ガンダム 一年戦争と称される戦場の中で戦いつづけるひとりの男がいた(ジオン側) 作:ぱみゅぱみゅ
―――数分前
ガリス大尉とガトー大尉がいる、半分ちぎれたコロニーの付近とは別の方向の宙域では、銃声が絶えず響いている。
その音を辿っていくと、二つのバーニア光が瞬いている。
そのバーニア光の発生元は、旧ザクとは違う、F型ザクの二機であることが見て取れた。
片方の機体の右肩シールドには、03と番号が貼ってある。
そのF型ザクは、手に持っている120mmマシンガンを構え、相対するF型ザクを追い込むように弾丸を放っている。
対峙している相手搭乗機はそれらを避けるように操縦桿を操り、左右に動き回りながら後退していった。
手に持っているのは、すでにザクバズーカを使い果たしたため、敵機と同じく構えている120mmマシンガンで、目の前にいる右肩シールドに03番号を貼っているザクに向けて応戦していた。
コクピット内にはカリウスという男の姿があった。
その表情は、眉間にしわを寄せて焦りを見せている。
「まさか、ケリィが撃墜されるとはな。」
そう言いつつ、操縦桿を巧みに操りながら放ってくる弾丸を最小限の動きで避けていた。
そんな消極的なカリウス搭乗機とは対照的に、対峙している03番号を貼っているF型ザクは積極的に攻め込んでいて、それはヒット&ランナウェイさせないという意もあった。
そして、03番号を貼ってあるF型ザクのコクピット内にはアイリスがいた。
「アイリス:そっち行ったわよ、アロン!!」
サブモニター(通信モード)にアロンが映っていたため、それに向けて言った。
サブモニター内のアロンはその言葉を認めたのか、頷いて口を開いた。
「アロン:了解、すでに捉えている。」
そう言うと、フットペダルを踏みながら操縦桿を操った。
同時に02番号を貼ってあるF型ザクの背部、脚部スラスターからバーニア光を瞬く。
アイリス搭乗機の位置を確認しつつ、デブリを避けながら駆けていくと敵機の姿が見えてきた。
相手はこちらに気づいていないようだ。
それは無理もない、アイリスがいる位置とは別の方向つまり、敵機が気を配っていないであろう側面を突くためにわざわざ遠回りしてきたのだ。
おそらく敵機は絶えることなく追いつめてくるアイリス搭乗機に苦戦しているのだろう。
(まぁ、アイリスってある意味ガリスと似ているよな)
そう思いながら軽く薄笑いする。
「アロン:まぁ。ともあれ、これでしまいだ!」
そう言うと、右手で腰に下げていたヒートホークの柄を握りしめて、前かがみ状態になりながら操縦桿を目一杯前に倒してフットペダルも一気に踏み込む。
それに呼応するように背部スラスターから力強い爆音を出しながら、段々と敵機との距離が縮んでいく。
そのとき、敵機のモノアイがこちらに気づいてスライドしてきた。
「カリウス:まずい!」
そう言うとすぐ操縦桿を操る。
片手に持っていた120mmマシンガンはアイリス搭乗機ザクに向けて発砲することで近づかせないように牽制しながら、横腹を突いてくるアロン搭乗機ザクに対して片方の腰に下げていたヒートホークを取り出そうとしていた。
だが。
ヒートホークを取り出したときはすでに目の前までアロン搭乗機ザクが迫っていた。
そして、敵機が右手で握りしめているヒートホークは目では追えない程の速さでこちらが手にしているヒートホークを少しも振らせないとでもいうかのように、左腕ごとぶった切りながらすれ違っていった。
その反動で、バランスが崩してしまい無重力の為か、360度回ったかのような感じでふらつく。
コクピット内では、
―――ピッピッ!! 左腕破損!!
そんな警告音が鳴り響いていた。
(っ!!いまのは反応できなかった)
焦りを見せつつも、すぐ操縦桿を握りしめて操りながら、フットペダルを踏む。
機体のバランスを整えるために、脚部スラスターと背部スラスターを点火させ、制御することでふらつきながらもさきほどすれ違っていった敵機の背後を狙うように右手に持っている120mmマシンガンを持ち上げようとする。
だが。
次の瞬間、右手に持っていたはずの120mmマシンガンが右手もろとも何かに蹴り上げられ、その様子を目で捉えたのと同時に、120mmマシンガンと己の右腕が共に砕け散り、強い衝撃と激しい揺れがコクピット内に伝わってきた。
―――ピッピッ!!右手破損!! 右手に武器を所持不可!!
