ガンダム 一年戦争と称される戦場の中で戦いつづけるひとりの男がいた(ジオン側) 作:ぱみゅぱみゅ
コロニー群の残骸が漂っているなかで真っ二つにされたかのようにちぎれているコロニーの表面に時折瞬いている二つの光があった。
さらによく見ていると瞬いている二つの光の片方は身体全体を黒く塗装されており、両肩ともトゲつきで赤く塗装してある指揮官型らしき機体で、背部、脚部のスラスターを巧みに酷使して不規則な動きを繰り返しながら後ろから迫る弾丸を避けていくのがわかる。
もう片方の機体は背部、脚部に大型の推進器があり、胴体と腰部は碧色で塗装されており、脚の一部は白色であるがそれ以外は蒼色で塗装されている高機動型ザクである。
そして、その大型の推進器から力強い爆音を出しながら両手に持っている武器を目の前の黒い機体に向け、途切れることなく執拗に弾丸を放ちながら駆け抜けていた。
避け続けていた黒い指揮官型ザクはモノアイを後ろを確認するようにスライドさせた。
黒い機体のコクピット内に黒いノーマルスーツを着ている男がいた。
後ろに迫ってくる高機動型ザクを確認すると険しい表情になった。
「ぴったりとついてきやがるな、この状況を打開できそうな障害物があればな。」
そう呟いてモノアイを前に向けて左右にスライドさせた。
すると、目の前をルウム戦役で撃沈されたのであろうサラミス級とみられる艦艇の残骸が漂っているのに気づいた。
ニヤリと口角を吊り上げるとすぐ操縦桿を目一杯前に倒しながらフットペダルを思いっきりに踏み込む。
その残骸を盾にするかのように回り込んでいった。
それを追っていた高機動型ザクのコクピット内に紫色のノーマルスーツを着ている男はその様を認めると眉をひそめた。
「ふん!待ち伏せのつもりか。」
奥でこそこそと隠れているつもりなのなら興が冷めるわと毒づきながら足を止めることなくいつでも撃てるように武器を構えながらあとを追いかけた。
サラミス級とみられる艦艇の残骸を飛び越えながら、手にしている120mmマシンガンとザクバズーカのトリガーを引くために操縦桿のボタンを押そうとしたが、あることに気づいて押すのをやめる。
待ち伏せているはずの敵の姿がどこにも見当たらなかったからだ。
「なに、待ち伏せてなかっただと!?」
辺りを確認するために左から右へとモノアイをスライドさせた。
すると、右側から残骸の表面を這うように黒い指揮官型ザクが120mmマシンガンを構えて迫ってくるのに気づいた。
「ちっ!!」
それを認めると完全に読み違えたことに険しい表情となった。
すぐさま操縦桿を動かした。
その動作に従うように、高機動機はすぐさま反転し、黒い指揮官型ザクに対面した。
そして、黒い指揮官型ザクが120mmマシンガンをこちらに向け、その銃口から火花を散らせるのと同時に無数の弾丸が襲いかかってきた。
それに対してフットペダルに踏むことで背部、脚部についている大型推進器を点火させ放たれた弾丸をできる限り避けようとするも、わずかに反応が遅れたため幾つかの弾丸が両脚部に当たる音が響いてきた。
―――ピッピッ!! 両脚部の推進器に異常確認!! 速度 30%低下中!!
前面モニターに機体の状況について表示された。
流し目でそれを認めるもすぐ、前に向けた。
「脚部中心に狙ったか。」
冷静に状況分析しつつ、操縦桿を思いっきり後方に下げた。
その動作に呼応するかのように背部、脚部についている大型推進器から爆音を出しながら、後退しつつもさらに放たれてくる弾丸を避けるように左右に動かす。
さらに、迫ってくる黒い指揮官型に対して120mmマシンガン、ザクバズーカで構えつづけているものの、迫ってくる弾丸を避けるのに徹し、反撃の機会を見極める。
その状況は高機動機と高機動でもない指揮官機が対峙しているとは思えないくらいの接戦であり、心なしか遥かに速度で勝るはずの高機動機が苦戦を強いられていた。
【高機動という利点を使い、一気に距離取ってしまえばなんてことないはずだ】と思わず疑問を持っても仕方かないともいえる状況であるが。
「ええい。先ほど脚をやられた影響で、思い通りにうごけぬ!!」
小さく呟きながらもフットペダルを絶えずに踏みつづけ、忙しなく操縦桿を操る。
そう毒付いていたら右手に手にしていたザクバズーカが被弾して内部から歪な音がしはじめた。
――ザクバズーカ 被弾確認のため、誘爆します!!
