哿の暗殺教室   作:翠色の風

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31弾 厄災の時間

海に叩きつけられた俺はすぐに海面に顔を出し辺りを伺う。

恐らくだがさっきの爆風と閃光は殺せんせーの爆発だ。

その証拠にさっきまで殺せんせーがいた場所には何もない。

 

「油断するな! ヤツは再生能力がある! 片岡さんを中心に水面を見張れ!」

 

烏間先生の指示のもと俺達は小屋の周りを警戒する。

 

「あっ!」

 

倉橋が何か見つけたようで指をさしてた。

指した先にはブクブクと泡が出ている。

 

「生きていたら全員一斉射撃をしかけるぞ」

 

全員で泡の周りを囲み銃口を向ける。

浮かんできたのは……殺せんせーの顔が入ったオレンジと透明の球体だった。

 

「な、何アレ……」

「よくぞ聞いてくれました渚君、これは奥の手中の奥の手『完全防御形態』です」

 

はぁ⁉ 完全防御形態だと‼

 

「外側の透明な膜は肉体を縮めた際に余った高密度のエネルギー結晶体です。 この状態は水や対先生物質などあらゆるものを跳ね返します」

「なんだよ、そのチート! そんなのになられたら何もできねえじゃねーか」

「確かにその通りです木村君、ですがこの形態にもデメリットが存在します。この形態は24時間持続しますが裏を返せばその間は身動きが取れません。この状態で最も怖いのはロケットに積まれ宇宙の彼方に飛ばされることですが、現在24時間以内に飛ばせるロケットが無いことを調べ済みです」

 

「くそ……」

 

殺せんせーのヤツ、この形態になることも想定済みで動いてたのかよ……

寺坂は諦めずスパナで殴ったりしているが透明の膜には傷1つついてなかった。

 

「すまん、俺は先に凛香と千葉の様子を見てくる。 殺せんせーの対処とか決まったら後で教えてくれ」

 

そう近くにいたヤツに言って俺は皆より先にこの場を離れた。

凛香達が上がる予定の場所に向かうと、千葉はどうやら先に行ったようで今は凛香しかいなかった。

 

「キンジ……」

「凛香、分かっているとは思うが作戦はダメだった」

「ッ‼ やっぱり……」

「あれは凛香達のせいじゃない。 ただ殺せんせーが一枚上手だっただけだ」

 

そう言うが凛香は落ち込んだままだった。

 

「キンジ、ちょっとだけ後ろを向いてて」

「? ああ、分かった」

 

何をするのか分からないが言われた通り後ろを向くと、俺の背中に凛香が抱き着いてきた。

 

「り、凛香⁉」

「……私ね撃った瞬間思ったんだ、『ダメ、この弾じゃ殺れない』って」

 

よくよく聞けば凛香のすすり泣く声も聞こえてくる。

 

(凛香のやつ昔と変わってないな)

 

凛香は昔から弱音や言い訳は皆の前で言わなかった。

だが人間貯めこむのにも限界がある。

凛香は、1人で抱えきれない事があるとよく俺や兄さんの背中で泣いて何があったかなどを独り言のように言っていたのだ。

俺は幼いときと同じように、何も言わず凛香の言葉の続きを聞く。

 

「練習ではもっと不安定な位置か撃っても外さなかったし、自信はあったんだ……けど本番になった瞬間に指先が硬直して視界も狭くなったの。結果は外せないっていうプレッシャーに負けて失敗。皆に託されたのに期待に答えられなかった……」

 

そう言うなり凛香は泣き顔を見せたくないからだろう、さっき以上にギュッと密着してくる。

ここで凛香の姿を思い出してほしい。

凛香は水中に潜って待機するため水着だ、しかも昼同様ビキニ。

そして俺の背中に密着、ここまで言えば誰でも気づくだろう?

 

フニュン

 

そう俺の背中に凛香の胸の感触が伝わってくるのだ。

さっきから血流を抑えるために素数を数えようとしているのだが、胸のほうに意識がいってしまい血流を抑えきれていない。

 

「凛香、さっきから当たっている! そろそろヤバイんだ離れてくれ!」

 

ドクン!

 

これ以上耐えきれそうにないため凛香に離れるように言うが、言うタイミングが遅かった……

 

「キンジ?」

 

背中に抱き着いていた凛香が聞いてくる。

俺は振り返って頭を撫でながら、

 

「凛香さっきも言ったがこれは君だけのせいじゃないよ。それに暗殺はまだ終わってない、次のチャンスで仕留めたらいいだけさ」

「でも、次も無理だったら……」

「『諦めるな、武偵は決して諦めるな。』だ、諦めないかぎりチャンスはまた廻ってくる。それに凛香は俺のパートナーなんだろ? なら最初から弱気になったらダメだ」

「……うん」

「良い子だ、さあ皆のところに戻ろうか」

 

凛香を連れホテルに戻ろうとすると携帯に律が出てきた。

 

「キンジさん大変です! 皆さんが!」

「どういうことだ律!」

「キンジ、急いで戻りましょう」

 

俺達は急いでホテルに戻るとテラスにはクラスの半分ほどがグッタリと倒れている。

 

「いったい何があったんだ渚!」

「キンジ君分からないんだ。テラスで休憩していたら突然皆が……」

「医者は?」

「さっき烏間先生も聞いてたけど、明日の10時まで来れないって」

 

食中毒か?