「カリウス:しまった!」
なにが起きたのか分からないが、両手を失ってしまっては、戦闘続行不可能となってしまったのを知った。
すぐ操縦桿を操るも制御不能状態となった機体は、漂っているデブリに激しく衝突した。
「カリウス:グッ!!」
その激しい揺れに歯を食いしばりながら、堪える。
そして、前を向くと前方モニターでは、二機のザクが映っていた。
03番号のザクは手にしている120mmマシンガンをこちらに向けている。
02番号のザクは手にしているヒートホークでいつでもこちらに殴りかかれるという体勢だった。
そんな状況を認めると、軽く溜息をついた。
(してやられた。ガトー大尉殿、申し訳ない)
そう思うと降参の意を表すように対峙している二機のパイロットに向けて共通チャンネル通信をオンにしようとする。
すると、信号弾が二つ、別々の方角から上がっていき、それぞれの光が、この真っ暗な宙域を赤く染め照らしていく。
目の前にいた二機もそれを認めると警戒状態を解く。
03番号と02番号が貼ってあるザク二機のコクピット内では。
「アイリス:ねぇ!アロン!あれって戦闘中止の合図だよね!」
サブモニターに映っているアロンに向かって聞いた。
「アロン:・・、勝負が決したのでは?」
その問いに頷きつつも、このタイミングでこの合図が来たということは、指揮官同士の戦闘の勝敗が決したかもしれないとそう思った。
――ピコンッ ピコンッ! ファンメル型ムサイからの通信波紋 キャッチしました
そんな報告を聞くと、二人ともサブモニター越しに、疑問を持った顔で目を合わせた。
すると、前面モニターにブリッジからの通信なのか、艦長の姿を映った。
妙に後ろにみえるスタッフたちがやけに慌ただしい状況であった。
そして、艦長の表情も少々険しい。
『シモン:勝負は決した。この戦艦の位置を辿って帰還せよ。』
とそう告げた。
その報せにアロンは、なぜガリスという名が出てこないのか、それにガリス搭乗機と合流して帰還せよという言葉がないのに引っかかった。
すると、アイリスが艦長に向けて口を開いた。
『アイリス:承知しました。ガリス大尉搭乗機がいる位置まで行って、合流してからそちらに帰還します。』
そう言うと、通信を切り、アイリス搭乗機が踵を返してレーダーに映っているガリス搭乗機の信号を辿って駆けていった。
アロンはそんな姿を認めると【早くガリスのもとに駆けつけたいのはわかるが】と軽く溜息をつくと艦長が映っている画面を向いた。
『アロン:シモン艦長、ガリス大尉の状態はよろしくないのでしょうか?』
そんな疑問を、あえて上官に尋ねてみる。
もしかしたらあの日と同じようなことが起きているかもしれないと脳裏を一瞬それが掠めた。
『シモン:現時点では何とも言えないが、もしガリス大尉のもとに駆けつけるのなら足元には注意するといい。』
そう言うと、通信を切った。
「アロン:足元に注意?とにかく、このまま考えつづけるよりも行ったほうがいいかもな。」
そう呟くとすぐアイリス搭乗機の後を追うように踵を返して駆けていった。
そんな二機の姿を見続けていたカリウス搭乗機のコクピット内では。
「カリウス:一体何が?」
驚きの表情が隠せなかった。
するとなにかに関する報告を入ってきた。
それに反応して内容を聞くと目を丸くする。
「カリウス:ケリィ、動けるか?」
サブモニターでケリィ搭乗機との通信を行う。
そしてその通信モニターにケリィが姿を現した。
「ケリィ:なんとかな、それより報せを聞いたのか?」