「しまった!!」
それを認めるとすぐさま右手に構えていたザクバズーカを敵機に向けて投げ捨てる。
数瞬の間も置かないうちにザクバズーカが誘爆発動したのか、内部からドスンと爆音が響くと同時に弾に内蔵されているピンク色が煙幕のように辺りを覆った。
立ち込めるピンク色の煙の中から、赤く煌めく光が見える。
その光を認めるとすぐ左手に持っている120mmマシンガンを構えた。
すると、立ち込める煙の中から黒い指揮官型機が両肩についている赤く塗装されているスパイクを利用してタックルともいえる体勢で飛び出しながらこちら目掛けて突っ込んできた。
「このまま突っ込んでくるか!自殺行為だな!」
そう高らかに叫びながら、操縦桿についているボタンを押す。
それに呼応するように高機動機は120mmマシンガンのトリガーを引き、無数の弾丸を放った。
だが、黒い指揮官機のコクピットは死角に入っているため、そこに撃つことはできず、その代わりにありったけの弾をスパイクや頭部に撃ちこんでいくが、敵機は足を止めることなく迫ってきた。
「ちっ!!覚悟ありか!」
フットペダルと操縦桿を操り、右肩についているシールドを前に突き出すようにして身を守る。
さらに、背部、脚部についている大型推進器と脚部スラスターそれぞれを使い、衝突を和らげようとしていた。
次の瞬間にコクピット内ではこれ以上に無いくらいの強い衝動を受け、轟音も鳴り響いた。
「クゥッゥ!!!」
歯を食いしばりながら前面モニターを睨んだが、そこには画面いっぱいにモノアイが映っていた。
高機動機はシールドを前に突き出して身を守るもそのままタックルを受け、その衝撃でシールドの中心に敵機のスパイクが深くめり込み、かなり歪な形になってしまっていた。
だが、それでもまだ完全には体勢を崩されまいと、スラスターを使い敵機とぶつかり合う。
長くぶつかり合うかと思えばそうでもなかった。
次に動きがあったのは高機動機からだった。
「ええい!離れろ!!」
そう言うと、高機動機の左足で敵機の脇腹に目掛けて膝蹴りを一発かます。
死角からの膝蹴りを食らった黒い指揮官機は体勢が崩れ、そこに隙が見えた。
それを見逃さず、すぐさまに右手で敵機の頭部を鷲掴みするようにして右腕で敵機の胴体を抑え込んだ。
高機動機のモノアイをスライドさせて辺りを窺い、左側に半分ちぎられているコロニーの穴を認めた。
すると高機動機の背部と脚部の大型推進器とスラスターを点火させ、抑え込んでいた黒い指揮官機を盾にするかのようにして先ほど認めた半分ちぎれているコロニーの穴に目掛けて突っ込んでいった。
「このまま気を失え!!」
そう叫ぶと強烈なGがかかるなか、フットペダルを壊さんばかりに踏み込み、操縦桿を握っている手を緩めることなく、目一杯前方に倒し続けた。
徐々に近づくにつれ、コロニーの穴が大きくはっきりと見えてきた。
刹那。
ド!
ドド!!
バキバキィ!!
