哿の暗殺教室   作:翠色の風

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やっと落ち着いたのでこれからペースを戻して投稿できるようにしたい……



54弾 体育祭の時間 2限目

『ただいまより二人三脚を行います。参加する生徒は指定の位置に集まってください』

 

今回、俺が参加するのは二人三脚、借り物競争、棒倒しの三種目。

武偵高の先輩に聞いた体育祭(ラ・リッサ)に比べれば、どの競技も安全で平和的だ。

しかしその中でも危険は存在する。特に二人三脚は危険極まりない競技に分類されるだろうな。

 

(なんで男女ペアでやるんだよ……)

 

そう椚ヶ丘中の二人三脚は男女でペアを組まないといけないのだ。

ヒス持ちの俺にとってはこれ以上ないほど避けたい競技なのだが、不幸にもそれを知ったのは5英傑との勝負が(勝手に)決まった後だった為、二人三脚から逃げることができなかった。

 

「キンジ、放送もなったしさっさと行くわよ」

「……はぁ。凛香わかった、すぐ行く」

 

先に集合場所に向かった凛香の後をため息をついて追いかける。

凛香は俺が頼んだ『ある事』の条件に、この二人三脚のペアを組むことを指定してきたのだ。

何でこれをやりたがるのかは理解できないが、どのみち頼れるのがヒス持ちな事を知っている律か凛香ぐらいな為、頼む手間が省けたから良かったんだが。

係の指示に従って列に並ぶと、どうやら俺と凛香は最後らしく横には5英傑の榊原と小山が並んでいた。

 

「ふっ、どうやら逃げずにきたようだね」

「これだけはやりたくなかったんだが、逃げた後の方がよっぽど怖いからな」

 

主に俺の横にいる奴の鉄拳制裁や最近だと有希子もヤバい。

俺の中で呼んでる『おしとやかジェノサイド』なんか、不意に微笑みながら銃やらナイフで切りかかってくるから普通に攻撃されるより数倍はたちが悪い。

 

「ギシシシ。まあ、どうせ勝つのは俺達だ。遠山は土下座の練習でもしてたほうが時間を有意義に使えるぜ」

「勝手に言ってろ」

 

何を根拠に勝てると言ってんだろうかコイツ等、榊原はともかくとして小山なんてどうみても鍛えている体には見えない。

これで3本勝負に勝てると思っている辺り、5英傑とか大層な名前がついてるがバカなんじゃないのだろうか?

 

「死ね、セクハラ野郎‼」

「グハッ‼」

 

トラックの方から競技中とは思えない声が聞こえ思わず見てみると、興奮気味の岡野と倒れこんで悶絶している前原が目に入った。

 

「なんで前原は倒れてんだよ……」

「あのバカが岡野の胸に手を回したのよ。それで『スマン、素で腰と間違えた』って」

 

アイツ、こんな時まで何やってんだ⁉

そっち関連に疎い俺でも、それが禁句なのぐらいは分かるぞ。

せっかくトップを走ってたのに悶絶してるせいで、最下位になっているし……

岡野に引きずられる前原に呆れていると、凛香に服を引っ張られた。

 

「どうした?」

「もうすぐ私達の番よ。ほら紐」

「ああ、くくるから左足出してくれ」

「わかった」

 

差し出された凛香の足と俺の足をほどけないようにしっかりと固定して立ち上がると、凛香が俺の胸辺りに手を回し体が触れ合うほどくっついてくる。

 

「凛香⁉」

「こうしないと走りずらいでしょ」

「それでもくっつきすぎだろ!」

「棒倒しの練習とかキンジの頼み事で一緒にいれなかったし、これぐらい良いじゃない」ボソッ

「何か言ったか? つか離れろ!」

「ッ‼ 何でもない!」

 

そう言うと凛香顔を赤くさせながら、さらにギュっと密着してきた。

凛香、俺がヒス持ちなの分かってるだろ、正気か⁉ それとも新手のイジメなのか……

密着されることにより、フニュンと決して小さくない凛香の胸が俺に押し付けられる。

『密着してくるなよ!』と言いたいが、こっちも血流を危なくなってきた為落ち着かせることに必死でそれどころじゃない。

さらにこの状態が恥ずかしくなったのだろう凛香が顔を下に向けると、身長差的に俺の顔に凛香の髪がかかりジャスミンに似た香りに顔が包まれた。

 

 

