ガンダム 一年戦争と称される戦場の中で戦いつづけるひとりの男がいた(ジオン側) 作:ぱみゅぱみゅ
執務室の自動扉の前に何十枚もの書類を抱えて歩いている茶髪の男性の姿があった。
その男性は自動扉のロックを外すために片手で懐から認証用カードを取り出して認証装置にかざした。
ピッピッと音が鳴ると点滅が赤から青に変わり、自動扉が開いた。
執務室の中に入るとそこには黒髪の男性の姿と紫髪をツインテールにしている女性の姿があった。
執務室といっても一つの丈が高い机しかないからか、ミーティング室から二つの長机を引っ張って組んであった。
ガリスの机上では片方は未処理の書類で片方はかなりの量で処理済みの判を押している書類があるのがわかった。
ガリスのそばにアイリスが処理済みの書類を上層部に提出するためにそれぞれの分野に渡す書類を分けて封筒に入れている姿があった。
そしてガリスがこちらに気づいたのか顔を上げた。
こちらの姿を認めると口を開いた。
「アロンか。すまん、パシリみたいで。」
申し訳なさそうな表情であった。
「アロン:はは。大丈夫さ。」
そう言い、ガリスのとこに書類を置いてガリスとアイリスの向かい側に椅子を持ってきて座った。
ガリスは置かれた書類を認めるとわずかにため息をついた。
「どうも、この作業は性に合わないな。」
そんなことを言いながら、手を休まることはなく次々と書類に目を通して判を押していた。
「ねぇ、その書類ってなに?」
隣にいるアイリスからアロンに声をかけた。
「アロン:ん、これか。部隊員のリストだよ。」
そう言い、何十枚もの書類からクリップで留めてある、部隊員のリストが書かれた紙束を取り出して片手で持ちながらアイリスに見せた。
話を繋げるように続けて言った。
「あとはガリスが言っていたギレン総帥が用意してくれた戦艦の詳細と戦艦のクルーリストだな。」
クルーリストと戦艦の詳細をまとめている書類をガリスに渡した。
ガリスはその書類を受け取った。
戦艦の詳細とクルーリストのことが気掛かりだったが、この書類では確認のみで処理済みの判を押す必要がないのを知って後回しにした。
いまは、とりあえず残りの書類をすべて処理しなくてはならなかった。
処理しなければならない書類は様々であるが、まずMS機動中隊はもちろんのこと、MSを要として運用するためにMS搭乗員と最小限の戦力を確保しなければならない。
それに索敵のための人員と整備兵の人員とかも戦闘に関わらないが、その必要性はMS搭乗員の次に重要な人材であることを幼いころにキシリア少将からそのことをよく言っていたのを思い出しながら漏れがないよう何回も確認する。
本来は戦艦の使用申請などを出さなくてはならないが、ギレン総帥の直轄である事務達が戦艦関連の書類とクルーの確保などの処理をしてくれたおかげでそれらの手間を省けたから時間短縮できてすごく助かり、内心喜んでいた。
※
作業を始めて四時間くらいでやっと最後の一枚の未処理の書類に判を押してサインし終えたところだ。
ガリスは大きく背伸びして丈が高い机上にある置き時計を確認すると現在十三時だとわかった。
目線を作業しているアロン、アイリスの姿に移した。
アロンはいまだに部隊員のリストに書かれている人物について人事部と電話でやり取りしているようだ。
アイリスはあと少しで処理済の書類を封筒に入れ終えるのを読み取れた。
そんな姿を眺めているとふと作業開始する前のことを思い返していた。
朝早くからギレン総帥の秘書の部下に当たる人がドズル邸までわざわざ来て戦艦の居場所まで案内してくれた。
そこでは我々が保有することになる戦艦の姿が見られた。
ムサイ級軽巡洋艦【ファルメル型】であり、ムサイ級軽巡洋艦の改良発展型として製造された艦だと説明を受けた。
早速ムサイ級軽巡洋艦に乗り込んだが、戦艦の艦長とクルーは後から来るのを知り挨拶は後回しにした。
