ガンダム 一年戦争と称される戦場の中で戦いつづけるひとりの男がいた(ジオン側)   作:ぱみゅぱみゅ

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第9話 黒き大蛇ここに起つ

 

 

――――――0079年 1月20日   とある宙域にて

 

 

 

 

ルウム戦役で破壊されたサイド5のコロニー群が漂っていた。

 

そして半分ちぎれていたコロニーの中にある無人と化した街に2機の異色のMSの姿があった。

 

 

黒き両肩スパイクで赤く塗装されている指揮官型ザクⅡは街に背を預けるかのように倒れていて、モノアイは暗転していた。

そのMSの目の前には背部と脚部に増設されている大型の推進器がみられて青、緑、白のパーソナル塗装が施されてあるブレードアンテナ未装備の高機動型ザクⅡの姿があった。

 

 

『ふん、所詮この程度か。そのような者など誇り高きジオンにはいらぬ!!』

銀髪で紫色のノーマルスーツを着ている男はその通信で黒きMSのパイロットに向けて蔑むような声で言い放った。

そして、高機動型ザクⅡのモノアイはしっかりと黒きMSのコクピットを捉えて手に持っている120mmマシンガンをそのコクピットに照準を合わせるかのように構えていた。

 

 

 

 

 するとその声が届いたのか、

指揮官型ザクⅡのコクピット内にいる黒色のノーマルスーツを着ている男はピクリと手指をかすかに動かすとゆっくり顔を上げていく。

 

ゆっくりと目を開くとその眼はまるで狂気に囚われたかのように赤く煌めいて、口角が大きく歪んでいった。

そして言葉を繋ぐように唇をゆっくり動かした。

 

 

 「必要ないだと・・・」

 

 

 それに呼応するかのようにモノアイが赤く灯った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――八時間前に遡る

 

 

 

 

 

サイド3から出航して三日目である。

 演習開始まであと四時間。

 

 

ミーティングルームと飾ってある部屋の中にガリス大尉とシモン艦長の姿があった。

執務室と違って大きなモニターが設置しており、演習に向けて作戦会議するのに良好な場であるために幾度か利用していた。

 

 

先ほどまでアイリスとアロンも加えて、作戦の最終確認したのだ。

いまは、アイリスとアロンは自機の最終メンテナンスのために格納庫に向かったからいない。

残るシモン艦長と少しばかりの雑談をしていた。

 

 

 

ガリス大尉は目の前にあるモニターを眺めていた。

 

今回の演習では

 [演習場では両軍ともに三機のMSで隊を編成とする。実弾ではなく、演習用のペイント弾を使用すること。だが、ヒートホークと言ったものはこの限りではない。

又、戦艦は戦闘の的ではないが、モノフスキー粒子の散布のみ。

 そして決着の判定については、一方の隊長機が撃墜判定を受けるか操縦不能に陥った時点で、相手側が勝者(勝利)となる。

 両軍ともにどちらかの状況にあれば、引き分けとする。

撃墜判定の決定方法については、コクピットに演習用のペイント弾が当たっているかどうかである。]

これらが記されてあった。

 

 

また、演習相手のデータも書かれてあり、【アナベル・ガトー大尉】と名が表示してあった。

経歴から立派な軍人であることも読み取れた。

 さらにルウム戦役に参戦したことがあることがわかったが、赤い彗星と賞されるシャア・アズナブル少佐とは違い、無名だった。

 

 

 (ガトー大尉か。油断してはならない相手だな)

無名だとしても気が抜けなかった。

 

 

隣にいたシモン艦長が何か思い出したかのように口を開いた。

 「そういや、風の噂だが。この人、ルウム戦役ではMS-06R-1型で駆け抜けたようだ。」

 

 「MS-06R-1型?」

ガリス大尉は思わず聞き返した。

 

 

 「うむ。高機動型ザクと呼ばれるようで普通のザクとは違い、かなりのスピードを誇るようだ。

それ以外はわからないが、MSに関して詳しいアンナ・リン曹長に聞いてみるといいかもな。」

ガリス大尉の意を汲むかのように言い放った。

 

 「そうか。」

どの程度の高機動なのかが気になったが、それはアンナ曹長に聞いてみようと考えた。

 

 

 「しかし、演習場所があそことはな。」

シモン艦長はそう言うと苦虫を噛み潰したような顔であった。

 

 「あぁ、そうだな。」

視線をモニターに戻した。

 

 

そのモニターには演習場所も表示されていた。

驚くべきことにルウム戦役によって破壊されたサイド5のコロニー群のあたりであり、そこで演習を行うことになったのだ。

 