以前、殺せんせーが言っていたがジャスミンは別名『香りの王』と呼ばれ、かのクレオパトラもその香りを愛用していたらしい。

さらに重要なのは匂いの作用だ。その作用が最も発揮するのは催淫。

つまり何が言いたいかというと人より鋭い嗅覚を持つ俺にとってジャスミンに似た凛香の匂いは、本物のジャスミンの匂いと同様に誰よりもヒスりやすい匂いなのだ。

こんな胸を押し付けられて血流が不安定な状態の時に、この匂いを嗅いでしまうと天秤は容易に傾く。

 

――ドクン

 

ヒステリアモードの方向に。

 

「凛香、そろそろ俺達の番だ。終わったらいっぱい甘えさせてあげるから、そろそろ切り替えよう」

「べ、別に甘えたいわけじゃないし」

「そうか。じゃあ、そういうことにしておくよ」

「だから違うって言ってるでしょ‼」

 

俺達の番が回ってきた為、今ので若干ふてくされた凛香と共にスタートラインに立つ。

 

『位置について、よーーーーい』

 

「いつも通りで行くぞ凛香」

「うん」

 

――パァン

 

ピストルの音と共に俺は右足を、凛香は左足を出す。

声に出して合わせる必要はない。

なぜなら普段から連携を合わせている俺達はお互いがどう動くかなんて声に出さなくても分かる。

パートナーとしてお互いの背中を任せるぐらいには信頼している俺達は全力で走っても、一度も転ぶことも、ましてや他のペアに負けるはずもなく

 

『な⁉ E組速すぎないか!』

 

他の組がトラックの半周ほどを回ったぐらいでゴール、実況者も思わず実況することを忘れるほどには差をつけて勝つことができた。

 

「くっ。この日の為に陸上部の子とペアを組んだのに」

「他の競技ではこう行くとは思うなよ‼」

 

A組の2人に一言言ってやろうか考えていると、榊原と小山がわざわざこちらに来てまで捨て台詞を吐くとそのまま待機場所に帰っていってしまった。

 

「あの2人何がしたかったんだ?」

「さあ。 そんなことよりも、まずは一勝ね」

「そうだな凛香、ありがとう」

 

感謝の気持ちとして凛香の頭を優しくなでてあげる。

凛香は顔を赤くしながらも「ん……」と気持ちいいのか目を細めながら、なすがままになっていた。

その仕草が子猫のような可愛いかったため、しばらく撫でていると

 

「キンジさん速水さん! いい加減離れてください!」」

 

そう言っていつのまにかこちらに来た律が、俺と凛香の間に入って両手で俺達を離そうと躍起になっていた。

 

「律⁉ そういうのじゃないから!」

「そういうのってどういうことですか、速水さん?」

「えっと……その…… ~~~~ッ‼」

 

凛香は撫でてた時以上に顔を真っ赤にさせながら一人で待機場所に走り去ってしまった。

とりあえず次の競技もあるため置いて行かれた俺と律はひとまずトラックの外に出る。

 

「律、アレは俺が勝手に撫でていただけだぞ」

「知ってます。ですが2人を見てたら胸の奥がデータでは表現できない痛みを感じましたので……」

 

痛みか……平賀さんが作ったものだから律の体内でどこかダメな部分が出てきたのか?

近いうちに武偵高に行って平賀さんに見てもらうか。

 

「今は痛むか?」

「今は大丈夫です。あとお願いを1ついいですか?」

「俺にできそうなことだったらな」

「さっきの速水さんみたいに、次のキンジさんの競技まで私の頭も撫でてほしいんです」

「それぐらいならお安い御用さ」

 

上目遣いで見てくる律の頭も凛香の時同様に優しくなでてあげる。

 

「……凛香さんがあんな顔をする気持ちが分かります」

「そうか? ただ撫でてるだけなんだぞ」

 

幸せそうな顔で言葉を零す律に苦笑しながら答えると、律は首を振って否定してきた。

 

「キンジさんに撫でられるとポカポカした気持ちになれるんですよ。たぶん他の人に同じことをされても、この気持ちになれないです」

 

『ただいまより借りもの競争を行います。参加する生徒は指定の位置に集まってください』

 

「放送もなったから、そろそろ行かないとな」

 

そう言って俺が律の頭から手を離すと「あ……」と名残惜しそうに律が俺の手を見てくる。

 

「律そんな顔しなくても、またいつでも撫でてあげるから」

「――‼ はい! キンジさんも借りもの競争頑張ってくださいね!」

 

俺の言葉で途端に明るい顔になった律に見送られながら、俺は借りもの競争に出るために集合場所へと向かった。

 

 

 

 

余談だが俺が凛香や律の頭を撫でているところを見て他のクラスの男子たちの結束力が上がったらしく、この年の体育祭はどの競技も過去最高の盛り上がりを見せたらしい。

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