哿の暗殺教室   作:翠色の風

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お待たせしました。


65弾 死神の時間 2限目

~渚side~

 

ここはいったい……

 

「良かった渚、気が付いたのね」

「茅野? ここは……」

 

耳元からは茅野の声が。

それと一緒に暗かった視界が徐々に鮮明になってくる。

そこは最初にいた場所とは違う牢屋だった。

手は拘束されていて、首には何かつけられていた。

 

「私達全員捕まって、今は違う牢屋にいるの」

 

変だな……茅野から安定してる何かが見える……

いや、今はそんな事よりもA班だけじゃなくてB班やC班まで捕まった事を考えないと

 

「やっぱり君達じゃ練習にもならなかったね」

 

ハッキリとしない頭で考えていると、牢屋の向こうから声が聞こえてくる。

そちらを見ると、牢屋の向こうには死神とビッチ先生が立っていた。

 

「どんな方法で殺せんせーを殺ろうとしてるか知らないけどさ、そう計算どうり行くのかね?」

「ん?どういうことだい赤羽君?」

「だってあんた、二人ほど捕まえれてないじゃん。生徒すら捕まえられずに殺せんせーを殺れるとは思えないけどね」

 

カルマ君の言葉に改めて見ると、確かに2人、速水さんと律だけは捕まっていなかった。

 

「ああ2人の事だね。1人は別のところにいるだけだから安心してよ」

「速水さんをどうするつもりなんですか?」

 

死神の返答に神崎さんが珍しくまくしたてるように聞いている。

その言葉通りなら、捕まってるのは速水さんだけみたいだ。

 

「彼女は入学を認められてるみたいだから、殺さずに連れていかないといけないんだよ。『イ・ウー』にね」

「『イ・ウー』?」

「おっと、口が過ぎたね。取りあえず彼女は特別扱いなのさ」

 

イ・ウーなんて聞いたことないけど、とりあえず無事な事が分かり安心できた。

 

「そろそろ烏間先生を呼び出して、人質にしようか。良い練習台になるだろうし、なにより何かとメリットがある」

 

烏間先生を……いやこの人だったらやる!

 

「ん? 死神さーん、モニターを見てみ。あんた計算違いしたみたいだよ」

「…………ほう」

 

カルマ君の言葉通りモニターに映ってるのは、呼び出そうとしていた烏間先生、そして殺せんせーだった。

 

「これは嬉しい誤算だ。キンジ君よりも楽しめそうだね」

「な⁉ キンジも来てんのかよ⁉」

「そういえばモニターが消えているね。ほら、これを見てみなよ」

 

そう言われ、モニターに映ったのはキンジ君と武偵高に見学に行ったときに見た狙撃科のレキさんの2人、そして捕まっていないはずの律が2人の前に立ちはだかってるところだった。

 

「なんで律が⁉」

 

訳が分からない、律どうして……

 

「ヒューマノイドになるときに、操れるようにウイルスを盛ってキンジ君達の相手をやってもらってるのさ。ちなみに君たちの情報もAI経由で手に入れてんだよ」

 

だから、超体操着の情報も知ってたのか。

 

「そんなひどい……」

「何を言ってるんだい矢田さん。あれは物だろう、有効に使っただけの話さ。それじゃあ、そろそろ動こうか。イリーナ計画16でいくよ」

「……ええ、わかったわ」

 

死神とビッチ先生2人が部屋から出て行った。

どうしよう……烏間先生達はビッチ先生が裏切ったなんて知らないのに……

 

 

~キンジside~

 

(どうする……)

 

相手は律。

ヒステリアモードの今、女の子に対して俺は傷つける行為ができない。

だが律は俺を殺る気だ。

俺にできる事は一つだけ。

できるだけ傷つけずに無力化する以外にない。

 

律の動きに気を付けながら、俺は防御よりの構えをとる。

対する律は、急所を守るように左側を前にし腰を落とす。

拳を握りしめ、左手を前に突き出し逆に右手は弓を射るかのように引いている。

見たことがない構えだ。

 

「いきます!」

 

体から蒸気を上げていた律が消えた。

いや違う、集中することによって見えたスーパースローの世界で律が一足飛びで俺に迫ってくる。

 

(マズイ‼)

 

そう思い避けようとしたが、それより早く律が着く。

 

「遅いです。桜のように儚く散ってください『雷光』」

 

――――パァァァァァァン。

 

俺は入った入り口を超え廊下の壁に叩きつけられた。

数瞬遅れて、音速を超えた時になるあの音が聞こえてくる……

衝撃波だけでこの威力なんて……

 

