哿の暗殺教室   作:翠色の風

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29弾 計略の時間

夏休みも半分を過ぎ、夏期講習まで1週間を切った。

俺達は訓練と作戦の詰めのために旧校舎に集まっている。

 

「……なあビッチ先生、来たんだったら訓練しろよ」

 

正直、リゾートに来たような格好でいるビッチ先生が訓練の邪魔で仕方ない。

 

「そうだよ、射撃やナイフは俺達と差がないだろーにさ」

「大人はずるいのよ。あんたたちの作戦に乗じてオイシイ所をもらっていくわ」

 

三村の言葉にビッチ先生が鼻で笑うように答えた。

 

「ビッチ先生、後ろにいる人の前で同じこと言ってみろよ」

「どうゆうことよトオヤマ、後ろの人って……」

 

そう言って振り返ったビッチ先生の顔は瞬時に青くなっている。

後ろにいたのはビッチ先生の師匠のロヴロさんだ。

今回の作戦に助言をしてもらえるように烏間先生が呼んだみたいで、ロヴロさんは見るからに怒気を纏っている。

 

「偉くなったもんだなイリーナ……」

「あ……えっと……ち、違うんで「1日休めば、腕は鈍る! 落第が嫌ならさっさと着替えろ!」ヘイ、喜んで!」

 

ロヴロさんの一喝でビッチ先生は急いで着替えに校舎に戻っていった。

 

「それで今殺せんせーは絶対に見てないな?」

「ヤツは予告通りエベレストに避暑中だ。部下もヤツをずっと見張っているから間違いない」

 

ロヴロさんの問に烏間先生が答える。

 

「見張りの為に、わざわざエベレストまで行くことになった烏間先生の部下の人も大変だな……」

 

木村が哀れんだように呟く、ホント防衛省の人たちは苦労しているよな……

 

「なら良い、作戦の機密保持こそ暗殺の要だからな」

「そういえばロヴロさん。今回の暗殺にもプロは送るのか?」

「いや、今回は送れない。ヤツは臭いに敏感で送ったことのある殺し屋が使えんのだ」

 

俺が来た時も、殺せんせーは存在感が無い鼻で硝煙の臭いをかぎ分けてたな。

 

「それに有望だった殺し屋と突然連絡が途絶えて、現在斡旋できるものがいないんだ」

 

ロヴロさんの言葉に嫌な予感を感じるが元々俺達だけで暗殺する予定なんだ、支障もないため別に問題ないだろう。

 

「先に7本の触手を破壊して、間髪入れずに全員で一斉射撃は分かるが、この精神攻撃と言うのは具体的にどんなことをするのだ」

 

手元の資料を見ながら、ロヴロさんが聞いてくる。

 

「この前殺せんせーがエロ本を拾い読みしてたんスよ」

 

何回聞いても嘆かわしいな……

 

「その時口止め料としてアイス1本配られたけど……そんなもので口止め出来るわけねーだろ!クラス全員でいびってやるぜ!」

 

杉野、前原と続いて精神攻撃についての内容を説明する。

つかアイス1本で口止めって……今どき小学生でも無理じゃないか?

 

「他にも強請るネタはいくつか確保してるんで、これで殺せんせーを追い込みます」

 

渚がさらに補足説明し、それを聞いたロブロさんの口から

 

「残酷だ……」

 

と漏れる。

俺が同じことをされたら、きっとその場で自分に拳銃を突きつけたくなるだろうな。

ロヴロさんは切り替えるため咳ばらいを1回して作戦の続きを見る。

 

「肝心のとどめだが、これは正確なタイミングと精密さが求められるな……」

 

そう言いながら、ロヴロさんはE組でもトップクラスの射撃能力を誇る千葉と凛香の2人を見る。

今も千葉は狙撃銃を凛香は2丁拳銃を使用し、的として使用している風船に正確無比に当てている。

 

「不安か?」

「いや逆だ。あの2人は特に素晴らしいな」

「そうだろう」

 

烏間先生も2人を褒められたからなのか、自慢げに答えてた。

 

「射撃能力に秀でた2人にヤツと正面から戦闘可能な殺し難し(ダイ・ハード)の孫、そして他の者も良いレベルで纏まっている。短期間で良く育ったものだ、人生の大半を暗殺に費やしたものとしてこの作戦に合格点をやろう」

 

プロの視点からも問題ないと言われ、孤島での暗殺方法が正式に決まった。

……待て、殺し難しの孫って俺の事か? 

