ガンダム 一年戦争と称される戦場の中で戦いつづけるひとりの男がいた(ジオン側)   作:ぱみゅぱみゅ

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第10話 黒蛇と蒼翠狼 激突 (蒼翠狼部隊)

 

 

――― 演習開始から三〇分後…

 

 

ルウム戦役前まではサイド5と呼ばれたコロニー群の残骸が浮遊している暗黒宙域にて。

 

その宙域の中でサイド5の無様な残骸を背にした一つの青、緑、白のパーソナル塗装が施されてある機体の姿があった。

よく見ると背部と脚部に増設されている大型の推進器が見て取れ、頭部にはブレードアンテナが未装備であり、その特徴から高機動型ザクであることがわかった。

 

そのコクピット内に紫色のノーマルスーツを着ている男がいた。

機体の頭部をわずかに右に動かして、モノアイを僚機が存在するサイド5の残骸の頂点を捉えるかのようにスライドさせた。

 

捉えた先には、二つの機体の姿があった。

そのうちの一機はサイド5の表面に張り付いていて、手に持っていたのは対艦用のARS-78型のライフルであった。だが、本来その武器に無い筈のハリスバイポッドが銃口の手前に付いている。

それを手前に起こせば二股の足となり、上に乗せることで銃が安定し、それからスコープを覗くまでの一連の動作をスムーズに行えるようになっている。

このことからも分かるように一般のライフル銃ではなく、狙撃用のライフル銃に改良されていた。

対象物との間にかなりの距離があったとしても、容易に捉えることができるように高倍率スコープの付随と捉えた物の動きを逃すことなく瞬時に反応し、発砲できる反応速度向上など、狙撃に適したシステムを搭載している。

機体の右肩シールドが、この狙撃用ライフル銃の専用のペイント弾を10発程詰め込んでいる一つの弾倉に飾られている。

腰の背部にも120mmマシンガンを背負っていて、腰部にはヒートホークが見られた。

 

もう片方の機は狙撃機体を守るために傍に立っていた。

右手にはザクバズーカを持ち、腰の背部には120mmマシンガンがある。

腰部にもヒートホークを装備している。

その機体は、周辺に注意を払うようにモノアイを動かしており、またそれは隣の機体が狙撃しやすくさせる為に観測をする役割も同時に担っている。

 

 

このような陣形を敷き、狙撃機体からここら一帯に見渡せる位置をとることにより、敵影がどこに現れるかを探知しやすくし、さらに前線に高機動型がいることで相手が前線突破を躊躇う効果も見られる。

 

サブモニターに僚機のパイロットの二人の姿が映された。

 それに気づいて、視線をサブモニターに移した。

 

「カリウス、ケリィ。敵影が見つかったのか?」

そう問いた。

 

すると二人とも頷いた。

そのうちの一人が口を開いた。

 

 

「カリウス:ガトー隊長、たった今、三つのバーニア光らしきものが見えました。」

狙撃機体の右側に位置取っているザクⅡから声が上がった。

 

「ほう、強行突破するつもりか。」

その行動に対して傲りだなと皮肉そうに呟いた、表情が険しかった。

 

「ケリィ:こちらも視認できるのは三つのバーニア光です。」

狙撃武器を構えているザクⅡからも声が上がった。

 

「その中に両肩が赤くて黒いザクが見られるだろう?」

打ち合わせ時に出てきた相手の隊長の特徴データのことを思い出しながら、再度確認するように僚機に対して問いた。

 

僚機のパイロットはその問いに確認するように視線を前面モニターに移した。

三つのバーニア光が瞬いている方向にズームした。

 

「カリウス:残骸コロニー群のせいで見え隠れしていますが、かろうじて真ん中にそれらしき機体が確認できます。」

 

「ケリィ:こちらもその特徴からして間違いないと思われます。」

二人とも頷きながら答えた。

 

 

「そうか。ケリィよ、さっき言ったその特徴の機体を足止めできそうか?」

相手の隊長機を足止めさせれば、必然的に隊形が乱れるはずだ。そしてこの高機動ザクを持ってすれば敵の懐に飛び込み一網打尽にすることができるはずだ。

 

「ケリィ:はっ、やってみます。」

その指示を了承した風に答えた。

 

内心では生身とは違い機体で狙撃武器を扱うのはあまりないために少々戸惑っていた。

己の射撃能力の高さと狙撃能力の基準を達していることが理由で任されたのだが、狙撃兵ではない上に当時の訓練時に狙撃が得意な上司から狙撃技術について指導して頂いたとはいえ、完璧に狙撃できる自信はなかったのだ。

最も、このライフルも改良型とはいえ狙撃武器として通用できるか不明だった。

 

