SAO 少女が見たクリアまでの道   作:自家製イチゴ牛乳

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本文では書いていませんが、オリ主のアバターは限界まで女に近づけた男の姿をしています。


第1話 始まりの街

 電波時計を頼りに今の時間を0.1秒単位で確認していく。1秒だって遅れたりしないように瞳孔を限界まで開き、瞬きをする時間すら惜しいと思いながら時を待つ。あと10秒。あと9秒。刻々と時間が迫ってくる。こんなに1秒が長く感じたのは産まれて初めてだ。これから始まる楽しいゲームを夢想する。あと6秒。あと5秒。体が小さく震えた。でも私は知っている。それは今までの恐怖からくるものではなく、これからの戦いに対する武者震いである事を。あと2、1……

 その数字が0になる瞬間に目を閉じ口を開き言い放つ。

「リンクスタート」

 

 

 目を開けると、今までに見た事のない世界が広がっていた。石造りの街並みに、神殿の様な建物。日本では絶対に見る事の出来ないであろうその景色を噛みしめる様に眺める。

「……すごい」

 思わず出た言葉に、自分が暫し放心していた事に気が付いた。もう暫く放心した様に景色を眺めていたが、ゲームに入る前に予定を立てていた事を思い出した。

「おっと、こうしてはいられない」

 私はゲームを始める前に、一週間もの時間を掛けて立てた予定が合計7つある。その7つの予定の内の最初の目的を達成する為に、動きに迷いの無い人を探して話しかける。

「あの、武器屋って何処にありますか?」

 話しかけた人は最初は口で説明しようとしていたが、入り組んだ場所にいい武器屋があるらしく最終的に一緒に行くことで落ち着いた。

「それじゃあ早速行こうか。俺の名前はディアベル。君の名前は?」

「A(エー)です。わざわざ連れて行ってくれるなんて、本当にありがとうございます」

 自己紹介と共に小さくお辞儀をして、言葉で感謝を表した。

「いやいや、これぐらい普通の事だよ。それに、βテスターがビギナーを助けなかったら、きっと悪い噂が立つだろうからね。俺は自分を守る為にしているに過ぎないよ」

 さらりとそんな事を告げるディアベルさん。そんな大人な態度に私は歓喜した。なんて良い人なんだろう。初めて会話した人がこの人で良かった。心の底からそう思えた。

 そもそも人から好意を寄せられた事が数えられる程度しかない私は、基本的に全てを否定的に捉える癖がある。しかし、このディアベルさんは自らが助けなかった時のデメリットを上げる事で、私の申し訳ない気持ちを少しでも軽減させてくれるように努めていてくる。それが何より嬉しかった。

「本当にありがとうございます」

 再度お礼を告げると、照れる様に頭を掻きながら……

「早く行こう。遅くなると人で溢れる可能性があるからな」

 ……と催促を促した。

 その声に、はい、と答えると、少し早く歩くディアベルさんの後ろを大人しく付いて行った。

 暫く歩くと目的の武器屋に辿り着いた。想像していたザ・武器屋って感じとは違い、食べ物とかが売られている露店の一角にひっそりとその武器屋はあった。どうしてこんな所に武器屋が、と思った私の気持ちを察したのかディアベルさんは……

「ここはβテスターの人しか、いや、βテスターの中でも知っている人は少ないお店でね。値段の割に良い性能の武器が揃っているんだ。ちなみに、ここにある理由は不明だ」

 ……と苦笑気味に紹介してくれた。

 買う物は既に決まっていたので、迷う事なくその武器を探す。

「もう何を買うのか決めているのかい?」

 武器を探している私の横でディアベルさんが尋ねてきた。

「はい、私は短剣を使おうと思っています。軽い武器だったら別に何でも良いんですけど、レイピアとかだと扱いにくそうで。色々考えた結果、状態異常とかで大きな隙を作れる短剣を使おうかなと」

 そこで、目的の短剣を見つけた。ディアベルさんにアイテムの買い方、売り方を聞き、最初に初期装備の片手直剣を売って、新たに短剣を買った。

 振り返り、ディアベルさんを真正面にしてお礼を述べる。

「武器屋まで案内してくれて本当にありがとうございました」

 深く腰を曲げ、少しでもこの誠意が伝わればと思いながら声を上げる。

「どういたしまして。君さえ良ければフィールドに出て、経験値稼ぎついでにソードスキルの使い方とかも教えれるけど、どうする?」

 少し控えめなお誘い。はい、と答えたい気持ちをグッと我慢して口を開く。

「これ以上ディアベルさんに迷惑を掛ける訳にはいきません。私は武器屋に案内して頂いただけで十分助かりましたから」

 そう言うと、ディアベルさんは少し悩んだ様な素振りをしたが、私に意見を尊重してくれたのか……

「分かった。それじゃあ、また何か分からない事があったら声掛けてくれ」

 ……そう言って去っていった。

 その背中を暫く眺めながら、私は思った。

 きっとこのゲームは楽しいんだろうな、っと。

 私は、脳内で「予定1、短剣を買う」に完了の判子を押した。

 

 

