哿の暗殺教室   作:翠色の風

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鷹岡VS渚戦、決着です


37弾 感謝の時間

「殺……してやる……殺してやる。……よくも皆を!」

「ヤバイ、渚キレてるよ」

「俺たちだってあのクソ野郎殺してーよ! けど、マジで殺るつもりなのか⁉」

 

メグや吉田の言う通り、鷹岡に目の前で薬を爆破され誰よりも先に渚がキレてしまった。

 

「渚の頭を冷やさないとマズイぞ」

 

人はキレると動きが単調になる。

鷹岡はあんなのでも元公安0課候補で軍人、そんな奴にあんな状態では殺してくれと言っているようなものだ。

 

「キンジ、肩貸せ」

 

俺がどうすればと悩んでいるところに、寺坂が息を絶え絶えにさせながら横にやってきた。

 

「ッ⁉ 寺坂、お前無理するなって言っただろ!」

 

どうみても寺坂は倒れる一歩手前だ。

迂闊だった、薬の事ばかりに気を取られてたばかりに……

もっとコイツの状態に気を配るべきだったのに。

 

「あいつを頭を冷やせるのは俺だけだ、だからやらせろ」

 

そう言うと寺坂はスタンガンを渚に向け投げる。

その動作1つで寺坂は倒れそうになり、慌てて肩を貸し支えてやる。

 

「調子こいてんじゃねーぞ渚! お前、薬が破壊された時俺を憐れむように見ただろ!」

「……」

 

渚も寺坂の状態に気づいてたのか⁉

渚は黙ったままだが、構わずに寺坂は怒鳴り続ける。

 

「ウィルスなんざ寝たら治んだよ! そんなクズでも殺せば殺人罪だ、テメーは感情に任せて100億のチャンスを手ば……なす気……か」

『寺坂(君)‼』

 

寺坂は伝える事を伝え終わると高熱のせいだろう気を失った。

 

「寺坂君の言う通りです、その男に何の価値もない。治療薬に関しては下にいた毒使いの男に聞きましょう、こんな男は気絶程度で十分です」

「おいおい、余計な水差すんじゃねーよ賞金首。このチビの本気の殺意を屈辱的に返り討ちにして、初めて俺の恥を消し去れる」

「渚! 寺坂の言葉と鷹岡の言葉の価値を考えろ、そして前に言った俺の言葉を思い出せ!」

 

寺坂を横に寝かせ、俺は殺せんせーの言葉に続いて叫んだ。

渚、道だけは間違えんじゃねーぞ。

 

 

 

 

 

 

~渚side~

キンジ君に言われたこと、たぶん7月の鷹岡先生との一騎打ちの前のことだろう。

 

『強くあれ。ただし、その前に正しくあれ』

 

ちゃんと覚えているよキンジ君。

それに間違えようとした僕を止めてくれた寺坂君の為にも、もう道を間違えたくはない。

その為にも鷹岡先生は無力化させる。

だがスタンガンの一撃をどうやって入れよう……

ウー先生に教えてもらった気配を溶け込ましてからの一撃……いや無理だ、鷹岡先生に隙が見当たらない。

どのみち隙を作るためにもナイフは必要だ。

僕は寺坂君のスタンガンをベルトとズボンの間に挟み、ナイフを持って構える。

 

「ナイフを使う気満々で安心したぜ。スタンガンはお友達に義理立てして拾ってやったということか」

 

鷹岡先生は勝手に納得してくれた。

 

「一応言っとくがここに3本予備がある、渚君が本気で来なかったり他のヤツが邪魔したら破壊する。人数分には足りてないが最後の希望だぜ?」

 

取りみだすな!

鷹岡先生を気絶させたら良いだけなんだ。

自分に叱咤した僕は、無理だと思うがまずは気配を溶け込まして仕掛けてみる。

 

「それは気づかれる前にやるもんだ、見ている前でやっても意味はない」

 

予想通り見られている相手には通用せず、鷹岡先生に蹴られ、殴られ、投げ飛ばされと一向に仕掛けられそうにない。

ならば今度はナイフで隙を作る。

7月のように僕はナイフで一撃入れようと振るが、これも内側から腕を押されナイフの切っ先をそらして裏拳を放たれた。

鷹岡先生に隙が全く生まれない……

なければ作ればいい、隙を作る技もある。

だがそれには今のままではダメだ。

それの前にもう一手、警戒心を上げる何かが必要だ。

 