自分の執務室があると案内人から聞かされてそこへ向かった。
執務室にたどり着いて室内に入ると奥に一つの丈が高い机があり、その背後にジオンの国旗が飾ってあるのがわかった。
その机上にガリス・ヴェン大尉のネームプレート、PCらしきものなどが置かれてあり、部隊設立のための事後処理すべき書類の山があった。
一応軽く確認したが、簡易の書類と聞いていたがあまりにも量が多かった。
だからアロンとアイリスを至急電話で呼び出したが、二人とも嫌な顔をせずにここまで手伝ってくれることを心から感謝している。
そんなことを思い出しながらも後回しにしていた戦艦の詳細とクルーリストの書類を手に取った。
まず戦艦の詳細を確認するとムサイ軽巡洋艦【ファルメル型】では通常のムサイ級より戦闘力、機動性、物質搭載能力等のあらゆる面で高い性能を有してMSをデッキに四機搭載可能だと理解できた。
また大気圏突入用カプセルとみられる【コムサイ】があり、MS二機搭載可能で機首に機関砲二門が搭載されており重駆逐戦闘機としての運用目的だと書いてあった。
「この戦艦は通常のムサイ級より運用しやすいのか。」
そんなことをつぶやいながら眺めた。
するとアロンが口を開いた。
「あの。部隊員リストを確認しました。全員不審の点は無いようですが、よろしいですか?」
不審の点というと様々あるが、地球連邦のスパイや、よその部隊が入り込んでこちらの任務をすべて流される危険度が高い人物がいないか吟味していた。
部隊設立の時は特にそういう輩が潜り込み活動するための隠れ蓑として狙われやすいからこそよく確認しなくてはならないことであった。
「ああ、わかった。受理を頼む。」
その問いに確認すると、頷きながら言った。
アロンは事務系が得意なのは士官学校のときから知っていたからこそ事務関係は大いに助かる。
「アロン:了解です。」
そう言うとすぐ判を押してアイリスに回した。
ガリスは戦艦の詳細の書類を手に取り、鍵付の鞄の中に入れた。
そして、クルーリストも手に取って一通り軽く目を通した。
クルーのほうはギレン総帥が選んだからかかなり有能であるのがわかった。
特に艦長であるシモン・エル少佐は二十七歳の若さで有名な家柄でもないにも関わらず少佐の階級まで昇りつめ前配属先では副艦長の位置付けだったが、問題が起きたのかこちらの部隊に艦長として転属となったというのを知って驚いた。
その問題がなんなのか気になったが、
「まぁ、どんな人物かはまず会ってみないとわからないな。」
紙に書かれている履歴から察するに有能であるがゆえにエリート意識という面で揉めたのだろうと考えながら鞄の中に入れた。
顔を上げて辺りを見渡すとアイリスとアロンはいま作業が終わったのか体をほぐしながら眠たそうにしていた。
ガリスはそんな二人に微笑んでコーヒーメーカーがあるのに気づいてそこまで歩き出した。
そばに紙コップが重ねて置いてあったから三つの紙コップを取り出してコーヒーを注いだ。
そして、それらを持ってアイリスとアロンのとこまで歩いていき手渡した。
「「アイリス、アロン:ありがとう。ありがたい。」」
それぞれ微笑んでそれを受け取って飲んだ。
ガリスも席に座って飲み始めた。
すると、アイリスが何か思い出したのか口を開いた。
「ねぇ、いま手が空いているようだし渡したいものがあるけどいいかな?」
大きな笑みを浮かべた顔で二人に対して言った。
二人とも不審がったが、その問いに頷いた。
「うふふ、二人とも手を前に出してね。あ、目をつぶっておいてね。」
目を開けたら渡さないという釘を刺すかのような言い方であった。
二人とも顔を見合わせると戸惑いながらも目を閉じて手を差し出した。
ガリスは手の上になにか物を置かれたような感じがあるのを感じ取れた。
「ふふ、目を開けていいよ。」