 ディアベルさんと別れた私は、右手の人差し指と中指を揃えて上から下へ軽く下ろす。すると目の前に青色のホログラムが出てきて、幾つかの欄が現れた。あらかじめ説明書を読んでいた私は迷わずタッチし、操作をしていく。新しく買った短剣を装備し、スキルスロットに片手用短剣と投擲を入れる。これで「予定2、スキルを覚える」が完了した。

 サクサクと予定通りに進む現状に少し満足をしながら私は、フィールドエリアに足を進めた。

 

 フィールドエリアに出ると、ちらほらといる猪(フレイジー・ボア)が目に入った。

 いきなり猪と戦うのも面白いかもしれないが、情報が無いと無駄な出費(ポーション)が増える可能性があるからまずは観察。適当に見渡すと丁度猪と戦っている2人組プレイヤーがいた。黒髪の美少年と、赤髪のやんちゃなお兄さん風の見た目をした2人だ。近すぎず遠すぎずの位置から観察していると、どうやら黒髪美少年の方がレイクチャーしているとすぐ分かった。身のこなしもだが、ソードスキル(きっと何かを投げた事から投擲スキルと予想)を簡単に発動してみせる黒髪に、赤髪はどうやるのかと聞いていたのだから簡単に予想は付いた。黒髪は口で説明しているのだが赤髪にはそれが伝わっていないらしく、猪から突進を食らっていた。

 そこまで観察してみて分かった事が二つあった。まず、猪は突進しかせず、その速度は冷静になれば余裕で躱せるレベルだということ。次に、どうやらソードスキルとは一定のモーションを取る事で発動できるということだ。何度か練習をして、遂に赤髪がソードスキルを発動した姿を横目に近場にいる猪を探す。

 近場の石を手にして黒髪がやっていたポーズを真似した。すると持っていた石が光り、腕が勝手に動き出した。腕は勢いよく振られ、石が猪目掛けて一直線に飛んでいく。そして、命中すると同時に猪のHPゲージが1割ほど削れた。

「これがソードスキル……」

 私は初めてソードスキルを使った事に対して感動を覚えた。体を動かして初めて楽しいと感じた。その余韻を味わおうとしていると、さっき石を当てた猪がこっちに向かって走ってきた。

「せめて後1秒でもいいから待ってて欲しかったな」

 短息をしながら少し大げさに横に避ける。猪は私を通り過ぎると方向転換する為に走るのを止めて此方に向き直した。そして再び突進をしようと足を動かす。

 しかし、そうは問屋が卸さない。もし仮に問屋が卸したとしても、私は絶対に卸さない。

 突進をしようと意気込んでいる猪に走って近づき短剣を振り下ろす。そして、距離を取る為にバックステップを踏む。今の一撃でHPがどれだけ削れたかを確認する。

「4割ぐらいか」

 丁度半分ぐらいになった猪のHPをぼんやりと眺めながら呟く。この計算で行けば、あの猪はHPが満タンだとしても三回斬り刻むだけで倒す事が出来る。ゲームのチュートリアルの敵だとしたら妥当なレベルだろう。そう思いながら再度突進してきた猪をギリギリで回避し切り裂く。計算ではあと1/10残るとされていた猪のHPは計算と反して綺麗に0になった。

 猪は幻想的なホログラムの破片をばら撒いて姿を消す。それと同時に、目の前に討伐をした猪のドロップアイテムや落としたコル(ゲーム内通貨)、経験値が書かれたホログラムが出現した。特にパッとした物は無く、すぐさまそれを消して、近場にいた猪に攻撃を開始した。

 

 思いの外猪狩りは楽しく、暫く熱中しているとレベルアップのファンファーレが耳に流れた。そのレベルアップで手に入れたステータスポイントを俊敏に全て注ぎ込み再度猪狩りを開始する。そんな作業を2回ほど繰り返した頃、ホログラムに映し出された時計は17:30分を指していた。そろそろログアウトして食事しないと現実での体がお腹を空かすので、右手の人差し指と中指を揃えて上から下へ軽く振り下ろす。

「確かここにあったはず……」

 説明書に書かれていた事を思い出しながら操作をする。しかし、そこにお目当のログアウトボタンは存在せず、少し首を傾げる。もしかして記憶違いだったのかと思い、他の所を探してみたけど一向にログアウトボタンは見つからない。

 そんな状況に少し戸惑いを感じていると、どこか遠くから鐘の音が鳴り響いた。

 突然体が不思議な光で包まれたかと思うと、今度は景色が変わった。先程までの猪がいるフィールドエリアではなく、どうやらゲーム開始時にいた始まりの街に強制転移されたみたいだ。周りにいる人たちも同じような人ばかりで、次々とここへ転移してくる人が増えていく。どこかで声が聞こえた。それは「ログアウトの件で謝罪するんじゃね」という声。大半の人がそう言っているし、私自身もそうだと思っていた為、然程驚きを感じない。「侘び何くれるのかな?」とか結構致命的なバクであるにも関わらず皆少し嬉しそうだった。そんな時、一人の男性が空へ指を指し声を上げた。

「お、おい。上に何か書かれてあるぞ」

 私を含めた多くのプレイヤーは、その男が指す指の先にある物を見上げる。赤く書かれた文字。英単語であろうそれは、なんて書いてあるのか分からなかったが、自然と嫌な予感がした。

 その予想は的中し、その後に待つ最悪の宣言に私は恐怖をした。

「ようこそ、私の世界へ……」

 

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