哿の暗殺教室   作:翠色の風

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すいません。大変お待たせしました。


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キンジsideを加筆修正しました。



66弾 自覚の時間

~渚side~

「烏間先生、大丈夫だよね?」

 

何もできず、烏間先生やレキさんを見送った後ポツリと茅野が心配そうに聞いてきた。

 

「フン……彼の実力を見てまだそんなこと言えるのカエデ。烏間も人間をやめてるけど、彼はそれ以上よ」

 

僕が答える前に、ビッチ先生が首につけていた爆弾を外しながら呆れたように言ってくる。

確かに死神は殺せんせーを牢屋に落とすという誰も出来なかった事をやっている。

しかも超能力者なのにその能力すら使わずに……

 

「なあビッチ先生。あの野郎が俺等事殺すって知ってたのかよ」

「何でよ……仲間だと思ってたのに」

「…………」

 

前原君や岡野さんが聞いてもビッチ先生は何も言わずにうつむいていた。

そうなんだ……ビッチ先生は死神の計画で僕たちが殺すことを知ってたんだ……

 

「ビッチ先生……」

「やめなよ、渚。このビッチただ怖くなっただけなんだし」

「どういうことカルマ君?」

「自分はプロだって言ってたのにゆる~い学校生活で殺し屋の感覚を忘れかけてたから、俺らを殺して『私冷酷な殺し屋よ~』ってアピールしたいだけなんだよ。何か間違ってるビッチ先生?」

 

――ガシャン!

 

「私の何が分かるのよ‼」

 

カルマ君が挑発気味に聞いたせいかビッチ先生は爆弾を牢屋にたたきつけ、顔を下に向けながら肩を震わせていた。

 

「……想像した事さえなかったのよ。血に塗れた私が、弟や妹みたいな子と楽しくしたり、恋に悩んだり……私の世界はそんな眩しくない。お願いだから……私にこれ以上そんな優しい夢見させないでよ‼」

 

ビッチ先生の悲痛な声が響く。

それに対して僕たちは何も言えなくなっていた。

ビッチ先生を苦しめているのは僕たちだったのだから。

 

『イリーナ、手伝ってくれ。お前も操作室へ向かい、烏間が罠に手こずっている様なら背後から撃て。公安0課なんて大層な名前の所に所属してるが、所詮平和ボケした国の組織だ。死と一緒に過ごしてきた君の攻撃なんて躱せるはずないさ』

「……わかったわ」

 

僕らにはよく聞こえなかったけど、たぶん死神に呼ばれたのか、ビッチ先生はそのまま部屋から出て行った。

 

「さすがは歴戦の殺し屋ですね」

「殺せんせー、なんでそんなに落ち着いてんだよ‼」

「焦ってもいいことが無いからですよ木村君。先生が最も苦手な環境の急激な変化、『味方だと思ったら敵だった』と彼女の演技はその変化を一切悟らせなかった。死神だけじゃない、イリーナ先生も素晴らしく強い。君たちが実力で勝てる相手ではないぐらい」

 

悔しいけど殺せんせーの言う通り、僕たちはあの時手も足も出なかった。

誰もがそれを痛感してる。

 

「死神が設置していた監視カメラがありますね。断片的にですが強者の戦いが覗けますよ。読唇は先生に任せてください」

 

そう言って殺せんせーの触手が指すモニターには烏間先生とレキさんが映っていた。

 

烏間先生が映るモニターは烏間先生と扉だけで、ドアノブを握ったと思ったら次の瞬間

 

――ドガアアアアアアアアン‼

 

この部屋まで響く爆発音が鳴り、烏間先生が映っていたモニターが真っ白になる。

光が収まるとそこには、変わり果てた扉と

 

『チッ 嘗めてるな。たかがあんな量の爆薬で止めれると思われてるなんてな』

 

無傷の烏間先生が映っていた。

 

「「「…………え?」」」

「なあ、何が起きたんだ今?」

「千葉、俺の目が可笑しくなかったら爆発に巻き込まれた烏間先生が、次の瞬間何事もなく通りすぎたぞ」

 

僕の目にも村松君と同じ光景が映っていた。

なんで烏間先生は無事なのか全くわからなかった。

 

「簡単な事です。烏間先生はドアノブの違和感からトラップを仕掛けていることを見越して開けた後に対処しただけです。今回は爆薬でしたので爆風と同じ速度で後ろ受け身をとっていましたね。ドアも盾になり爆風が届かなかったということです」

 

……すごすぎる。

1秒にも満たない間にその判断と行動をやるなんて。

 

「武偵高の人が⁉」

 