まるで子供に語りかけるような声で言ってきた。
静かに目を開けるとそこには三つ編みで白、赤、黒の模様があった。
「これは?」
見慣れないもので首を傾げながら聞いた。
「アイリス:ふふ、ミサンガっていうのよ。
これはね、自然に切れたら願い事が叶うらしいよ。」
ニヤけた顔で楽しげにしゃべっていた。
「へぇ、ミサンガか。大切にする。」
願い事とかを信じるのがアイリスらしいなと思いながら微笑んで感謝した。
「アロン:願い事が叶うのを信じるってアイリスくらいだよ。」
大げさに肩をすくめながらもミサンガを目線まで持ち上げた。
話を続けた。
「アロン:しかし、よくできている。」
感心しながらミサンガを眺めた。
きれいに結んであり、器用さが感じられた。
ガリスもその言葉に同意したのか、深く頷いた。
「アイリス:でしょっ!これは自信作よ。
私も左手首につけているから二人とも左手首につけて。」
褒められたのが嬉しくて気分を高揚しながら、左手首にミサンガをつけているのを二人に見せて言い放った。
二人はその言葉に促されるがまま、ミサンガを左手首につけた。
アイリスはそれを見届けると口を開いた。
「アイリス:へへっ。これでお揃いだねっ。」
笑顔でそう言いながら、はにかんで頬を赤らめた。
二人ともお揃いという言葉を聞くと驚きはしたが、次第に笑顔へ変わり和やかな雰囲気になった。
その姿は三人の絆の深さがよくわかるくらいだった。
※
ブリッジの中に三人の姿があった。
なぜここにいるかというと三人は一息つく間もなく後から来ていた艦長である人とクルー達へ挨拶しに行っていた。
目の前にいる男性の艦長を見つめていた。
三人の中から代表である一人が一歩前に進んで口を開いた。
「私の名前はガリス・ヴェン大尉です。中隊長を務めますが、今後ともよろしくお願いします。」
力強い声で自己紹介して敬礼した。
「私の名前はアイリス・エリンです。よろしくお願いします。」
「僕の名前はアロン・オリバーです。よろしくお願いします。」
そしてその後に残る二人も自己紹介した。
相手はそれらの言葉に頷いた。
「我はシモン・エル少佐であるが、この戦艦の艦長を務める。こちらこそよろしく。」
そう言うと返礼した。
いかにも軍人らしき雰囲気があるが、軍人とは思えないほどの柔らかい表情であり、金髪で栗色の瞳をしていた。
話を続けて言った。
「ガリス大尉はたしかあのドズル閣下の噂の養子かな?」
ニッと笑い、カマをかけるような言い草でガリス大尉の黒い瞳を見つめた。
だが、ガリスはその視線に物怖じせず口を開いた。
「どんな噂かわかりません。が、ジオンの軍人として歯向かう者たちを飲み込んでやる。」
シモン艦長の栗色の瞳を睨んで、口角を吊り上げてニッと笑い返した。
重い雰囲気に包まれた場で、周囲の者は誰も言葉を発さず、ただ二人の様子をじっと見つめていた。
だが、そんな重い雰囲気も長くは続かなかった。
突如シモン艦長が朗らかに笑った。
「ははっ、なかなか面白いな。」
ガリス大尉の肩を軽く叩いた。
ガリスはその反応に戸惑いつつも口角をわずかに引きつらせた。
悪い結末にならずに済んだことにクルー達は安堵するとすぐ作業に取り掛かった。
「我は艦長という立場だが、実際はガリス大尉の部隊だから要望があればなんなりと応えます。」
そう言い、ニッと笑った。
ガリスはそのことを聞くとわずかに苦笑していた。
「それより、戦艦の格納庫にモビルスーツ三機を搬入するのにどのくらいかかりますか?」
話を変えて肝心なことを聞いた。
「ああ。それなら装備などを受領しなければならないから、最低でも夕方までには搬入が終わるはずだ。」
懐から手帳らしきものを取り出して確認しながら言い放った。
すると、懐に入れている携帯電話が鳴っているのに気づいた。
すぐに出ずにシモン艦長のほうに顔を向けた。