いや、それなら同じものを食べた俺達も倒れているはず……

 

「とりあえず、皆を床に寝かせるぞ」

 

救護科(アンビュラス)ではないためちゃんとした応急処置は分からないが、楽な姿勢にさせるため元気なメンバーで倒れた生徒を運ぶ。

 

「クソッ! まさかここで外部のヤツが狙ってくるとは」

 

烏間先生が焦った顔で戻ってきた。

 

「烏間先生、外部のヤツってまさか⁉」

「ああ1週間で感染者を殺す人工ウイルスを盛られたらしく、治療薬が欲しければコイツを背の低い生徒2人で山頂のホテルに持ってくるように要求された」

「ひどい……誰がこんなことしたんですか?」

 

桃花が聞くも烏間先生も困った顔をするのみで答えなかった。

 

「そのホテルに問い合わせられないんですか?」

「今問い合わせているんだが、噂通りなら恐らく……」

「烏間さん!」

 

そこまで烏間先生が答えた所で、園川さんがやってきた。

 

「やはりダメです。政府として宿泊客の情報の開示を求めましたがプライバシーを繰り返すばかりで……」

 

政府の名で聞いても一切答えないか……

 

「烏間先生、もしかしてあのホテルは裏御用達の?」

「そうだ遠山君。同僚が一度ここの事を話してたんだが、この普久間島は別名『伏魔島』と呼ばれている。山頂のホテルは国内外のマフィアとそれらと繋がっているお偉いさんが出入りしていて、私兵の警備のもと違法な商談やドラッグパーティーが連日開かれているみたいだ」

 

この言葉で一部が騒がしくなる。

それもそうだ、暗殺をやっているとはいえ俺以外の生徒は一般人。

こんな状況に陥るのは初めてなんだろう。

 

「どーすんスか、このままじゃ皆死んじまうよ!」

「吉田落ち着け、烏間先生に当たっても皆が治るわけじゃないんだ」

「なんでキンジはそんな冷静なんだ! 皆が死ぬかもしれないんだぞ!」

「いいか、今もっともやってはいけないのはパニックになることだ。幸いウイルスは即効性のものじゃない、今のうちに落ち着いて対策をたてるんだ」

「キンジ君の言う通りよ。そんな簡単に死なないからじっくり対策考えて」

「……悪いキンジ、原、少し取り乱しちまった」

「気にするな、それが普通の反応だからな」

 

このやりとりで全員落ち着いたため、改めて対策をたてるため作戦会議を始める。

 

「要求なんざシカトして都内の病院に連れて行けばいいんじゃねーのか?」

「寺坂、それは危険だ。人工ウイルスと相手は言っているんだぞ。下手したら病院に治療薬がないかもしれない」

「じゃあどうすんだよキンジ? 要求通り、ちんちくりん2人だけ行かせるのか? 人質が増えるだけだ」

「大丈夫だ、それだけはない。竹林、確か医者の息子だったよな? 対症療法での応急処置はできるか?」

「問題ない、ただ人数が多いからあと1人手伝いがほしい」

「じゃ、じゃあ、私も手伝います」

「よし、ならそっちは竹林と奥田の2人を中心に患者の処置を任せる。律、あのホテルの図面と警備の配置図を頼めるか?」

「了解です! すぐにハッキングを始めますね」

 

よし、これでいつでもいけるな。

 

「遠山君、もしや……」

「はい、俺が奇襲を仕掛けて薬を奪ってきます」

「危険だ! 敵はどう考えてもプロだぞ」

「だからですよ、烏間先生。相手がプロだから武偵の俺が行くんです」

「キンジ君、烏間先生の言う通り君1人では危ない」

「殺せんせーも止めるのか?」

「ええ君が1人で行くのならですがね、ここでの最善策は看病の為の2人を除いた全員で奇襲をすることです」

「だが……」

 

その後の言葉は続かなかった。

なぜなら、皆のやる気に満ちた目を見てしまったからだ。

 

「そんな面白い事キンジ君一人にやらせるわけないじゃん」

「それにキンジの背中は私が守るって言ったでしょ」

「カルマ、凛香……全員を守りきれる自信なんてないぞ?」

「何カッコつけてんだキンジ守られる必要なんてねーよ、それに敵に良いように操られるなんて気にくわねーしな」

「寺坂……」

 

俺はどうやらクラスの皆をどこか一般人だから、武偵じゃないから皆を守らなければと思っていたみたいだ。

だが皆は守るべき対象の前に、同じ目標を殺ろうとする仲間なんだ。

仲間を信じれないなんて、これじゃあクラスの一員を名乗れないな。

 

「武偵憲章1条『仲間を信じ、仲間を助けよ。』だな……よし、全員で行こう」

『おう!』

「さて、烏間先生。ここに15人の特殊部隊がそろいましたよ。交渉までの時間もあまりない、あなたはどうしますか?」

「……注目! 目標は山頂ホテル最上階! ミッション内容は隠密行動からの奇襲、ハンドサインや連携は訓練通りのモノを使用! 違うのは目標のみだ、指揮官は俺が務める! 律君がマップを入手次第3分で叩き込め! 動きやすい服装、武装を整え次第作戦を開始する!」

『はい!』

 

こうして、山頂ホテルへの潜入ミッションが開始した。




執筆が間に合えば、0時か1時過ぎにでも次の話を投稿します
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