先ほどのぶつかりあいとは比べ物にならない程かなり激しい轟音と衝突音が辺り一帯に鳴り響いた。
*
コロニーの穴から何が衝突したのか、目視では見えない程、複数の破片やデブリが立ち込めていた。
さらにその奥を見ていくとそこには廃墟と化した街の姿があった。
そして、街の中から立ち込める煙があった。
そこには、50mほどぶっ飛ばされたのがわかるくらいにえぐられている半壊状態の建物の姿があり、瓦礫が散乱していた。
50m先には二機の姿があった。
そのうちの一機は建物にめりこんでいて背を預けるように倒れている、両肩スパイクが赤く塗装されている黒き指揮官機ザクであった。
ただ、モノアイは稼働しておらず暗転したまま。
そのMSの目の前には背部と脚部に増設されている大型の推進器がみられて青、緑、白のパーソナル塗装が施されてあるブレードアンテナ未装備の高機動型ザクの姿があった。
高機動機のコクピット内の銀髪で紫色のノーマルスーツを着ている男は深呼吸するかのように深く息を吸い、ゆっくりと息を吐いていた。
そして目線を前面モニターに移す。
敵機と通信を繋ぐためにスイッチを押す。
モニターが乱れているため、音声しか出ないが、それを気にした風なく口を開いた。
『ふん、所詮この程度か。そのような者など誇り高きジオンにはいらぬ!!』
黒きMSのパイロットに向けて蔑むような声で言い放った。
そして、高機動機ザクのモノアイはしっかりと黒きMSのコクピットを捉えて手に持っている120mmマシンガンをそのコクピットに照準を合わせるかのように構えていた。
対峙している黒き指揮官機のコクピット内では、前面モニターから絶えず警報が鳴り響き、赤く点滅していた。
――― 音声キャッチしました 再生します
『ふん、所詮この程度か。そのような者など誇り高きジオンにはいらぬ!!』
その声が流れていた。
するとその声が届いたのか、
指揮官型ザクⅡのコクピット内にいる黒色のノーマルスーツを着ている男はピクリと手指をかすかに動かすとゆっくり顔を上げていく。
ゆっくりと目を開くとその眼は赤く煌めいている。
度々の強い衝撃と強烈なGの影響を受け、脳内に一度に多くの血が集まったことによって、それが彼の眼にも負担をかけ、充血させきっていた。
そして言葉を繋ぐように唇をゆっくり動かした。
「必要ないだと・・・」
途端に過去の記憶がフラッシュバックする。
昔のままの姿の両親が冷たい眼でこちらを見下している。
先に父親が口を開いた。
【おまえはいらない子だ。】
銃を手にして、こちらへ銃口を向けてくる。
隣にいた母親は中身が入っているコップを持ってこちらに歩きよると、頭上から勢いよく頭上から掛けてきた。
もろに被ったせいで、上半身は濡れて、酒臭かった。
目線を母親の顔に移すとそれを認めてゆっくりと口角を歪ませ、口を開いた。
【こんな失敗作なら産まないほうがよかったわね!】
そう言うと両親ともに高笑いを上げる。
「・・ッ」
そんな忌々しい記憶を振り払うように目を伏せる。
だが、不意に目の前に煙のようなものが漂っているのに、気づいて顔を上げる。
いつのまにか、そこにいた両親の姿は消えていたが、代わりに誰のか分からぬ手だけが宙に浮いていて、それは振り香炉の紐の先を持ち、左右へゆらゆら揺らしていた。
振り香炉からは、ほのかによい香りのする煙が漂ってくる。
それが思いの外、濃いせいではっきりとは見えないが、先ほどまでは見えなかった首元がぼんやりと浮びあがってきた。
徐々に姿を現したその部分を、思わず二度見してしまう。
なぜなら、首から提げられている十字架の首飾りが下を向いていたからだ。
そのことに疑問を感じて、逆さ十字架の持ち主の顔を見ようと目を凝らしてみたが、やはり暗くてちらとも見えない。
諦めずもう一度、相手の顔を確かめようとしたとき、声が聞こえてきた。
その声に目を丸くして、ゆっくりと口を開く。
「・・・ガリス・ヴェンだ。」
その返答で満足したのか、少しずつ、振り香炉や、紐の先を持った手指が煙と同化するように崩れていった。
それらが消えてしばらくすると、今度は人工的な別の音が聞こえてきた。
それは、この暗く何もない空間の中を満たすように、どんどんと大きくなっていく。
警報音が鳴り響く中、ふと意識が浮上した。
「・・クックッ」
自然と軽い笑いが込みあがって、喉が震えた。
そして、目線を前に向けた。
まさに、それはまるで狂気に囚われたかのように赤く煌めいていた。
「どいつもこいつも。」
そう言うと口元が大きく歪んでいく。
片手で操縦桿を握り、片手で再稼働のためにキーボードを打つ。
―――ピッピッ!! 起動します! 残り稼働時間三〇分!!