原さんが指差すモニターには曲がり角で立ち止まるレキさんと大量の銃弾。その先にはいたのは背中に銃を装備された5匹の犬だった。

 

「ドーベルマン⁉」

「死神が撃てるように調教したようですね。アレだけの数を仕込むなんて……死神の手腕ですねぇ」

 

レキさんはどうするのかと見ていると、ただ一言

 

『私は1発の銃弾』

 

と言って、引き金を3回引いただけだった。

撃たれたと思ったドーベルマンを見ると、何も起きてない。

 

「もしかして外した?」

「いえ、当たっています。先生も驚きました、まさかあんな技が使えるなんてさすがSランクですね」

 

不破さんの言葉に殺せんせーが首を振ると同時にモニターに映るドーベルマンがその場に5匹全部が倒れた。

レキさんは倒れたドーベルマンと目を合わせるとそれぞれを一撫でして、そのまま奥の扉へと消えていった。

 

「ねえ殺せんせー今度は何が起きたの?」

「レキさんは銃弾を脊椎と胸椎の中間を銃弾で掠めて瞬間的に圧迫させたのですよ矢田さん」

 

そう言いながら先生は矢田さんのちょうど首の付け根を指す。

 

「ここを圧迫されると脊髄神経がマヒし首から下が動かなくなるんです。それを彼女は2発の銃弾を壁やドーベルマンの銃で反射させて5匹全部にやって、おまけにドーベルマンも屈服させていましたね」

「え、でも引き金を3回引いていなかった?」

「最後の1発はトラップがあっても大丈夫なようにドアノブを破壊するために撃っていました」

「なんだよあのロボットみてーな女……それに烏間先生を見てみろよ」

 

寺坂君がボヤキながら顎で指す先には次のトラップであろう鉄骨を受け止め、飛んでくるボーガンの矢を掴んでいた烏間先生。

 

「笑ってる……」

 

こんな状況なのに烏間先生は笑みを浮かべている。

そういえば烏間先生が笑っている時の大半は、戦闘中……人を襲っている時ばかりだ。

 

「普段は強い理性で抑えていますが、烏間先生の真価はその奥に潜む暴力的な野生です。彼もまたこの暗殺教室に引き寄せられた比類なき猛者。そしてレキさん……恐らく暗殺教室と言うよりも彼か彼女、もしくはイロカネに引き寄せられている。アレはまだ開発者自身も気づいていないはずなのに」

 

最後の方は声が小さく聞き取れなかったけど、殺せんせーの顔は今まで見たことがないほど真面目なモノだった。

 

「殺せんせー?」

「何でもないですよ渚君。さて、死神も含め彼らは強い。皆さんはどうしますか?彼らには敵わないと諦めますか?」

 

それは違う。僕たちの戦い方それは……

 

「ここにいたらキンジ君もきっとこの言葉を言いますよ『諦めるな。武偵は決して諦めるな』ってね。弱いなら弱いなりの戦法があります。いつもやってる発想で戦うだけです」

 

そうだ、僕たちだってやり方次第で死神に一撃入れる事ができるはず。

それに今も諦めずにキンジ君は頑張っているんだ、僕たちだって。

殺せんせーの言葉に自然と僕たちはモニターの1つを見る。

そこに映っているのは…………

 

 

 

~キンジside~

「修正、いい加減諦めなさい。遠山キンジ」

 

そう言って、何回目になるか数を数えるのもバカらしくなるほど繰り返した攻撃が再び始まった。

 

「くっ‼」

 

首めがけて振るわれる剣をギリギリしゃがむことによって避けると、そこに元本体から撃たれた銃弾が飛んでくる。

 

――ガキン‼

 

飛んできた銃弾を近くに転がっていたナイフで切ることによって防ぐ。

律は俺がナイフを振り下ろした瞬間を狙い突きを。

それに対してムリな体制で避けると同時にカウンターの蹴りを狙ったが、避けきれずに俺の頬に一筋の赤い線が走る。

 

殺せんせーが狙われた時もそうだったが、理詰めに追いつめられるせいでどんどん避けきれなくなる。

しかも前と違って今は近接と遠距離両方だ、律1人なのに複数人相手にしてるようで非常に厄介だ。

 

「これでも追い詰められませんか、修正入ります」

 

律は抑揚のない声でそう言うと再び構える。

だがその顔は声に反して先ほどから変わらず今にも泣きそうな顔だった。

先ほどから律はやってることと表情がちぐはぐだ。

死神は元々律はこっち側だと言ってたが、律自身からは聞いていない。

もしかしたら無理やり従っているという可能性もある。

 

