7月も半ばを過ぎ、定期テストの時期が迫ってきた。
今は殺せんせーによる各自の苦手科目の復習をしている。
「ヌルフフフフ、中間後に来たキンジ君も含め皆さんは基礎がしっかりできてきました。これなら期末の成績もアップ間違いなしです」
「殺せんせー、今度も全員50位以内を目標にするの?」
「いいえ、今回は生徒それぞれに合うような目標を立てます。そこで先生この教室にぴったりの目標を設定しました」
渚の質問に殺せんせーが否定を入れる。
そこまでいうと、額当てをつけた殺せんせーの分身が俺を見て
「だ、大丈夫!キンジ君もチャンスがある目標ですよ」
「そんな焦った感じで言われてもな……」
この中で一番できないのは自覚しているが、改めてそんな反応されると泣きたくなってくる。
「さて目標の発表の前に、シロさんが前に言った通り先生は触手を破壊されると動きが遅くなります」
そう言ってどこからともなく出した拳銃で殺せんせーは自分の触手を1本破壊した。
「1本減るだけでも、すべての分身が維持できず子供の分身が混ざります。」
⦅分身ってそんな減り方するものだった⁉⦆
「2本減らすと子供分身がさらに増え、親分身が家計のやりくりに苦しみます」
もはや、分身の説明ではない気がするが……しかも微妙に切ない話になっているし。
「3本まで減らすと父分身が蒸発、女手ひとつで子を養わないといけません」
『重いわ‼』
これ触手の話だったよな?なんで悲しい家族物語を見なければならない。
「とりあえず先生が何を言いたいのかと言うと、触手1本につき約20%先生は運動能力が落ちます。
そこで目標なんですが、総合点以外に皆さんの得意な科目も評価しようと思います。
5教科と総合で学年1位を取ったものには触手1本を破壊する権利を与えます」
『‼』
最大で6本破壊できると分かり、皆の目の色が変わった。
「君たちの頑張りしだいで賞金に近づけるかは決まりますよ」
その一言が決め手だったのだろう、皆はこの後も休み時間を使ってまで勉強している。
俺も律や凛香に教わりながら最も苦手な数学などを教わりながら勉強する。
「そういえばキンジ今日の放課後は暇なの?」
「ん?まああっても勉強ぐらいだな」
「そう、じゃあ放課後も勉強を教えてあげるからキンジの家行っても良い?」
「それはありがたいが……凛香自身の勉強は良いのか?」
「教えることも自分の勉強になるし大丈夫よ」
このやりとりだけで凛香の顔は真っ赤になっていた。
「じゃあ、
この話になったら律も参加するのは分かっていたが、なぜ「いつも通り」を強調する。
確かに最近は夜に数学を教えてもらっているのは事実だが……
しかも凛香は凛香でさっきまでの顔がウソのように変わり、今は俺を睨んでくるし……
とりあえず俺は場をこれ以上ひどい状況になると被害にあうため
「あ、ああ、2人とも頼む」
と言うしかなかった。
放課後になり、基礎ができたということで補習が無くなった俺はさっさと家に帰り簡単にだが部屋を掃除しておく。
掃除が終わっても凛香はなかなかやって来ず、先に勉強を始め律に数学を教えてもらっていると
ピンポーン
とチャイムが鳴った。
たぶん凛香だろう。
現在の時刻を確認すると17時になろうとしていた。
「なんでこんなに遅いんだ凛香のヤツ?」
玄関を開けると、私服に着替えた凛香が勉強道具が入っていると思われるカバンと何故かスーパーの袋を持っていた。
「ごめん、ちょっと遅くなったわ」
「それは良いが、その袋は?」
「どうせアンタ今日もコンビニ弁当だと思ったから、誕生日のときぐらい晩御飯作ってあげようと思って」
それを言われ、今日が俺の誕生日だったことを思い出した。
「そういえば、今日は俺の誕生日だったか」
「呆れた……キンジ自分の誕生日を忘れていたの? とりあえずさっさと作るから台所借りるわよ」
そう言って凛香は部屋に入り晩御飯を作り始めた。
手伝おうか聞くと、料理経験がほとんどないためむしろ邪魔になると追い出された。
若干へこみつつ律による数学の勉強を再開する。
……ピン、ポーン……
凛香が晩御飯を作り終わった頃、今度は
来客の予定はこれ以上なかったはずなんだが……いったい誰なんだ?
玄関を開けるとそこには
「し、白雪⁉」
「キンちゃん!誕生日おめでとうございます!」
どうやら白雪も俺の誕生日を祝いに来たらしい。
「あ、ああ。それにしても白雪、お前武偵高にいたんじゃないのか?」
「また星伽に呼ばれていて、明日からそっちに行くの。でも行く前にキンちゃんのところに行っても良いって許可をもらえたから、お夕飯を作ってあげようかなって思って」
そう言って、白雪はたぶん重箱が包まれているであろう風呂敷を見せながらテヘッっと笑う。
……マズイ、このまま部屋に入れると中には
以前修学旅行でも会った2人だが、俺が拉致事件を解決している間にケンカをしたらしいのだ。
見ていた岡島いわく
「俺が想像していたのはあんな怖いものじゃない……」
と嘆くほどのものだったらしい。
どんな想像をしていたか分からないが、少なくとも2人は会わせるべきではないだろう。
「あ、ありがとう。よし用事は済んだ、お前も忙しいだろう?だからさっさと帰ろう、な?」
「……」
そこで白雪の目にハイライトがないことに気づく、さらに視線は俺よりも後ろに向いている。
俺はゆっくりと白雪の視線を追うとそこには……
やはり凛香がいた。さらに凛香が持っているケータイには律もいる。
「キンちゃん」
「キンジ」
「キンジさん」
『なんでその女がいるの(ですか)?』
神様、誕生日くらい平和にすごさせてくれよ……
次回、修羅場開幕!