哿の暗殺教室   作:翠色の風

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34弾 女装の時間

カルマによる拷問が一通り終わり、次の階に進んだ俺達だったが6階でまた足止めをくらってしまう。

 

「どうする? 上の階に続く階段、クラブの奥にあるみたいよ」

「裏口もあるみたいだけど、そこは鍵がかかっているね」

 

メグや渚の言う通り、ここを突破するにはクラブの中に入らないと先に進めない造りになっていた。

 

「見た限り女子へのチェックは甘いようですね。仕方ありません、女子の皆さんで中から裏口のカギを開けてもらえますか?」

「殺せんせーの作戦しか方法がないのは分かるんだけど、いざという時に男が欲しいな」

「そうですね。幸い脱ぎ捨てられた服もありますし、1人くらい女装して潜入してもらいましょう」

 

桃花とピンク顔の殺せんせーのやり取りにより男子に戦慄が走った。

 

⦅誰かを犠牲にしないとヤバい!⦆

 

とモロに分かるぐらい焦った顔で全員が顔を見合わせていた。

 

「な、渚が適任じゃないか?」

「え、僕⁉」

 

確かに吉田の言う通り、渚なら服さえ着たら女子に見えるな。

 

「そうね、渚なら声もちょっとハスキーぐらいでごまかせるわね」

「そんなー」

 

メグの采配により女装は渚がすることに決定した。

だが渚は言ったら悪いが女子並みに非力なのだ、あまり戦力的に変わらない。

 

「渚一人じゃ不安だ。メグ、俺も行くよ」

「え、遠山君も?」

「ああ、幸い服は2着あるしな」

「なら良いものがあるよ」

 

そう言ってカルマがリュックから取りだしたのは黒髪のウィッグだった。

 

「なんでそんな物あるんだ?」

「渚君に被せて男をナンパさせようって持ってきてたんだ」

「カルマ君何考えてんの⁉」

「あとはメイクか……誰かやってくれるか?」

「なら私がやってあげるよ」

 

桃花にメイクしてもらい、黒髪ロングのウィッグとロングスカートの黒のワンピースを着る。

あとは声だな。

 

「律、俺の身振り手振りに合わせて代わりに喋る事は可能か?」

「はい、他の皆さんの携帯や監視カメラを使えば可能ですよ」

「なら頼む、やってくれ」

「はい! 口調などはどうしますか?」

「そこのところは律に任せるよ」

「では令嬢っぽくやりますね」

 

律に喋ってもらう為、携帯を胸元辺りに隠す。

自分では問題ないように見えるが、念のため皆にもチェックしてもらおう。

 

「着替えたけど、どこか変な部分はあるかしら?」

『……』

 

女装した姿を見せると、皆は目を点にして黙ったまま答えてくれなかった。

やっぱり女装は無理があったか?

 

「「「「「……んで」」」」」

 

凛香以外の女子が体を震わしながら何か言っているな。

 

「「「「「なんで、女子以上に美人なの⁉」」」」」

「何その黒髪ロングに黒いワンピース! しかもすっごい似合ってるし! どこかの令嬢ですか⁉」

「そもそも美人過ぎてもはや別人よ! ホントに遠山君なの⁉」

「こんな人がいたなら『お姉さま』って呼んでみたいかも……」

「美人過ぎる女装系男子、マンガのネタになりそうな人物がこんな近くにいたなんて」

「……よし、勝った!」

 

ひなた、メグ、桃花、優月、カエデの順に俺の女装の感想を言ってくれた。

桃花それ以上は危険だからこっちに戻ってきてくれ、あとカエデは何と戦って勝ったんだい?

 

「やっぱり、()()も兄同様に才能があったわね」

 

凛香はまるで分ってたかのようにため息をつく。

俺の兄である遠山金一は女装をしてヒステリアモードになるのだが、その女装した姿はまさしく絶世の美女と言っても過言ではないほどの女性に化けるのだ。

どうやら俺にもそっちの才能があったみたいで、周りから口々に『キレイ』だの『男なのが残念』だの言われている。

今は凛香達を守るためなら仕方ないと羞恥心を抑え込めているが、ノーマル俺なら間違いなくその場で自殺しようと思っただろうな。

カルマが俺を撮影しているところに、着替えた渚も戻ってきた。

 

「うぅぅ、やっぱり恥ずかしいよ」

 

渚も違和感を全く感じさせない、これなら大丈夫そうだな。

 

「自然すぎて新鮮味がないわね」

「速水さん、そんな新鮮さはいらないよ!」

「凛香、新鮮さがないのは女装が上手くいっている証拠なんだから良いでしょ?」

「それもそうね」

「えっと、そちらの女性は誰?」

『遠山君よ(キンジだ)』

「え⁉」

 

渚によってさっきのやり取りの繰り返しが再度起きたが、無時に俺達はクラブに入ることができた。

 

「まずは見張りの様子を見に行くわよ」

「分かったわ、遠山さん」

 

メグに指示を出して俺を先頭に見張りがいる店の奥を目指そうとすると

 

「ね、どっから来たの君ら? 奢るからそっちで俺と酒飲まねー?」

 

早速、渚がナンパされてしまった。

渚はどうすればいいか困っているな。

 

(メグ、どうする?)