腹をくくるか。

 

決心した俺は手にしていたナイフを捨てて、律の攻撃に備えて構える。

 

「修正終了。遠山キンジを殺す確率80%」

 

剣を構えた律が上段から袈裟切りをするように振り下ろしてくる。

今の俺は無手だ。律に聞きたい事もあるため、一度律の行動を抑える必要もある。

 

さあ……いくぞ‼

 

イメージは俺達のナイフでの攻撃を布越しに触手で防ぐ殺せんせーの姿。

振り下ろされる剣を挟むように手を広げる。

 

――――バチッ‼

 

俺に振られた剣は合掌するように閉じた手に収まっている。

『真剣白羽取り』実際にやっているのは殺せんせー以外見たことなかったが、俺でもなんとかできたな。

 

「それで止めれたと思っているのですか?」

 

――バスッバスッバスッ!

 

俺の背中に銃弾が当たり、続けて灼熱のような熱さを背中から感じた。

装甲貫通弾か……クソッ武偵高の制服もこれじゃあ意味ないな。

 

「ッ‼ 律、俺が銃弾程度で止まると思うなよ」

「……なぜ避けないのですか?」

「そんな泣きそうな顔を浮かべる女の子をいつまでも放置するわけにはいかないからな」

「泣きそう? 私がですか?」

 

律、まさか気づいてなかったのか?

 

「ああ、今にも泣きそうな顔をしてるよ」

「……そんなわけない。私はロボットです。ただ忠実に命令に従うだけのロボットであればいいのです」

「律、お前は感情が知りたいって言ってたじゃないか」

「私はロボット。AIに感情なんて気持ちなんていらないです」

「律‼」

「胸に幻痛を確認。……原因を遠山金次と判断」

 

――ガスッ!

 

律は俺に蹴りを入れて、最初に見た『雷光』の構えを取っていた。

 

「エラー、体の一部に拒否反応を確認。エラーを無視して攻撃に移ります。遠山金次の行動をシミレーション、殺せる確率を99%と判断」

 

天真爛漫に俺を振り回していた律。

感情を知ろうと、俺達E組ともっと一緒にいたいからと言って今の体を手に入れた律。

半場強制的に一緒に暮らすことになったが、今ではもういるのが当たり前の存在になっていた。

その律が今、感情を否定しひとつのロボットで良いと言った。

誰だ、そんなことを律に強要させたのは。

律はそんな事を今までは望んでいなかった。

誰だ、今までの律を俺から奪ったのは‼

原因は分かっている。アイツ以外考えられない。

 

「……死神、てめえだけは許さねぇ。凛香だけじゃない、律に……家族同然のヤツまで!」

 

律によって消されたどす黒い血流が再び巡ってくる。

さっきもそうだがヒステリアモードには、どうやら性的興奮以外にもトリガーがあるみたいだ。

律はこれを『狂戦士(ベルセ)』って呼んでいた。なら言葉通り力任せにお前を止めてやるよ。

 

「どうせ聞いてんだろ死神。宣言してやる。お前が律の所有者だと言い張るなら凛香共々、お前から奪ってやるよ!」

 

律が『雷光』を撃つために一足飛びで俺の前に出てきた。

マッハ1を超えているため、単純に防ぐことはできない。

なら……

まず俺は胸椎、肩、肘、手首だけでマッハ1に到達させる。これではまだ律の勢いは殺せない為、同時に足、膝、骨盤、腰椎でさらにマッハ1を作る。

これでマッハ2、律を超えた。後は律の『雷光』を止めるだけだ。

 

(『多段橘花‼』)

 

桜花とは逆ベクトルに放つことによって、減速防御する『橘花』をマッハ2でやる。

それでも単純に律の拳は重く、それは足元に秋水を放って衝撃を全て逃がした。

 

「ありえません。避けるどころか受け止めるなんて……」

 

目の前には俺に拳を突き出して、驚きの顔を浮かべる律がいた。

 

「不可能に近い殺せんせーを暗殺しようとしてんだ。1%も防げる確率がある攻撃を防げないわけないだろう?」

「……平賀さんも言ってましたね。『Nothing is impossible』あなたは私の予想を軽々と超えていくんですね」

「俺だけじゃない。今度は律の番だ。改めて聞くぞ、お前はどうしたいんだ?」

 

そう聞くと、律の表情は暗くなる。

こんな表情を浮かべる律を見て、俺は改めて確信する。

律には感情がある。あとはそれを自覚できるかどうかだ。

 

