突然の暗殺の提案、シロとのつながり、過去の殺せんせーとの因縁、そして首から延びる触手。
茅野には聞きたいことがたくさんあった。
だが、あまりにも予想外の事が起き、呆然としてしまう。
「キンジ君、君の答えはどっちかな?」
「その前に聞きたい。本当に殺せんせーがやったのか?」
茅野に関しての驚愕のおかげか、シロからの情報によって激昂していた頭も幾分か冷静になれり、改めて茅野に問う。
これが潜入当初なら素直に信じたのだろう。
だが、アレと知り合って約8ヶ月、過去には偽物も出ている。
俺がここに来たのも、シロの写真に対しての事の真相を確かめるためだ。
「……私のお姉ちゃんが殺された時に、血を弄ぶ殺せんせーを見たわ。そしてこの教室で教師をしてもいいって書置きがあったわ。それだけで証拠は十分でしょ」
確かに状況証拠としてはあっている。
じゃあ兄さんの時は?
証拠はシロに手渡された写真のみ。
しかもシロは偽物を使った事もあるんだぞ。
茅野の話と写真に写る超生物としての殺せんせー
俺達と過ごした教師としての殺せんせー
本当の姿はどっちなんだ。
「……キンジ君」
不意に茅野に声をかけられ、顔をあげると……
俺の口は茅野の
――プスッ
ドクン、ドクンと血流が集まってくるのが分かり、続いて首のつけねから何かが侵入してくるのがわかった。
『ほう、懐かしい。大嶽丸と同じものを感じるな。まあ、性格は俺好みじゃないみたいだがな』
頭の奥から聞いたこともない女の声が聞こえてくる。
誰だ、お前は?
『俺か?巫女どもには神と崇められているが、今は触手だ。そうだな、かつての人共に言われた名を語ろう。かつて京に向け緋き者を率いた首領、『
それでお前は俺をどうする気だ。
『くくっお前の望みを聞いてやろうと思ってな。お前はどうしたい、何になりたいんだ?』
何になりたいだと?
そんなもんねえよ。
『……?ああ、そうか。かつての夢に失望したばっかだったな』
ああ、そうだよ。
兄さんや父さんみたいになんてなりたくない。
俺はもう正義の味方なんてもんは目指さねぇんだ。
だからこれ以上、望みなんて聞いてくんな。
『ははっ、そうかそうか。それは悪かった。詫びと言ってはなんだが、良い事を教えてやるよ』
良い事?
『ああ、お前にとっていい情報だ。お前の兄と目の前の女の姉の死体の近くにあのタコはいたぞ』
はあ⁉
なんで触手のお前がそれをわかんだよ‼
『触手だから分かるんだよ。俺は一にして全、全にして一だからな。教えてやるよ、あのタコの事を、触手の事を』
そう言って自身の共有能力、そして殺せんせーの事を語る朱天。
確かにこの朱天の、触手の能力が本当なら殺せんせーが兄さんと茅野の姉を殺した信憑性が増す。
だが、それでも……俺が尊敬し、俺の体質を知られてもそれでも信頼した殺せんせーが……
『ああ、もうめんどくせいな。ならこれでどうだ』
なんだ、何をする気だ⁉
頭に激痛が走ると同時にナニカが頭の中を駆け巡る。
『お前の兄は事件も防げない無能だ』
『でもお前は兄が無能じゃないことを知っている』
『じゃあ、なんで兄は無能と呼ばれるんだ?』
『決まっている。事件を起こしたヤツのせいだ』
『その奴は?』
『殺せんせーだろ。証拠もあるのに疑う余地もない』
――兄さんを殺したのは……
濁流のように流れてくる感情は身近に感じるものだった。
殺意、殺意、殺意、殺意、殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意サツイサツイサツイサツイサツイサツイサツイサツイサツイサツイサツイサツイサツイサツイサツイサツイサツイサツイサツイサツイサツイサツイサツイサツイサツイサツイサツイサツイサツイサツイサツイサツイサツイサツイサツイサツイサツイサツイサツイ
ああ、そうか。
兄さんが死んだのも、父さんが死んだのも、正義の味方が認められないのも
全部、殺せんせーのせいなんだ。
『ああ、そうだ。全部ヤツのせいだ。それを踏まえてもう一度聞くぞキンジ。お前は何になりたい?』
ああ、そんなの決まっている。
『
兄さんは死んだ。
なら、その原因にも同じ
『くくッはははは。そうだ愛と憎しみは表裏一体、愛が深いほど憎しみは増す。そして憎しみと戦は切っても切れない縁を持つ。さあ、俺を受け入れろ』
そして俺という人格は塗りつぶされる。
――赤く、朱く、緋かく
触手と俺が交じり合う。
俺が触手で、触手が俺。
俺は果たして
だが目的だけはハッキリとしている。
――あの超生物を殺す。
その為には何でも利用する。
それが女であれ、この体質であれだ。
それこそが
「さきに言っておくね。ごめん、お姉ちゃんの近くに落ちてた3色の触手の種のうちの一つを使ったわ。残りの蒼も君にあげる。君が活躍するときのあの性格が演技じゃないのは気づいていたわ。君は二重人格なんでしょ?
トリガーに関しても君は必要以上に異性を遠ざけていたから予想はついていたわ。こうすれば君は女の子いうことを聞くって。ホントは誰も巻き込みたくなかった。それでも私は止まれない、止まっちゃいけない。この暗殺が終わって……君が生きていたら私の全てをあげる。だから私に協力して」
ああ、むしろ好都合だ。
お前が俺を利用するなら、俺も存分に活用してやるよ、茅野カエデ。
緋色の触手を首から伸ばし、謝罪してきた茅野に俺は口を開く。
「ああ、報酬はお前自身だ。それで協力してやるよ、この
さあ、大好きな戦の始まりだ。
次話は、この話の少し前から始まります