辛くも機体が動かせる状態であることを確認するとさっきの報せのことを聞いてみる。
「カリウス:ああ、ガトー大尉殿のところに向かおう。」
そう言うと満身創痍ながらも背部スラスターと脚部スラスターを使い、レーダーに映っているガトー大尉の信号を辿りながら進行した。
別の方向からもケリィ搭乗機らしき姿があり、バーニア光を瞬かせながらカリウス搭乗機と同じ方向に向けて駆けていく。
*
半分ちぎれているコロニーの大きな穴から内部を覗き込むと。
そこには、建物の瓦礫があちこち散乱して、倒壊や半壊状態の建物がところどころあるだけの、以前は街があったのであろう場所が見える。
もはや辺り一帯の建物が潰されて、かつてはそこに人が住んでいたのだとは思えない程に荒廃していた。
荒廃している中心に二機が対峙したまま、動かない姿がある。
そのうちの全身を黒く塗装されていて、両肩スパイクも赤く塗装されている指揮官型ザクの姿は、左腕や頭部を共に失っていて、所々からオーバーロードしているのか絶えずに蒸気が上がっている。もはや動ける状態ではなかった。
そして、その機体の目の前にいる、背部と脚部に増設されている大型の推進器がみられて青、緑、白のパーソナル塗装が施されてあるブレードアンテナ未装備の高機動型ザクも同じように動くのがやっとのような姿であった。
さらに、黒く塗装されているガリス搭乗機 指揮官型ザクが手にしていたヒートホークは高機動型ザクの腰部に突き刺さったままである。
その二機の周りには、スペースランチ小型艦が複数に点在していて、機体を回収するための作業用旧ザクも在していた。
そして、ガリス大尉が所属している小隊であるアイリス、アロン搭乗機の姿があった。
さらに、ガトー大尉が所属している小隊であるカリウス、ケリィ搭乗機の姿もあった。
複数点在しているスペースランチ内部から医療班のシンボルが貼ってある重装型ノーマルスーツのチームがそれぞれの搭乗機のパイロットに手当てをしていた。
その手当てを受けていた銀髪の、険しげな面構えであったガトー大尉は横目で、医療班のチームが担架で敵機のパイロットを寝かせているのを見る。
そのパイロットの同じ小隊の人物であろう男女二人が必死な面構えでなにかを語りかけている。
だが。
医療班のチームの一人がなにかを話すと、二人とも黙ってそのパイロットが隣のスペースランチの中へと運ばれていく姿を見送っていた。
その様子を眺めていたら、隣から声がかかった。
その声の方向に目を向けた。
そこには、カリウスとケリィの姿があった。
カリウスは心配そうな表情でこちらに聞いてきた。
「カリウス:ガトー大尉、大丈夫なのか?」
「ああ、問題ないさ。」
その言葉に認めるとそう返答する。
「ケリィ:しかし、どうして勝った割には浮かない顔をして。」
その言葉に落胆を感じ取って、問いかけた。
その言葉に目を丸くして、軽く髪を掻いた。
「気づいてたのか。ああ、俺としては勝ったとは思えん。」
その言葉にカリウスとケリィは思わず目を合わせる。
「カリウス:でも、試合は勝ったのですが?」
試合ではガトー大尉が勝ったというはずなのに、なぜ本人としては勝ったとは言えないのか分からない。
「ああ、試合にはな。試合に勝って勝負に負けたのだ。」
その問いの意を汲みあげると、どこか遠くを見据えて、そう言った。
またしても、カリウスとケリィは驚愕した顔で目を合わせた。
そして、見据えているガトー大尉の瞳には、自機と敵機の姿が映っていた。
数分前....