しかし、ネガティブな思考に嵌っても仕方がないなと思い、軽く溜め息を吐いてヘルメットのバイザーを開けた。

 椅子と繋がっている右側の部分にある狙撃用のフェイスマスクで鼻まで被せるように覆った。

マスク内のモニターでは中心に大きな円が現れて、その円の中には、照準となる十字のレティクルが見られた。

 その映像にはコロニー群の残骸しか映っていなかったが、スコープのズーム機能を使用すると時折残骸を縫うように動く三つのバーニア光が瞬くのと同時に他の二機より突出した黒いザクの姿がはっきりと確認できた。

 

スコープの倍率を維持しつつ、その機体を捉えながらそれに合わせるかのように微調整した。

 

 (さすがに、止まるわけないか)

内心、軽く苦笑していた。

動き回る物には当たらないのは当たり前であり、予測で打ち落とすのもありだが、それは訓練でしか狙撃したことない自身には無理難題であるし、相当の経験と勘が無ければ無駄撃ちにしかならない。

とはいえ、牽制しておかなければ相手側が思い通りに駆け回ることになるのは、流石にこちらにとってはデメリットしかならず、ひとまず行動はしなければならない。

 

そんなことを考えながらもレティクルを敵機体に合わせるようにした。

その姿を捉え続けて、操縦桿についている射撃ボタンを押すか押さないかというほどの緊張を表した握り方であり、表情も真剣な面構えであった。

 

 

その時にモニター内に捉えた敵機体の頭部が上がってきたと思ったら、事前に位置が分かっていたかのようにモノアイがこちらを捉えて赤く輝いた。

 

 

こちらに気づいたかと一瞬躊躇ったが、その迷いを振り切るかのように息をゆっくりと吐いた。

 

 

「しかし、あやつが味方殺しか…。」

皮肉な口調でそう呟きつつも、力強く射撃ボタンを押した。

 

それに呼応するかのように機体の大きな手指からカチッと音が鳴り、トリガーを引いたと同時に銃口が火を吹いた。

放った弾丸は敵に飛び掛からんとばかりに段々と速度を増していくように見えた。

 

 

今まさに敵機体の頭部に着弾しようとしていた。

 

 

 

だが・・・。

 

「・・なっ!?」

その結果を目にして愕然とした。

 

今回の狙撃はタイミングも良好で速度も申し分なく、このまま行けば確実に着弾であったのだ。

だが、問題は放った弾丸が敵機体に着弾しなかったということだ。

もちろん敵機体から大きく離れて別のところに着弾しちゃった、テヘッ☆とかいうアホな結果ではない。

 

 

いまだに信じられないが。

 黒色の特徴を見受けられる敵機体にあと僅かで着弾するところだったが、そのモノアイが赤く煌めいて右に移動したかと思ったら、速度を殺さずにこちらが放った弾丸を中心にロール(回転)してきたのだ。

そのせいでこちらが放った弾丸が敵機体の頭部からあと僅か2mmというところで躱され、その奥に漂っていたデブリに着弾してペイント弾の中に詰め込まれていたピンク色が飛び散ったのが見えた。

 

 

その様を認めると険しく眉を顰めた。

 

「この距離で避けられただと。」

信じられないという風に呟いた。

 

 

驚くのも無理もないのだ。

狙撃機体が位置取っているコロニーから敵機体までの距離は実に2kmであり、ガトー隊長機はそれを間に挟んで位置を取っているのだ。

ザクⅡをつかえば1分くらいかけてここにたどり着くが、逆に言えばたどり着く前に狙撃してしまえば二機くらい撃ち落とすことが可能なくらいの時間でもある。

それに、2kmとはいえ、コロニー群の残骸があるために見通しが悪い中で狙撃されれば、対処のしようがないはずだ。

 

 

そう思っていたが、現実はその想定を大きく裏切ったのだ。

 放った弾丸をすれすれ避けられた上に、足止めすらできなかったことに己の不甲斐なさを感じて、下唇を歯で強く噛んだ。

 

 そんな屈辱を感じている間に三つのバーニア光の内の二つがいきなり別の方向に散開するかのようにコロニー残骸の影に隠れていく仕草が見られた。

 

残された一つのバーニア光が瞬いている機体は黒色のザクⅡであるのがわかった。

 

 どれを撃つべきかと考えていたら、サブモニターからガトー隊長が声をかけてきたのが気づいた。

 

「敵隊長機の相手をするが、カリウスとともに散開された敵機二機を迎撃してくれ。」

手短に伝えられた。

 

「はっ、了解いたしました。」

そう答えた。

 

そしてガトー隊長の方から通信を切られた。

 

 