「後ろに飛んで直撃を避けましたか。修正……続けて攻撃に移ります」

「……律、さっきのは『桜花』だよね?」

 

再び攻撃してこようとする律に、素早く起きた俺は避ける事に集中する傍ら聞く。

最初のあの動きは以前やった桜花を使っての移動だ、だがその後の技……あれは桜花の速度を超えていたぞ。

 

「そうです。わたしはあなたですので」

「律と同じなのは嬉しいけど、どういうことだい?」

「4ヶ月、わたしはずっとあなたを見ていました」

 

律の猛攻を防ぎながら、会話は続く

 

「あなたのスタンス、癖。あなたの事は好きな物から考え方まで知り、そして学びました」

 

避けようとした場所に律の蹴りが飛んできた為、とっさに防ぐ。

だが威力が強く、俺の体は再び飛ばされた。

 

「先ほどの『雷光』もあなたを学ぶ過程で得た『桜花』を改良した技です」

 

律の学習能力はそれこそ人間の域を超えている、俺という人間を学習してその上の能力を導きだしたってことか。

 

「無手では決着まで時間がかかると判断、兵装展開」

 

その言葉を鍵に何かが部屋から飛びだして壁に突き刺さった。

 

「剣だと?」

 

中にあるのは律の本体のみ、そういえば律の本体の中は特殊プラスチックでなんでも作れたな。

それこそ、銃から花まで何でも。

剣が1本出たかと思うと、続けて何十本と武器が飛び出て天井や床にも刺さっていった。

それは西洋の剣であったり、中国刀、刀やナイフ、果てには薙刀や槍まで、年代場所を問わず様々な近接武器が廊下を覆うように突き刺さる。

 

「遠山キンジを殺せる確率が5%上昇、いきます」

 

律……俺を殺そうとしているのに、なんでさっきから今にも泣きだしそうな顔をしてんだよ!

 

そんな表情に反して突き刺さる剣を1つ手に取る律に対し、俺も防ぐために刀を手に取る。

お互いに足で放った桜花で迫り、高速での戦闘が再び始まった。

 

 

~渚side~

 

モニター越しに見ていた二つの戦況は、一言で表せば信じられなかった。

キンジ君の方は、律の攻撃を受け止めているのだけど速すぎて何も見えていない。

ただ拮抗してるようで、さっきから壊れた武器だけが増えていっている。

そして烏間先生達は……

 

「ウソだろ……」

 

杉野の言う通り信じられなかった。

落とし穴とUZI2丁。たったこれだけを使って、ビッチ先生と死神は殺せんせーを僕たちと同じ檻に閉じ込めたのだ。

死神とビッチ先生はお別れの言葉だと言って、烏間先生を連れ再びここへやって来た。

 

「能力を使うまでもなかったか……そこは気に入ってくれたかな、殺せんせー?」

「皆さん、ここは……」

「洪水対策で国が作った地下水路ださ、僕のアジトと繋がっている。地上にある操作室で毎秒200tの水が水路いっぱいに流れる。そして檻は対先生物質で頑丈に作った。後は言わなくても分かるよね?」

 

それを聞いて僕たちは自分の顔が真っ青になったのが分かった。

死神は僕たちごと殺せんせーを殺す気なのだ。夏休みに鷹岡先生が言っていたように、殺せんせーが乱暴に脱出できないように……

 

「待て!生徒ごと殺す気なのか⁉」

「当然さ、今更待てない」

「ッ‼イリーナ‼お前コレを知った上で……」

「……プロとして結果優先で動いただけよ。あんたもそれを望んでたでしょ」

 

ビッチ先生……

それに烏間先生も今まで言ってきたことが裏目に出たのか動揺してるのが感じられた。

 

「ヌルフフフ。確かに厄介な対先生物質ですが……私の肉体はついにこれを克服しました」

 

え⁉

殺せんせー、まさかこの檻を破ることができるの⁉

 

「……へぇ、それはぜひ見てみたいね」

「いいでしょう。これをみせるのは初めてですよ、さあ驚きなさい‼私のとっておきの体内器官を‼」

 

皆が固唾を吞んで見守る中、殺せんせーが見せたのは……

 

――ペロペロ  ペロペロ  ペロペロ

 

四つん這いになって必死に檻を舌で舐める姿だった。

 

「確かに殺せんせーの舌は初めて見たね……」

「殺せんせー、どれくらいで溶けるの?」

「消化液でコーテイングして作った舌です。後カルマ君の質問ですが、これぐらいの檻なら半日もあれば溶かせます」

「「「遅ーよ‼」」」

「言っとくけど、それを続けたら全員の首輪を爆破させるよ」

「ええっ⁉ そ、そんなぁ‼」

 