(そうね、このまま付いて来られるのも困るし渚は別行動させるわ)

(わかった)

 

「渚はその子の相手しといてね」

「ええ? ちょっと遠山く……さん⁉」

(女子の方は俺がいるから、呼ぶまでそいつの相手してくれ)

(分かったよ、ボロが出たらまずいから早めにお願いね)

 

渚を切り捨て、そのまま進みたいのだが

 

「君達女だけ? 今夜俺等とどうよ?」

「てか、この黒髪の子めちゃくちゃ美人じゃね⁉ 今夜空いてる?」

「こんな上玉達がいたなんて気づかなかったぜ」

 

2.3歩進む事に声を掛けられる為、なかなか目的の場所まで行けなかった。

ノラリクラリ躱していたが、そろそろ辛くなってきたな。

 

「ごめんなさい、先約の方がいるから……」

「いいじゃねーか、俺達と遊ぼうぜ」

 

そろそろ1発殴って追い払うべきか?

そう考えているとトントンと桃花に肩を叩かれ、任せろと言わんばかりに俺の前に出てきた。

 

「お兄さんたちカッコいいから遊びたいけど、それなら私たちの代わりに約束した人に説明してほしいな」

「ああ、いいぜ。こう見えても腕節には自信があるからな。それで先約は誰なんだ?」

「さっき代紋もらったんだけど、ここに所属している人みたいだよ」

 

そういって桃花が見せたのはヤクザの代紋、しかもあれは少人数だが凶悪で有名な組ではないか⁉

流石にそんなヤツラには勝てないとナンパをしてきた男たちは慌てるように逃げて行った。

 

「いくじなし、借りものに決まっているのにね」

「借りたって言ってたけど、やっぱりビッチ先生?」

「そうだよ凛香ちゃん。あの人、ヤクザ以外にも弁護士や馬主とか仕事で使い分けれるよういろいろなバッジをそろえているのよ」

 

そういえば桃花がクラスで1番イリーナ先生に仕事の事などを聞きに言ってたな。

 

「桃花もイリーナ先生みたいになりたいの?」

「ううん、そうじゃないよ。遠山さんが来る前に殺せんせーに言われたの『第二の刃を持て』ってね。ビッチ先生みたいに接待術や交渉術を身に着けたら、社会に出たとき最高の刃になりそうじゃない?」

 

桃花、君はそこまで考えていたんだね。大した子だ。

 

「そうね、桃花はカッコいい大人になるわ」

 

俺が薄く笑ったことで律によるセリフも流れる、思った事とほぼ同じ言葉を喋るなんてさすが律だね。

 

「……巨乳なのにホレざるを得ない」

 

カエデ、巨乳は関係ないんじゃないかな?

 

「皆着いたわ、けど見張りの人動きそうにないわ」

「強行突破は直ぐにバレそうだし避けたいよね、どうにかして移動させれないかしら」

 

メグや凛香の言う通り、見張りが邪魔で裏口のカギを開けれそうにない。

 

「一度渚も呼んで作戦会議をしましょう。茅野さん渚を呼んできてもらえる?」

 

メグの指示で渚を呼んでもらいに行ったが、どうやってあの見張りを追い払おう……

 

「あ、渚君来たよ」

 

優月の言葉に全員渚が来るであろう方向を見ると

 

「おう待てって彼女等、せっかくなんだ俺の十八番のダンスも見てけよ」

⦅余計な者まで着いてきた……しかも邪魔だし⦆

 

しかも下手でもなく上手くもない感想にとても困る微妙なダンスだった。

 

(どうする?)

(どうするもこうするも邪魔なんだし追い払うしかないでしょ)

 

「おいガキ、良い度胸やな。ちっと面貸せや」

 

凛香と小声で話している間にダンスを踊ってた少年がヤクザのお兄さんに絡まれてた。

見た感じ、ダンス中にぶつかって酒で服が汚れたみたいだな。

 

「慰謝料込みで300万な、それやったら、半殺しで許したるわ」

「か、金は親父が、だから殴るのだけは許して」

 

少年が原因の為手を出すつもりはなかったのだが、桃花に肩を叩かれ耳元で囁かれる。

 

「遠山さん、あのお兄さん一撃で倒してほしいんだけど」

「どうして?」

「見張りを追い払う方法を思いついたんだ」

「なるほど、わかった」

 

桃花のやりたいことに察しがついた俺はヤクザのお兄さんに近付いた。

 

「なんや嬢ちゃん、俺に用でもあるんか?」

「ごめんあそばせ」

 

律による言葉と共に俺はヤクザの顎に裏拳を決める。

気持ちが良いくらいに綺麗に決まったため、ヤクザのお兄さんは桃花に言われた通り1発で意識を失った。

 

「すいませーん、店の人~。あの人急に倒れたみたいなので運んで看てあげてくれませんか?」

 

桃花の作戦通り、見張りの者はヤクザを運ぶためいなくなった。

 

「今よ! さっさと裏口開けて行きましょう」

 

裏口で待機していたグループを合流でき、これで次の階へと進める。

 

「結局、全部キンジ君と女子でやってくれたしボクが女装した意味あった?」

「面白いからに決まってんじゃん、渚ちゃん」

「いつの間に撮ったのカルマ君⁉」

「気にするなよ渚、暗殺者が女に化けるのは歴史上でもよくあるぞ」

「磯貝君までやめてよ! キンジ君も女装してたのになんで僕だけ⁉」

『キンジ(遠山君)は似合いすぎて茶化せない』

 

「律、キンジの写真撮影している?」

「もちろんです、あとでデータ送りますね」

 

凛香と律による聞きたくない情報も分かったところで俺は1つ決意する。

 

『もう二度と女装なんてしない』

 

……この決意を守れる気が全くしないのはなんでだろうな。

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