哿の暗殺教室   作:翠色の風

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合間合間で少しずつ書いていたものがようやく完成したので投稿します。


53弾 体育祭の時間 1限目

「体育祭での棒倒しィ⁉」

「ああ、磯貝のは勝てば目を瞑ってくれるみたいだ」

 

翌日に喫茶店での磯貝の一連の騒動を学校で皆に説明すると驚きの声が上がった。

球技大会同様に俺達E組は団体競技に参加できないはずだったが、A組に挑戦状を叩きつけたという形なら参加を認められるらしい。

 

「ケッ、E組に赤っ恥かかせる魂胆が見え見えだな」

「それに第一A組28人に僕達が16人だ、とても公平に思えないけどね」

 

竹林の言う通り棒倒しは人数の差は大きいハンデだ、浅野の考えは寺坂が思ってることで間違いないはず。

 

「どーすんだよ、受けなきゃ磯貝がまたペナルティだ。下手したら退学処分もあるんじゃね?」

 

杉野の言葉に磯貝が重い口を開く。

 

「いや……やる必要はないよ皆。俺が播いた種だから責任は全て俺が持つ。退学上等! 暗殺なんて校舎の外からでも狙えるしな」

 

はぁ……全くコイツは。

磯貝のその言葉に少しイラッときた俺は磯貝の頭をボカッと殴った。

 

「イタッ! キンジなんで殴るんだ⁉」

 

磯貝が驚いた顔でこちらを見るが、俺は何も言わず他の男子達を見ろと磯貝に視線を促す。

磯貝がそちらを見ると他の男子も俺同様にイラついた顔をしており、手にはゴミや消しゴムが握られ怒号と共にそれらが磯貝に向けて投げられた。

 

「全然イケてねーわ!」

「何自分に酔ってんだ、アホ毛貧乏委員!」

「ええ! おまえらも⁉ それよりもアホ毛貧乏ってひどくないか!」

 

そのネーミング、割と的を得てると思うけどな。

巻き込まれないように少し離れて様子を見ていると、前原が1歩前に出てきてナイフを磯貝の机に立てた。

 

「難しく考えるなよ、ようはA組のガリ勉どもを棒倒しで倒すだけだろ? 簡単じゃねーか」

「そりゃそーだ。むしろバイトがバレてラッキーだったね」

「日頃の恨みをまとめて返すチャンスじゃねーか」

 

前原が立てたナイフを三村、寺坂が手を重ね、次々に他の男子の手も集まる。

 

「……お前ら」

「磯貝、俺達は仲間だろ。こういう時ぐらい頼れよな」

 

俺も皆と同じように手を重ねる。

 

「キンジ……よっしやるか!」

「「「おう!」」」

 

 

「ねぇキンジ。アンタも5英傑との勝負で棒倒しもあるの忘れてない?」

 

その様子を遠巻きに見ていた凛香が呆れたように言った言葉によって、男子全員の動きが止まった。

 

「……キンジ、どういうことだ?」

「磯貝のバイトがバレた時、俺も浅野以外の5英傑の奴らに勝負を挑まれたんだ。もしかして言ってなかったか?」

 

前原に聞かれ、俺も挑まれたことを言うと何故か無言で武器を構えだした。

……なあ、なんで武器をこっちに向けるんだ?

 

「えーっと……言い忘れたのは謝る。だからソレを構えるのはやめてくれ……」

 

エアガンとかは大丈夫だろうが、スタンガンはマズイ。

 

「「「うるせえ!」」」

「どのみち棒倒し参加決定だったじゃねーか!」

「なんでそれ言ってねーんだよ! 頭の中まで人間やめたかのかキンジ!」

「この人外タラシ野郎!」

 

磯貝より扱いひどくないか⁉

しかも弾幕で逃げ道を塞いで、寺坂率いる第一陣が俺を掴みかかろうと襲い掛かってくる。

その後ろには前原を中心に第二陣がスタンガンをいつでも使えるように構えてるし……

 

「なんでこんな時だけ息ぴったりなんだよ、お前らは‼」

 

岡島辺りを盾にして窓から逃げようか考えていると、殺せんせーがちょうど良く教室に入って来た。

 

「皆さん。体育祭を前にはしゃぐ気持ちも分かりますが、まずは作戦会議です」

「おい殺せんせー、これをどう見たらはしゃいでるように見えんだよ」

 

どう考えても俺が襲われてるようにしか見えないだろ、その目ホントに節穴なんじゃねーのか?

ともかく俺へのヤジが止んだ事には変わりなく、ようやく棒倒しに向けての作戦会議が始まった。

武偵同士もそうなのだが戦いは情報戦から始まる。

イトナが作ったラジコンで校舎内の盗聴は可能らしい。

後は……

 

「なぁ、凛香頼みたいことがあるんだが……を頼めるか?」

「へぇ、そういうことね。じゃあ代わりにこの条件を飲んでくれたらいいわよ」

「そんなのでいいのか? ならそれで頼む」

 

凛香の承諾も得られた事だし、これで本格的に棒倒しの対策が立てれそうだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕たち選手一同は、スポーツマンシップに則り正々堂々と戦うことを誓います」

 

あれから凜香にも手伝ってもらい、体育祭ギリギリまで磯貝主導の元A組への対策に費やされた。

今は浅野によって選手宣誓が行われ、間もなく体育祭が始まろうとしている。

最初の競技は確か100m走だったか? そういえば昨日律も100m走に参加するって張り切ってたし、後で声でもかけてみるか。

 

『ただいまより100m走を行います。参加する生徒は指定の位置に集まってください』

 