ロヴロさん、俺の事を過大評価しすぎだろ。

 

射撃訓練の後、武偵高に行ってから日課となっている凛香との無手の組手をやろうと射撃場から移動していると、ロヴロさんのもとに渚が向かうのが見えた。

 

「ロヴロさん、あなたが知っている中で1番優れた殺し屋って誰ですか?」

「そうだな……1番優れたという意味では2人いる」

「2人ですか?」

「ああ。まず最高の殺し屋という括りなら『死神』を俺はあげるな。ありふれた名だが我々の業界で死神と言えば唯一絶対にヤツを指す」

 

『死神』その名は俺も聞いたことがある。

誰も本名を知らず、持っている技術全てが高レベルな能力らしい。

その為、世界的にマークされており危険リストA上位等級に登録されている。

しかし誰もヤツの素顔を知らないため、あまり意味をなしていないそうだ。

 

「ロブロさん、もう1人は……」

「殺し屋は優れたヤツほど万に通じる。その意味で言えば『教授(プロフェシオン)』と呼ばれているものが該当するだろうな」

「『教授』ですか?」

 

そんな通り名は聞いたことがないな……

 

「そうだ。もはや都市伝説のような人物だが、曰く超人や人外を集めた組織の長だと。曰く見たことのある技全てを使え、その実力は裏表関係なく世界最高峰の実力だと。曰く裏から世界を征服していると言われている。もしホントに教授がいて暗殺を行えば、あの死神すら及ばない実力だろうな」

「……」

 

渚はあまりの事に声が出ていなかった。

盗み聞きしていた俺も教授の存在は信用できなかった。

 

「教授の存在は確証がないが、少なくとも死神は存在する。今もヤツはじっと暗殺の機会を伺っているのかもな」

「そんな人が……」

「……少年、君には俺から必殺技を授けよう」

 

必殺技?

殺し屋なのだから初手で終わらせるような技なのだろうか?

 

「……キンジ、いい加減反応しなさいよ!」

「ッ! どうした?」

「さっきからここでいいんじゃないって聞いてるんだけど」

 

凛香の言葉で周りを見れば、いつの間にか十分に組手ができる場所まで移動していた。

 

「そうだな。ここでするか」

「渚達が気になっているみたいだけど、組手中までそんなのだったら殴り飛ばすわよ」

「凛香相手にそんなことしたら、俺が秒殺されるからしねーよ」

「あと島での射撃スポット探し、キンジも手伝ってよね」

「なんで俺が? 千葉がいるじゃねーか」

 

殺せんせーは俺の事を一番警戒していることは皆が知っているため、今回の作戦では囮として殺せんせーを足止めする事になっている。

トドメ役の2人で話し合って決める方が良いだろ。

そう言うと途端に凛香は不満そうな顔をして

 

「千葉は狙撃銃で私は拳銃だから撃つ距離とか違うの分かるでしょ。私は拳銃を撃ちなれているキンジにアドバイスが欲しいの」

「そういえばそうだったな……分かったから睨むな凛香。スポット探しは手伝う」

「うん。じゃあ、組手を始めましょう」

 

凛香が睨みながら反論してきた為、俺は射撃場所を探すのを手伝うことを了承して組手を始めるのだった。

 

 

 

 

 

間も無くE組最大の暗殺計画が始まる……

 




教授、いったい何者なんだ……(棒)
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