だが少年は歯を食いしばり立ち上がる。
黄金の少女は憂う。
黄金の少女は願う。
少年の光に満ちた未来を…
「スパルタ教育反対っ!!」
「友達の神月さんって人に旅行に誘われたんだけど、弟も連れてきていいってさ。つくしも行くよね?」
「ブーーーーッ!?ゲホゲホゲホッ!!」
「うわっ!?なに思いっきりお茶吹き出してんのっ!もうっ、お母さーん!つくしがお茶吹き出しちゃったー!」
姉ちゃんがバタバタと台所に駆け込んでいく。たぶん布巾を取りに行ったんだろう。
そんな事よりもさっきの話だ。
かりんさんが姉ちゃんを旅行に誘うのはいい。ライバルだけど友達でもあるからおかしくはない。
僕を旅行に誘うのもいい。僕は弟子だからこれもおかしくはない。
でも、二人いっぺんに誘うはおかしいよ!?
だって、かりんさんが僕に言ったんだよ!
「わたくしとさくらさんはライバル同士ですわ。そのわたくしが彼女の弟を弟子したと知ったなら、さくらさんも複雑になられるでしょう。ですから暫くは秘密にしましょう」
その言葉に僕も納得したから秘密にしてたのに、どうして姉ちゃんとの旅行に僕を誘ったんだ?
絶対に理由を聞かなきゃいけないな。
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「あら、さくらさんは海外に行ったことがありませんの?」
「うん、いつかは武者修行に行きたいと思っているんだけどね。うちのお父さんが外国嫌いだから家族旅行も国内ばっかりなんだ」
「外国嫌い…もしや西洋人がお嫌いなのかしら?」
かりんは自分の黄金の髪に触れながらさくらに問いかける。
さくらは、かりんの瞳に僅かばかりの不安の光が宿っていることに気付き慌てて否定する。
「違うよっ、お父さんは飛行機が怖いんだって、だから国内旅行も電車でしか行かないんだよ!」
さくらは、父親の情けない秘密をアッサリと暴露する。
「お父さんは本当は飛行機が怖いだけなのに、格好悪いから外国嫌いって言ってるんだよ」
「まあ、そうでしたの。うふふ、可愛らしいお父様ですわね」
かりんが可笑しそうに笑うと、さくらもつられたように笑い出す。
「あはははっ、見栄っ張りで困っちゃうよ。でもお父さんが可愛いなんて実物を見たら絶対思わないよー」
「そんな事はないと思いますけど。そういえば、お父様が飛行機嫌いという事は、さくらさんも飛行機にはお乗りになった事はないのかしら?」
ギクリとさくらは思ったが、そんな事はおくびにも出さずに笑顔で答える。
「そうなんだー、あたしは飛行機の方が速いから電車より飛行機がいいっていつも言ってるだけどねー」
「まあ、それは大変ですわね」
「うん、でもお父さんの数少ない我儘だからね。あたしが折れてあげなきゃいけないよ」
「さくらさんはお父様想いなのですね」
「えへへ〜、そんな事ないよ。もう照れちゃうからこの話題は終わりね!」
さくらは上手く話題を変える事に成功したと思い胸を撫で下ろす。
だが、そんなさくらの様子にかりんは当然のように気付いていた。
そして、さくらに見えない角度でニヤリと邪悪に笑うとその毒牙をさくらに向ける。
「それではお話は変わるのですが、今度ヨーロッパで開催される格闘大会の事をご存知かしら?」
かりんの明らさまに思える“釣り”に能天気なさくらは気付かない。
「知ってるよ!あのケン・マスターズも出場する大会だよねっ、他の選手達も世界レベルの人達ばっかりで、すっごいハイレベルな大会だよねっ!!」
かりんは飛び跳ねる獲物にほくそ笑む。
「うふふ、実はその大会の特別招待券を知り合いの方に頂きましたの」
「うわあ、いいなあ!」
かりんはギュンギュンとした反応に心が躍る。
「わたくしは父と行くつもりだったのですが、父の予定が合わなくなってしまい困っていますの」
「えっ、それってもしかして!?」
かりんは獲物の手応えに嗤う。
「さくらさんさえ良ければ、御招待させて頂きますから御一緒に行きませんか?」
「もちろん行くよっ、誘ってくれてありがとう!」
かりんは見事に獲物を“釣り”上げてほくそ笑む。
「うふふ、楽しみですわね」
