哿の暗殺教室   作:翠色の風

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死神編に入ってから筆がいつもより乗っている翠色の風です。

今回からとうとうキンジ君も参戦。
そしてまさかな人物も参戦です。


63弾 裏切りの時間

~凛香side~

 

皆と別れた後、私達B班はビッチ先生を助けるためにさっきの部屋 ――鉄格子の向こう側に繋がる扉を探していた。

 

「あった、たぶんこの扉ね。この鍵ぐらいなら竹林爆薬で壊せそう」

 

片岡が見つけた扉を調べて指向性爆薬をセットしていく。

 

「なあ、もしここにビッチ先生がいるなら『死神』もいるんじゃ……」

 

岡島の言う通りだ。私達の目的がビッチ先生なのを死神はわかっている、それなら待っていれば済むだけの話なのだから。

 

「『死神』を倒せばこっちが勝ちなのは変わらない。どのみち『死神』はいつか襲ってくるから……返り討ちにするだけよ。それに人に向けちゃダメだけど、トラップや脅しに使える爆薬もまだあるわ。皆武器を構えていて」

 

片岡に言われ、私も準備をする。

常日頃から持っている小通連に、来る前に渡された奥田特性の催涙液入りのペイント弾、後はポケットにあるスタンガンだ。

こんな場面キンジみたいに武偵なら銃を持っているため心強いのだが、無いものをねだっても仕方がない。それにこの装備でも不意をつけばどうとでもなる。

 

片岡がセットした爆薬が起動して扉が壊れた。

 

「生簀の中に放ったのが小魚と思ってんだろーが、その小魚がピラニアだと教えてやろうぜ」

 

作戦開始だ。

 

 

 

 

警戒しつつ辺りを見る、いるのはビッチ先生のみで死神は見当たらない。

 

「私と杉野で救出するから皆は辺りの警戒を!」

 

 

2人が助けている間に死神がいないか警戒していると、背中のほうから誰か来た。

 

「速水さん」

「神崎……何?」

「律に気をつけて」

 

――バタン‼

 

「え?」

 

私は思わず音がした方を見ると、その状況が信じられなかった。

倒れているのは4人、片岡、杉野、岡島、矢田。

そのそばに立っていたのは……

 

「フー……6ヶ月くらい眠っていたわ。自分の本来の姿も忘れて」

 

注入器を持つビッチ先生だった

「ビッチ先生、本気なの?」

「アンタ達と可能性の見えない暗殺を続けるより、確率の高いヤツと組むわ。それに商売敵は黙らせろって彼が言うのよ」

 

倉橋の言葉に返すビッチ先生が顎で扉を指す。

 

「死神ッ‼」

 

いつの間にいたの⁉

指揮を出してた片岡がいないが残った6人で死角を無くすように立とうと移動する。

 

「待って、みんな!」

 

――バチッ‼

 

神崎の言葉と共に鳴った音に私は振り返る。

岡島、中村、倉橋が倒れていた。

 

「遅かった……」

「なんで……なんで律が‼」

「…………」

 

いつもならコロコロと表情を変えて答える律が無表情で何の反応もないまま、バチッバチッと音が鳴るスタンガンを手に持っていた。

 

「どうやら聡明な子もいるようだね。速水さん、その問いは僕から答えよう。律さんにはあらかじめ細工をしていたのさ、()()()()()()()()()()()()にね」

「「ッ⁉」」

「なかなか面白い物だったからね。持ち主を殺して貰ったんだ」

 

キンジは律のヒューマノイド化は武偵高の人と京菱イノベーションの社長、そして律の開発者が関わってるって言っていた。

コイツの言うことが確かなら、その時にはもう律を……そんな前から行動していたなんて。

 

「君の推理も聞きたいな。神崎さん、どこで気づいたんだい?」

 

死神に聞かれ神崎が一瞬私と視線を合わせてくる。

 

「……あなたはあの盗聴器をしかけてからあまりにも短期間で行動しているんです。その割には私達の事を知りすぎる……まるで誰かが情報を流してるかのように。律を疑ったのはあなたが去ったあと、キンジ君をどうするか聞いた時の反応です。協調を第一としていたはずなのに、自らが率先して誘導するように行動していましたから」

「選択肢が無いからって、やっぱりあれはわざと過ぎたか」

 

死神が神崎に興味を持ってるうちにA班を……よしこれで

 

『皆を呼べるとでも思ったかい?』

「え……」

 

そこから聞こえる声はA班の誰でもなかった。

 

『君が呼ぼうとした子たちは今さっき倒したよ。残念だったね』

 

A班が既に全滅⁉

誰がやったの、いやそれよりもこの声なんで……

 

「目の前にいる死神がどうしてケータイを……」

「ああ、渚君達に助けを呼ぼうとしてたんだね」

『実にあっけないものだったよ』

 

