魔法科高校の超絶優等生   作:ぶるーちーづ

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ども、ぶるーちーづです。東レに続き好きな作品、劣等生のssです。


入学

四葉達也

 

天才的な魔法師として、その名前を轟かせる彼は、十師族が一つ四葉家の次期当主候補筆頭でもある。しかし、彼を作り上げてきたその歴史や経験、そして、生まれてきた経緯を知るものは微々たるものである。

 

彼は、生まれた頃から二つの魔法を持っていた。「分解」そして「再成」魔法と呼ぶのもおこがましいこの二つの奇跡は膨大な演算領域を必要とし、一般人なら一つ持つのすら出来ないこともあるほどである。しかし、彼は、規格外だった。なんと、この二つの「奇跡」をもってしても余りある演算領域をその身に宿していたのだ。

 

悲しみ深い経験をした姉妹のその二人の願いを二つとも叶えたその身は、彼女たちの架け橋となりその仲を復興させると共に溺愛の対象ともなった。それと同時に四葉家の当主としての教育もまた行われた。魔法の訓練はもちろんのこと、一般教養、礼儀作法に戦闘訓練。小学生で既にひとの命を奪うという経験すらしている。そう、彼は、「希望」であると共に「兵器」でもあった 。

 

悪魔のごとき分解魔法に加え、不屈不変ほぼ不死を叶える再成魔法、さらに、有り余る演算領域を使った危険度A相当の魔法の数々にそれらを可能にする魔法力、サイオン。すべてにおいて規格外だった才能が努力により兵器へと変貌したのだった。高校入学前をもって既に四葉家内でも最強の名をまた、「最凶」の名を欲しいままにし、世界的にみてもその実力は上から数えた方が良いとさえ言われていた。その「優秀すぎる」を「優秀である」に変え、他家ーーー十師族や百家の目を欺くため、そしてなによりーーー可能性は小さいと思うがーーー四葉家への反逆を企てたときの「枷」として、はたまた、ガーディアンとして四葉家最高傑作の調整体魔法師を置いた。それぐらいでないと、達也にとって邪魔にしかならないというのもまた理由の一つではあるが、その者の名前を「司波深雪」完全調整体ゆえに、ほぼ左右対象の体を持ち、人間とは思えないほどの美貌と彼女もまた規格外のサイオンと魔法の才能を兼ね備えた者だった。彼女は達也の誕生とほぼ同時に作成され、その人生のほとんどを達也の隣で過ごしている。故に、とある姉妹から嫉妬の雨を降らされているのはまた別の話ではあるが、彼女らや、また、彼女を含め、みなが達也の魔法に命を救われた身でもある。

 

達也が救ったのは彼女らだけではない、多くの兵士たちもまた同じように彼に命を救われている。大黒竜也特尉、それが、独立魔装大隊での達也の別名である。味方にしたら神のように崇められ、敵からみると悪魔にしか見えない、そんな風に戦場を闊歩する様子から様々な二つ名が彼に付いている。それだけではない、特化型CADソフトウェアを僅か一年の間に十年は進歩させたと言われる「トーラス・シルバー」その片割れという仮面ももっている。四葉家の次期当主であるということ以外はすべてにおいて軍事機密であるゆえに、知るものはこれもまた少ない。

 

そんな彼、四葉達也は、今春国立魔法大学付属第一高校の新入生総代として入学することが決まっている。一人の魔法師として、はたまた技術者として他を寄せ付けないほどの努力と才能をもった一人の少年が自分達の中にいることを他の生徒は知らない、それを知るのはたった一人、司波深雪のみである。四葉家が地図にも載っていない秘匿された所に在るゆえ、同じ高校に通う二人は必然的に一緒に住むことになった。四葉のガーディアンと言えば、その筋に関わっている人間ならみな知っている。人間扱いせず道具の様に扱うものもあれば、婚約者として、近くに置いておくものもいる。彼の場合は、どちらかというと後者に近い。言うなれば、前者ではないというものだろうか。彼は、ガーディアンを、司波深雪を「妹」のように扱った。最初こそ意見が多数出たものの、次期当主である達也の考えであることとその母親姉妹が認めたことでその扱いに否を唱える者は居なくなった。それが決定して以降深雪は、達也を「お兄様」と呼び慕い、達也は「深雪」と下の名前で呼び仲良く過ごしている。

 

これから始まるのは、彼を一人の「男」と慕う女の子と、彼女を「妹」として扱う青年の物語である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

総代は、スピーチのため入学式当日早く登校する必要があった。この学校には、一科生と二科生と生徒が二手(ふたて)に分かれており、それは実力で分けられる。一科生は、その制服に花の模様が刻まれていることからブルームと、逆に二科生にはそれがないことからウィードと蔑まれている。達也がこれを知ったときたった一言「下らない」と心で呟いただけで、何も言わなかった。科で分けられた理由も大変くだらないものなのでそのとおりなのだが。

 

 達也がスピーチのために早く来ると言うことは、当然ながらそのガーディアンである深雪も同じ時間に来ることになる。早い、とは言うものの二人が到着したときには、肩に花の模様が描かれた制服を身にまとった生徒たちがちらほらと既に来ていた。その中で、一際目立つ美少女が、まるで告白のシーンのような雰囲気醸し出しながら、男性ーーーこちらは、随分と大人びて見えるーーーに話しかけていた。

 

 

 

「お兄様、大変心苦しいのですが……」

 

「構わないよ。これは学校の決まりだ」

 

 