「うん!あ、でもつくしの奴が拗ねちゃうだろうなぁ」
「つくし…さん、さくらさんの弟さんですわよね」
「うん、弟も格闘技が好きだから、あたしだけ見に行くのを知ったら、きっと拗ねちゃうだろうな」
さくらの顔が僅かに曇る。
春日野姉弟は、この年代の異性の姉弟にしては仲が良かった。
特にさくらにとっては、小さな頃から手のかかる弟の事を大事に思っていた。
いわゆる“馬鹿な子ほど可愛い”というやつである。
もっとも、つくしに言わせれば、自分よりも姉ちゃんの方が百万倍馬鹿だ。と答えるだろう。
「仲の良い姉弟なのですね」
かりんは平常を装い答えるが、内心は焦っていた。
この会話の流れは、つくしを誘うパターンになると、かりんのお嬢様としての勘が告げていた。
もちろん、つくしを連れて行くことは本来ならば問題ない。
むしろ、つくしとさくらに囲まれての格闘技観戦ならば嬉しくて、神月流舞踏術奥義“胡蝶の舞”を意味もなく披露してしまうぐらいだ。
だが、今は状況が不味かった。
かりんがつくしを弟子としている事は、さくらには秘密なのだから。
何故秘密にしているかというと、つくしにはそれっぽい事を言ったが、かりんの本心は違った。
かりんは、ライバルにして友人であるさくらの実の弟を愛弟子として可愛がっている。その事をさくらに知られるのが嫌だったのだ。
かりんは、つくしに対して特訓中は、師として厳しく接しているつもりだ。
だが、それ以外では自分でもつくしに甘いことを自覚している。
はっきり言ってしまえば、お姉さんぶって可愛がっているのだ。
その事をさくらに知られたなら、きっとさくらは微笑ましい目をかりんに向ける事だろう。
その状況を想像するだけで、かりんは身悶えるような羞恥心を感じてしまう。
だからこそ、つくしに口止めをしていたのだった。
「うーん、仲が良いのかなぁ。最近はすっかり生意気になっちゃったけど」
「うふふ、喧嘩するほど仲が良いと言いますわよ」
「うん、そうだね。なんだかんだ言っても弟だもん。やっぱり可愛いよ!」
かりんは慎重に会話を進める。なんとか格闘技大会から話を変えようと頑張ってみる。
「そんなつくしを置いて、あたしだけ大会に行くなんてやっぱり…」
かりんの頑張りは無駄だった。
さくらは捨てられた子犬のような目でかりんを見つめている。
キューンという鳴き声さえ聞こえてきそうだった。
「あの、神月さん。やっぱりさっきの話は…」
さくらは冬の日に捨てられた子犬のように震えながらかりんを見つめている。
幻の雪が降っているのが見えてきそうなほどだった。
「も、もちろん、さくらさんの弟さんもご招待致しますわ」
さくらの視線の圧力に晒されたかりんはそう答えるしかなかった。
「わーい!やったぁあああっ!!神月さんありがとーっ!!大好きっ!!」
さくらは喜びの余りかりんに抱きつく。
かりんは先ほどの答えを後悔することは生涯ないだろうと、さくらに抱き締められながら思った。
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「なるほど、そういう事だったんだ」
「ええ、そうなんですよ。おほほほ」
僕の前には、いつもの覇気が感じられないかりんさんがいた。
「つまり姉ちゃんが飛行機が怖い事を察して、からかうために格闘技観戦を餌にしたわけだね」
「これもまた女の戦いですわ。おほほほ」
僕の前には、いつもの威圧感が感じられないかりんさんがいた。
「それで、僕達は初対面の振りをすれば良いんだよね」
「そうね。そうしましょうね。おほほほ」
僕の前には、いつもの厳しさが感じられない、
「つくし、旅行が楽しみですわね。おほほほ」
「うん、そうだね。かりんさん」
親しみを感じるかりんさんがいた。
つくし「一部、原作と相違設定があるけど気にしないでね」
さくら「それを言い出したらキリがないよ」
つくし「僕自体が相違設定だしね」
さくら「話が変わるけど、バトルが少ないよね」
つくし「ストリートファイターなのにバトルなしっ、困ったもんだね」
さくら「あたしの活躍を載せればいいのに」
つくし「だから、主役は僕だからね」
さくら「つまんないの」