いや、殺せんせー。それ普通の反応だよ……

それにしても殺せんせーまで簡単に捕まってしまった……

 

「さて、さっさと依頼の片方はすませようか。来い、イリーナ。今から操作室を占拠して水を流す」

 

もう僕たちにはどうすることもできないのかな。

檻の中にいた皆が自身の不甲斐無さ、死神の手の平で踊らされた悔しさを感じていると、部屋から出ようとする死神の肩を掴む人がいた。

 

「どういうことだ烏間先生?」

「…………」

「日本政府は僕の暗殺を止めるつもりなのかい? 確かに多少手荒だが、地球を救う最大の好機だろ?」

 

烏間先生……

 

「死神、その答えを言う前に1つ聞く。ここにいない生徒はどうする気だ」

「ああ、1人は僕が戦うに値するか試してる。もう1人は頼まれたから僕と共に国外へ連れていくつもりさ」

「……後1人は?」

「物は人にカウントしないだろ?」

 

その言葉が誰に向けたか、全員が分かり怒りを覚えるがその前に烏間先生によって吹き飛ばされた。

 

「……硬いな。まあいい、日本政府の見解を伝える。29人の命は地球より重い。そして死神、お前は殺人未遂及び殺人の疑い、そして未成年誘拐等の罪で逮捕だ」

 

僕たちから見える烏間先生の後ろ姿は、頼もしくそして何よりかっこよかった。

 

「言っておくがイリーナ。プロってのはそんな気楽なものじゃないぞ」

「……面白いね。じゃあ、プロならこれも見切れるかな?」

 

そう言うと、死神の周りに突然巨大な氷柱が出てきた。

 

「ちっ!超能力者(ステルス)か!」

「避けたら、もしかしたら後ろにいる何人かは死ぬかもね。さあプロなら止めてみなよ」

 

烏間先生が拳銃を構え、飛んでくる氷柱を対処しようとすると声が聞こえてきた。

 

「私は1発の銃弾」――ガシャン

「銃弾は人の心を持たない」――ガシャン

「故に何も考えない」――ガシャン

「ただ、目的に向かって飛ぶだけ」――ガシャン

 

それはまるで詩のようだった……そして1節歌うごとに氷柱が壊れ、最後に死神の足が砕けた。

聞こえてきたの全て僕たちの後ろからだった。

 

「おい、今俺達と檻を潜り抜けて当ててなかったか⁉」

「寺坂……そんな事ができる人なんて俺は一人しか知らない」

「なんだよ千葉、知ってんのかよ」

「ああ、あの人ならできて当然なんだ。『絶対半径2051m』のあの人なら……」

 

絶対半径……ウー先生から教わった通りなら、それは狙撃手の必中距離のはず。

そんな芸当ができるのはキンジ君と同じ……

 

「あなたがキンジさんの言っていた烏間先生ですね」

 

狙撃科S()()()()のレキさんしかありえない。

 

「……ああ、そうだ。君は?」

 

烏間先生は、振り返ることなくレキさんの言葉に答える。

 

「武偵高1年、狙撃科のレキです。キンジさんに言われあなたを援護しに来ました。」

「そうか……国家機密に関して色々言いたいことがあるが、その前に死神お前の本体はどこだ」

 

さっきのレキさんの攻撃で思わず目を逸らしたけど、死神の足からは血が出ずに氷のように砕けていた。

 

「今は、連れてこうとしている少女の近くだよ。それにしてもレキさん僕は本体みたいに氷で守ったつもりだったんだけど、よく貫通させたね」

「装甲貫通弾を使わせてもらいました」

「ああ、武偵弾か。ハハッ、面白い。二人とも合格だ」

 

ひとしきり笑った死神が足元から細かい粒子に変わっていく。

 

「僕は今から操作室に行く。僕の位置と君たちの位置は操作室からの距離はほぼ同じだ。止めたければ、向かってくるがいい。もし追いついたなら、ちゃんと本人が相手してあげるよ」

 

そう言ったところで目の前の死神が消えた。

 

「ちっ!レキさんも別ルートで向かってくれ!」

「わかりました」

 

死神を止めるために烏間先生とレキさんも走り去っていった。

 

「烏間先生!トランシーバーの電源をONにしといてください!」

 

正真正銘『プロ』同士の戦いが始まったのだ。

 




次話投稿予定は1週間後になりそうです。
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