「律!!」
装備が半壊して煙を上げている律へ私と有希子、それに殺せんせーが近づく。
他の皆、キンジを刺激しないようにするのと茅野の保護に少し離れた場所で私たちを見守っている。
「遅すぎです。せっかくのPADがボロボロじゃないですか。作戦は大丈夫なんですか?」
「うん、だからもうそれは大丈夫だよ」
「ちっ、茅野のやつ負けるどころか触手を抜かれてるじゃねーか」
有希子の言葉に装備を外した律を見て、キンジが構えを解き呆れるようにこちらを見てきた。
あきらかにこちらを下に見る姿は、本当にキンジなのかと疑ってしまう。
だがそんな私の心情などお構い無しに、続けてキンジが口を開いた。
「で、覚悟は決まったかタコ」
「ええ、茅野さんは無事に救えました。今度は君を救う番です」
キンジからすれば挑発にも聞こえる殺せんせーの発言。
それを示すようにキンジがイラつくように舌打ちをしている。
そして殺せんせーが私たちより1歩前に出た。
それに合わせてキンジも拳を握りしめる。
「そうか。俺は茅野と違ってあんたが死ねば救われる。だから大人しく死ね」
「いいえ。君には伝えないといけないことがあります。だから耳を傾けてください」
「お願いキンジ、聞いて!!」
「うるせぇ!」
キンジが殺せんせー目掛けて拳を振るのと、次に出た私の言葉はほぼ同時だった。
「いちにぃは生きてる!!」
「ッ!?」
キンジの拳はちょうど1つ分の隙間をつくって止まる。
「……凛香、あの写真を見てまだ言うのか?これ以上妄言を吐くならその口が開かないようにするぞ」
過去に見たことがないほど殺気を込めて睨みつけるキンジに一瞬怯む。
けど拳は止まった。このチャンスでキンジを止めなければ全て無駄になる!!
そう思った私は先程殺せんせー達と話した1つの答えを口にした。
「キンジ、私は貴方に写真を見せられて1つ気になったことがあるわ」
そう、あの写真を見せられて違和感を感じたの1人の人物だった。
「私が電話をしたのは、いちにぃ……ううん『遠山金一』じゃないの。『遠山カナ』だったわ」
「ッ!?」
キンジが目を見開いてこちらを見るが、私はそれに反応せず導き出した真実を話す。
「キンジも知っているだろうけど、カナねぇになれば数週間はそのままよね。ましてや、任務中にいちにぃに戻るなんてそんなのはありえない。そうなったらいちにぃは寝て、任務どころではないわ」
そうキンジに言った通り、いちにぃこと『遠山金一』はヒステリアモードに1度なると遠山カナとしてヒステリアモードのまま数週間はそのままで過ごすのだ。
だがその代償にヒステリアモードが解けると何日も眠ったままなのである。
だからこそ、あの写真はおかしかったのだ。
あの写真が本物なら倒れてるのは女装した遠山金一のはずなのに、あの写真では倒れているのは女装前の姿なのだ。
そんな写真だからこそ、殺せんせーの言葉は信憑性がましたのだ。
「キンジ君、君は否定すると思いますがはっきりと言います。私は女装した貴方のお兄さんに悪の組織にスカウトされ戦ったのです」
「…………」
キンジは何も答えない。
いや、頭が混乱しているのだろう。
あのいちにぃが、そんな事をしていたのだ。
私は今のキンジのように混乱し1周回って冷静になっているが、これが普段なら今のキンジみたいな感情が抜けた顔をしているだろう。
「キンジ君に結果だけ言っても納得はしないでしょう。だから初めから説明しますね」
そう言って殺せんせーが口を開く。
初めはたまたま商店街の福引で当たった豪華客船でのディナーパーティー。
殺せんせー曰くこの時点で仕組まれていたらしいのだが、それにほいほいと乗った殺せんせーはパーティーの終わりに接触されたらしい。
それは2つの悪の組織。
詳しいことをは省かれたが、学園祭での私たち同様殺せんせーに価値を見出した組織がテロを装って接触してきたそうだ。
まだ信じられないが、その片割れにいちにぃは参入していたらしい。
殺せんせーがその事に気づいたのは偽の遠山金一の死体の違和感だった。
持ち上げた時の体重や体脂肪率が一月で大きく変わっていたらしいのだ。
なぜそれに気づいたかというと、どうやら殺せんせーは他人の足音から体重や体脂肪率などの情報を知る技術を身につけているらしい。
もちろん、私含めE組の女子は殺せんせーからすぐさま距離を離した。
っと話が逸れた。
それで殺せんせーはまるで女子のような体脂肪率のいちにぃを見たあと、襲ってきたかなねぇが学園祭でのいちにぃと同じ重さや体脂肪率で確信したらしい。
そしてかなねぇにその事を問うたが、返ってきたのは鎌の斬撃だけだったらしい。
「ウソだ……」
「いいえ、本当です。先程速水さんに確認しましたが、君にも聞きましょう。先生が襲われてたのはこの女性です」
殺せんせーの触手が糸のように細くなり、複雑に絡み合うと1人の女性の姿が現れる。
その人物は私やキンジがよく知る人物に間違いなかった。
「ウソだ……ありえない!!兄さんが悪に与するなんて信じられるか!!」
キンジが頭を抱えながら叫ぶ。
それでも殺せんせーの口は止まらない。
「彼が何のために組織に入ったかは分かりません。ですがはっきりと言います。あなたの仇討ちは無意味です」
「兄さんが……兄さんが……」
「キンジ!!」
頭をおさえながら、その場にうずくまるキンジに私は思わず駆け寄ろうとするもそれは殺せんせーによって止められた。
「速水さん。ここからが勝負どころです、ですから決して私より前に出ないでください。下手をすれば……」
死にかねない。
今まで以上に真剣な声音で言った殺せんせー。
だが、その言葉よりも次に発した言葉にこの場にいたキンジと殺せんせー以外が固まる事になる。
「そうでしょう?お兄さんが組織に組みしたと話した時点でキンジ君の意識がないのは私は分かっているのです。今すぐにキンジ君の真似をするのはやめなさい。『緋緋色金』」
「……きひ。1人ぐらいは殺してもっと楽しい殺し合いが始めれるかと思ったが、俺がいるお前がいたら騙されないか。なあ、俺たち3柱を取り込んだ『
私たちの悪夢はまだ終わらない。