「これくらいでへばるなよ、今までのは序の口だ。さぁて、そろそろ俺もコイツを使うか」

 

そう言って鷹岡先生は置いてあった残りのナイフを持った。

 

「……手足切り落として標本にしてやる。ずっと手元に置いて愛でてやるよ」

 

鷹岡先生の雰囲気が変わる。顔もさらに黒くなり、もはや目や口が見えないほどだ。

それを見た僕はウー先生とのやりとりを思い出す。

 

 

 

 

 

それはウー先生に気配の溶け込ませ方を教えてもらった後の事だ。

 

『渚チャン、諜報ヤ殺シ屋ニトッテ重要ナノハ戦闘ニ持チ込マレナイコトヨ。サッキノ気配ノ溶ケ込マシ方モ相手ニ気ヅカレナイタメネ』

『どうして戦闘に持ち込んじゃダメなんですか?』

『圧倒的ニコチラガ強ケレバ問題ナイワ。問題ハソレ以外、戦闘ガ長引イケバ増援ヲ呼バレ、最悪ノ場合ハ標的ニ返リ討チニ合ウカラヨ』

『じゃあ、戦闘になったら逃げるべきなんですね』

『ソウネ。今ノ渚チャンヤ諜報後デ逃ゲレソウナラ、ソウスベキダワ。……モシ渚チャンガ今以上ニ気配ヲ変エレルヨウニナッテ、後ニ引ケナイ状況ニ陥ッタナラ()()ヲ使イナサイ』

 

ウー先生がそう言うと、目の前に気配が現れる。

だがその気配の正体が何か良く分からない、男と思えば女、大人と思えば子供、言うなれば正体不明のナニカだった。

 

『気配ヲ溶ケ込マセルトイウコトハ何ニデモ変エレル。サッキ教エタコトノ応用ヨ』

 

そう言うと、目の前のナニカは煙のように消えた。

 

『人ガ最モ怖イノハ自分ノ知ラナイ事、鉄砲玉ミタイナ人ジャナイ限リ警戒スルワ』

 

 

 

 

 

ああ、この技なら今の状況で足りない1ピースが当てはまる。

気配の溶け込ましはまだ未熟、その状態でできるのは歩くだけ。

だがそれで十分、あとはロヴロさんに教えられた必殺技を決めたらいいだけだ。

その必殺技の条件もこの場にそろっていた。

 

鷹岡先生、今からすることはどっちも初めてやるので実験台になって下さいね。

 

気づけば僕は顔に笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

まずはウー先生(1人目の師匠)に教えてもらった技。

1歩進むたびに気配を、雰囲気を変える。

僕は……

 

ザッ――――()

ザッ――――子供(大人)

ザッ――――殺し屋(武偵)

ザッ――――人間()

 

1歩進むたびに暗かった鷹岡先生の顔が明るくなっていく。

 

「お、お前、ホントにさっきまでのチビなのか⁉」

 

鷹岡先生の警戒心は十分だ。

あと1歩で次の技の間合いに入る。

さらに集中しろ、これで全て決まる。

僕は1歩踏み出すと同時にナイフを手放し

 

――――パァン!

 

ロヴロさん(2人目の師匠)に教えられた、()()()()()()()()『猫だまし』を放った。

 

「あ……ガッ…………」

 

どうやら上手く鳴らせたみたいだ。

安堵しながらも、僕はひるんだ鷹岡先生に向けスタンガン(第二のナイフ)を流れるように抜き放つ。

 

「ウソ……だ。こんな……ガキに……二度も」

 

スタンガンの当て方が悪かったみたいで、鷹岡先生はまだ意識があった。

 

「渚、あとはトドメだけだ。首に流せば気絶する」

 

キンジ君の言葉通りに首にスタンガンを当てる。

 

……この人からもたくさんの事を教わった。

抱いちゃいけない殺意があることを。

その殺意から引き戻してくれる友達の大切さを。

殴られる痛みや実戦の恐怖を。

酷い事ばかりされたがこの人もある意味で教師だった、なら授業の感謝を伝えないと。

 

「鷹岡先生、ありがとうございました」

 

僕は笑顔で感謝の言葉を伝え、スタンガンのボタンを押したのだった。




これで渚も逸般人の仲間入りです。
いや、まだ死神戦もあるからさらに強化されるかも……
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