律はすぐに見つかり、機械の体のハズなのに何故か入念にストレッチをしていた。

俺が律に近付くと向こうも気づいたようでこちらに駆け寄る。なんとなくだが律って犬みたいだな。

 

「キンジさん1位を取りますので見ててくださいね」

「わかったわかった。けど律、加速装置とかは使うなよ」

「え、奥歯にスイッチを隠してたのに何でわかったんですか⁉」

 

おい、冗談のつもりで言ったのにマジであったのかよ‼

しかも奥歯って……どこぞの9人の改造人間のアニメ見て思いついたんじゃないだろうな。

 

「律、分かってるとは思うがバレるようなことだけはやめてくれよ」

 

ただでさえ烏間先生に律の監督を言われたのだ。

面倒事を起こそうものなら下着ドロの時に烏間先生が鶴田さんにした、あの殺人げんこつが待っているかもしれない。

まさか武偵高以外でアレを見るなんてな。

武偵高内だと蘭豹がお見合いを失敗するたびに強襲科で強要される『生徒2人でそれぞれの拳銃に弾籠め競争をし、遅かった方を撃っても良い』という『弾入れ』があるのだが、それで撃たれた方は殺人げんこつも待っている。

余談だが、他の科目のヤツ等は強襲科の生徒の頭にある腫れあがったコブを見て蘭豹の見合い結果を察するらしい。

あんなものを食らいたくない俺は自分の身の安全の為にも律に釘を刺すと、律は若干不貞腐れるように

 

「この日のために平賀さん達と一緒に色々案を出し合ったのに残念です……」

 

律が聞き分け良くてホントに良かった……

だが今色々って言ったよな?

 

「律、色々って他に何があったんだ?」

「そうですね、一緒に開発した社長考案のパワードスーツやふくらはぎにターボエンジンをつけるというものもありました。前者は色々改善案が出て完成が遅れ、後者は見た目が良くないってことで無くなりましたけどね」

 

平賀さんと社長何作ろうとしてんだよ……これ以上変な改造とかやめてくれよな。

俺の胃が心配になってきたところで律と別れ俺も指定の待機場所へ移動する。

 

「キンジ君、顔色悪いけど大丈夫?」

「ああ……大丈夫だから気にしないでくれ」

 

有希子が心配そうに顔を覗き込んできたが、一言言って俺は100m走の観戦をする。

今は男子が走っており、E組の中でも身軽な木村が走っていた。

 

『100mはA・B・C・D組がリードを許す苦しい展開‼ 負けるな我が校のエリート達‼』

 

普通にE組が1位って言えよ……ここまで露骨にやってくると逆にその徹底ぶりを褒めたくなってくる。

 

「相変わらずのアウェイ感だな」

「いるじゃん、うちらにも味方が」

 

俺と同じ事を思ったのだろう杉野が苦笑を浮かべながら言うと、それに反応した岡野が俺の方を見る。

正確には俺の横をなのだが、そこには……

 

「ふぉぉ。カッコイイ木村君‼ もっと笑いながら走って‼」

 

殺せんせーが俺と凛香の間に入ってどこぞの親バカのように写真を撮りまくっているのだ。

マジで国家機密が何やってんだよ……

 

「ヌルフフフ。ココの体育祭は観客席が近くて良いですねぇ。このド迫力を目立たずに観戦できます」

「目立ってないとはギリギリ言えないかな」

「いや、違う意味で目立ってるぞ。殺せんせー」

 

主に親バカな意味でだが。

烏間先生なんて呆れて何も言わなくなったし。

 

「あ、次律ちゃんだよ」

 

有希子に言われ、トラックを見ると律がスタートラインに立っていた。

律は殺せんせーに協調性を教えられている。

だからたぶん大丈夫だと思うのだが……お願いだから普通にやってくれよ。

 

「位置についてよーーーい……」

 

――パァン

 

100m走が始まった。

 

『さぁスタートのピストルが鳴りました。序盤は陸上部所属の知井田選手が僅差でトップを譲る展開に!』

 

今の所わずかにだが律がトップで走っている。

こんなときクラス一丸となって応援するんだろうが、E組の生徒は全員が曖昧な顔をしていた。

何故なら律はこちらにニコニコと笑顔向け、手を振りながら走ってるからだ。

律……全力で走ってないのは最初から分かってたが、せめて真剣に走っているフリはしてくれよ……

 

「律さん、良い笑顔です‼ カメラ目線なのも最高ですよ‼」

 

殺せんせーはマジで自重してくれ。

律の少し後ろを走っていた陸上部の子は最初は怒った顔で走ってたが、今では泣く一歩手前である。

結局、そのまま律は1位を取り陸上部の子はそのまま泣き崩れてしまった。

すまん、アンタの実力不足じゃないんだ。そう、ただ間が悪かっただけなんだ……

一応律の監督役のため罪悪感を感じた俺は心の中で謝るしかなかった。

 

「キンジさん1位を取りましたよ、褒めてください!」

「……ああ、頑張ったな律。ただ、お願いだからもう少し周りと合わせてくれ」

「え⁉ ちゃんと一般中学生くらいのスピードで走ったはずですが、あれでも速かったんですか?」

 

律は分かって無いようで首を傾げ、それを見た皆が『後は任せた』と言わんばかりに俺の肩を叩いてくるのだった。

なんで面倒事ばかり俺に来るんだよ……

胃がキリキリと痛むなか、椚ヶ丘中学校の体育祭が幕を開けたのだった。




まだやらないといけない物が終わってないので、また次話の投稿が遅くなると思います。
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