哿の暗殺教室   作:翠色の風

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47弾 泥棒の時間

瑠美さんの訪問から2週間ほど過ぎたが、アレからは特に変わりのないいつもの生活を送っていた。

まあ、連休中に茅野の主導による巨大プリンによる爆殺計画などもあったんだが失敗に終わっている。

今日はその爆殺計画があった連休明けだ。

いつも通り先に凛香と合流し一緒に登校するが、今までと違い凛香の背中には細長いものが装備されているのが服越しから分かる。

 

「なあ、凛香」

「何?」

「やっぱり、アレ持ち歩いてるのか?」

「当たり前じゃない」

 

あの三者懇談以降、凛香はどんな時でも小通連を携帯するようになったのだ。

以前にその理由を聞いたが、小通連は今の凛香だと使用時間は3分が限界だが使えば使うほどその時間が伸びるらしい。

その為、使用時間が少しでも伸ばすために瑠美さんから短刀を渡されたと言っていた。

秋水だけでもヤバいのに、ヒステリアモードみたいになれる小通連も合わさってそろそろ命の危機を感じてくる。

……万が一の為に遺書用意しとくか。

 

そんな頼もしくも恐ろしい幼馴染の成長などがあったが残りの2学期は平和にすごせることを祈りたい。

途中で有希子とも合流した俺達は、真っすぐE組の旧校舎へと歩を進めるのだった。

 

 

 

 

 

「皆さん、おはようございます」

「……今度は何すんだ、殺せんせー?」

 

教室に入ると、そこにはアメリカの警官のような恰好をした殺せんせーが教壇に立っていた。

嫌な予感しかしないが、またくだらないことでも考えてるんだろう。

 

「ヌルフフフ、説明は全員集まってからです。チャイムがなりますのでキンジ君達も席についてください」

 

――――キーンコーンカーンコーン

 

大人しく席に座るとちょうどよくチャイムが鳴り、

 

「どこもジャ〇プが売り切れてて探しちゃったよ」

「遅刻ですねぇ、逮捕します」

 

――カシャン

 

「へ?」

 

 

遅れてきた不破に手錠を殺せんせーがかけるが、アレどうみても俺達武偵も使う本物の手錠だな。

普段金欠なくせに、殺せんせーのヤツどこで調達したんだ?

 

「殺せんせー、不破も来たんだしそろそろその恰好の説明してくれよ」

「いいでしょう木村君、皆さん最近フリーランニングをやってましたよね?」

 

 

確かに2学期に入ってからフリーランニングの練習をやっている、今では全員山を駆けまわれるほどには上達した。

 

「先生、それを見て面白い遊びを思いついたんです」

「どーせ、碌なことじゃ……」

 

寺坂がけだるげそうに言っている途中で殺せんせーの早業によって泥棒みたいに唐草模様の手ぬぐいでほっかむりをしていた。

てか、寺坂のヤツ想像以上に似合ってんな。

 

「ケイドロです!裏山を全部使った3D鬼ごっこをやりましょう!」

「懐かしいな。確か俺達はタンテイって呼び方だったよな、凛香?」

「そうね、神崎はどう呼んでたの?」

「私はドロケイだったよ」

 

俺達の会話から、ケイドロの呼び方について盛り上がる。

ドロジュンやら助け鬼やらこの遊び色々と呼び名があるんだな。

 

「名前で盛り上がるのも良いですが、そろそろルールを説明しますよ。皆さんには泥棒役をしてもらい、フリーランニングなどの技術を使って裏山を逃げて潜んでください」

「警官役は誰がするんですか?」

「それは先生自身と烏間先生です」

「何⁉」

 

渚の質問に殺せんせーが答えるが、烏間先生の反応からして何も聞かされてないみたいだ。

 

「1時間目以内に皆さん全員を逮捕できなかった場合、先生が烏間先生のサイフで全員分のケーキを買います。ただし全員捕まったら宿題2倍です」

「ちょっと待て! 殺せんせーからそんな長時間逃げ切れるわけないだろ!」

 

待て、マッハ20から1時間も逃げ切れるわけないだろ!

どう考えても宿題2倍が確定されたルールに全員がブーイングを飛ばす。

 

「その点は考えてます。先生はラスト1分まで牢屋スペースで待機し、それまでは烏間先生のみ皆さんを追います」

 

それなら、なんとかなるか?