その命令通りに、散開された敵機を探すように標的を黒色のザクⅡから外して二つのバーニア光が瞬いている方向のコロニー残骸を捉えた。

 

 

フェイスマスクを覗き続けて、二つのバーニア光の位置を確認していたが途端に険しげな表情となった。

 

「ちっ、こちらの位置に気づかれたか。」

散開した二つのバーニア光の姿は確実にこちらへ向かってくる様子を認めていたのだ。

 

すぐボルトトリガーを引き、その反動で一本の薬莢がはじけ飛んだ。

その薬莢は冷めていないからか熱を帯びながらも下の方に転げ落ちた。

そしてコロニーの表面にぶつけたのか、ドスンッと鈍い音を出しつつも表面が溶ける音が聞こえた。

そんな音を意にすることなく再装填を行った。

 

「任された以上は容易にやられるわけにもいかんな!」

そう言い放ち、操縦桿についているボタンをグッと押した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、ガトー隊長機は速度を落とさないように絶えず高機動ザクの背部と脚部に増設されている大型の推進器から力強い爆音と共にバーニア光を瞬きながら、コロニー残骸の境目をするすると駆け抜けていた。

右手ではザクバズーカ、左手では120mmマシンガンを握っており、腰部にはヒートホークと小さな手榴弾を装備していた。

 

 

モノアイはコロニーの太陽電池として使われていた残骸の奥に黒色のザクⅡの姿を捉えた。

 

「そこか!!」

そう言い放ちも、身近のコロニー残骸を踏んで強引に方向転換をする。

 

(グゥ、やはりこの方法で正解か)

強引に方向転換したためにGの衝撃に耐えつつも口角をわずかに吊り上げて確信を得たような表情であった。

 踏むという行為は一見容易そうだが、実際には高機動の機体である上に速度を維持した状態でデブリなどを踏むのはあまりにも無謀で、下手をすれば衝突して爆死する恐れもあり、例え運が良くても脚が潰れる可能性が多大にある。

よって、障害物を避けて動くしかないと言うのが、一般的な認識である。 

だが、ガトーはその危険度の高さを承知した上で、残骸を踏む直前にわずかに大型の推進器とスラスターを使うことで衝撃を和らげさせ、脚元の表面をベタ踏みせずにつま先のあたりを使って踏むようにした。

そうすることで脚を潰される危険を高い確率で回避できることを、あらかじめ行ったシミュレーションにてわかったからこそ、このような方法を取り入れることで標的を逃さず戦える確信を得たのだ。

 

 

右手に持っていたザクバズーカを持ち上げる。

その残骸に穴を空けさせるために狙い、間を置かないうちにトリガーを引いたと同時にザクバズーカの銃口が火を吹いた。

 

放った弾丸が太陽電池の残骸の表面に着弾したからか、大きな穴ができてさらにペイント弾の内のピンク色が爆散された太陽電池のミラーについた。

 

 

それすら意に返さず、ザクバズーカの再装填しながら、大きな穴ができた部分に強引に飛び込んでいく。

 その反動でコクピット内に強烈な衝撃音が鳴り響きながらも、前面モニターから太陽電池ミラーが辺りに飛び散っていったのを見て取った。

 

「さて、やつはどこだ!?」

モノアイを敵機の姿を確認するために左右にスライドするように動かした。

 

丁度、敵機の真横であった。

 敵機はこちらに気づいたのか、素早く方向転換して120mmマシンガンらしき武器をこちらに目掛けて構えている。

 

 

こちらも左手に持っていた120mmマシンガンのストックを肩に当てて、右手に持っていたザクバズーカも同じく銃口を敵機に合わせるように構えた。

 

両機は50m程間を置いて対峙する。

 

その様を認めるとニヤリと口角を上げて、すぐ通信スイッチを共通のチャンネルに切り替えるのと同時に相手との通信を繋げた。

 

 

「きさまは“味方殺し”と称されているようだな。」

皮肉げに言い放った。

 

すると、通信モニターに相手の顔が現された。

 相手は黒色のノーマルスーツを身につけて、黒色の瞳はこちらを見下げるようにスッと細められていた。

そしてゆっくりと口を開く。

 

「さぁ、どうだろうな。」

馬鹿にした風に鼻で笑ってそう言ってきた。

 

 

その言葉を理解できずにボケッとした表情となったが、次第に眉をしかめて歯を食いしばった。

 

「き、きっさまぁ!!」

声を荒げて、迷いなく操縦桿についているボタンを壊さんばかりに押した。

 

 

 

 ――ドシュッ!!

 

銃口が火花を散りながら弾丸を放った音が暗黒宙域の中で鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 




評価と感想がくるのを楽しみに待っています。

 今話ではガトー部隊側の視点です。

次話はガリス部隊側の視点で出します。



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