街が半壊、倒壊している中で一機の高機動ザク ガトー大尉搭乗機の姿があった。
その機体は手に持っていたザクマシンガンを身を守るように両手で持ち、上の方に持ち上げていた。
そして、その機体の真上にいたのは全身黒く塗装されていて両肩スパイクが赤く塗装している指揮官型ザク、ガリス大尉搭乗機である。
その機体は手にしているヒートホークで高機動ザク目掛けて振りかざしていた。
紫色のヘルメットの下から銀色がかった前髪がのぞき、その瞳には前面モニターに映っている両肩スパイクが赤く塗装されている黒き指揮官機の姿が映っていた。
こちらに凄まじい気迫を感じさせられるほどだ。
次の瞬間。
両手で持ちあげていた120mmマシンガンをやや斜めにすることでそのヒートホークを左に逸らすようにさせた。
だが、そのために盾に使った120mmマシンガンの銃身がヒートホークの熱で焼けてもはや使い物にならなくなった。
その代償の結果、敵機はその勢いを止めきれず、何もないところで空振りしながら目の前に着地した。
「あまいわ!!」
そんな姿を認めると、着地時に膠着してすぐには回避できないだろうと判断して、すかさず右脚のスラスターを点火して、速度を増しながら胴体を目掛けて蹴り上げる。
しかし。なにかを気づいたのか、高機動ザクのモノアイで右脚元の様子を捉えた。
「なに!左手で受け止めただと!」
それを認めて思わず、目を見開く。
反応速度が普通じゃないというのを感じさせられたのだ。
そんなことを考えていたら。
敵機はそれを受け止めて軽く浮かびながらも、その反動を使ってこちら目掛けて脚部のスラスターを利用したからか目では追えない程の速さで後ろ回し蹴りしてきたのだ。
次の瞬間、右腕がメキッと歪な音を立てたのと同時にコクピット内に強い衝撃音と激しい揺れが響いた。
「グァッ!!」
歯を食いしばりながら耐える。
その反動でぶっ飛ばされ、凄まじい勢いで次々と建物が崩れて行き、激しい倒壊音と共に、煙が立て込めていく。
これ以上離れまいと、手にしている120mmマシンガンの銃口を地面に突き立てて、そのせいで地割れが起きながらも無理矢理止める。
「くそ!思ったより離れた!!」
そう毒付いて、前を向いた。
すると、前方は煙が立ち込めてはっきりとしないが、ゆらゆらと赤く煌めく光が見えたかと思うと、不意にその中から敵機が姿を現し、手にしているヒートホークをこちら目掛けて振りかざしているのに気づいた。
「チッ!!」
すぐさま操縦桿を目一杯後ろに下げ、フットペダルも踏む。
それに呼応して、高機動ザクの背部スラスターと脚部スラスターを使い、その場から後ろへと下がった。
その数秒後に先ほどまでいた所が、地面に突き刺さっていた120mmマシンガンもろともヒートホークで砕け散った。
まさに、間一髪であった。
そして、着地して、次の攻撃に備える体勢に入った。
だが、つづいて攻撃しては来なかった。
あることに気づき、目を細めた。
「・・、稼働限界が近いのか。」
前方モニターに映っている、黒き指揮官型ザクの姿は、所々から蒸気が上がっていて時折、電気を帯びていた。
その様子からオーバーロードだとわかった。
とはいえ、自機の状態もあまりよろしくなかったのだ、とくにエネルギーを使い続けていたせいであと数回分しか使えない
(稼働限界ならこのまま逃げ切れば俺の勝ちだが・・。)
そう思いながら、敵機に目を向けた。
敵機はそんな状態でありながら、まだ闘志は消えていないという様にモノアイでこちらを捉えていた。
ガトー大尉はその様を認めると軽く口角を吊り上げた。
キーボードを打った。
それに従うように腰部に掲げていたヒートホークを右手で取り出して、相手に敬意を表すように体の中央で構えた。
「逃げ切るという選択肢はあり得ないな!おぬしのその姿勢を認めてやろう。」
そう言うと、背部、脚部についている大型の推進器から力強い爆音を出しながら敵機に向かって駆けた。
そして、敵機もそれを認めたのか、同じように最後の力を振り絞るかのように背部、脚部スラスターから極大な爆音を出すと同時に悲鳴を上げるように蒸気があちこちから放出していて、はっきりとみえるくらいに電気を帯びているのがわかった。
同じように、高機動ザクを迎え撃つべく、立ち向かっていった。
「こいつの潜在能力が計り知れん。もしかしたらいずれ恐ろしい存在となるかもな。」
そう呟いた。
次の瞬間。
まず高機動ザクが右手に持っていたヒートホークで敵機の頭部目掛けて大振りで切りかかった。
だが、頭部には届かなかったのだ。
なぜなら、敵機が左腕で頭部を庇っていたからだ。
「なんだと!」
その対応に驚くも、当然ヒートホークの勢いは衰えることなくそのまま左腕ごとぶった切っていく。
ただ、すぐにその後の動作に移ることができなかった。
まさに、それは完全に無防備の状態であった。
もちろん、敵機はそれを見逃してくれることはなく、右手にしていたヒートホークを大振りしてこちらの頭部目掛けて振りかざしてきた。
次の瞬間、強い衝撃音が鳴り響くと共に、左半分のモニターがノイズしか映らなくなった。
わずかに右半分のモニターが残っていたが、戦い続けるのに難しくなった。
「しまった。これじゃどうしようもないわ!」
そう焦りつつも、残っていた右半分を使い、かろうじて残っているモノアイで状況を掴むのに必死だった。
すると、敵機はすでにすれ違っていったのか、真後ろからスラスター音が聞こえていた。
「後ろか!!」
それに反応して、すかさず手にしているヒートホークで後ろから迫ってくる敵機に目掛けて横振りした。
刹那。
狙った通りに、敵機がいて、頭部が丁度そこにあったためにそのまま潰すことに成功した。
(よしっ!これでうごけまい!)