目の前の死神はケータイも何も持っていない。

なのに私が持ってるケータイには相変わらず目の前の男と同じ声が……

不気味さを増したこの男に私の中で危険度が最大になる。

 

「速水さん‼」

 

神崎の声と共に私達は持っていたエアガンを死神に向けて発砲した。

 

――――ビスッビスッビスッ

 

だがその弾は死神に届く事はなく、目の前の何かにぶつかり空間にヒビを作るだけ。

 

「ふむ……いつもより厚さがないな……ああ、君の力か。粒子をこの部屋に集めたんだね」

 

私に対してこの男が何を言ってるかわからないし心当たりもない。

 

(やっぱりエアガンじゃダメだ!)

 

そう思って小通連を抜くも

 

「……私達を忘れてないですか。速水さん」

 

――バチッ‼

 

首筋辺りから電流が流れる。

忘れてた……敵は死神だけじゃなかったんだった……

 

「キンジ……」

 

そのまま私の視界は真っ暗になってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

~キンジside~

 

ビッチ先生の件から翌日、俺は呼び出しがあった為朝から武偵高に来ていた。

律にはああ言ったがビッチ先生はちゃんと来てるんだろうか……

まあ、殺せんせーがいるんだ、すぐに丸く収まるだろう。

 

「……やっぱり入らないといけないよな~」

 

現在武偵高3大危険地帯である教務部の前、こんなとこ正直入りたくない。

書類不備はないはず……大丈夫……だと信じたい。

 

「おはようございます、遠山キンジです。入ります!」

「おう遠山こっちや」

 

意を決心して入ると、そこには蘭豹しかおらず手招きされた。

 

「呼び出された理由分かるか?」

「いえ! 心辺りはありません」

 

何もしてないよな?

だが蘭豹の顔は俺の言葉を聞いて、ビキィ……!と額に青筋を立ててメンチを切ってくる。

正直、そこら辺の殺し屋より怖い。

 

「先週、烏間を紹介するって言ったのお前は覚えてへんのか?」

 

は?

先週? 先週は向こうのテストで蘭豹に連絡を入れるどころか武偵高にも行ってないぞ。

 

「先生、俺は先週は何も」

「しらばっくれる気か遠山‼」

 

ダメだ、耳を傾ける気なんて一切ない。

かくなる上は……

 

「じゅ、11月」

「あ?」

「11月に幼馴染の学校で文化祭があるんです。そこで絶対に紹介します!」

 

すいません烏間先生、皆。皆がビッチ先生とくっつけようと頑張ってたが、命の方が惜しいんだよ……

俺の言葉に蘭豹は怒りでへの字になっていた口が、嬉しさからか口の端だけが上がりWの形になる。

 

「まあええわ。ちゃんと紹介せえよ」

 

乗り切った。烏間先生とか色々犠牲にしたけど、なんとか雌豹から逃げ切れた。

 

「あと遠山、お前を何人か指名してるから今日はこっちにいとけ」

 

指名?……ああトライアングルか。

武偵高は封建主義な為、学年を超えての力比べはなかなかできない。

だが10月だけはスポーツなどの試合で挑んでも失礼には当たらないのだ。

名前の由来は挑戦パターンが3種類なことからなのだが、時たま今回のように先輩が直々に逆指名してくることがあるらしい。

 

「わかりました」

 

敵前逃亡は恥な為、断ると言う選択肢はないというよりもできない。

バレたら、教師陣による体罰コースなのだ。

 

「……夜までには終わるよな?」

 

 

 

 

 

 

 

「やっと終わった……」

 

逆指名された勝負……ボクシングやら柔道やらを全て終えた頃には18時を回っており太陽はもう沈んでいた。

 

「そういえば平賀さんに相談する予定だったな」

 

ここに来たもう一つの用事を思い出し訓練室を出たその足で向かおうとしたその時

 

『ハァーイ、遠山キンジ君久シブリネ』

 

またか……今日はよく教師陣に呼び止められるな。

 

「お久しぶりです。ウー先生。俺に何かようですか?」

『アナタッテ言ウヨリモ渚チャンネ』

「渚にですか?」

『エエ。伝エタイ事ガアルカラ今度武偵高ニ来テッテ伝エトイテクレナイ?』

 

渚に伝えたい事? いったいなんだろうか。

 

「わかりました。帰ったら伝えておきます」

『オ願イネ』

 

それっきりチャン・ウーの声は聞こえなくなった。

渚も面倒な人に目をつけられたなと同情しつつ、俺は改めて平賀さんの工房へと向かう。

 

 

 

平賀さんの工房へ向かうとまだ灯りがついており、向かったがいなかったという悲しい状況にはならなかった。

 