皆もそれならとやる気を出し、1時間目はケイドロをやることが決まった。

 

「そろそろ手錠外してほしいんだけど、もしかして私の事忘れてない?」

『あ……』

 

スマン、不破。お前の事すっかり忘れてた。

 

 

 

 

 

無事に不破の手錠も外され、一同は裏山に移動しケイドロが始まる。

俺、凛香、有希子、不破、岡島、千葉で裏山の奥へと進んでいく。

 

「つってもなあ、警官役は2人だろ? しかもほぼ烏間先生一人だけ、楽勝じゃねーか?」

「殺せんせーが動くまでに全員残って上手に隠れられているのがベストね」

 

不破や岡島は悠長にそんな事を言っているが、その考えはマズイ。

 

「岡島。早く隠れないとマズイぞ」

「なんだよキンジ、大げさだなぁ」

「キンジ君、ここから牢屋までかなり時間があるよ? そこまで急がなくても……」

 

有希子の言葉はそこで終わる、なぜなら

 

「遠山君、速水さん、神崎さん、岡島君、不破さん、千葉君逮捕だ」

 

烏間先生に逮捕されたからだ。

 

「ウソだろ……まだ烏間先生が動き始めて3分もたってないぜ」

「速すぎ……」

 

凛香や千葉も驚くが、まさかここまでとは俺も思わなかった。

つか、烏間先生本気出しすぎじゃないですか?

 

 

俺達は大人しく牢屋に向かったが、その間にも菅谷やビッチ先生が烏間先生によって捕まる。

 

「捕まった皆さんは刑務作業をしてください」

 

牢屋スペースに待機してた殺せんせーから渡されたのはドリルだった。

 

「なあ、殺せんせー」

「なんですか?」

「なんで俺だけ他のヤツと渡されたドリルの内容違うんだよ!」

 

どう見ても俺に渡されたドリルだけレベルが高いのだ。

 

「武偵3倍刑ですので」

「武偵3倍刑?」

 

不破なんかは聞いたことが無いようで首をかしげている。

 

「武偵は犯罪を犯したら通常より罪が重くなるんだ。例えば食い逃げしたら、その時払う金額も3倍ぐらいになる。けど殺せんせー、そこまでリアルにする必用ないだろ?」

「だまらっしゃい、囚人K! つべこべ言わず、刑務作業に没頭したまえ!」

 

クソッ! いつか猥褻教師として絶対に逮捕してやる!

しぶしぶドリルを進めていくが、難しすぎる1問も分からん。

 

「キンジ、キンジ! あれ見ろよ」

 

ドリル相手にウンウンうなっていると、横から岡島に呼ばれ何やら茂みを指さす。

その方向をよく見ると、どうやら助けに来たようで杉野や渚、カルマがそこに潜んでいるのが見えた。

 

「だが殺せんせーがいるだろ、無理じゃないか?」

「俺に考えがある」

 

真剣な顔をした岡島が殺せんせーに近付き、スッと写真の束を差し出した。

賄賂が通じたら、ドロケイの意味ないんじゃないのか?

 

「1回だけだぞ」

 

それでいいのか、殺せんせーよ。

賄賂を受けとった事により、俺達は脱出することが出来たが茂みに入る寸前に

 

「コレは独り言ですが、烏間先生は泥棒の足跡や植物の乱れなどの痕跡を追跡しているはずですよ」

 

そんな大きな独り言を殺せんせーは言った。

殺せんせーのヤツ、もしかして……

 

その後も泥棒が捕まっては殺せんせーはどんどん取り逃がしていき、計算上全員が一度は捕まったことになった。

 

「ここからが本番か」

「千葉も気づいてたか」

「キンジ、千葉どういうことだ?」

 

岡島が聞いてくる。

 

「アンタまだ分からないの?」

「全員一度捕まって、殺せんせーは脱獄の時に泥棒にアドバイス。これで分かるかな?」

 

凛香や有希子もどうやら気づいてたようで、岡島にヒントを与える。

 

「脱獄させたのは逃走のコツを教えるためか!」

「ああ、ここからはきっと脱獄させてくれないだろうな」

 

携帯で時間を確認する。あと15分くらいか……

そんなことをしていると電話が鳴る。

着信相手は……カルマか。

 

