哿の暗殺教室   作:翠色の風

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肝試し、ヒロインとちょっとはイチャイチャさせたい


39弾 肝試しの時間

律と話していると気づけば夕日が射し、寝ていた皆も続々と集まり始めた。

 

「やっと起きたか凛香」

「キンジが早いだけよ、それよりアレは?」

 

凛香が指さすのは先ほど俺も律に聞いたコンクリートの塊だ。

 

「烏間先生がダメ元で殺せんせーが戻ったときに殺せるようにって不眠不休で指揮して作ったんだ」

「……ホントあの人超人よね」

 

まあ、その反応が普通だよな。

 

「あと十年であんな超人になれんのかな?」

「……どうだろうな」

「いや、キンジが答えても説得力ないから」

「おい菅谷、それどういう意味だよ!」

「お前は烏間先生やビッチ先生同様あっち側って意味だよ」

「……」

 

菅谷たちを見るといつものようにからかっているような感じではなかった為、俺は反論を言わず続きを待った。

 

「そうだな。殺し屋たちも、長年の経験からくるスゲー技術や仕事に対してしかっり考えがあったし」

「そう思えば、鷹岡先生みたいに『あんなふうになりたくないな』って人もいたね」

 

千葉、矢田が菅谷の言葉を引き継ぐように話す。

 

「たぶん大人になるって、良いなと思った人を追いかけて、ダメだって思った人を追い越すことの繰り返しなんだろうね」

「それでなんで俺が烏間先生側なんだよ」

「だから、私達全員が烏間先生同様アンタを良いなって思って追いかけたい人ってことよ」

「そうかよ……」

 

面と向かって尊敬する人物だと言われた為、思わず顔が赤くなり皆が見えないように顔を振り返った。

 

「あれ、もしかしてキンジ君照れた?」

「おー、それは写メに収めないとね。2.3人くらいに売れそうだし」

 

カルマと中村がそう言って携帯を構えて迫ろうとすると

 

――――ドドーン!

『⁉』

 

「爆発した!」

「やったのか?」

「パーティールームでも思ったけど遠山君、それフラグだからね!」

 

珍しく不破にツッコまれ

「珍しくってなによ!」

……不破にツッコまれた俺だが、結果は薄々分かっていた。

こんなので殺せたら、殺せんせーは今頃暗殺出来ている。

 

「先生の不甲斐無さから苦労させてしまいました。ですが皆さん、敵やウィルスと戦い本当によく頑張りました!」

 

やっぱりな。

 

「おはようございます、殺せんせー。やっぱり先生は触手がなくちゃね」

 

全員が振り返り、渚が代表してあいさつをした。

 

「はい、おはようございます。では旅行の続きを楽しみましょうか」

 

そこにはいつ通りの姿の殺せんせーが立っている。

 

「旅行の続きって言っても、もう夜だぞ。それに明日には帰るのに楽しむもなにもないだろう?」

「ヌルフフフ、甘いですねキンジ君。先生、夏の夜にぴったりのスペシャルなイベントをしっかり用意していますよ」

 

そういって殺せんせーはプラカードを掲げた。

そこに書かれていたものは

 

『暗殺……肝試し?』

「そうです皆さん。先生がお化け役を務めます、久々にたっぷり分身して動きますよぉ」

 

ようは男女2人で指定のルートを通る普通の肝試しに、お化け役の殺せんせーを暗殺可というルールを追加したものらしい。

 

「ではさっそくペアを決めますね。くじ引きで決めますので出席番号順からこの箱を引いてください、あと交換はなしですよ!」

 

そういってカルマと岡野がそれぞれ男女別で用意された箱に手を入れ引きはじめた。

くじの結果、ペアはこうだ。

 

カルマと奥田

磯貝と片岡

岡島と倉橋

前原と岡野

渚と茅野

木村と矢田

杉野と不破

千葉と凛香

三村と原

俺と神崎

菅谷と中村

竹林と寺坂と律

村松と吉田と狭間

 