それを認めると小さく口を開いた。
「十分だ。」
それに呼応するかのようにモノアイが赤く灯った。
対峙している高機動機は変わらず手に持っている120mmマシンガンでしっかりと黒き指揮官型機のコクピットを捉えてそのコクピットに照準を合わせるかのように構えていた。
だが、そのトリガーを引いていなかった。
いや、むしろ引けなかったと言った方が正しい。
銀髪で紫色のノーマルスーツを着ていた男は黒い指揮官機を愕然とした顔で眺めた。
「な・・なんだ、この悍ましさは・・!!」
そう、反応を見るために数分を与えて待ったのだが、反応なしとなればやはり見込みなしだと判断して撃とうとしたが、いきなり死神が手に持っている鎌を首にすんでのところで止められたような嫌な感じがあったからだ。
だが、それを振り払うように次第に険しい表情となり、歯を食いしばりながら高らかに叫ぶ。
「きさまごときに屈してたまるものか!!」
同時に120mmマシンガンのトリガーを引き、銃口から火花を散らしながら無数の弾丸を放った。
だが、それらは黒き指揮官機には当たらず、なにもない地面に突き刺さったのだ。
なぜなら、瞬時に背部・脚部スラスターを点火させ、後ろの方へと飛び下がったからだ。
それでも、高機動機は敵を逃さず続けさまに120mmマシンガンで撃つ。
黒き指揮官機も負けじと軽やかなステップを踏むかのように片足ずつをスラスターで噴出させ、後退しながら放たれてくる弾丸を周辺にある建物を盾に使って避けていく。
さらに、背部スラスターを全開にして急激な加速で右側の方に突っ込む。
その様を表すかのように次々と建物が崩れ落ちていき、煙が立ち込めていく。
「ふん!!逃げてばかりではなぁ!!」
そう言い、さらに120mmマシンガンでそれを追うように敵機の進行先にある一回り大きな建物に標的を置いて予測射撃で放った。
そして、一回り大きな建物に着弾したのか、凄まじく崩れ落ち、あたりに煙が立ち込めた。
「さぁ、逃げる道を塞いだぞ。」
してやったりと言う風にニヤリとした。
次の瞬間に立ち込めていた煙から盛り上がるように黒き指揮官機が背部、脚部スラスターを使い、上の方に飛び出している姿があった。
「今度は上か!!」
さすがに上からの奇襲には分が悪いとこの場から移動としたが。
高機動機の周りに120mmマシンガンの弾とは違う弾が幾つか着弾して、さらに内蔵されているペイントが辺りに飛び散ったのがわかった。
「・・なに!」
その様に驚くもすぐ敵機に目を向けた。
その黒き指揮官機はすでにザクマシンガンは捨てており、代わりに左手には腰に背負っていたザクバズーカを手にしており、右手にはヒートボークを手にしていた。
そのザクバズーカも撃ち切ったのか、すぐ別の方に投げ捨てた。
そして、手にしているヒートホークをこちら目掛けて振りかざしてきた。
「ええい!!」
そう言うと、手に持っていたザクマシンガンを身を守るように両手で持ち、上の方に持ち上げた。
紫色のヘルメットの下から銀色がかった前髪がのぞき、その眼には前面モニターに映っている両肩スパイクが赤く塗装されている黒き指揮官機の姿が映っていた。
こちらに凄まじい気迫を感じさせられるほどだ。
それを認めると、小さく声を漏らした。
「鬼が出るか蛇が出るか・・・」
評価と感想が来るのを楽しみに待っています。
一体どうなるのでしょうか。
次話はアイリスとアロンの出番です。