哿の暗殺教室   作:翠色の風

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諸事情によりいつもより投稿遅くなりました。


36弾 復讐の時間

「ふぅ~、だいぶ体は動くが力半分ってところだな」

「力半分で俺達より倍以上強えーぞ」

「あの人とキンジ君の2人で侵入した方が良かったんじゃ……」

 

最上階へ続く階段にいた見張りを無力化した烏間先生に対して、皆が怖がるようにつぶやいていた。

 

「俺と烏間先生だけじゃなくて、このメンバーで行ったからここまで早く行けたんだ。それより律、上の様子は分かるか?」

「今パソコンカメラのハッキングに成功しました。確認できる限りでは1人しかいません」

 

律によってそれぞれの携帯に映像が流れる。

部屋が暗い為シルエットしか分からないが、ガタイの良い男が座っているのが見える。

 

「皆さん、黒幕の彼について分かったことがあります」

 

殺せんせーから黒幕が殺し屋でない事を説明される。

 

(殺し屋ではない、有望な殺し屋の失踪後、あの3人の殺し屋たち、ガタイの良い男性……まさか⁉)

 

今までの事、そして殺せんせーの言葉によってある男性が浮かび上がった。

だがここまでする動機が分からない。 

黒幕の人物の正体にいまいち確信が持てなかった俺は、皆にはその事を言わずにそのまま烏間先生の指示のもと最上階に向かった。

 

 

 

 

 

最上階に着くと9階の見張りが所持していた部屋のカードキーにより正面から潜入。

部屋は遮蔽物が多い為、渚ほどとまでいかないものの最大限に気配を消せば全員がギリギリまで忍びよれそうだ。

手と足を一緒に出すことによって衣擦れや靴の音を抑えれる歩法『ナンバ』で慎重に近づく。

敵の足元には薬が入っているであろうキャリーケースが見え、そこにプラスチック爆弾が設置されていた。

手元にはリモコン、おそらく起爆用だろう。

 

(俺と遠山君で先行、気づかれたら腕に発砲する。それと同時に皆は拘束を)

 

烏間先生がハンドサインで作戦の最終確認を行うと、俺と烏間先生を先頭にさらに敵に近付く。

 

「かゆい」

 

そろそろ取り押さえれるという距離で、突然敵が喋りだした。

この声は……

 

「思い出すとかゆくなる。でもそのせいかな? いつも傷口が空気に触れるから……感覚が鋭敏になっているんだ」

 

黒幕がそう言うと、続けて大量に何かを投げだした。

これは……起爆用のリモコンか‼

 

「言っただろう? もともとマッハ20のタコを殺す準備で来ているんだ。リモコンだって奪われないように予備を作る。うっかり倒れても押すくらいのな」

 

もう犯人は決定的だった。

 

「連絡が途絶えたのは殺し屋以外にもう1人いる。防衛省から暗殺用の資金がごっそりと抜かれると同時に1人が姿を消した。どういうつもりだ……」

 

烏間先生の言葉に反応するように黒幕もゆっくりとこちらに体ごと顔を向ける。

 

「鷹岡ァ‼」

 

そう黒幕の正体は推測通り、俺達E組を暴力で従わせようとした鷹岡だ。

 

「悪い子達だ……恩師に合うのに裏口から来るなんて、父ちゃんはそんな子に教えたつもりはないぞ」

「前にも言ったがアンタは家族でも恩師でもねーよ」

「カメラに写ってないからもしやと思ったが、遠山やはりあのドリンクを飲んでなかったか。お前がウィルスで苦しんでいる姿を見るのを楽しみにしてたんだがな……感染してないならそれで良い、違う楽しみが増えただけだ」

 

そう言って鷹岡は脅すようにリモコンを見せつつ、狂気と憎悪が刻まれた顔でグシャリと笑うと

 

「屋上へ行こう、俺の慈悲で生かされているんだ。もちろん、ついて来てくれるよなぁ?」

 

スイッチを押させてはいけないため、俺達は大人しく鷹岡の言う通りについて行く。

着いた先は屋上にあるヘリポートだった。

 

「防衛省の金で殺し屋を雇って生徒をウィルスで脅す凶行、気でも散ったか鷹岡‼」

「おいおい烏間。俺は至極マトモだぜ。大人しく2人に賞金首を持って来させりゃ、計画はスムーズに仕上がったのにな」

「どういうことだ、鷹岡」

「『鷹岡先生』だろ、遠山? 計画ではな、茅野だったか? 小さい女の方を使う予定だったんだ。バスタブにたっぷり詰めた対先生弾の上に賞金首と一緒に入って、その上からセメントで生き埋め。対先生弾に触れずに脱出するならば生徒ごと爆裂するしかないが……生徒思いの殺せんせーなら大人しく溶かされるだろう?」

 

コイツ、どこまでクソ野郎なんだ!

