哿の暗殺教室   作:翠色の風

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毎度おなじみ、不定期更新
一日一話安定して更新できていたあの頃が懐かしいです……


67弾 会敵の時間

律と共に凛香救出の為に移動を始めた。

 

「キンジさん。死神の目的は殺せんせーの暗殺と速水さんの拉致です。あの人は合理的に行動しようとするはずなので恐らく凛香さんはここにいるはずです」

 

そう言って律が俺のケータイに画像、ここの地図を表示させる。

そこにはマークが1つ。

それは死神が向かっているという操作室だった。

 

「律、おかしくないか? 有希子が言うにはヤツはそこに向かっているんだぞ?」

「操作室までにはたくさんの罠が仕掛けているのは監視カメラをハッキングして分かっています。ですが彼は一回も映ってないんです」

 

それはおかしい。

カメラに映らない事もだが、なぜわざわざ罠を仕掛けて時間を稼ごうとしている。

烏間先生と戦うのが嫌だという理由もあるかもしれないがそれはないはず。

俺の時の言動を見る限り、ヤツは戦闘狂のケがあった。

しかも強敵であればあるほど自分の力を試したくて仕方ないヤツだ。

そんなヤツなら烏間先生と会えば戦わないわけがない。

なら、罠を時間稼ぎ以外に使ったのなら?

そう、自分が戦うに値する人間か選別するために仕掛けていたら。

 

「おやおやバレたようだね」

 

死神の目的が分かったところで目の前に本人が出てきた。

 

「死神……」

「やあ、監視カメラで見ていたよ。まさかAIを口説くなんて思わなかったよ」

「お前に聞きたいことがある」

「いいよ。君との戦いは楽しめそうだしそのお礼に答えてあげるよ」

「まずお前の目的は殺せんせーの暗殺と凛香の拉致じゃないのか?」

「まあ、依頼だからね。最初はヤツを警戒してすぐに殺そうと思ったけど、何もしなくて監視する価値もないヤツだったからね。いつでも殺せるのなら烏間でコレを試してからでも遅くはないかなって思い直したんだよ」

 

そう言ってヤツは手の平に氷を作った。

白雪と瑠美さん以外では初めて見たが、ヤツも超能力者か……

自分は負けないと自信の表れなのか、俺に能力を見せてくる死神を観察しつつ俺は質問を続ける。

 

「じゃあ次だ。凛香はどこだ」

「彼女は大事な商品だからね。君たちの予想通り、僕と一緒に操作室にいるよ。これで質問は終わりかい?」

「いや、あとひとつだ。ヒステリアモードについてどこまで知っている」

「少なくとも君よりは知ってるね。まだ烏間は来なさそうだし、せっかくだから講義をしてあげよう。君が普段なってるのはヒステリア・ノルマーレ。女性を守るためのHSSだ。特徴は君も知ってるだろうから説明は省くよ。次に今なっているHSSだ。それはヒステリア・ベルセ、簡単に言えば女性を奪うHSSだ。条件は自分以外の男への嫉妬や憎悪。ノルマーレよりも戦闘力が上がる半面、思考は攻撃よりになるのが特徴だね」

 

僕好みの相手だよ。と一言付け加えて、俺に説明してくる。

なるほど、鷹岡の時にも一度性的興奮をせずにヒステリアモードになったことがあったがコレだったのか。

 

「そして最後にヒステリア・レガルメンテ。残念ながらこれは僕もあまり知らないんだ、知ってるのはベルセを複数回経験したらなるってことだけだね」

「お前は物足りないって言ったよな。あれはレガルメンテじゃないって判断したからか?」

「あれは仮にレガルメンテだったとしても、AIすら倒せないと判断したからだよ」

 

コイツ自身も大雑把にしか判断してないみたいだな。

聞きだせるのはこれぐらいか。

 

「そうか、俺からの質問は終わりだ」

「そうかい、ならはやく僕の所に来なよ。君がどんな風に戦うか今から楽しみだよ。それに早く来たら面白いものが見れるかもしれないからさ」

 

そう言うなり死神は体を氷の粒に変え消えた。

本物とは思わなかったが、氷で分身なんて超能力者ってめちゃくちゃだな。

 

「キンジさん急ぎましょう。操作室までの道のりは私が案内します」

「ああ、頼む律」

 

アイツの面白いは碌なもんじゃないのは目に見えている。

俺と律はより一層スピードを上げ、操作室へと向かった。

 

 

~烏間side~

 

鎖、火炎放射、ナイフなど罠がこれでもかと張り巡らされるがどれも容易に突破できるものばかりだった。

これぐらいだったらSランクのレキ君も大丈夫なはずだな。

そう思いながら、また一つトラップを潜り抜けると立坑が見えてくる。

これがあの牢獄に続く立坑なら……

 

「この先が操作室か」

「やあ、待ってたよ烏間先生」

「追いついたぞ死神。よくもまあ多彩な罠を仕掛けたもんだな」

「身につけたモノを試したくなるのが殺し屋の性だろ?」

 

……こんな自分の手札を公開する奴がホントにあの死神なのか?

