グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
風飛市内
廃ビル
「・・・それは本当か。」
「ああ。マジの話だ。」
ロウは義人に呼び出され、
いつもの廃ビルに来ていた。
「・・・あいつに・・・天羽に
息子だと?」
「正確には本妻との間にできたんじゃ
ないけどな。」
タバコに火をつける。
「にしても、よくそんな情報がわかったな。」
「いろいろ危なかったけどな。
あ~疲れた。」
首をぐるぐると回す。
「んで、どうする? そいつも
標的にするのか?」
「・・・当然だ。あいつの息子なら
なおのことだ。」
「・・・つか、お前まだ尾行されてんのか?」
「ああ。どうやら、風紀委員はまだ
疑ってるらしい。」
ピピピピピ!
「・・・ん?」
ロウのデバイスが鳴り響く。
「もしもし、月宮? ・・・・
JGJが?」
沙那あら電話を受けたロウは
辺りをきょろきょろと見る。
「!」
ある建物から煙が上がっているのが
見つかった。
「ああ、確認できた。すぐに向かう。」
通話を切る。
「どうした。」
「悪い、おっさん。これから
JGJに向かう。」
「JGJ? 何かあったのか。」
「・・・本社が、デクに襲われている。」
「!! ・・・気を付けろよ。」
肩をポンポンと叩き、駆け足で
廃ビルを出た。
「・・・わかってるっつの。」
<ロウ、移動中>
JGJ本社
「それで、状況はどうなっている?」
ロウはすでに到着していた
初音、沙那に状況を聞いた。
「今襲ってんのはCM-06JX・・
カムロジクシーだ。」
「私たちの戦闘服であるミストファイバーは
霧と性質がよく似ています。対魔物用の銃弾に
対し、効果が薄いことも実証されています。」
「なるほど、下手な魔物より
よっぽど厄介だな。」
めんどくさそうにため息を吐く。
「だから、アタシたちがやるんだ。
外からだと屋上の奴が狙い撃ってきやがる。」
「改めてカムロジクシーですが、何者かの
手で電子頭脳が起動されています。私たち魔法使いを
敵と認識し攻撃を仕掛けてくる。今のカムロジクシーは
大変危険です。」
「心配はするな。少なくとも、俺は今はここじゃ
死なないしな。」
「?」
「・・・兄様、待ってろよ。絶対、
助けるからな。」
<ロウ、初音、沙那、移動中>
ロウたちは途中で合流した
茶道部のメンバーと共に徐々に
上がり始めた。
「階段までバラバラになってるのか。
人のビル好き勝手にしやがって・・・。
ウチの商品だからって容赦しねーからな!
全部スクラップだスクラップ!」
地団駄を踏んで怒る。
「しかし、ここはカムロジクシーの攻撃も
激しくなっています。退避された方がよいかと。」
「のーです! ワタシ、樹さんをれすきゅー
するために来ました!」
沙那の提案をソフィアが
少し焦った様子で断った。
「わたくしもです。樹様とは一時とはいえ
ご縁がありました。それにソフィアさんが
お世話になっている方です。」
「ウチはだーり・・・もそうやけど、2人が
行くならついていくえ。」
葵、香ノ葉も同意する。
・・・てか、今俺の名前出そうとしたな?
「・・・ってことだ。ここは進む方が
いいと思うが、どうする? 月宮。」
「・・・・・かしこまりました。では、
合流して進むとしましょう。樹様の
ために、ありがとうございます。」
少し笑い、ゆっくりとお辞儀をした。
<ロウたち、移動中>
「『ROOM』! 『ラジオナイフ』!」
向かってきたデクを
真っ二つに切り裂いた。
「あーもう! デクが敵になるって
やだよ、ホント!」
「あうー・・・。」
「はあ・・・はあ・・・頑丈やね・・・。
カムロジクシーやったっけ?」
額から流れる汗を拭う。
「よし・・・ここは片付いたな。」
「階段も見つかったし、さっさと
上に上がろうぜ!」
そう言って、初音は先へと
進もうとするが・・・
「お待ちください。先に私が調べましょう。」
沙那がそれを遮った。
「早くしろよなー。急いでるんだからさ。」
「かしこまりました。・・・ロウさん。」
「ん?」
小声で沙那が話しかける。
「神宮寺樹様のことですが・・・。」
「・・・わかってる。すでに攻め込まれてから
大分時間が経ってる。・・・最悪の事態に
なるかもしれねえな・・・。」
「もちろん無事であるに越したことは
ありません。その方が初音様にも
よいことです。」
「・・・まあ、あの性格なら
案外しぶとく生きてるかもな。」
少しにやりと笑う。
<ロウたち、移動中>
「はあ・・・はあ・・・こ、こんな
ビル最上階まで上らせんなよな・・・。」
息切れしながらも
本社の最上階の少し下までたどり着いた。
「休憩したほうがいいんよ。ビルに入ってから
戦い続けてるやろ?」
「バカ言うなよな。兄様は武装してても
一般人だ。相手がデクならどうなるなんて
神宮寺なら誰でもわかる。いったん合流しちゃえば
籠城だってできるんだ。」
「・・・・。」
「沙那! 今何階だったっけ!」
「あと5階で最上階です。また空間の
歪みがなければもう少しです。」
「よし・・・兄さま・・・待ってろ。」
そう言って初音は
先に進んだ。
「・・・ダーリン、止めなくて大丈夫やろか。
初音ちゃん、最初はいつもみたいに余裕
やったけど、今は・・・・。」
「言っても止まるはずねえだろ。
それに身内が関わってて冷静になれる
奴なんていねえよ。」
「でも休憩したほうがいいんよ、絶対!