ガリスはこの前にザビ家の邸を訪れた際にモニターに映し出されていた、破壊されたサイド5の姿を思い出して、そこで散っていった人々のことを思うと胸が痛んだ。

 

 

シモン艦長は右手首に着けている腕時計を確かめるとガリスに向けて口を開いた。

 

 「では、演習に備えてブリッジに戻ります。」

そう言い、ガリスに対して敬礼した。

 

ガリスは頷いて返礼した。

 

 

シモン艦長はその姿を認めるとすぐ出入り口に向けて歩いて行った。

 

 

シモン艦長が去ったのを確認するとガリスは視線をモニターに戻した。

 

 

 「一浴びしてからメンテナンスしに行くとするか。」

そう呟くと同時にモニターを切った。

 

 

 

 

 

 

 

余談だが。

 

演習が行われることは無論のことにジオン軍のみならずジオン公国の一般人にまで口伝えに知れ渡っていた。

 

ガリス・ヴェン大尉がドズル閣下の養子だというのも一つの理由かもしれないが、この演習ではルウム戦役と一週間戦争に併せて疲弊していた兵たちの士気を回復するのに好都合であった。

その甲斐があってか、かなり注目を集めていた。

 

 

 ザビ家もこの限りではなかった、デギン公王除く兄弟は養子であるがザビ家の一員であるガリスに期待を寄せていた。

 特にドズル中将はだれよりも養子であるガリスいや息子のことを知っているから万が一何か起きた時のために、まだ演習が行っていないにもかかわらずにいつでも治療を受けられるように設備が整っている病院や宇宙要塞ア・バオア・クウの医療班の手配に勤しんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男性専用シャワー室と書かれたプレートが飾り付けられたルームから水音が聞こえた。

そのシャワー室には、ガリス大尉の後ろ姿があった。

浴び終わったのか、蛇口を捻ってシャワーの水を止めると傍らに置いてあったタオルを取り出して髪を洗った。

 

 「ふぅ、ひさしぶりに浴びると気持ちいいな。」

サイド3から出航してからは物質整理や作戦会議や部隊員の顔ぶれを確認しにあちこち回ったおかげか、なかなかシャワー浴びる時間がなかったのだ。

 

そんなことを思い返しながらも拭き終ったタオルを傍らに置いて目の前に飾ってある鏡に映っている己を見つめた。

 

わずかにため息をついて、己の胸に手を当てた。

 

 「やはり目立つな。」

小さく呟いた。

 

その鏡に映っていたのは、上半身の胸からへその辺りまである大きな火傷の跡があった。

またそれだけではなく、背中にも細かい切り傷の跡とタバコの灰皿として使われたのか所々に黒い点の跡があった。

これらの古傷は幼いころに実の両親から暴力を受けた結果、こんな風に醜い体になってしまった。

 

己の体を確認しおわったのか顔を上げて鏡を見つめた。

この体が今の父上と母上から初めて見られたときのことを思い出していた。

 

ドズルがする表情では二度と見ることないくらいに顔じゅうの血管が浮きでていて、もしこの場に前の両親がいたらすぐに殺さんばかりの勢いだったから仕事出迎えの担当らしき人の顔が青ざめて膝が笑うほど震えていたから相当怖い顔だったみたい。

 

ゼナは、こちらに抱きついてきて、【いままでつらかったのね】とそう言うと同時に優しく頭を撫でてくれたなぁ。

 

そのことを思い出しながら軽く微笑んだ。

 

 「ようやく居場所を見つけたかな。」

小さく呟いた。

 

 次の瞬間に顔に手で叩いた。

一つ気合を入れて、シャワー室から出ようと服を身に着け始めた。

 

 

 

 

 『ネェ、相変わらずだねぇ』

不意にどこからか声が聞こえた。

 

すぐ振り返ると声がした方には、さっきまで見つめていた鏡しかない。

だが、奇妙なことにそこにはあるはずの俺の姿がなく、代わりに肩まで伸ばしてあるまっすぐな黒髪の女性の姿があった。

 

その女はゆっくり顔を上げるとその瞳は血濡れたかのように美しくて赤く灯っていて、ニッと吊り上げた口の隙間からはわずかに歯が見え隠れしていた。

 

 

 (ちっ、またか)

小さく舌打ちした。

いつからかわからないが、幻覚が見えるようになったのだ。

実に性質の悪い幻覚で吐き気もする。

 

 

そう考えているといつの間にか女は鏡から這い出るかのようにゆっくり頭から順に抜け出してきた。

 

そしてガリスの顔目掛けて腕を伸ばすと手指がガリスの顔の輪郭をなぞるように撫でながら耳元まで顔を近づいてきた。

 