「平賀さんいるかー?」

「あ、遠山君なのだ。久しぶりなのだ」

「…………」

 

工房に行くとどうやら先客がいたようで、平賀さんの隣には狙撃科のレキが立っている。

 

「レキも久しぶりだな」

「…………」

 

こいつは……

相変わらずヘッドフォンをしてこっちの言葉が聞こえてないらしく、その整った顔はあらぬ方向に向いていた。

仕方なく俺はレキの頭をコツコツ、と指で叩くとレキはようやくヘッドフォンを取りこっちを見てきた。

 

「お前も平賀さんに用事か」

「はい、銃弾を買いに来ました」

 

ふーん、レキのヤツもここで買ってたのか……

 

「レキさんはお得意様なのだ。それよりも遠山君はどうしたのだ?」

「ああ、律の事で相談なんだが……」

 

律の制作に関わっている平賀さんに俺は相談した。律が最近おかしい事、感情の自覚をしていたことを。

 

「それはよかったのだ」

「良かったってどういうことだよ?」

「律ちゃんはAIでもボトムアップ型なのは前にも遠山君にも説明したのだ。ボトムアップ型は人間と変わらないのだ……なら情報量を多くすればいつか感情も分かると思って五感とかを感じれるようにやったのだ」

 

詳しい事を聞けば、律のそれは良い方向に向かっている証らしい。

ただ、今までよりも格段に処理することが増えた為に今は体がついていけていないとの事だった。

 

「念のため、体の調子も見たいから今度連れてきてほしいのだ」

「わかった。ありがとう平賀さん」

 

平賀さんにも相談できたし、そろそろ帰るかと思って立ち上がると誰かが俺にぶつかって来る。

 

「キーくん、やっほー。相変わらずいい匂いだね。思わずクンカクンカしたくなるよぉ」

「り、理子⁉ お前、な、何抱き着いてきてんだよ! さっさと離れろ!」

 

口には言えないが、その小さな体に似つかない大きなものがさっきから当たってんだ!

無理やり、理子を引きはがすと理子は口を尖らせ

 

「ぶー。せっかく面白い物を見つけたからキーくんにも見せようと思ったのに」

「なんだよ、その面白い物って?」

「ふーんだ。意地悪なキーくんには教えてあげないよーだ」

 

あっかんべーと子供のようにやってくる理子。

コイツが面白い物と言って、持ってくるときは大抵バカなものかめんどくさいものだけだ。

 

「別にいい。どうせたいした物じゃないんだろ?」

「それがりんりんやなっぎー達と関係してても?」

 

何?

凛香や渚達?

 

「おい、理子どういうことだ」

「ふーん」

 

あ~、クソッこいつ……

 

「さっきはすまなかった。だから教えてくれ」

「そういえばもうすぐ、〇する乙女と守護の〇が発売日だったな~」

「………あ~、分かったよ!買ってやるから教えろ理子!」

「さっすがキーくん、やっさしー。そんなキーくんに、はいコレPCを見てて」

 

理子に見せられるのは、建物の中に入っていくE組の皆だった。

なんで超体操着を着てんだ? あれは何かを守る時だけって言ってたのに……

考えられるのは1つだけ、着ないといけない何かが起きたのだ。

 

「これ、前に会った子達だよね? おそろいの服で何してるのかな?」

「理子、これはいつの映像だ……」

「ん~と、だいたい18時ぐらいだね」

 

今の時刻は18時30分……入ってから30分か……

 

「理子、案内(ナビ)できるか?」

「理由を聞いても?」

「…………」

「まあいいや。CL〇NNADもつけてくれたら手をうってあげる」

「すまん」

 

後は……

 

「はいなのだ、遠山君」

 

平賀さんに頼もうとすると、予備マガジンなどを含めた装備一式を平賀さんに渡された。

 

「何を急いでるのかわからないけど、コレの代金は律ちゃんを連れて来た時でいいのだ」

「すまん、平賀さん。後で必ず払う!」

 

装備一式を身につけた後、俺は武藤にバイクのキーを借りて駐車場へと向かう。

そこに行くと一人の少女がドラグノフを持って立っていた。

 

「レキ、なんでここに……」

「風に言われました。()()()()と」

 

レキ……

正直敵がいるかもわからない。

だが、Sランク武偵がいれば何があっても対処できる。

移動中にしがみつかれるとヒス的にヤバいが今は四の五の言ってる場合ではない。

 

「バイクで行く。しっかり掴まってろよ」

「はい」

 

借りたのは以前武藤が自慢していたBMW・K1200R。

僅か2.8秒で時速100kmに届くコレならすぐに着くはず。

 

ドルルル……!

ローに入れアクセルを引き、俺はレキを連れ理子の案内で皆が入った建物へと向かった。

 

(頼むから、何も起こってくれるなよ!)

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