 それに、と少年の方が続ける。少女は今にも泣きそうな目をしている。

 

 

「そんなところまで、女の子についてきてもらうなんて、気の弱いダメ男みたいじゃないか」

 

「そんなっ!お兄様は、ダメなんかじゃありません!素晴らしい……その……殿方……です」

 

 

 ぽっと顔を赤くしながら少女ーーー深雪は答えた。その表情は恋する乙女そのものである。これは、達也には打ち明けていないことだが、彼女は既にガーディアンとして以外の意味で彼の隣にいること望み始めていた。

 

 

「あぁ、ありがとう。ほら、お前があまりにも魅力的な表情をするからこんなに人が集まって来てしまったよ?」

 

 

 見ると、二人の周りには、たくさんの人だかりができていた。中には、腕にCADを携えた人も。この学校でCADの携帯が許されているのは、風紀委員か生徒会役員のみである。大方、新入生誘導をしている最中に、何の騒ぎか確かめようとしたところで、深雪に見とれてしまったとのだろう、と達也は予想した。中には、女の子もいるが深雪の美貌の前に性別は関係ない。

 

 

「お、お兄様!!お兄様も…その私のことを魅力的とお想いに?」

 

 

「もちろん。深雪は、魅力的な女の子だよ」

 

 

 

「まぁ!!」

 

 

 先程までのシリアス?な雰囲気はどこへ行ったのか、ピンク色の雰囲気に場が染まり始める。周りからはちらほらと拍手すら聞こえる。

 

「では、行ってくるよ」

 

「はい、いってらっしゃいませ」

 

 

 そう言い残して、達也が校舎に消える。達也の姿が見えなくなるまで深雪は微笑み続けていたが、その姿が消えた瞬間雰囲気が一転する。そこから発されるプレッシャーを前に今度もまた、誰も近寄らず周りにただ佇むだけとなった有象無象たち。深雪が歩き出すと同時に道ができるようにその周りを無意識に開けていた。普段の生活で、達也よりも深雪が人を惹きつけて達也を危険にさらすことが多かった。それゆえ、人を引きつけないという特殊な技を身につけていた。実は、達也が消えた瞬間なにも知らない生徒たちは、深雪に声を掛けようとしていたのだが、それも失敗におわっていた。

 

 実は、達也は一つ勘違いをしていた。達也は深雪の美貌に人が集まった、と思っていたが、なにもそれだけが理由ではない。達也が四葉家次期当主候補であることは知られている。そのため、というのもないわけではないのだ。

 

 

 

 

 

 一番前のちょうど真ん中という、スピーチをする達也に一番近い所に深雪が座って誰よりも座っている少女が目立つという奇妙な入学式がおわった。達也の話は、平等に生活しよう、という主旨の言葉が巧妙に混ぜられたものだった。誰よりも目立つ美少女が誰よりも大きな拍手をしていたのは言うまでもない。

 

 

 

 入学式が終わると、それぞれのクラスを確認して、教室を覗いてから帰るというのが彼ら新入生の本日の行動である。達也と深雪の二人もその例に漏れなかった。二人は同じAクラスであることを確認すると二人の教室に移動し始めた。達也の「二人一緒でよかったな」という台詞を曲解した深雪がバーストしたこともあったが…。

 

 その時であった、周りが妙に騒ぎ出したと思ったら、一人の女性とそれに付き添うように男性が二人に向かって歩いてきた。達也はその二人がCADを携帯していることを見抜いた。故に、その二人がおおよそ何者なのかの検討もつけた。初めに口を開いたのは黒髪の現代日本の女性の平均身長の推移から見ても小柄な方であると思われる女性の方だった。

 

 

「初めまして、第一高校生徒会長、七草真由美です」

 

 

七草、十師族の一つである。当然ながら達也とは初めまして、ではないが、便宜上そう言った。だが、達也は意地悪だった。もっと言えば人が悪い。

 

 

「あぁ、お久しぶりです。真由美さん」

 

 

お久しぶりです、というの言葉に加え、下の名前で呼ぶ。真由美は恥ずかしさで顔を赤くしつつ反論を述べた。

 

「もうっ!達也くん!」

 

 お互いに旧知であることを隠す気はないらしい。途端にお互いの従者の機嫌が悪くなる。深雪は、真由美にのみ重圧を掛けるように達也の後ろから睨んでいた。が、真由美もなれたもので、そのまま話を進めた。

 

 

「もういいわ、今更ね。達也くん、毎年新入生の総代には生徒会入りを進めているのだけれど……」

 

 

 一呼吸置いて、深雪をちらっと見る。そうしてから、真由美は続けた。

 

 

「深雪さんと一緒にどうかしら?トップの二人が入ってくれると心強いわ」

 

 

「それなら、俺は構いません。深雪は……」

 

「お兄様がいるなら私はどこまでもついて行きます」

 

 

 達也も、またそれに対する深雪の返答もほぼ即答だった。深雪は誰かしらにたいして攻撃するような言葉を選んでいっているのは間違いない。今はまだいいのだ、生徒会長として接しているから。そう言い聞かせて深雪は自分を抑えていた。

 

 

 それからは、特になにもなく一日が過ぎていった。達也と二人で校舎を回り、下校する。そんな当たり前のことが深雪にとって些細な幸せだった。しかし、それもここまで。

 

 

 深雪は自宅の前に立っていた。前には達也の姿がある。決意と敵意を新たにし、自宅へと踏み込む。

 

 

もう何度目か分からないお世話()()()()が始まる。

 

 

 




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