「どうしたんだ、カルマ?」

『キンジ君、良い作戦が思いついたんだ』

 

そう言って、カルマが作戦を説明しはじめたが確かに烏間先生の性格ならこの作戦で勝てるな。

 

「わかった、凛香を連れてすぐに合流する」

『お願いね~』

 

カルマの作戦を周りに説明した後、凛香と共に木村、前原、岡野、片岡と合流する。

 

「皆には痕跡を残してこちらに誘導してもらってるから、もうすぐ来るはずだ」

 

残り時間はあと5分。

待ち構えていると、烏間先生が茂みから出てきた。

 

「機動力が優れた6人か……」

「今の俺達の実力が知りたいんで勝負させてもらいますよ」

「私もコレを使います」

 

俺が代表して挑戦する旨を言うと、横の凛香も小通連を抜いた。

 

「良いだろう、左前方は崖は危ないから立ち入るな。そこ以外で勝負だ」

『はい!』

 

ニヤッと笑う烏間先生だがその笑顔を向けられる俺達は正直恐怖しか感じない。

俺達は立ち入り禁止と言われた箇所以外をばらけるように逃げる。

 

「遠山君、確保だ」

 

しかし、俺達が目的の場所に行くのに5ステップ必要な所を烏間先生は半分の3ステップで着いてしまう。

瞬く間に凛香以外が確保され、残った凛香も正面に回り込まれてしまった。

 

「速水さん、ここまでだ」

「烏間先生、触られなければいいんですよね?」

「フッ、面白い!」

 

――――バッ! バッ! バッ!

 

烏間先生の手の動きが速すぎて追えなくなり、振り抜く音だけが聞こえる。

凛香はそれを避けているのだろう、上下左右に体が動いているのが辛うじてわかるがもはやこれは組手じゃないのか?

 

「……片岡、これケイドロだよな?」

「たぶん……速水さん、どんどん遠山君に近付いて行ってるわね」

 

前原の問に片岡が答えるが、ひとつ聞きたい

 

「俺、いつもあんな動きしてるのか?」

「「「「アレよりスゴイ動きしてるから」」」」

 

アレよりスゴイって、マジかよ……

客観的にヒスった動きを見せつけられ、1人傷ついていると2人の動きが止まっていた。

 

「速水さん確保だ。君は正直すぎる、もっとフェイントを警戒しないといけないぞ」

「はい……」

 

時間を確認すると残り時間は後1分だ。

 

「烏間先生、俺達の勝ちですね」

「何? ヤツが動くのだから君たちの負けだろう?」

「へへ、それは間違いっすよ」

「だって、烏間先生は殺せんせーと一緒に空飛んだりしないでしょ?」

 

前原が自慢げに言って、続けて岡野が手段の確認をする。

 

「当たり前だ、そんなヒマがあれば刺している」

 

カルマの言う通りになったな。

 

「じゃあ、烏間先生。時間内にあそこまでいけませんね」

 

そう言いながら片岡は遠くにあるプールを指さした。

 

「ッ‼ まさか!」

 

そのまさかだ、今頃カルマたちはプールの底に潜っている。

水中だと殺せんせーでは手も足も出ない。

烏間先生がいたらダメだが、ここからの距離だ向かっている途中でタイムアップになる。

 

「タイムアップ! 全員逮捕ならず泥棒側の勝ち‼」

 

律によって制限時間の終わりを告げられ、俺達泥棒側の勝利が決まった。

報酬のケーキに皆が喜んでいると

 

「なんかフシギ~。息の合わない2人なのに、教えるときだけすっごい連携取れてるよね」

 

倉橋が教師2人を見ながらそう言った。

 

「当然です。目の前に生徒がいたら伸ばしたくなる。それが教師の本能ですから」

「立派な事を言っているが、今回殺せんせーがやったことって汚職ばっかだよな?」

「確かにキンジの言う通りだな、泥棒の方が向いてんじゃねーのか?」

「キンジ君、寺坂君! 聖職者が泥棒するはずないじゃないですか!」

 

こうして今日もいつも通りの楽しい3-Eの暗殺教室が幕を上げたのだった。

 

 




私の地域ではタンテイって呼んでましたが、ケイドロの呼び名のほうが親しまれているのかな?
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