・・・でも急いだ方がいいのもわかるんよ。
ウチら、どうしたらいいんやろか。」
「・・・お気遣いは無用です。」
「! 月宮。」
様子を察した沙那が話しかける。
「どうか皆さま、ここで休憩を。私と初音様は
先に社長室へ向かいます。」
「な、何言うとるん! そんなの一番危ないやんか!」
「ええ。ですが先ほど白藤さんがおっしゃった
通り、私たちが急いでいるのは救出対象が身内
だからです。あなた方に無理をさせるわけには
参りません。ですが、急がなければならない。
これは私たちの我儘なのです。ご容赦ください。」
「・・・で、ですが・・・。」
「のーです! 違います! 初音さんも
月宮さんも樹サンのことを大事に思っています!
どうしたも助けたいから、2人だけでも先に
行こうとしてます! でも我儘ならもっと
お願いすることがあるはずです!」
「・・・ソフィアちゃん・・・。」
「・・・ふっ、確かにそうだな。」
ソフィアの言葉にくすりと
ロウが笑う。
「ここまで来たんだ。最後の最後まで
付き合ってやるよ。」
「・・・そう、ですか。・・・初音様は
立場上、自分かあまり言い出せません。
・・・茶道部の皆さん、ロウさん。」
ゆっくりと頭を下げた。
「無理をお願いするのは心苦しいですが・・・
休憩を取らず、私たちと社長室を
目指してください。」
「・・・当然だ。」
その時、後ろから何か
鈍い音が響いた。
「!?」
「なんだ? ・・・・・げっ。」
煙の中から出てきた人物に
ロウは驚きを隠せなかった。
なぜなら・・・
「ふはははは! まさかデクが魔物より
歯ごたえがあるとはな!」
「な、生天目・・・・。」
「!? な、なんでここに・・・。」
初音も驚きを隠せない。
「神宮寺! 貴様の兄のもとにデクが集まって
いるそうだな! わたしをそこに連れていけ。
全てすりつぶしてやろう!」
「・・・な、なんか知らないけどちょうどよかった!
来い! 兄さまのとこまであとすこしだ!」
<ロウたち、移動中>
「! あ、あった!」
最上階まで上ると、
ようやく目標の社長室を見つけた。
「早く兄さまを助けないと・・・!」
危険確認をせず、
初音は社長室に入る。
「初音様! 急に入っては危険です!」
沙那も初音に続き、
社長室に入る。
「俺たちも入るぞ。外の奴らは
生天目に任せる。」
「は、はい・・・・ワ、ワタシたちも
入りましょう・・・。」
ロウたちも入った。
社長室
「兄さま! どこだ! おい!
隠れてんだろ!? 兄さまぁ!!」
何度も呼びかけながら
部屋の中を探す。
「・・・・ぁ・・・・。」
「初音さん、いったい何が・・・
・・・・あ・・・・・。」
初音とソフィアは目の前のそれに
言葉が出なかった。
「・・・・ぅ・・・腕しか・・・・・
腕しか・・・ねぇじゃんか・・・・。」
見つかったのは、白いスーツに
袖を通した左腕のみだった。
「・・・・初音様・・・!」
初音が静かに膝から
崩れ落ちる。
「・・・・・・。」
「い、樹サン・・・・。」
「・・・兄さま、わかってたもん・・・な。
神宮寺って、そういう家だもんな・・・。」
普段からは想像できない小さな声で言う。
「・・・申し訳ありません。言葉が見つかりません。
私の力が至らないばかりに・・・。」
「・・・バカ・・・言うなよ。
・・・う・・・。」
次第に目に涙が浮かぶ。
「わああああぁぁ! 兄さまあああぁぁぁ!!」
沙那に抱き着き、大声で泣き始めた。
「・・・・・?」
なんだ・・・?
なにかがおかしいような・・・。
「起きろ、神宮寺。」
「! 生天目。」
「脱出するぞ。」
「そ、そんな! 初音ちゃん、あんなに
ショック受けてるのに・・・!」
「・・・何かあったのか?」
「ああ。だが話す時間はない。ミサイルが
来る前に外に放り出すからな。」
「・・・ミサイル?」
意味が分からなく、すこし困惑する。
「みなさん! 迎えに来ました!」
卯衣とともに来た真理佳が合流する。
「生天目センパイが殲滅してくれたおかげで
何とか空から来れました! 着弾まであと数分です!
急いで!」
「ど、どういうことやの! なんでミサイルが・・・!」
「早く行け。私は神宮寺を連れていく。」
「・・・いえ、初音様は私が。」
そう言って、沙那は初音を抱えて
脱出する。
「ふん・・・では、ロウ。貴様だ。」
「え。」
「しかし、霧の護り手も上等な趣味のようだな。
腕一本残すとは・・・ククク。」
「てか、え、まさか・・・。」
「下まで飛び降りる。つかまれ。
骨の1本や2本は覚悟しておけ。」
そう言って、ロウの戦闘服を
無理やりつかむ。
「ちょ、まっt」
静止を聞かず、
つかさは飛び降りた。
幸い、ロウは奇跡的に軽傷で済んだ。