 

――ズギュン‼

 

死神に気を取られていると、俺の頬に何かが掠った。

死神以外の敵なんて一人しか浮かばない。

どうやら追いつかれたようだな。

 

「イリーナ、撃つならちゃんと当てなよ」

「ごめんなさい。次はちゃんと当てるわ」

 

()()()()()()()()()()()()

俺は迷わずに銃口を殺しやすいイリーナに合わせ、かつての仲間なこともあって最後の警告を告げる。

 

「俺との実力差は分かってるんだろ? 死ぬぞ?」

「死ぬなんて殺し屋をやってる時点で覚悟はできてるわ。日本なんて平和な国に住んでるアンタには理解できないと思うけど」

 

その言葉はまるで公安0課を、遺体すらも見つからなかった先輩を汚されたように思え、無意識に銃を持つ手に力が入る。

 

「……」ギリッ

「彼は理解ってくれたわ。『僕と君は同じだ』って言ってくれたもの」

 

イリーナについては本人とロブロからある程度の事は聞いている。

死神に『同じってどういうことだ』という意味を込めて視線を送ると、ヤツは理解できたのか口を開き始めた。

 

「なに、僕は昔語りをしただけだよ。テロが絶えないスラムに産まれ、命なんてすぐ消える理不尽な世界。信じられるのは金と己が技術。そして『殺せば人が死ぬ』という事実だけ。だが残念だ烏間、君は失格だ」

 

 

どういうことだと言おうとすると、――ドォン!と天井が音をたてて落ちてきた。

 

「なっ……」

「かつての仲間だからって殺すのを躊躇うなんてダメだよ。仲間なんて、こうやって捨て駒のように使うモノなのだからさ。さて遠山君もまだ来ないみたいだし……そうだね暇つぶしにあのタコでも先に殺そうか」

「おい、待て!」

 

瓦礫でふさがりつつある入り口に向かい叫ぶも返ってくるのは遠のいていく足音だけだった。

 

 

 

数秒で落ち切った天井、幸いにも瓦礫の隙間に潜り込めたため何ともなかった。

しかし操作室へ繋がる道は塞がれ、近くにいたイリーナは瓦礫に埋まっている。

 

(あれではすぐに助け出さなければ危ない、だがそれだと何もかも手遅れになってしまう……)

 

1人を救うか、27人を救うか。迷うまでもなかった。

手早く判断し行動に移そうとするとポケットに入れていたスマホからヤツの声が聞こえてくる。

 

『モニターを見ていたら爆発したように見えましたが大丈夫ですか⁉烏間先生、イリーナ先生!』

「あいつは瓦礫の下敷きだが俺は平気だ」

『ッ⁉』

「だが構っている暇はない。すぐに道を塞ぐ瓦礫をどかして死神を追う」

 

コイツより生徒のほうが大事だ。

両方を助けるのは無理だ。なら優先度が低い方を見捨てる以外ない。

 

『ダメ!どうして助けないの烏間先生‼』

「倉橋さん……彼女なりの結果を求めて、彼女は死神と手を組んだ。その結果はどうであれ一人前のプロを名乗るなら自己責任だ」

『プロだとかどうでも良いよ!ビッチ先生まだ20歳だよ⁉』

『うん、経験豊富な大人なのにちょいちょい私達より子供っぽいよね』

 

倉橋さんに同意するように少し遠くの方からだろう、矢田さんの声が小さくだが聞こえてきた。

 

『たぶん安心の無い環境で育ったから、ビッチ先生はさ大人の欠片を大人になる途中でいくつか拾い忘れたんだよ。だからビッチ先生の事も私達が間違えた時に許してくれたように助けてあげてよ……』

「……だがそれだと君たちが」

「烏間先生、時間なら俺達が稼ぐ」

 

それはスマホからではなく塞がった入り口から聞こえてきた。

 

「遠山君なのか⁉」

「はい、俺以外にも律とレキがいます。そちらの事は有希子から聞きました。大丈夫です、烏間先生がイリーナ先生を助ける時間ぐらいは俺達で作れます」

『それに私達だってただ見てるだけじゃないですよ。死神は多分何もできませんから』

 

遠山君に続くように神崎さんの声が聞こえてきた。

 

「それに烏間先生は父さんの部下だったんですよね? 父さんのよく言っていた言葉覚えていますか?」

 

金叉先輩の言葉か……

アレを初めて聞いたのは俺が0課に入ってすぐだったよな。

 

『お前が烏間か、今日からお前の教育係兼バディを組む遠山金叉だ。不躾に聞くが、お前は30人がいる船と10人がいる船どちらかしか助けれないならどうする?』

『まあ、俺たち0課なら普通はそうだよな。なら10人の方に身内がいたらどうだ?』

『何?俺ならどうするかだって? んなもん決まってる。なりふり構わず両方救うさ。あ?ズルイってか、けどなこの職についてたらもっとひどい理不尽にあうこともあるんだぞ。そんなとき妥協ができたら楽だが、そんなもん後々後悔するだけだ。人間に不可能な事なんてない。それをお前にみっちり教えてやる。俺とバディ組むなら、無理、疲れた、めんどくさいは禁止だからな』

 

そうだ諦める必要なんてなかった。

あの人がいたら無理だと諦めた俺を殴ってそうだ。

まざまざと想像できる姿に思わず苦笑を浮かべてしまう。

 

「……忘れるわけないだろう。コイツを助けてすぐに追いつく」

「ええ、分かりました。ではいってきます」

 

どうやら俺も焼きが回ったらしい、あれだけ目指していた人の言葉を忘れていたなんてな。

 

「か……らす……ま?」

「はやく出てこい。俺は生徒ほど器は大きくなかった。金叉先輩みたいに全て背負えるほど強くもない。だがお前の重み半分なら背負ってやれる。頼りないとは思うが、辛かったら俺を頼れ」

 

金叉先輩、今からでも俺はあなたみたいになれますかね?

 




次話、対死神決着…………までできたらいいなぁ
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