「私はただのAIです。ロボットなんですよ? 感情を聞くなんてナンセンスです」

「ロボットだから、AIだから感情がないなんて誰が決めた。E組の生徒なら、俺をサポートするって言った律なら、それぐらいの周りが言う『不可能』なんて、乗り越えてこい!」

 

律の拳を離し、抱きしめる。

血を流したせいで少し冷たくなってきた俺の体に律のぬくもりがジワジワと伝わってきた。

 

「……痛いんです。先ほどから心が痛いんです。私のせいで……死神に情報を渡したせいで皆さんが」

「まだ終わってない、俺達で助け出せばいいだけだ」

「それにキンジさんを傷つけました」

「これぐらいどうってことねーよ」

「痛いですよね? ごめんなさい……ごめんなさい、キンジさん」

 

それから律は堰を切ったように泣きはじめた。

俺は何も言わずに頭を撫でてやる。

通路ではごめんなさい、ごめんなさいと泣きながら謝る律の声だけがただただ響くのだった。

 

 

しばらく俺の胸で泣いていた律だったが、俺の傷が気になったのか名残惜しそうな顔をして俺の背中を止血してくれることになった。

 

「キンジさん、無線アプリを開いてください。皆さんに連絡が取れるはずです」

 

しばらくして泣き止んだ律に背中の傷を止血してもらっている間に現状の確認を取ろうとすると、律にそう提案された。

言われるがままにアプリを開いてみる。

 

『ザ――――プツッ』

「繋がったな。誰か聞こえ『キンジ君無事⁉』有希子?」

 

繋がったと思ったら、有希子が焦ったように早口で電話に出てきた。

なんか小さく、『先生のスマホなのに……』とか聞こえてくるが時間もあまりないはず、聞きたい事だけ聞こう。

 

「俺は無事だ。今は律に背中を止血してもらって、すぐに救出する。有希子たちの状況を教えてくれ」

『今は私達は地下の放水路に捕まってるよ。殺せんせーも捕まってる、死神は私たちもまとめて殺すみたい』

 

夏休みに鷹岡が使おうとした手と一緒か……

 

「烏間先生は?」

『武偵高の人と一緒に死神を止めるのに操作室に向かってる。あと死神は殺せんせーを殺した後に速水さんを連れて海外へ行くつもり』

「…………」

『私達も私達なりに死神に一撃食らわせるつもり、だからキンジ君お願いね』

 

言葉にはしなかったが『私達を信じて、速水さんを先に助けてあげて』と有希子が言ってるのが分かった。

こうまで言われたら断れないな。

 

「律、方針は決まった。止血はうまくいったか?」

「はい、医療用のホッチキスを作って傷は塞ぎました」

「よし、なら行くぞ。凛香を先に救出して、その後烏間先生達と合流だ」

「……キンジさん。私自身が言うのも変ですが、先ほどまで私は敵だったんですよ。また敵に寝返るとかの心配はしないんですか?」

 

何バカな事を言ってんだ?

 

「他の誰かだったらともかく、律だから心配してないんだよ。おはようからおやすみまでしっかり俺をサポートしてくれんだろ?」

 

いつか言われた言葉を律に言ってやると、律は驚いたように目を見開かせると何が可笑しかったのかクスクスと笑い始めた

 

「……Jeg vet ikke følelser.(私は感情を知りません。)

Men(ですが)Men det er på skuldrene (、あなたの傍にいると)og jeg pakket en varm følelse.(私は幸せな気持ちに包まれます。)

Du ønsker (あなたがいないと)ikke å gråte det vil.(、泣きたくなってしまいます。)

Hvis dette er (これが恋なら、)kjærlighet, hadde jeg møtt for (私は初めて会ったときから)første gang i kjærlighet med deg.(あなたに恋をしていました。)

Min alt(私の全て)fra topp til tå(頭の先からつま先まで、), alle (髪の毛全て)håret før du gir deg selv.(あなたに差し上げます。)

Så tilgi(だからいつまでも)meg å være rundt for alltid.(あなたのそばにいることを許してください。)

Mer fortelle behage meg en følelse.(もっと私に感情を教えてください。)

Jeg elsker deg, Kenji(愛しています。キンジさん)

 

俺の知らない言葉なため、何を言ったのかはわからない。

でもそれが律にとっていい方向へ向いたことは、その笑顔で分かった。

 

「キンジさんにとって私は必要ですか?」

「当たり前だろ、俺にはお前が必要なんだ。もう離れないでくれよ」

「はい!」

 

といつものように太陽のような明るい笑顔を俺に向けてくれるのだった。




次回、『会敵の時間』
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