シモン艦長は電話に出ても構わないという風に頷いた。
いまだに鳴っている電話を取り出して、すぐに応じた。
すると女性だろうかの声で言ってきた。
『ガリス大尉ですよね?』
彼はその問いを返答した。
『私は、ギレン総帥閣下の秘書 セシリアです。』
明るい声ではなく、堅い声であるのを読み取れた。
ただ、ギレン総帥の秘書であることを聞くと無意識に体が強張ったのか、携帯電話を強く握っていた。
なぜなら演習相手がようやくわかるからだった。
『あの件のデータですが、執務室にあるPCに送りましたので確認してください。』
手短に重要事項だけ言った。
『はっ、ありがとうございます。』
はっきりとした声で答えた。
『ええ、決してギレン総帥閣下を失望させないように。』
そう言い、通話を切った。
自分のことを信用していない風の言い回しであるのを苦笑しながら携帯電話を懐に戻して友人達の方に顔を向けた。
「アイリス、アロンよ。ちょっと用事が出来たから各自、自室を確認しておいてくれ。」
このままここにいても、困るだろうから休憩の意も込めて友人達に言った。
二人とも顔を見合わせたが、了承した風に頷いた。
そしてガリスはシモン艦長に向き合って直立すると
「では、これにて失礼します。」
そう言い、敬礼して友人達も彼に続けて敬礼した。
「うむ。」
シモン艦長はわずかに微笑んで返礼した。
返礼の姿を認めるとガリスは頷いて友人達と下に繋がる通路へ向かった。
シモン艦長はそんな三人の後ろ姿をみつめながらなにかを思い出していた。
ドズル閣下からここに配属命令が下されたときは独立部隊という面とドズル閣下の養子である人物が部隊を運用するのを聞いて[どうせザビ家の威を借りて威張り散らかすような奴だろうな]とあまり期待していなくむしろ落胆していた。
しかし、直にガリス大尉と会うとそれまでのイメージが無に帰した。
ガリス大尉の瞳には強い信念と、とてつもなく冷たい陰りがあり、いかなるものにも屈しないのがわかったからだ。
(こういう人と一緒ならこれからの人生は退屈しなくなるな)
シモン艦長はそう考えながらニヤリと微笑んだ。
※
『はっ。あさって、ドズル閣下の養子と演習を行うのですか?』
銀髪を一つに結んだ白人男性がだれかと通話していた。
『そうだ。ガトー大尉よ、俺の養子だからと言って手加減など無用だ。』
力強い声でそう言い、通話を切った。
ガトー大尉は目を細めて、携帯電話を見つめていた。
手加減など無用だという言葉が異様に引っ掛かったが、言われた任務をこなすべきだと頭を切り替えた。
すると隣から男の声が聞こえた。
「どうなさいましたか?」
ガトー大尉の表情があまりにも険しかったからどんな内容か気になった。
「ガトー:カリウスか。あさって、あのドズル閣下の養子と演習することになったのだ。」
あまり嬉しくなさそうであった。
「カリウス:突然ですな。しかし、ガトー大尉が相手だと手も足も出ないでしょう。」
演習という言葉を聞くと驚きつつも、顎に手を当てながら言った。
「ガトー:そのような人だったら出るまでもない。
だが、そういうわけにもいかないから作戦を立てる必要があるな。」
ふと足を止めて顔を横に向けると新たに配備された青、緑、白のパーソナル塗装が施されてあるブレードアンテナ未装備のMS-06R-1Aを眺めて
「これの性能がどのくらいか試すのに、テスト相手がいるのは丁度良い。」
そう言い、ガトー大尉が属する哨戒中隊の要である戦艦のブリッジに目指して歩いて行った。
ドズル閣下とザビ家が認めた養子か。
演習という場を借りて信用に値する人物か試させてもらう。
もし、そうじゃないのなら・・・二度と操縦桿を握れないようしてやる。
演習相手の腕前など鼻っから期待してはいなかった。
評価と感想を楽しみにお待ちしております。
未熟すえにどう書けば伝わるのかなと悪戦苦闘しております。