 

 『ねぇ、ほんとは戦争の道具として扱われているのに気づいているでしょぉ?』

耳元で惑わすかのように囁いた。

 

 

だが、ガリスは無言で女を睨みつけた。

 

耳元から顔を離してガリスの黒い瞳を見つめた。

 とても嫌らしくニヤけた表情で口角を大きく吊り上げながら口を開いた。

 

『あらぁ、こわぁいわねぇ』

 

 

 『まぁ、いずれ知ることになるからネェ』

クスクスと笑いながら言った。

 

 

 「なにがだ?」

ぶっきらぼうに答えた。

 

女性の赤い瞳がさらに強く輝いた。

 

 『あらあら、とぼけないでねぇ。あんたが何者かっていうのをネェ』

軽く目を細めてそう言うと同時に、残光を残して数秒も経たずに消えていった。

 

 

 

残された彼はさきまでいた女性の居場所を見つめていた。

 

 

 「・・・道具か。」

小さく呟いたが、胸糞悪く感じて大きく舌打ちをした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――0079年 1月20日 午前8時30分

 

 

 

 

月 グラナダ基地近くの宙域に一隻のムサイ級軽巡洋艦【ファンメル型】の姿があった。

 

 そのムサイ級軽巡洋艦のハッチの中ではMS-06F型(ザクⅡ)の右肩についているシールドに後ろから順に03、02、と番号があり、その先頭に全身が黒く両肩スパイクが赤く塗装されていてブレードアンテナ装備しているMS-06S型の姿があり、三機ともに胸部に【三頭の大蛇】のマークが施されていた。

 それぞれの装備は右手に120mmマシンガンと腰の背部に280mmバズーカがあり、腰部にヒート・ホークが飾りつけてあった。

 

 

 その先頭であるMS-06S型のコクピットの中にガリス大尉の姿があった。

ガリス大尉は忙しなく指を動かしキーボードを打ち、前面モニターに映されている本機の状況を最終確認していた。

 

最終確認し終わったのか、息抜きのためにコクピット外に出た。

 

いつでも出動できるよう既にノーマルスーツを着ていた。

ガリスの場合は通常のノーマルスーツと違い、黒くペイントされているノーマルスーツであった。

 

 ちなみにアイリスとアロンは通常のノーマルスーツである。

そのことでアイリスが文句を垂れてアロンが苦笑しつつも聞き役に徹し、アイリスを落ち着かせたのは割愛する。

 

 

軽く背伸びするとこちらに近づいてくる足音が聞こえてきた。

 誰なのか?と思い、足音がした方を確認する。

 

そこには整備着を着ている中学生並みの小柄であり、栗色のボブパーマの髪型をしている女性がいた。

 

 「アンナ曹長か。頼んでいたことについてなにかわかったのか?」

書類みたいなものを留めてあるクリップボードを手に持っているのを見て、頼んでいたことを用意してくれたのかとそう思いつつも一応聞いた。

 

 

 「ええ。ちょうどこの間、上司から高機動型ザクのMS-06R-1型のデータをもらったから参考にはちょうどいいかもしれない。」

そう言い、クリップボードから高機動型ザクのデータらしきものを取り出してガリス大尉に渡した。

 

 「まさか、アンナ曹長が高機動型ザクのデータを持っていたとはな。」

意外と人脈が広いなとそう考えながらもそのデータを受け取った。

 

 高機動型ザクのデータといってもMS-06R-1型のデータくらいで改良型のMS-06R-1A型があるらしいが、さすがにそれはなかったそうだ。

それでも参考できる資料があるのはかなり助かった。

 

 「そうですね。MS開発に携わる仕事を目指していたことがあって、そのときに親しくなった人がいるので。」

 

 

 「へぇ、なんでMS開発の仕事じゃなくてMS整備の仕事を選んだんだ?」

受け取ったデータの紙をめくって眺めながら聞いた。

 

 

 「整備の仕事を選んだ理由ですか。

ある人のMSを整備したいと思ったことがきっかけですね。」

顎に手を添えて当時のことを思い出しながら言った。

 

 

 「へぇ。」

意外な理由でわずかに驚いた。

 

 「これは秘密ですよ。」

人差し指を立てて唇に当てるといたずら気な笑みでそう言った。

 

 

 「ははっ。とりあえず、データありがとう。」

苦笑しつつも感謝の意を込めて言った。

 

 

 「どういたしまして。では、データを渡したことですし、これで失礼します。」

ガリス大尉にむけて敬礼した。

 

