灰と幻想に生きる少年   作:いろすけ

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level.3

何をするにも情報が先。そう思い俺は人が集まっている場所に来ていた。シェリーの酒場、というところらしい。さっきまでいた場所と違い義勇兵と思われる人で賑わってる。

 

(…とりあえずは金、か)

 

 ブリちゃんに渡された10シルバー。収入源がない以上、この世界の物価を知っておかなくてはならない。それもできるだけ無知であることを知られずに、だ。もし俺が何も知らないと分かればどうなる?うっかりぼったくられたら…それこそ死活問題だ。

 集団でいる奴らに声をかけるのはなんとなく嫌な予感がしたのでカウンターに座っている人から情報を聞こうとした。時間帯も手伝って空席がなかなか見つけられない。すると運のいいことに一席だけ空いているところがあった。俺は迷わずそこに腰を下ろす。

 

「……っ」

 

 ふと、左隣に目をやる。きっと息を飲むというのはこのことなんだと直感した。

 

「なに」

「…あ、いや、ごめん」

 

 絶世の美女、なんて言葉はきっとこの人のために作られた言葉なんだ。そう言われても納得してしまいそうな程の美女。俺はどうやら無意識のうちに見惚れてしまっていたらしい。とっさに謝って視線を外す。向こうもそれ以上は何も言わず、お酒らしきものに視線を移している。

 

(…話しかけにくくなったな)

 

 一度視線を逸らしている以上、話しかけるのは勇気がいる。それに相手は女性だ。しかもかなりの美人。冷静に考えなくともナンパになるんじゃないのか?などと考えていると右隣から声を掛けられた。

 

「貴様…見ない顔だが新人か?」

 

 ギクリ…。そんな変な音が全身から聞こえた気がした。

 

「酒場にはあんま来ないだけで…」

「別に騙す気はない。無理をするな」

「…いや、だから」

 

 どうやらこの黒ローブは勝手に俺を新人だと認識したらしい。…事実だけどな。というか顔がすっぽりとローブに埋まったこの男は本当に前が見えているのかさえ怪しい。

 

「私はそれなりに情報通でな。有益な情報を教えてやろう」

「…いくらだ?」

「なに、金はいらん。ただ―」

 

 俺は直感した。というより百人いれば百人が同じことを思うだろう。

 

「うちのギルドに入れ」

 

 こいつについて行ってはダメだ、と。

 

 

 

 

 酒場を出てすぐのところで知った顔と出くわした。とはいえ顔を知っているだけで名前は知らないのだが。

 

「君は…イサリだったよね?」

 

 ところが向こうはそうではないらしい。まぁ、ブリちゃんとの一件で盛大に名乗ったから当然と言えば当然か。

 

「そうだけど、君は?」

「僕はマナト。よろしく」

 

 マナトと名乗る青年は人当たりのよさそうな笑顔を浮かべていた。爽やかという言葉がこれほど似合う人も珍しい。ふと、さっきの酒場の女性を連想してしまった。

 

「もしよかったら持ってる情報を交換しない?他にも一人情報収集してる子がいるんだけど」

 

 これは正直、有難い申し出だった。一人より二人、二人より三人の方が情報の質は高くなる。

 

「有難いな。ぜひ頼む」

「そう?よかった」

 

 こうして俺はマナトとその仲間のもとに向かったのだが―。

 

「なんだよこいつ!一人増えてるじゃねえか!」

「えっと、イサリくんやんね」

「そう、酒場で合流したんだ」

 

 そこにはテンパの少年とイントネーションのおかしな少女、気弱そうな少女、それにどこか眠たそうな目をした少年、となかなかに個性的なメンツだった。

 

「僕とハルヒロ、それにイサリの三人で集めた情報を共有した方がいいと思ってね」

「そうだな。そのほうがいいと思う」

 

 マナトの意見に眠たそうな少年が応じる。どうやらこの少年がハルヒロらしい。

 

「おいおい、ハルヒロ。お前もこのチビのこと受け入れんのかよ」

 

 …チビ。確かにマナトと並ぶとそう見えるかもしれない。それならハルヒロやテンパだって低い部類に入るだろう。まぁ、その二人よりも小さいのは認めるが…。

 

「ランタのアホ。子供に向かってそんな言いかたしたらあかんやろ」

「うっせーぞ、ユメ」

「イサリは小さくて可愛いなぁ」

 

 まさか子供扱いされるとはな。ランタも大概だが、無意識に酷いことを言ってくるユメもユメだ。いや、ユメより小さいのは地味にショックだった。…もう一人の子のには勝ってると信じたい。なんて考えているとユメはあろうことか俺の頭を撫で始めた。

 

「ユメ…さん、俺、子供じゃないんだけど…」

「そうなんやぁ、えらいなぁ」

 

 ダメだ、話し通じない。助けを求めるように視線をさまよわせていると気弱そうな女の子と目があった。しかしそれは一瞬ですぐにその子は怯えたように顔を背けた。

 

「シホルは恥ずかしがり屋さんやからなぁ」

「ユメさん」

「ユメでええよ」

「ユメ、そろそろ撫でるのやめてくれない?」

「?」

 

 いや、?じゃないよ。ユメは天然らしい。シホルは気弱、ランタは面倒くさい、ハルヒロは地味、マナトはいい奴。なんか見た目通りだな、みんな。

 

「じゃあ、そろそろ情報を交換したいと思うんだけどいいかな?」

 

 マナトの提案でさっそく情報共有が行われた。収穫は大きく二つ。

 一つ目はお金についてだ。この世界のお金の単位は上から順にゴールド、シルバー、カパーの三種類。100カパーで1シルバー、100シルバーで1ゴールドらしい。

 二つ目はクラス。まずこの世界で仕事をするにはギルドというものにはいらなくてはいけないらしい。そこでクラスと呼ばれる職に就く。もちろんクラスに入るのにもお金がかかる。8シルバー。今の俺たちにとっては大金だ。ちなみにクラスは主に戦士、聖騎士、暗黒騎士、盗賊、狩人、魔法使い、神官の7種類。その他にもあるにはあるのだが、基本はこの7つになる。

 

「僕たち6人でパーティーを組むってことでいいかな?」

「その、いいんじゃないか?」

「ユメも」

「…私も」

「足引っ張んじゃねえぞ」

 

 口々に賛成の意見が飛び交う。まぁ、俺としても情報を得た今、断る理由はない。

 

「じゃあ、まずは誰がどのクラスになるか決めようか」

 

 各々の性格などを考慮してクラスを決めていった。まず最初に神官がマナト、戦士がランタ、魔法使いがシホル、盗賊がハルヒロ、狩人がユメと順調に決まり、残りが暗黒騎士か聖騎士だけとなった。

 

「イサリは体格的に前衛は厳しいから暗黒騎士のほうがいいんじゃないかな?」

「あー、それなんだけどさ。俺、実は入りたいクラスがあるんだよね」

「え?なに?」

「それは―」

 

 黒ローブの言葉が過る。

 

「―猛獣使い、なんだ」

 

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