エイプリルフールは、午前中しか嘘をついちゃいけないらしいです。
しかし!!
この、一時間空き投稿は、ウソじゃないです。
「たっつやくーーーんっ!!」
紛れもなくハイテンションであると分かる声と共に達也へとほぼ全力で間違いないという速さで接近する影が一つ。
今日の必須の受業をおえ、部活の体験に向かった者や既に帰宅するため校外に向かっている者が増えたために、比較的静けさを取り戻した校舎にそんな声が響いた。
それを聞いた途端、達也がまずやったのは周囲の確認だ。あちら側も同様に確認を怠っていることはないだろうが、やっておかなければならないのは、これから起こるであろう事態を想像すれば間違いない。
深雪もその声の主を誰だと判別したのか、というか、そのせいで機嫌が直下である。周囲の温度が下がったように感じるのは、深雪の冷たい目によるものではなくーーーもしかしたらそれもあるかもしれないがーーー実際に温度が下がっている。
顔についた目以外の目で周囲の確認をし、ついでに、走ってきている者のことも確認しつつ、その襲撃に備える。
身構えようと、そちらを見ようとした瞬間、影が真の意味で影になる。要するに、一段と早くなった。こう言った緩急の使い方は、彼女の十八番だ。
既に繰り出されている右手を振り向きざまに手の甲ではたく。そこがいまだ校内であることが幸いして、本来なら武器との一体型CADがあるべきその手は、素手だった。
それを予想されていたかのように、今度は左足が脇腹に向かって来ていた。
達也は、弾いた右手を素早くつかみ、自らの方に無理やり引っ張る。そして、体に密着させることで蹴りを無力化した。
だが、残念。彼女の狙いは初めからその避け方にあった。
避けられた瞬間、空を切った左足はそのまま達也の腰にまわり、それに続いて、すぐさま右足も後を追った。
今は、足でがっちりとホールドされている状態だ。
さらに、追い打ちとばかりに、両腕を達也の首の後ろにまわし、平均より少しはあると少女が自負しているその胸へと顔を引き寄せた。
達也の腕力ならば、それを無理やり引きはがして放り投げることも可能だったであろうが、この程度の戯れにそこまでする必要があるのかと、考えるのが達也の常だ。
もしかしたら、そこまで見通してのこの襲撃なのかもしれない。
(だとしたら、やっぱり強敵だわ)
深雪の中で認定の上書きが行われた事など達也を含め他の誰もが知るよしなど無かった。
それはともあれ、
「ひっさしぶりだね!達也君!!」
赤髪短髪の少女ーーー千葉エリカは、達也に抱きつきながら、比較的大きな声でそう告げた。
「ちょっと、エリカ、なにをしてーーー」
「ーーーねぇねぇ達也君、放課後暇?」
「すまんな、放課後は、生徒会に呼ばれてるんだ。というかどいてくれ、暑苦しい」
まるで居ないかのように、深雪の台詞を無視したエリカは、達也の抗議にも耳を貸さず依然として、達也をユーカリの木と見立てたコアラ状態だ。離れる気がその口調からも感じられない。
「エリカ?私のーーーーー」
「ーーーーへーそーなんだ。まぁいいや、それってどれぐらいかかるの?」
「なんだ、待つ気なのか?すまんがどれくらいかかるか分からない。だから、帰っていいぞ。というか、恥ずかしくないのか?この状況、まぁいいから離れてくれ」
これまでのやりとりを見て分かるように、彼らは幼馴染みに近い存在である。
近いと言ったのは、そこまで幼い頃からの付き合いではないということだ。中学生の頃から、達也が千葉家の道場でお世話になりはじめたというだけだ。
当然、四葉の縁者である達也が千葉の道場に行くことには、反対されたし、その意味もないと周囲には思われた。
確かに、剣術の修行ということなら、四葉でもそれ相応の人物を用意できる。
しかし、達也の狙いはそんなことではなかった。
メキメキとその実力を上げていった達也に結局剣術のみで上回れるのがエリカのみとなった。
すると自然、他の弟子たちは、達也を認めることとなり、慕うようにもなる。無論、その才能や実力に嫉妬して、様々な嫌がらせ等を起こす人物が出てくることが予想されたが、エリカとの立ち回りをみて、それすら行われないほど実力差を分からせた、と言った具合だ。
この時重要なのが、他の弟子たちが達也を慕うようになった、と言う点だ。
千葉家の弟子たちの実質ほとんどが警察関係の仕事に就くと言われている。
実際に、そのようになっており、その流れで千葉家は警察組織に顔が利いたりする。
達也の狙いはそれだった。
将来何かあったとき、警察組織に知り合い、または、自分を慕う人間がいるのは色々と都合が良い。
十師族排斥の風潮が広まりつつある現代では、尚更その効果を発揮してくると思われる。
小手先の技術の習得も無論目的の一つではあったが、パイプ作りというのが真の目的であったのだ。
結果、面白いようにそれは達成された。
また、エリカが、某有名人の関係者だと知ったとき、達也が尚黒い笑みを浮かべたのは深雪のみが知る事実である。
そんなこともあって、達也は元々は、裏なしに自然とエリカとは仲よくなっていった。
今では、良き男友達のように思っている。
少なくとも達也はそう思っている。
深雪は、仲が良い以上のものがあると疑っている。
エリカは…………深雪の敵となるかもしれない。
嘘をつきたいけど
付く相手がいない……………。