ガリスも同じく返礼した。

 アンナ曹長はその姿を認めると軽く会釈して控室に戻るために踵を返した。

 

 「あの日にあなたがほかの人とは違う動きを魅せてくれたからね。」

小さく呟きながらも歩きだした。

 

 

ガリスはその後ろ姿を見送ると視線を渡されたデータに移した。

 

そのデータから察するに

高機動型ザクの特徴としては背部と脚部に増設されている大型の推進器がみられるようだ。

 それらをつけているからか通常ザクより圧倒的なスピードだとわかる数値であった。

だが、欠点は小回りが利かない、扱うのに相当な技量を要することだと書かれていた。

 

 

 「ふむ、こちらは小回りが利くからそれを利用するしかないな。」

しばらくうんぬんと頭を捻って考えながらコクピット内に戻った。

 

席に着くと自機の状態とこのデータに照らし合わせた結果、現状での解決策はそれくらいしか思いつかなかった。

 

 「高機動型ザクを扱う人の腕次第で対処の仕方が変わることになるからやはりぶっつけ本番か。」

そう呟きながらもわずかにため息が漏れた。

 

すると、サブモニターに本艦のブリッジからの映像が映されたのに気づいて目線を移した。

その映像にはシモン艦長が映しだされていた。

 

『ガリス大尉。まもなく作戦開始となり、ハッチが開く。』

演習開始まで間近の報せだとわかった。

 

 

 「了解。」

データの紙を傍らに放って、僚機へ内線通話を開いた。

 

 

 「アイリス、アロン。準備は万全か?」

サブモニターに現した僚機のパイロットに問いた。

 

 「アイリス:ええ、問題ないわ。」

 

 「アロン:はい、いけます。」

 

それぞれの返答を聞き、ガリス大尉は頷いた。

 

 

 

 

すると、格納ハッチを管理する管制室の指示が入った。

 

 『まもなく射出準備に入ります!先頭の方、強烈なGに備えてください。』

その指示に従い、サブモニターから目を離して前に注意を向ける。

 

船橋部の格納ハッチが徐々に開き、射出モードに入り始めた。

 

格納ハッチが完全に開くとその先には暗黒宙域の中に無惨なサイド5の姿があり、周辺に多数のデブリの姿が見られた。

 それだけではなく、無惨なサイド5のさらに奥に美しい地球の姿があった。

 

 「・・やはり、美しいな」

その美しさに見とれた。

 

 

すると射出準備モードに入り終わったという報せが鳴ったのを気づいた。

報せを認めると彼は前に向けて力強い声で言い放った。

 

 「ガリス:発進します!!」

途端に強烈なGに襲われながら船橋部から射出した。

暗黒宙域に向けて放り出され、すぐ背部、両足のスラスターを使い姿勢を整える。

つづいてアイリスとアロンの機体も射出するのを見届けると本艦のブリッジと通信をつないだままの映像から声が聞こえた。

 

 

それはシモン艦長のものだった。

 

 『これによりモノフスキー高濃度に散布します。では、ご武運を。』

そう言うと敬礼した。

 

彼はシモン艦長に向けて返礼した。

 

本艦からの通信が切られたのを確認すると。

 顔を上げてそばまで来た左右の僚機に確認した。

 

サブモニターにいる僚機のパイロットに向けて口を開いた。

「よし、いいな。作戦は忘れてはいないな?」

 

 「アイリス:たしか。ガトー大尉はガリスが止めて残り2機はわたしたちが仕留めるよね。」

 

 「アロン:また、ガトー大尉の機体らしきものを見かけても応戦せず、ガリスに報告すること。」

 

それぞれ思い出しながら言った。

 

 単純な作戦に見えるが、高機動型ザクが相手だとアイリスとアロンの機体では到底敵わないというのは承知であった。

だからこそガリスの機体は高機動型ザクに敵うかは腕次第だが、小回りが利くという利点を生かして高機動型ザクを引きつける手はずだ。

これならばアイリスとアロンはのこり2機がこちらと同じ機体であるため、互角で戦うことが可能だ。

 

 

 

 「その通りだ。よし、いくぞ。」

漏れがないことを確認するとモノアイを前に向けた。

背部のスラスターに火を点けると同時にサイド5を目指してバーニア光を瞬かせた。

 

 

 「「アイリス、アロン:はい!!」」

それぞれ返答すると背部のスラスターに火を点けてガリスに追従するようにバーニア光を瞬かせた。

 

 

 

 

 




評価と感想を楽しみにお待ちしております。


 いままでと比べて更新のペースが落ちますが、今後ともよろしくお願いします。

ガトー大尉側の部下ってカリウスくらいしか思いつかない・・。
 
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