そう思ったが、わずかに残っているモニターを見ると、次第に焦りを見せた。
それは、頭部が潰れてなおも、止まることなく敵機が手にしているヒートホークはこちらのコクピット目掛けて勢いよく斬りかかろうとしているからだ。
「すぐには回避できない!くそ、俺の負けか。」
覚悟をもって、迫ってくるヒートホークを睨んだ。
(はっ!?)
なにかに気づいて目を見張った。
次の瞬間、真横から強い衝撃音が鳴り響いてきたが、ここまで到達することなかった。
モニター内では、すでに敵機は稼働限界に達したのか、動かなくなっていた。
だが、ガトー大尉の表情は険しげな表情であった。
すぐキーボートを打つと、コクピットのハッチを開いた。
すると、目の前に敵機の姿がはっきりと見えていた。
そのハッチの上まで歩いていった。
目線を横に向けた。
そこには、敵機のヒートホークが自機のコックピットの横まで食い込んでいるのが見える。
普通ならそれを知ると安堵するが、ガトー大尉は違った。
安堵するどころか、さらに表情が険しくなり眉をひそめた。
「どういうことだ。」
そう呟いた。
そして、敵機のコクピットのハッチを開くべく駆けた。
ハッチの近くまで行くと、ハッチに付いている機械のキーボードを打ち、ロックを解除した。
それを認めると、ハッチの脇に手をかけて、ハッチの中を覗き込んだ。
そこにいるのは、黒色のノーマルスーツを着ているガリス大尉の姿だとわかる。
こちらの行動に反応して頭をゆっくりと上げてくる。
彼の姿がはっきりと見えてきて、驚きを隠せない。
「おまえ!!その状態で動いたのか!」
声を震わせながら言った。
そこには、黒色のヘルメットのバイザーは吐血したのか、血まみれとなっていた。
そんな姿に驚くが、さらに驚愕なことがあった。
それは、バイザーの血がかかっていない部分から黒色の瞳が見えていて、こちらを見据えていた。
そして、手指でヘルメットについているマイク機能を作動するために動かしたと思ったらこちらに向けて口を開いた。
その言葉にさらに目を丸めた。
「きさま!「大丈夫ですか!?」
続けて言おうと思ったが、後ろから声が上がっていたのに気づいた。
声のする方を振り返ると、医療班のシンボルが貼っている重装型ノーマルスーツの人が複数いるのがわかった。
それを認めると、黒色のノーマルスーツを着ている男を眺めるもすぐ踵を返した。
さきほどの言葉を思い浮かぶ。
【よかった。生きていて。】
(最後の最後で手加減されるとはな)
その表情は険しく、手を力強く握りしめる。
そして、ハッチの外へ出てフッと見上げてコロニーの表面の奥の暗黒宙域を見つめた。
手加減されることには我慢ならないが、それ以上に先ほどの言葉に反応して脳裏をある人のことが過った。
(どこかで生きているのだろうか)
軽く溜息をついた。
評価と感想が来るのを楽しみに待っています。
遅れながらあけましておめでとうございます。
今年一年も頑張っていきたいのでよろしくお願いします。