 

「そんな事、許されると思いますか……」

 

殺せんせーも計画の内容を聞いて、顔を赤くしている。

 

「これでも人道的なほうだろ? お前らがした非人道的な仕打ちに比べたらな。落とした評価や屈辱は結果やそれ以上の屈辱で返す。特に潮田渚! お前のせいで俺の未来は汚された、絶対に許さん!」

「ただの逆恨みかよ!」

「背の低い生徒を要求したのも渚が狙いって事か」

 

吉田や千葉の言う通りだ。

そもそも武偵と一緒で軍人も常在戦場、相手が中学生だからと油断して負けたアイツが悪いだけの話なのだ。

 

「へー、つまり渚君はあんたの恨み晴らすために呼ばれたわけ。その体格差で本気で勝って嬉しいわけ? 俺やキンジ君ならもーちょっと楽しませれるけど?」

「カルマの言う通りだ。渚の代わりに俺が相手してやる」

「言っとくけど、あの時アンタが勝っても負けても私達アンタの事大っ嫌いだから」

「ジャリ共の意見なんざ聞いてねぇ‼ 俺の指先で半分減る事を忘れんな‼」

『ッ‼』

「遠山は前に1発もらったからな……ちゃんと後でお前にも仕返してやるよ。まずはチビ、お前からだ! 1人でヘリポートまで登ってこい!」

 

そう言って鷹岡は先にヘリポートに向かった。

 

「渚ダメ! 行ったら……」

 

カエデの言葉を止める。

 

「遠山君なんで⁉」

「今逆らうとアイツは何をしでかすか分からない」

「キンジ君の言う通りだよ……ホントは行きたくないけど、僕行くよ。話を合わせて冷静にさせて治療薬を壊さないように渡してもらうから」

「渚……」

「『仲間を信じ、仲間を助けよ』でしょ。皆、今度は僕を信じて待っていて」

 

それだけ言うと渚は鷹岡に続いてヘリポートを登っていった。

 

「あっ!」

「ハシゴが!」

 

渚が登り切ると鷹岡がハシゴを切り離し捨てたのだ。

あの高さではもしもの事があっても容易に助けにいけそうにない。

 

「これで誰も登ってこれねー、足元のナイフでやりたいことが分かるだろう? この前のリターンマッチだ」

「待ってください、僕は闘いに来たわけではないです」

「だろうなぁ、この前みたいな卑怯な手は俺にはもう通じねぇ。一瞬でやられるのが目に見えてる」

 

確かに鷹岡の言う通り、おそらく正面戦闘を教わっていない渚が正面から挑んで勝つのはまず無理だろう。

 

「一瞬で終わっちゃ俺の気が済まない。闘う前にやる事やってもらおうか……土下座して前の奇襲について誠心誠意謝罪しろ」

 

コイツ……こっちが逆らえない事を良いことに

渚は鷹岡の言う通りその場で正座をした。

 

「…………僕は「土下座は頭こすりつけて謝んだよぉクソガキが!」僕は実力がないから卑怯な手で奇襲しました……ごめんなさい」

「その後で偉そうな口で言ったよな『出ていけ』って。ガキが大人に向かって、生徒が教師に向かってだぞ!」

 

鷹岡が渚の頭を踏みながら言っているのも見て、思わず拳に力が入る。

薬さえヤツの手になければ今すぐにでも鷹岡を殴ることが出来るのに。

皆もこらえるように見守る。

 

「ガキの癖に、生徒の癖に先生に生意気な口を叩きました。……本当にごめんなさい」

「よーし、やっと本心を言えたな。父ちゃんはうれしいぞ。褒美に良いことを教えてやろう」

 

鷹岡はキャリーケースを掲げながら

 

「あのウィルス、最終的に全身デキモノだらけになって死ぬんだぜ。顔面なんかブドウのよう、スモッグに見せてもらったがアレは笑えるぜ」

 

まさか……

 

「見たいだろ、渚君?」

「やめろ、鷹岡‼」

 

俺の声と同時に鷹岡がキャリーケースを起爆させた。

 

『…………』

「アハハハハハ、そう、それだ俺が見たかった顔は! 夏休みの観察日記にしたらどうだ。全身デキモノだらけになっていく友達の姿をよぉ」

 

鷹岡の狂った笑い声だけが響く。

やってはいけないと分かっていてもここまでされたら、衝動的に武偵法9条を破ってしまいそうだ。

武偵法9条違反である殺人をしないようなんとか落ち着こうとしていると

 

「殺……してやる……殺してやる。……よくも皆を!」

 

今までにないほど殺気を出している渚が、ナイフを構え鷹岡の前に立っていた。

 

 

 




次回、渚VS鷹岡
たぶんですが次回はほぼ渚視点になると思います。
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