「キンジ、俺と変わってくれ!」

「って言ってもな、殺せんせーも交換禁止って言ってただろ?」

「ちくしょーー!」

 

何も泣くことないだろ杉野……

ペアの神崎を見ると

 

「ダメ?」

「ダメですか?」

「変わってあげたいのは山々なんだけどルールだから」

 

凛香と律も肝試しのペアくらいで何してんだよ。

ペアは変わらずにさっき上げた順番に肝試しの場所となる海底洞窟に入って行く。

 

「やっぱり、ちょっと怖いねキンジ君」

「まあ、洞窟に懐中電灯1つだしな」

 

あれ? いつから神崎は俺の事下の名前で呼んでいた?

修学旅行では苗字で呼ばれてたような……

そう考えていると神崎に服を引っ張られる。

 

「神崎?」

「暗くて危ないからさ、ダメかな?」

「別にいいぞ、確かに地面もゴツゴツしていて危ないな」

 

服を掴む神崎と共に奥に進むと、三線の音がペンペンと聞こえてくる。

 

「ここは血塗られた悲劇の洞窟」

「きゃあ!」

 

語りと共に出てきた殺せんせーに驚いた神崎は俺に抱きついてきた。

 

プニュン

(神崎の胸が背中に! 落ち着け俺、落ちついて素数を数えろ。1.2.3.5.7って1は素数じゃねー!)

 

神崎の慎ましい胸に動揺している間に殺せんせーは語り終えたみたいで消えていた。

 

「びっくりしたー。……⁉ごめんなさいキンジ君! 急に抱きついて」

 

神崎も自分がした行動が恥ずかしかったのか、顔を赤くして慌てて離れた。

血流もギリギリだったが抑えることに成功、もしなってたら洞窟で2人っきり想像したくない展開が繰り広げただろう。

 

「ああ、ちょっと驚いたけど有希子も大胆だね」

 

訂正、抑えきれていなかった。これはどうやら甘くかかったヒステリアモード、甘ヒスになっているみたいだ。

 

「キンジ君、いま有希子って」

「嫌だったかい?」

「ううん、嫌じゃないよ」

「それは良かった、さあ行こうか」

 

そう言って俺は有希子の手を掴む

え? と言うように見てきた有希子にウインクをしつつ

 

「暗いからね、服を持つより手をつないだ方が安全だ」

 

有希子と手をつないだまま進むと何やら扉が見える。

 

「落ちのびた者の中には夫婦もいました。ですが追手が迫り……椅子の上で寄り添いながら自殺しました。その椅子がこれです」

 

現れた殺せんせーが説明し、指を指した方向には2人で座る、いわゆるカップルベンチがそこにあった。

 

「「……」」

「琉球伝統のカップルベンチです。ここで2人で1分座ると呪いの扉が開きます」

「ねーよ、そんな伝説も伝統も!」

 

ツッコんでも何も起きないため、俺と有希子は大人しくベンチに座る。

 

「……キンジ君、昨日は薬とかありがとう」

「いきなりどうしたんだい有希子、それに昨日のは皆が頑張ったからだよ」

「それでもキンジ君にはちゃんとお礼を言いたかったんだ。昨日のだけじゃない、修学旅行でも私のことを正義の味方みたいにカッコよく助けてもらったから」

 

正義の味方か、そう言われ真っ先に思ったのは俺の憧れでもある兄さんだった。

あの人は義を信条として困っている人や悲しんでる人をほぼ無償で、さらに敵味方問わずに全員助ける俺の中での正義の味方だ。

 

(俺も兄さんみたいな正義の味方に近付けたのかな……)

「キンジ君、考え事?」

「ああ、目標にしている人にちょっとは近付けたかなって思ってね」

「そうなんだ……えっとね、あと1つキンジ君に聞きたいことがあるんだけど」

「なんだい?」

 

有希子がモジモジしながら何かを決意するように聞いてきた。

 

「キンジ君って速水さんと付き合っているの?」

「凛香と? 付き合ってないよ、どうしてそんな事を有希子は聞くんだい?」

「前に殺せんせーたちが速水さんに告白したって聞いたから気になって」

 

告白? 殺せんせーたちがいたってことはファミレスのあれか?

