許さない。絶対に・・・。私にはやることが多いわ。

 だから、ごめんなさい。そちらの世界に行くことはできない。」

 

「・・・・・・それなら、私はゲートを

 見つける。今より未来につながるゲートから、全てを

 終えたあなたのところを訪れる。その時こそ連れていくわ。」

 

「・・・・・・指しか動かせないかもよ?」

 

「私たちは数字を見るだけの体力さえあればいい・・・

 でしょう?」

 

「・・・ああ、懐かしいわね。天がよく言ってたわ。

 あの子も・・・そうだ、その引き出し。」

 

机の引き出しを指さす。

 

「あなたに託す。渡してもらっていいかしら。」

 

入っていたのは、緑色の

結晶のようなものだった。

 

「天の・・・エナジーシェル・・・。」

 

「彼女もずっと前に死んでしまった・・・。

 だけど、ゲーム機と同じように・・・体が

 動く限りはメンテナンスしてる。1個しかないのでしょう?

 万が一のスペアとして使って。」

 

「・・・・わかった。」

 

エナジーシェルを懐にしまう。

 

「卯衣。」

 

「・・・はい。」

 

「命令はわかったわね?」

 

「はい。魔物の殲滅。そして・・・

 『人間として』生きる・・・了解しました。」

 

「・・・あなたの組成データを渡しておくわ。

 これでメンテナンスも楽になる。

 ・・・・・結希ちゃん。」

 

「・・・・・?」

 

「ALSは、私を車いすに縛り付けたけれど・・・

 言葉と右腕はまだ自由。これだけあれば、私は平気。

 あなたも、ALSに罹患するかもしれない。

 ・・・でも、私たちは平気でしょ?」

 

「・・・宍戸博士・・・。」

 

「・・・・世界を救ってね。それが、

 私があなたたちに遺す、意志。」

 

にっこりと笑う。

 

「・・・はい。」

 

その後、ロウたちは

表世界へと帰って行った。

 

 

 

 

 

 

 

<ロウたち、表世界へ>

 

 

 

 

 

 

表世界 学園

 

寮 ロウの部屋

 

「はあ・・・・はあ・・・・!」

 

ロウは裏世界から帰って

苦しそうに頭を押さえていた。

 

「違う・・・俺は違う・・・・!!」

 

何度も床を転がる。

 

「ぐ・・・・あああ・・・!!!

 やめろ・・・違うんだ・・!」

 

ロウはこの日、原因不明の頭痛に襲われ

翌日、学園の授業を欠席した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

「ろ、ロウさん・・・?」

 

欠席したロウの部屋を

智花が訪れた。

 

「!?」

 

智花が驚いたのも無理はなかった。

部屋は泥棒が入ったかのように

荒らされていた。

 

「! ロウさん!」

 

ロウは壁に寄りかかり

ぐったりしていた。

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

「・・・ああ・・・・問題ない。

 これは自分で、やったからな・・・・。」

 

壁を支えにして、なんとか

立ち上がる。

 

「はあ・・・はあ・・・このことは・・・

 誰にも・・・言うな・・・。」

 

「え・・・で、でも!」

 

「いいから言うな。」

 

息を切らせながらにらみつける。

 

「・・・・わ、わかりました・・・・。」

 

「・・・それで、何しに来たんだ?」

 

「あ・・・・ぷ、プリントを渡しに・・・。」

 

鞄からプリントを取り出す。

 

「・・・・それと・・・。」

 

「ん?」

 

「実は・・・相談したいことがあって・・・。」

 

「相談? ・・・まあ、いい。

 話してみろ。」

 

「ろ、ロウさんは時間停止の魔法って、

 わかりますか?」

 

「時間停止・・・ああ、東雲に

 かかっているやつか。」

 

「はい・・・。そして、今、その魔法が

 ・・・こ、この学園にかかっているんです。」

 

「・・・その話なら聞いた。会話を

 とうちょ・・・・風のうわさでな。」

 

「あの、盗聴って」

 

「何の話だ?」

 

ロウは何も言っていないようにとぼける。

 

「それで、その時間停止がどうした?」

 

「・・・それが・・・その魔法を

 使ったのは・・・私じゃないかって・・・。」

 

「・・・なに? ・・・誰が言ったんだ?」

 

「あ、アイラちゃんです・・・。」

 

「東雲・・・んまあ、あいつが

 言うなら少なくとも適当じゃないだろう。

 ある程度の根拠があんだろ。」

 

「・・・や、やっぱり・・・そうですよね・・・。」

 

「?」

 

「最近、周りの人たちにも裏世界の

 記憶が見えてるらしんです・・・。」

 

徐々に智花の目に涙がたまる。

 

「・・・・・。」

 

「ロウさん・・・なんで私、

 そんな魔法使ってるんでしょうか・・・。」

 

「・・・・・。」

 

「や、やっぱりこんなこと言っても・・・」

 

「別にいいだろ。」

 

「・・・え?」

 

「それで人が死んでいくっていうのなら

 ともかく、今はそれでどうにか生きてる。

 なら今はそれでいいんじゃねーのか?」

 

「・・・ロウさん・・・。」

 

「とにかく、今はあまり考えるな。

 それだけだな、俺が言えるのは。」

 

「・・・・あ、ありがとうございます!」

 

うれしそうな笑顔を浮かべる。

 

「じゃあ、話し終わったから

 横になっていいか? 昨日寝て

 ・・・・な・・・くて・・・。」

 

一気に眠りについた。

 

「は、早い・・・・・。」

 

寝たロウを見て、

智花は起こさないようゆっくり出た。

 

 

 

 

<ロウ、睡眠中>

 

 

 

 

数時間後

 

ピピピピピ!

 

「ん・・・?」

 

デバイスが鳴り響き、

ロウは目を覚ます。

 

「ふあ~あぁ・・・・。

 ・・・ったく、クエストか。」

 

思えばクエスト以外で

デバイス鳴ったことねえな・・・。

 

「服部とか・・・・。

 んまあ、行くか。」

 

かけてあった刀を手に取り、

ロウはクエストに向かった。 

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