 

「たぶん殺せんせーたちは、凛香の誕生日に花を送ったから勘違いしただけじゃないかな」

「じゃあ付き合ってないってホントなんだ、それなら私にもチャンスが……」

 

何やら有希子はブツブツとつぶやいている。

 

「有希子、チャンスって?」

「私にも目標ができたってことだよ」

「そうか、その目標達成できたら良いな」

「キンジ君が鈍感じゃなければすぐに達成できるんだけどね」

「?」

「あ、扉も開いたし行こう、キンジ君!」

 

そう言って、有希子が満面の笑顔で俺の手を取り奥の扉に進もうとすると

 

「ひーーーーッ‼ 日本人形⁉」

 

殺せんせーが現れたと思うと有希子を見て叫び、再びどこかへ飛んで行ってしまった。

 

「なんだったんだ、さっきの?」

 

有希子と2人で呆然と殺せんせーの行った方向を見つめるのだった。

 

 

 

 

 

~渚side~

 

僕たちが出口に出ると、殺せんせーを囲んでいる皆が見えた。

前原君に聞くと殺せんせーはどうやら、吊り橋効果でカップル成立を狙っていたみたいだ。

 

「結果を急ぎすぎだよ、殺せんせー」

「怖がらせる前にくっつける方に入っているから狙いがバレバレなんだよ」

 

口々に皆が殺せんせーにダメ出しすると

 

「だって、見たかったんだもん! 手をつないで照れる2人とか見てニヤニヤしたいじゃないですか!」

「へー、それで他に遺言はある?」

 

泣きながらキレた殺せんせーに速水さんが近づく。

速水さんが見るからに怒っているため僕を含め皆は殺せんせーから1歩離れた。

 

「ニュヤ! キンジ君は他の子が一緒なのを見れば嫉妬とかで進展があるかもと思いまして……」

 

殺せんせーの声はどんどん小さくなり顔も青くなっていく。

 

「はやみん落ち着いて、殺せんせーもはやみんと遠山の事を思ってやったんだし。けど殺せんせー、そーいうのはそっとしときなよ。うちら位だとつっつかれるのいやがる子もいるんだから」

「すいません……」

 

中村さんが仲裁に入り、殺せんせーを諭していると件の遠山君が戻ってきた。

神崎さんと手をつないで。

 

「皆なんで殺せんせーを囲ってんだ?」

『……』

 

全員で神崎さんを見る。

鈍感な人じゃない限り、神崎さんの顔が恋する乙女なのは明白だった。

 

⦅悪い方向に進んでる⁉⦆

 

神崎さんの目が速水さんと合う。

 

「速水さん、今は遅れているけど私負けないよ」

 

決定的だった。

速水さんなんて、ショックで呆然としてるよ……

 

(どうするの殺せんせー、さすがにはやみんが可哀想だよ)

(このわずか短時間でオトスなんて……さすが俺を超えるタラシだな)

(とりあえず、まだ時間はあります。どうにか理由をつけて1度2人っきりにしましょう)

(理由って、神崎さんに気づかれないようにできるの?)

(キンジ殺す、キンジ殺す、キンジ殺す)

(杉野、諦めよ。相手が悪かったんだよ)

(うわぁぁぁぁぁ、ウソだーー!)

 

フラれた杉野を慰めつつ、作戦会議をするも良い作戦が思いつかない。

 

「キンジ君、烏間先生達も戻ってきたみたいだよ」

 

神崎さんの声に全員が反応する。

ビッチ先生が烏間先生の腕にひっついていたけど、僕たちに気づき慌てて離れた。

 

「……なぁ。ウスウス気づいてたけど、ビッチ先生って」

「……うん」

「そうだ。これはどう? こうすれば、同時に2組できるんじゃない?」

「じゃあ、途中で2手に別れて…………」

 

こうして最後の作戦は秘密裏に着々と進むのだった。




ヒロインと言ったが誰とは一言も言ってない!
そしてヒロイン追加です
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